【まるっと中野】「なんか良いな」が見つかる本屋、チラクシン ブックショップ

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更新日:2023年10月13日

初めまして、ナカノ観光レポーターの「カミヤマ マドカ」です。
日常の延長にあるまちの空気、大切にしたいまちの良さや魅力を、文字にのせて伝えたいと思います。

外観


中野駅から徒歩5分ほど、薬師あいロード商店街。昔ながらの文房具屋、履物屋、焼き鳥屋からは美味しそうな匂いが漂ってくる。ノスタルジーさがゆるやかで、心地よいリズムが流れる商店街に「Chillaxin’ Book Shop」(チラクシン ブックショップ)は今年の夏オープンした。

「元々の思いは本なんですよ。出発点は本なので、自分の思いとしては本が好きというのはもちろんあります。『ここ何屋さんですか』と聞かれることが多くて、コーヒー飲めたり、ビール飲めたりする古本屋なんですって、ざっくり説明するんですよ。」と笑いながらコーヒーを淹れ、オーナーの中村 仁さんがカウンターから語ってくれた。

本の品揃えから、深い部分が見えてくる

店内


店内に広がる本を眺めながら、お店にある本は意識して選書しているのですか?と伺った。

「ラインナップは意図してこうしているというよりも、かっこつけるでも何でもなく、自分がずっと読んできた本を持ってきたのがこれなので。自分の年輪、積み重ねみたいなものが本棚を通して見え隠れしている。それをお客さんに面白がってもらえているのであれば、すごい嬉しいです。もしかしたら、他のもの以上に本には、そういう引きがあるのかな?というのがあります。」

中村さんは一息ついて、嬉しそうにお客さんとの古本屋らしいエピソードを話してくれた。

「実は今日もオープンしてすぐくらいに来てくれた、ヒップホップが好きな大阪出身のお客さんが『この本、家にあんねん』って前に来た時に話していたんですね。その方が、今日はお店に来てコーヒー頼んで、話題になっていたラッパーのレシピ本を『これあげる』って持ってきてくれました。今のところ、すごく皆さんが応援してくださってる感じがあるので、何回も来てくれる人は嬉しいです。若いお客さんでもお店に入ってきて、面白そうだからと買ってくださる人もいて。それは、自分が想定していた以上に反応してもらえています。」

僕は本に救われたことが、今までに何回かあるタイプの人間

本の話をしていると中村さんは中島らもさんの本に載っている「その日の天使」の話を教えてくれた。「僕は本に救われたことが、今までに何回かあるタイプの人間」と、本に対する思いを語る中村さんの姿が印象的だった。

本


「僕は本に救われた。自分の好きな本には何か力があると思っているというか、もちろん、今の時代、本がたくさん売れないのは百も承知です。だけど、根っこにあるのは『本屋』ということ。その上でコーヒーを出すとか、ビールを出すとかはあっても良いと思います。」

紙の本が売れているとは言えない状況でも、本屋としてもしなやかさを持つことの必要性、雰囲気を壊さず本と一緒に飲みたくなるものを置いていると話す中村さん。

コーヒー


(街の雰囲気に合うコーヒー、本と一緒におすすめしたい Hot/Ice:\400-)

「自分自身も日常で飲んでいるからこそ、同じ商店街にある自家焙煎コーヒー豆専門店のコーヒーはその感覚に合う。ちょっと一息つくとか、本を読む時とか、誰かと喋るとか、それのお供としてのコーヒー。あとは、自分がよく知らないビールを人にすすめるのはちょっとね…という思いがありまして。その時に箕面ビールを思い出しました。オープン前、仕入れ先もわからなかったので、直接聞くのが一番早いということで問い合わせをして、箕面ビールさんから『直接、やりますよ』と返事が返ってきました。箕面は自分にも縁のある土地で、箕面ビールは長年飲んでいて美味しい。猿のラベルが可愛いとか、箕面のビールを珍しがって飲んでくださるお客さんもすごく多いので、お店で扱って良かったなと思います。」

ビール


(定番のラベルだけでなく、期間限定のビールも試したくなる 箕面ビール各種:\660~)

読書の中に心地のよい時間を与えてくれる一杯、その中にもコミュニケーションが見えると不思議と温かい気持ちになる。

「自分で何かやる」という選択からの再出発

本棚


私は中村さんがどうして、この店を始めたのかがますます気になった。お店を始めた経緯を聞いてみると、中村さんは少し間をあけてゆっくりと話しだした。

「自分はずっと会社員をしていて、前の会社で20年近く働いていて。いろんなことがあって僕は体調を崩したんですよ。休職をして、少しづつ体調も戻ってきた時に『ここから先、どうするか』って考えた時に、最終的に選んだのは『自分で何かやる』という選択。『やりたいことをやれるかどうか』という視点で考えた時、早い定年と捉えてどちらにしてもやるんだとしたら早い方が良いと思って。どうせやるんだったらやりたいこと、幸い僕の妻が『やってみたらええやん』と背中を押してくれたので。」

