情報公開・個人情報保護審査会答申(第5号)

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更新日:2023年8月3日

答申第5号

平成29年1月18日

中野区長殿

中野区情報公開・個人情報保護審査会 

会長 佐藤信行

中野区個人情報の保護に関する条例第33条第3項の規定に基づく諮問について(答申)

平成28年9月21日付け、28中経行第532号による下記の諮問について、別紙のとおり答申します。

中野区個人情報の保護に関する条例に係る審査請求について(諮問)

1 審査会の結論

 実施機関の行った一部開示決定により非開示とされた部分のうち、「嘱託医への協議連絡票」中「協議内容」欄は、これを開示すべきである。

また、本件開示請求に係る個人情報に含まれている嘱託医の氏名について、これを非開示とした実施機関の判断は妥当であるが、その根拠を中野区個人情報の保護に関する条例26条4号としたことは不適切であり、同条2号ウ括弧書きとすべきである。

2 審査請求および審査の経緯

(1)公文書の開示請求

 2016年6月20日、本件の審査請求人(○○○○さん、以下「申立人」という。)は、中野区個人情報の保護に関する条例(以下「条例」という。)22条の規定に基づき、条例の実施機関である中野区長(以下適宜、「実施機関」または「区長」という。)に対して、申立人について中野区職員と嘱託医との間でなされた協議に関し、(ア)嘱託医の住所および氏名、(イ)医学的見地からの内容等の自己情報開示を請求した。

(2)実施機関の決定

 実施機関は、上記開示請求に対し、同年8月19日付けで、本件自己情報が記載されている文書「嘱託医への協議連絡票」(以下「本件文書」という。)の一部を開示する決定(以下「本件一部開示決定」という。)を行うとともに、申立人に通知した。ただし、この文書記載の「協議内容」欄および「回答」欄記載事項並びに嘱託医印影は非開示とされ、墨塗処理されていた。

(3)審査請求

 申立人は、本件一部開示決定を不服として、同年8月23日付けで、条例33条1項に基づき、一部非開示とされた本件自己情報について、開示とされるべき情報であるとして、実施機関に対して審査請求を行った。

(4)当審査会への諮問および審査

 区長は、当審査会に対し、条例33条3項に基づき、同年9月21日付けで申立人の審査請求の審査を諮問した。実施機関からは同年9月14日付けの弁明書が提出され、これに対し申立人は同年9月16日付けで反論書を提出されている。

 その後、当審査会は同年10月17日に、実施機関からの事情聴取を行うとともに、同年11月16日に、申立人による口頭意見陳述を受けた。また当審査会は、審査の過程において、実施機関に本件文書の提出を求め、その提出を受けた。

3 当事者の主張と理由

(1)申立人

 申立人は、2016年9月16日付けの反論書において、本件文書は開示されるべき情報であると主張している。その根拠として、「(一部開示決定)処分の理由として審査請求人に開示されることを想定してしない。とあるが想定していようが、いまいが、やましい所が無ければ、開示すべきである」「また、医師の判断を審査請求人に知らせる義務を負っていない。とあるが、義務があろうが、なかろうが、明治時代ではあるまいし、開示できないのが不思議である。」と主張している。

 また、申立人は、同年11月16日の口頭意見陳述の機会においても、ほぼ同様の主張を行った。

(2)実施機関

 実施機関は、同年8月19日付けの自己情報不開示決定通知書において、「請求の一部を認めます。」とし、その理由として「嘱託医協議は、請求者を直接診断するのではなく、間接的な情報により医師としての所見を伺うもので、そのまま請求者に開示されることを予定していません。当該嘱託医は、氏名・協議内容非開示の意向を示しており、区としては、嘱託医の意見開示の自由・公平性を担保し、嘱託医との信頼関係を維持し、公正又は適正な職務執行を行うため、嘱託医氏名、嘱託医協議の内容及び回答は非開示とします。(条例26条4号)」としている。

 また同年9月14日付けの弁明書において、次の3点をあげている。

 

ア 嘱託医協議は、審査請求人を直接診断するのではなく、間接的な情報により医師としての所見を伺うもので、そのまま審査請求人に開示されることを想定していない。嘱託医と審査請求人との関係は、通常の医師と患者の診療契約関係とは異なり、医師の判断を審査請求人に知らせる義務を負っていない。

イ 審査請求人に本件開示請求部分を開示した場合、協議の真偽や詳細等を確かめるため、嘱託医にアプローチする可能性があり、平穏な社会生活に影響を及ぼし、ひいては、実施機関の公正又は適正な職務執行が著しく妨げられる。

ウ 当該嘱託医も、イの事態を恐れ、嘱託医氏名・協議内容の非開示を求めている。実施機関は、嘱託医との信頼関係を維持し、公正又は適正な執行を行う必要がある。

4 審査会の判断

(1)嘱託医の氏名について

 本件で開示が求められているのは、生活保護法による医療扶助を行うに際して委嘱される嘱託医(「生活保護法による医療扶助運営要領について」(昭和36年9月30日厚生省社会局長通知社発第727号)第2等)の氏名および同嘱託医と実施機関との間の申立人に係る協議内容(回答を含む。)である。

