いざ!哲学のテーマパーク”哲学堂公園”を講談調でごあんない♪【まるっと中野】

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更新日:2026年6月22日

皆様、ナカノ観光レポーターとして記念すべき第一回目は、中野区にあります哲学のテーマパーク、哲学堂公園を、私・中野区観光大使でもあり講談師の神田山緑がご案内してまいります。何卒、よろしくお願いいたします。
実はここは単なる公園ではございません。明治の哲学者・教育者、井上円了が、「哲学を目で見て学べる場所を作りたい」と願い、1904年に開いた精神修養の公園でございます。広さはおよそ東京ドーム一・四倍。園内には哲学にまつわる建物や碑が点在し、“哲学”を歩いて体験できる不思議な場所となっております。

哲理門

哲理門と筆者

まずご覧いただきますのが、この「哲理門(てつりもん)」でございます。門にはさまざまな文字や意匠が施されておりまして、「これより先、哲理の世界へ入る」(哲理:人生や世界の本質に関する深い道理のことで、それを探究することが哲学であるとされています。)という意味が込められております。実は私も、小学生の頃に日本橋から中野へ引っ越してきましてね。「面白いお化けのいる公園があるぞ」と友達に連れてこられたのが、この哲学堂公園との最初の出会いでございました。

幽霊の像

天狗の像

見てください、門の左側には「幽霊」。そして反対側には「天狗」の像。哲学堂公園は“陰”と“陽”の思想を大切にして作られております。幽霊は陰、天狗は陽。世の中はその両方のバランスで成り立っているという考え方なのですね。哲理門は、現在は誰でも通行可能ですがかつてはこの門を通らず「常識門」より出入りしておりました。

常識門

常識門

では歩いてまいりましょう。こちらが「常識門」でございます。哲学堂には七十七場と呼ばれる見どころがあり、それぞれに意味がございます。この常識門はその一つ。「常識」という言葉がついておりますが、哲学とは、まず自分の常識を疑うところから始まる。そんな意味合いが込められております。

鬼神窟と髑髏庵

「鬼神窟」(左)と「髑髏庵」(右)。「鬼神窟」(左)と「髑髏庵」(右)

門をくぐりますと、「鬼神窟(きしんくつ)」や「髑髏庵(どくろあん)」がございます。かつて髑髏庵には、本物の髑髏が置かれていたとも伝わっております。人は常識を脱ぎ捨て、死を見つめ、自分の魂と向き合っていく。そういう修行の道筋が、この公園全体に表現されているのでございます。

六賢台

六賢台

さて、哲学堂公園の代表的建築の一つが、こちらの「六賢台(ろっけんだい)」でございます。
中野区の観光ポスターなどにもよく登場いたしますね。ここには東洋思想を代表する六人の賢人が祀られております。日本からは聖徳太子と菅原道真、中国からは荘子と朱子、インドからは龍樹と迦毘羅(カビラ)。東洋の知恵を集めた象徴的な建物でございます。かつては井上円了が収集した品々も展示されていたそうでございます。

高低差を巧みに活かした園内の構成

経験坂から見上げる「鬼神窟」。経験坂から見上げる「鬼神窟」

「二元衢」。「二元衢」

二元衢から見上げる六賢台。二元衢から見上げる六賢台

さらに園内は、高低差を巧みに活かしながら構成されておりまして、「唯物論」と「唯心論」という、哲学の根本ともいえる考え方までも表現されております。
目に見える現実や物質を重んじる「唯物論」。
それとも、人の心や精神こそ大切と考える「唯心論」か。
この哲学堂公園は、ただ景色を眺めるだけの公園ではございません。園内に点在する「七十七場」の表札を見ながら歩いておりますと、「自分はどちらに近い人間なのだろうか」と、自然に考えさせられるのでございます。
もし迷い、分からなくなった時には、一番高い場所にある「四聖堂」や「六賢台」を訪れ、聖人たちの知恵に触れる。あるいは「絶対城」に納められた書物によって、再び学び、そしてまた元の道へ戻っていく。
坂を上り、木々の間を抜け、静かな空気の中を歩いておりますと、いつの間にか自分自身の心と向き合っている。
まさにここは、“考える散歩道”なのでございます。

四聖堂

四聖堂

そしてこちらが「四聖堂(しせいどう)」。哲学堂で最初に建てられた中心的建物の一つです。
ここには釈迦、孔子、ソクラテス、カントという、東西を代表する四人の聖人・哲学者が祀られております。井上円了は「東洋と西洋の知を融合させたい」と願っておりました。その思想が、この建物には色濃く現れております。
中には釈迦涅槃像が安置されておりますが、実はこの像、毎年向きが変わるのでございます。毎年十一月第一土曜日の哲学堂祭で、釈迦涅槃像の向きを変えております。

宇宙館

宇宙館

こちらは「宇宙館」。かつて井上円了が講義を行った建物で、哲学や妖怪学について語った場所とも言われております。円了は妖怪研究でも有名で、「妖怪博士」と呼ばれた人物。迷信を単なる恐怖として終わらせず、「なぜ人は怪異を信じるのか」を学問として研究したんですね。だからこの公園には、幽霊や天狗といった不思議な存在が数多く登場するわけでございます。

絶対城

絶対城

「哲学堂公園」という世界

そしてこちらが「絶対城」。今で言う図書館にあたる建物です。「絶対的境地」という真理を求めるため、本を読み、学問を深める場所でございました。悩みがある時は、四聖堂で聖人に問いかけ、六賢台で賢人の知恵を借り、それでも答えが見つからなければ絶対城で本を読む。そんな“人生修行の公園”として、この哲学堂は作られていたのでございます。
さて、ここまで歩いてまいりますと、最初に髑髏庵を通った我々は、魂だけの存在として哲学の世界を巡ってきた、という考え方になります。そして最後には「理想橋」を渡り、再び現実世界へ戻っていく。つまり、この公園全体が、一つの精神世界の旅路になっているのでございます。

出典:東洋大学エクステンション課提供資料。出典:東洋大学エクステンション課提供資料

理想橋

今の時代、SNSや人間関係、仕事や将来への不安など、悩みを抱える方も多いことでしょう。そんな時、この哲学堂公園を歩いてみますと、不思議と心が静かになります。木々の音を聞きながら、「自分はどう生きるべきか」を考えることができる。ここは遊園地ではありません。自分自身と向き合うための、“哲学のテーマパーク”なのでございます。
ぜひ皆様も、哲学堂公園へ足をお運びくださいませ。

哲学堂公園

所在地:中野区松が丘1丁目34-28
アクセス
西武新宿線「新井薬師前駅」から徒歩12分
都営大江戸線「落合南長崎駅」から徒歩13分
電話:03-3951-2515
休園日:年末(12月29日から31日)

お問い合わせ

このページは区民部 文化振興・多文化共生推進課が担当しています。

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