<東京黎明アートルーム>特別展 柴田是真―対柳居から世界へ―後編【まるっと中野】

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更新日:2025年10月29日

粉本猫筆紙図 「柴田是真粉本類」(江戸~明治時代・19世紀)

よく見ると、猫に白い線でひげが描いてあるとのこと。保存状態の良さにも驚かされます。

中野区の「東京黎明アートルーム」で開催中の特別展「柴田是真―対柳居から世界へ―」。
6畳の細工場を持つ「対柳居(たいりゅうきょ)」から世界へと活躍の場を広げた是真。後半では、粉本類や漆絵から見えてくる制作の軌跡をたどります。引き続き広報の金野さんに案内していただきました。

見どころ(4) 是真の粉本を見る

本展の最大の特徴は、是真の自宅・対柳居で制作されたとみられる写生や粉本の多さです。2021年に新たに確認された「柴田是真粉本類」が展示されており、是真が大成するまでの努力を垣間見るとともに、その人物像や内面にも迫ることができます。

柴田是真の摺物と原画(明治時代・19世紀)

是真がデザイナーとしても活躍していたことをうかがわせるコーナー。摺物(すりもの)や団扇(うちわ)と原画が並びます。

柴田是真粉本類(江戸~明治時代・19世紀)

左端の《粉本 秋草鎌図》には秋草に鎌が描かれています。俳諧を嗜んでいた是真は、俳味のある意匠を好んで描いたそうです。

柴田是真蒔絵作品と粉本類(江戸~明治時代・19世紀)

右端の《粉本 日出足長手長図》は是真異色の作品とのこと。本画はアメリカのフリーア美術館が収蔵。是真の作品は海外での評価の方が高く、多くの作品が欧米を中心とした海外に所蔵されています。

柴田是真粉本類(江戸~明治時代・19世紀)

修業時代の模写や写生を展示するコーナー。是真の師である古満寛哉(こま かんさい)の蒔絵作品と是真の代作も並ぶ。

柴田是真粉本類(江戸~明治時代・19世紀)

鍾馗鬼図と鯉図の粉本。向かい側には本画が展示されています。

20代で浅草橋に構えた是真のアトリエからは、神田川をはさんだ対岸の土手に柳が見えたそうです。そのことから「対柳居」と名付けたこのアトリエで、是真は一日中、制作に打ち込んでいたといいます。

見どころ(5) 是真の漆絵を見る

蒔絵師であり絵師でもあった柴田是真によって生み出されたと言われる漆絵。漆絵とは、和紙に漆で絵を描く技法で、掛幅にして巻いても割れない柔軟性を備えています。
展示室に並ぶ作品を眺めると、漆の深い光沢や繊細な筆づかいの向こうに、明治という新しい時代の到来と、世界に視野を広げようとした是真の挑戦が感じられます。伝統的な日本の画材を用いながら、耐久性のある漆で描くことで、洋画に負けない表現を目指し、海外への輸出も意識していたといわれます。

柴田是真の漆絵と墨画淡彩の涅槃図(明治時代・19世紀)

是真は明治政府の委嘱を受け、明治6年(1873年)のウィーン万国博覧会に《富士田子浦蒔絵額面》を出品し、進歩賞牌を受賞。瞬く間にその名は世界に広まりました。さらに、明治22年(1889年)のパリ万博では金賞牌を受賞するなど、国内外で高い評価を確立していきます。

漆絵菅公図 柴田是真筆(明治時代・19世紀)東京黎明アートルーム蔵

漆絵菅公図 柴田是真作(明治時代・19世紀)

刀の柄には細かい模様が描かれ、太刀を帯びるための平緒には漆や螺鈿で様々な色が表されています。

漆絵海辺旭図 柴田是真筆(明治時代・19世紀)

優れた構図の中に是真の高いデザイン性が光る。よく見ると漁網の上に鳥が描かれています。

漆絵月秋草虫図 柴田是真筆(明治時代・19世紀)

左上三枚の葛の葉の下にコオロギ、撫子の下に鈴虫が描かれています。

洒脱な作風と卓越した技術で世界を魅了した是真は、対柳居でその85歳の生涯を閉じました。江戸最後の職人にして芸術家。激動の時代を生き抜き、その人生は挑戦に満ちていました。

東京黎明アートルーム特別展とは

『柴田是真―対柳居から世界へ―特別展冊子』(オールカラー 全24ページ)

東京黎明アートルームで年に数回開催される特別展は、東京大学東洋文化研究所教授・板倉聖哲氏を中心に監修されています。毎回、意表をつく斬新な企画が話題を呼んでいます。
今回の〈柴田是真展〉では、国立能楽堂主任専門員であり、柴田是真研究の第一人者でもある高尾曜氏とのW監修が実現。入場者全員に配布される冊子には、高尾曜氏による作品解説とコラムが収録され、柴田是真の作品世界はもちろん、その生涯への理解もいっそう深まる内容となっています。
次回の特別展は〈良寛の書簡展〉。11月13日(木曜)~12月25日(木曜)まで開催されます。柴田是真展に続き、良寛の人となりに触れられる、特別な時間を過ごせそうな展覧会です。
東京黎明アートルームで芸術の秋を存分に満喫してくださいね。
ナカノ観光レポーター、Kana Nakaがお届けしました。

東京黎明アートルーム

《特別展 柴田是真―対柳居から世界へ―》

開室期間:2025年9月15日(火曜・祝)~10月31日(金曜)

休室日:9月23日(火曜・祝)・10月3日(金曜)・10月19日(日曜)

開館時間:10時00分~16時00分  ※最終入室は15時30分

入室料金:一般 800円(20歳未満は無料)

※障害者手帳をお持ちの方及び介護者の方は400円引き

※20歳未満の方は年齢を確認させていただく場合がございますので、年齢のわかるものをご用意下さい。

所在地:東京都中野区東中野2-10-13

アクセス:JR 東中野駅徒歩7分/都営大江戸線 東中野駅徒歩約7分/東京メトロ 東西線 落合駅徒歩約14分/丸ノ内線 中野坂上駅徒歩約13分

電話:03-3369-1868

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このページは区民部 文化振興・多文化共生推進課が担当しています。

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