【まるっと中野】小説「テッパン」の舞台、中野区新井から上高田を散策してみた
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更新日:2024年1月19日
こんにちは。ナカノ観光レポーターの「中野賢二」です。アニメ・小説・コンテンツなど、サブカルチャーの魅力溢れるまち中野について、書き綴っていきたいと思いますので、どうぞお付き合いください。
今日は小説「テッパン」の舞台である中野区新井から上高田を散策したので、体験記としてご紹介したいと思います。
著者は、本作がデビュー作となる上田健次先生です。上田先生は2019年に第1回「日本おいしい小説大賞」に本作を投稿したことがきっかけとなり、デビューしました。私は、知人を通じて本作に巡り合ったのですが、現代から昭和時代にさかのぼり、回想にふけりながら織りなす主人公達の切ない物語に心をうたれました。また、ストーリーももちろん最高に良いのですが、作品中、タイトル通りに"テッパン(鉄板)"料理が登場し、描写が丁寧にされているため、読んでいるだけでお腹がすいてきます(笑)。読了後の心地良さとともに、この散策で、より深く世界観に浸っていただけたらと思います。
西武新宿線の新井薬師前駅からスタート
本作は現代にて、主人公が同窓の友人に会いに行くために、新井薬師前駅から待ち合わせ場所の寿司屋に向かうシーンから始まります。主人公が感じ取るのは、時の流れに伴うまちの変化。様々な店が変わってしまった中、変わらない風景もあり、当時の記憶と照らし合わせながら、目的地を目指すのです。
(新井薬師前駅)
駅前の踏切は、かつては開かずの踏切だったそう。往来する人の数も多く、当時も賑わいを見せていたことでしょう。踏切の反対側にはたくさんの飲食店が立ち並び、グルメ好きなちびナカノさんも興味をそそられています。
商店街のまち並み
踏切を渡らず、北側に進んで間もなく、右手にとても立派な校舎が見えてきます。本作にも登場する東亜学園です。昭和時代にはあったとのことですが、学校のホームページを調べてみると、なんと大正13年創立だそう。校舎こそ新しくなっていますが、当時から変わらずこの地に根ざしているのでしょう。
(東亜学園)
(商店街)
商店街には様々な店が立ち並びます。作品に登場する目的地の寿司屋と精肉店は見つけられませんでしたが、駄菓子屋や、地域に根ざした八百屋など、昭和の残り香を思わせるお店もいくつかあり、ちょっと歩くだけでもレトロな雰囲気を感じとることができます。
舞台は夏期講習の回想へ
現代で同窓たちと語らいながら、舞台は主人公が中学3年生だった昭和時代の夏の回想シーンにうつります。ひょんな経緯で家の近くの上高田地区でなく、中野駅近くの文化センターまで夏期講習に通うことになった主人公。そこで、不良少年と意気投合し時間をともにします。講習が終わると炎天下を避け、文化センター隣の中野区立中央図書館で復習を兼ねて涼むのです。
このシーンの舞台となった文化センターは、中野区もみじ山文化センターのことでしょう。現在は、中野区の生涯学習と文化芸術活動の拠点である複合公共施設「なかのZERO」となっています。
(なかのZERO)
イベントやコンサート、発表会などが一年を通じて開催されている中野区民憩いの場でもあります。歩道も整備され、駅から徒歩7分ほどのアクセスの良さから利便性が高く、私も何度もお世話になっています。
講習が終わると、主人公と不良少年は自動販機前のベンチで、窓の向こうに広がるオレンジ色のフィルター越しのような風景を眺め、紙パックのイチゴミルクを飲みながら語り合います。不良なのに文学少年、テキ屋で仕事をしていることなど、主人公は自分との違いに興味津々。センチメンタルなシーンに、私自身も青春を重ね合わせ、とても印象に残りました。おそらく当時と建物の構造や自動販売機の位置が違うのでしょう。残念ながら窓越しに夕日を見ることはできません。それでも夕暮れ時に主人公が味わったであろう景色を感じることができました。
(自動販売機前のベンチ)
(夕日が沈む中野駅付近の線路)
新井薬師周辺
不良少年が夏期講習を早退したのが気になり、主人公はなんとなく普段と違う道で帰ります。中野通りを新井の交差点で右折をし、サンロードの前を少しいって左折。薬師銀座商店街(現在の薬師あいロード商店街)を通って新井薬師(新井山梅照院薬王寺)につくと、そこには縁日の出店準備をする不良少年がいたのです。差し入れや夏期講習のプリントを手渡しする中で、二人の友情が深まっていく様は、まさに青春そのもの。読んでいてついついにやけてしまいます。
(薬師あいロード商店街)
(新井薬師(新井山梅照院薬王寺))
上高田氷川神社
テキ屋に興味津々な主人公は、不良少年からやきそばをご馳走してもらう約束をします。場所は主人公の家の近所にある上高田氷川神社。手際よくやきそばをつくる不良少年。アツアツの鉄板の上でやきそばをつくる丁寧な描写は、おいしそうな匂いや音まで想像をかきたてます。
(上高田氷川神社)
祭りの日の高揚感は子どもの頃から変わりません。私もちょうどやっていたお祭りに参加し、しばし童心に帰ることができました。
上高田グラウンドにて
物語も終盤。主人公と不良少年の二人は、上高田グラウンド(現在の上高田野球場)で草野球のナイターを見ながら進路や将来について話します。軽食を分け合いながら、家や自分や家族のことを語らいながら、将来の「誓い」を立て、物語は切ない結末へと向かうのです。
(上高田野球場のナイター設備)
おわりに
中野が舞台のなんとも切ない物語の散策、いかがでしたでしょうか。新井薬師前駅から上高田、中野駅周辺まで2時間ほどで散策できました。「テッパン」の舞台をまち歩きして、あなたもおいしい小説の世界に浸ってみませんか。昔ながらの商店や、個性的な飲食店にもぜひ立ち寄ってみてくださいね。
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