【まるっと中野】沙央くらまがご案内 中野のアチコチいいところ「守り伝えるバレエの伝統 牧阿佐美バレヱ団」(後編)
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更新日:2026年6月10日
こんにちは。宝塚歌劇団出身、現在は俳優として活動している沙央(さおう)くらまです。
中野にスタジオを構える「牧阿佐美バレヱ団」への潜入レポート。後編では、バレエミストレス(※1)の挾間祥子(はざま・さちこ)さんにバレヱ団に受け継がれる伝統や想いを伺いました。
※1 バレエミストレス:ダンサーの技術指導やリハーサルの進行を担当する女性の役職

牧阿佐美バレヱ団の歴史

沙央「ミストレスでいらっしゃる挾間先生は、牧阿佐美バレヱ団でどんな役割を担っているんですか?」
挾間「簡単に言えばバレエの先生ですが、普通の教師と違うのは、公演に向けてダンサーに作品を伝えて、リハーサルを通してある程度仕込み、演出家や芸術監督に引き渡す役割を担っているということです」
沙央「演出家とはまた違うんですね」
挾間「違います。演出家や振付家の意図を汲み取って、作品を作り上げていくための教師です。先ほどリハーサルを見ていただいたように小道具をどこに置かなきゃいけないとか、舞台に行けば舞台装置に対してダンサーはどこに立つかを決めるのもミストレスの役目です」

沙央「ありがとうございます。ミストレスとして長くバレヱ団に携わっていらっしゃいますが、バレヱ団の歴史をお聞きしたいです」
挾間「牧阿佐美バレヱ団は、1956年に立ち上げて今年で70周年なんです。中野に移ったのは1986年だと思います」
沙央「移転はなにかきっかけがあったのでしょうか」
挾間「それまでは渋谷区富ヶ谷のスタジオで活動していたんですが、今ではそこはバレエ学校専用になっています。バレヱ団がずっと使えて、劇場の大きさに近いスタジオが必要だということで中野に移転しました」

沙央「バレヱ団にとって転機になったということですね」
挾間「そうですね。転機は何度かあって、芸術監督が創設者の牧阿佐美先生から今の三谷恭三先生になって、近現代古典、ローラン・プティ(※2)やバランシン(※3)などの作品を上演する機会ができたことにより、これまでと違うジャンルに挑戦できるようになったことも、バレヱ団が新しい方向に向かう転機になりましたね」
沙央「牧阿佐美バレヱ団の特徴はどんなところでしょうか」
挾間「一言でいうと“正統派のバレエ”をしているということ。そして妥協せず本物を見せることに重点を置いています。たとえば『白鳥の湖』をやるにしても、借りてきた衣装や舞台装置ではなく、振付家と美術担当が打合せをして、全部統一したコンセプトのもと作品を作っているんです。完全オリジナルであり、“総合芸術”を魅せるということは、うちのバレヱ団として譲れません」
※2 ローラン・プティ:フランスのバレエダンサー、振付家。代表作に『失楽園』、『ノートルダム・ド・パリ』など。
※3 ジョージ・バランシン:ロシア出身のバレエダンサー、振付家。代表作に『アポロ』、『セレナーデ』など。
創設者牧阿佐美さんとは
沙央「伝統を重んじる文化は、創設者の牧阿佐美先生の理念を受け継がれているからだと思いますが、牧阿佐美先生はどういった方でしたか」
挾間「すごくチャーミングな方でした。人をとても大事にされる方でもあって、叱って伸びる子・褒めて伸びる子というのはすぐに見抜いていて、私はよく叱られる側でした(笑)阿佐美先生の一言でダンサーは上手になっていましたね」

沙央「なるほど」
挾間「芸術家でもいらして。芸に関しては妥協しない、すごく素敵な方でしたね。ミストレスの仕事も阿佐美先生が勧めてくださったのがきっかけで、本当に恩師です。ダンサーを辞めても誰もがここに残れる訳ではないので」

沙央「阿佐美先生がいらっしゃった時代から守り続けているものがあると思います。牧阿佐美バレヱ団として、伝統を守るために心がけていることはありますか」
挾間「伝統を守るために毎日レッスンをしています。阿佐美先生は、日本人がヨーロッパやロシア人のスタイルに敵うわけがないと考えて、日本人に合うバレエの形を考案し伝えてくださいました。それを教えていく、教えられたことを教えていくしかないかなと思います」
沙央「そうですよね。私も含めて芸事に携わる人間が守るべきことって、受け継いできたものを伝え続けることですよね」
バレエの入口
沙央「バレエを初めて観る方に対する取り組みもされているのですよね」
挾間「バレエは敷居が高いってよく言われるのですが、もっと身近に分かりやすく感じてもらいたく開演前に鑑賞教室を行ったり、バックステージツアーを開催したりしています。SNSではリハーサルの様子などを紹介しているので、読者の方にはぜひ見ていただきたいです。
なかのZEROホールでの『子供のためのバレエ公演 シンデレラ』でも、ただ公演を観ていただくだけでなく、なにか興味をもつきっかけとなるような企画を準備中です」