話を聞きながら、中村さんの言葉がコーヒーの香りとともに優しく広がる。

Chillaxinに込めた意味

看板


店内に流れる音楽やスポーツの話から、中村さんは90年代のスポーツ雑誌を見せてくれた。学生時代、アメリカンフットボールに励んでいたという話をしながら、お店の名前の由来も教えてくれた。

「屋号をどうするかで考えた時に、自分が置こうとしている本やBGMを考えると、アメリカンカルチャーな世界で、何屋さんかわからない部分も少し狙っていた節はありました。90年代っぽさを出すために、『Chill』(チル)という言葉のニュアンスと、誰でもウェルカムで『Relax』(リラックス)するという意味合いを、一単語くらいで言いたくて。言葉を調べたら『Chillaxin』(チラクシン)というスラングを見つけました。ロゴもその経緯で、カレッジテイストの90年代っぽいデザインになりました。」

『Chill』(チル)と『Relax』(リラックス)の混ざった英語のスラングから付けられた『Chillaxin’ Book Shop』、この名前に込めた哲学を感じてしまうくらいクールな名前である。

それぞれの楽しさのリズムに乗って

グッズ


映画の話をしているとアメリカの散髪屋の持つ魅力を、アメリカのカルチャーを交えて話してくれた。

「アメリカの映画とか見ていると、散髪屋。そこに集まってくる髪を切るお客さん以外にも、散髪せずコーヒーだけ飲んでるおっちゃん達。そのおっちゃん達が、『今年の我が街のどこどこ高校のフットボール部はどうなんだ?』とか話しているシーン。人が集まって、何か喋って帰っていく、そういうアメリカの文化にずっと憧れみたいなものがあって。本でも、コーヒーでも、お店に来た人同士が喋ってくれていたり、それに僕を介さなくて良いし。どう楽しんでいただくかは、それぞれで良い。店づくりもそうですし、居心地が悪いなと思うと二度と来てもらえないじゃないですか。だから、遊びの部分として、関西弁で言う『ええかげんさ』の余地は残しておきたいです。」

不思議とのんびりしてしまう余韻こそ、お店に漂う「Chillaxin」と「ええかげんさ」の楽しいリズムに思えた。

言葉に言い表せないケミカルが繋がっていき、好奇心のある人々が街を作る

グッズ2


ここ数年、中野では古いものを大切にしながら、新しい風を与えてくれる面白いお店が増えたと話していると、中村さんが大阪と東京の話を交えてこう続けた。

「薬師あいロード商店街の良さのひとつに、早稲田通りから南側の中野駅側のエリアだと『繁華街』という空気がありますが、北側のあいロードのような人が住んでいる生活圏ということ。もっというと、長く住んでいた大阪の街とすごくよく似ている。中野の人は向こうから声をかけてくれて受け入れてくれる街だということに、お店をオープンしてから改めて気がつき、大阪と変わらないなとありがたい部分でした。日本全国を見渡したら、ノスタルジーという切り口だけでいうと同じような場所はたくさんありますが、廃れているところも多い。あいロードはそういう雰囲気が残りつつも新しいお店が出来ていく。そこには、古いものを切り捨てていくみたいな雰囲気も無い。もしかしたら、そういう場所はあんまり無いのかもしれないと感じます。」

看板2


中村さんの視点から、「生活の延長にある街の魅力」を考えることに続いているのかもしれない。


「中野に住む人は年齢に関係なく思っていた以上に好奇心が強いというか、新しいものが好きというか。お店の前を通る年配の方にも、何となく面白そうだなと思ってもらえているようです。だからこそ、『こういうスタイルなのでこのかたちで楽しんでください』と押し付けるよりは、それぞれの人の楽しいポイントを見つけてもらって楽しんでもらえていいのかなと思う。本を通じて、来てくれる人の面白さがあります。」

Chillaxin’ Book Shopで本と一緒に「なんか良いな」を見つけてみるのも悪くない。きっと、日常の中で発見するほんの少しの「なんか良いな」が、中野というまちの可能性に広がっていく予感がした。

Chillaxin’ Book Shop

所在地:中野区新井1-14-17 1F
営業時間:11時00分~20時00分
定休日:水曜+不定休
Twitter(新規ウインドウで開きます。https://twitter.com/cbs_nakano(外部サイト))
Instagram(新規ウインドウで開きます。https://www.instagram.com/chillaxinbookshop/(外部サイト))

お問い合わせ

このページは区民部 文化振興・多文化共生推進課が担当しています。

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