 そこで、まず嘱託医の地位等について検討する。嘱託医は、地方公務員法(昭和25年法律第261号)3条3項3号に規定する特別職の公務員であって、その役割は、上記運営要領において「嘱託医は、査察指導員、地区担当員等からの要請に基づき医療扶助の決定、実施にともなう専門的判断及び必要な助言指導を行なうこと。なお、医療扶助以外の扶助において医学的判断を必要とする場合にも同様とすること。」とされている。したがって、嘱託医がその職務を遂行するに際して作成した文書は、公務員として作成したものであると解される。

 他方、条例26条は、開示請求に係る個人情報に開示請求者以外の者(第三者)を特定し、その者に不利益を及ぼすおそれのあるものが含まれる場合、これを開示すべき情報から除くこととしているが、その例外として「当該第三者が公務員等……である場合において、当該情報がその職務の遂行に係る情報であるときは、当該情報のうち、当該公務員等の職、氏名及び当該職務遂行の内容に係る部分(当該氏名を開示することにより当該公務員等の職務遂行に支障を及ぼすおそれがある場合又は当該公務員等の権利利益を保護するため当該氏名を開示しないことが必要であると認められる場合にあっては、当該公務員等の職及び当該職務遂行の内容に係る部分)」(同条2号ウ)については、開示すべきものとしている。

 そこで、これを本件についてみるならば、嘱託医は、日常的には勤務医または開業医として医療行為に従事しつつ、実施機関からの要請があった場合に、専門的(医学的)判断および必要な助言指導を行うことを職務としており、恒常的に実施機関に勤務している者ではないことが認められる。そこで、その氏名(氏名を表示する印影を含む。)が開示されると、判断および助言指導に係る者からの苦情への予防的配慮等から、専門的(医学的)判断および必要な助言指導を行うに際して、本来考慮すべきではない余事が影響を与える可能性が認められる。このことは、上記2号ウ括弧書きの「当該氏名を開示することにより当該公務員等の職務遂行に支障を及ぼすおそれがある場合又は当該公務員等の権利利益を保護するため当該氏名を開示しないことが必要であると認められる場合」に該当することから、本件においても、その嘱託医の氏名を非開示とすることが認められる。

 なお、実施機関は、嘱託医氏名の非開示の根拠として条例26条4号を挙げているが、公務員たる嘱託医の氏名の取扱いについては、それ自体を特定して直接に規律する上記別規定(2号ウ)があるのであるから、同号による非開示が認められないときに限り、例外的に他の根拠を検討すべきである。よって、非開示の条文上の根拠は改められるべきである。

(2)嘱託医の住所について

 申立人は嘱託医の住所についても開示を求めている。当審査会において、実施機関から提出された本件文書を確認したところ、本件文書には嘱託医の住所は記載されていないが、仮に記載されていたとしても、これを開示するならば、実質的に嘱託医の氏名を開示したことと同一の意味が生じることから、上記(1)と同一の理由により、これを非開示とすることが認められる。

(3)医学的見地からの内容等について

 当審査会において、実施機関から提出された本件文書を確認したところ、本件文書のうち医学的見地からの内容等に係る部分は、実施機関から嘱託医へ協議を求める部分(「協議内容」欄。以下「照会部分」ということがある。)と嘱託医からの意見(「回答」欄。以下「回答部分」ということがある。)の2つから構成されている。

 実施機関は、当初の不開示決定通知書において「嘱託医の意見開示の自由・公平性を担保し、嘱託医との信頼関係を維持し、公正又は適正な職務執行を行うため」との理由を示して、条例26条4号に基づき、照会部分と回答部分のいずれについても非開示としている。

 しかしながら、2つの部分のうち照会部分については、嘱託医の判断が含まれているものではないから、仮にこれが開示されたとしても、直ちに嘱託医の意見開示の自由・公平性が損なわれるとはいえない。条例26条4号は「……開示することにより実施機関の公正又は適正な職務執行が著しく妨げられるもの」について不開示とすることを認めているが、ここに「著しく」という要件が加重されていることに鑑みると、そもそも申立人にとってみれば、自己に係る実施機関の判断がどのような要素の検討に基づいてなされているかを示すものである本件文書について、その開示を受ける申立人の利益を制限してまでも、照会部分を非開示とする理由は十分に示されているとはいえない。

 これに対して、嘱託医による回答部分は、これが開示されると、上記(1)で述べたところと同様に、本来考慮すべきではない余事が嘱託医の専門的(医学的)判断および必要な助言指導に影響を与える可能性が認められるから、なお非開示とすることが認められる。

 以上から、当審査会は、実施機関が非開示とした部分のうち、「嘱託医への協議連絡票」中「協議内容」欄は開示すべきものと判断する。

中野区情報公開・個人情報保護審査会 

委員 岸 本 有 巨

委員 熊 田 裕 之

委員 小 池 知 子

委員 幸 田 雅 治

委員 佐 藤 信 行(会長)

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