沙央「それは楽しみです。昨年の『シンデレラ』に向けては、中野区役所1階のナカノバでもPRしてくださいましたよね」
挾間「ナカノバでのPRをたまたま見てくださった方も公演に来てくださいました。そういった活動が実って、一人でも多く来てくださると嬉しいですね」

挾間「お子さんに向けた活動だと、バレエをやったことがないお子さん、始めて間もないお子さんに舞台を体験してもらう企画をしました。短い時間で振りを覚えてみんなで踊るので、緊張感や協調性を育んでもらったり、衣装を着させてあげるので、自然に「ありがとう」と言葉が出てきたり、バレエを体験しながらも教育的なことができたのではないかなと思います。
最近では中野区立の小学校で、バレエのワークショップもしてきました。バレエの簡単な歴史をお伝えして、プロのダンサーの動きを見てもらったり、一緒に踊ったりしました。
こういったバレエに触れられる場を増やして、少しでも興味を持ってほしいですね」
これからの牧阿佐美バレヱ団

沙央「今年70周年を迎えた牧阿佐美バレヱ団の今後の活動について教えてください」
挾間「直近では、6月13日・14日に文京シビックホールで『リーズの結婚』を公演します。日本で『リーズの結婚』ができるのは牧阿佐美バレヱ団だけなんですよ」
沙央「へえ!なにか権利を持っていらっしゃる?」
挾間「そうです。英国のロイヤルバレエ団のアシュトンさん(※4)が作られて、牧阿佐美バレヱ団が初演した当時はひとつの国につきひとつのバレエ団しかできなかったんです。ローラン・プティの『ノートルダム・ド・パリ』も国内では牧阿佐美バレヱ団しかできません」
※4 フレデリック・アシュトン:イギリスのバレエダンサー、振付家。代表作に『シンデレラ』、『リーズの結婚』など。

沙央「『リーズの結婚』は可愛い作品ですね。リボンなどの小物使いや表情もとっても可愛い」
挾間「木靴を履いて踊ったり、メイポールという南フランスの民族舞踊を踊ったりもします。ストーリーはおとぎ話ではなく、人間のことですが、スピード感もありつつ分かりやすいのでぜひ観に来てください」
挾間「8月のなかのZERO 大ホールでは子供のためバレエ公演として『シンデレラ』をやります。10月末には70周年記念ガラ(※4)として、牧阿佐美先生が作られた『飛鳥 ASUKA』、バレヱ団が昔から大切にしてきた『ライモンダ』、新作の『火の鳥』を公演します」
※4 ガラ:フランス語で「特別な催し」を意味する言葉。全幕ものではなく、オムニバス形式で豪華なプログラムを指す。

沙央「素晴らしい。見逃せない公演が目白押しですね。
最後に読者の皆さま、中野区の皆さまにメッセージをお願いします」
挾間「今はYouTubeやDVDでなんでも見ることができます。しかし、画面越しにすごいと感じるものでも、実際に生で観る舞台の感動とはまったく違います。
牧阿佐美バレヱ団はオーケストラ公演も多く、生の音楽・生の踊りを体験できます。目で観て、耳で聴いて、心で感じる。その体験ができるのはやはり舞台ですね。ぜひ生のバレエの舞台を観に来てください!」

あとがき
牧阿佐美バレヱ団は、中野にスタジオを構え、長い時間をかけてこの地域とともに歩んできた存在です。
稽古場で目にした、積み重ねられた基礎の美しさ。受け継がれてきた“正統派”のこだわり。言葉にすると簡単ですが、その裏側には、日々のレッスンと、妥協せず「本物を届ける」ための努力がありました。
そして何より、観てほしいのは“舞台”です。なかのZEROホールでも公演が行われるので、「中野で本格的なバレエに出会える」こと自体が、とても贅沢だなと改めて思いました。ぜひ一度、劇場に足を運んでみてください。
ちなみに取材中に、挾間さんと青山さんの“中野のお気に入り”として「おやき処 れふ亭」の名前も教えていただきました。観劇の前後に立ち寄って、舞台の余韻を味わうのも素敵だと思います。

牧阿佐美バレヱ団
所在地:東京都中野区中野6丁目27-13
HP:
https://www.ambt.jp/(外部サイト)
公演情報
〇次回公演 『リーズの結婚 ~ラ・フィーユ・マル・ガルデ~』(全幕)
日程:2026年6月13日(土曜)19時00分開演、14日(日曜)15時00分開演
(開場は開演1時間前)
会場:文京シビックホール 大ホール
詳細:
https://www.ambt.jp/pf-lafille2026/(外部サイト)
〇子どものためのバレエ公演『シンデレラ』(全2幕)
日程:2026年8月22日(土曜)14時00分開演、23日(日曜)13時00分開演
会場:なかのZERO 大ホール
〇創立70周年記念ガラ『受け継がれる美しき遺産』
・『飛鳥 ASUKA』 第2幕より 振付:牧阿佐美
・『ライモンダ』 第3幕より 振付:テリー・ウエストモーランド
・新作『火の鳥-Ember』 振付:大石裕香
日程:2026年10月31日(土曜)18時30分開演・11月1日(日曜)17時00分開演
会場:文京シビック 大ホール
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このページは区民部 文化振興・多文化共生推進課が担当しています。
