情報公開・個人情報保護審査会答申(第79号)

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更新日:2025年2月12日

答申第79号

令和7年1月27日

中 野 区 長 様

中野区情報公開・個人情報保護審査会 

会長 佐藤 信行 


 

中野区区政情報の公開に関する条例第13条第3項の規定に基づく諮問について(答申)


 
 
 下記に掲げる中野区区政情報の公開に関する条例に係る審査請求について(諮問)について、別紙のとおり答申します。


 令和5年10月20日付け5中総総第2166号

第1 審査会の結論

 本件審査請求は、棄却すべきである。

第2 審査請求及び審査の経緯

1 区政情報公開請求
 審査請求人は、実施機関である中野区長(以下適宜、「実施機関」又は「区長」という。)に対して、中野区区政情報の公開に関する条例(以下、「条例」という。)第7条の規定に基づき、令和4年12月17日付けで、区政情報公開請求(以下「本件請求」という。)を行った。請求情報の内容は、審査請求人が別に行った情報公開請求に対して実施機関が行った、中野区平和資料展示室内の『中野区の平和への取組:中野のまちと刑務所』パネル(以下、本答申において「当該展示パネル」と呼称する。)作成につき、実施機関と委託事業者との間において交わされた当該展示パネル内容の意思決定過程がわかる文書26点の公開処分(令和4年11月25日付け4中企企第1172号)において公開された「中野区平和資料展示室設計業務委託の仕様書 5 業務内容(2)その他(3)」中、「区の指示により、議事録作成、打合せ資料等を併せて作成すること」と言及されている議事録、打合せ資料等が公開されていない場合は公開を、あるいは不存在である場合は不存在決定を求めたものである。

2 実施機関の決定
 実施機関は、令和5年2月15日付け4中企企第1525号において公開決定(全部公開)を行い、審査請求人の希望に応じて当該文書の写しを光ディスクに記録する形式で、
 200918中野 打ち合わせ記録簿(第1回).pdf
 201006中野 打ち合わせ記録簿(第2回).pdf
 201013中野 打ち合わせ記録簿(第3回).pdf
の3点の電子ファイルにより請求人に交付した。
 その後、実施機関は令和5年6月26日付け5中企企第411号において、上記令和5年2月15日付け4中企企第1525号公開決定を、条例第8条第1項第1号(個人情報保護)を理由として、事業者の担当者氏名をマスキングした形での一部公開決定に変更し、審査請求人に対しても上記公開文書から事業者側担当者の個人情報該当部分にマスキング処理を施した本件写しを、変更前の公開情報が記録された光ディスクと交換することを審査請求人に求めたものである。

3 審査請求
 審査請求人は、令和5年2月27日付けで、上記区政情報公開決定に対して、当該文書の写しは真正に成立した文書の写しではなく、偽造された公文書であり、実施機関に対して「真正な文書の公開を実施する」旨の裁決を求めるとの本件審査請求を行った。

4 弁明書及び反論書の提出
 実施機関は、令和5年6月21日付けで、「「本件審査請求を棄却する。」との裁決を求める。」とする弁明書を提出した。これに対し、審査請求人は令和5年8月2日付け反論書を提出した(この中で、審査請求人は当該文書の写しを「本件写し」と呼称しており、以下本答申においても「本件写し」と呼称する。)。反論書中、改めて本件写しが偽造であり、「実施機関は、真正な文書の公開を実施」し、また、「万が一それを実施できないというなら、公文書等毀棄罪(刑法258条)にも問うべきである。」旨主張した。

5 当審査会への諮問
 区長は、令和5年10月20日付けで条例第13条第3項に基づき、当審査会に対し、本件審査請求に係る諮問を行った。

6 意見の陳述
 当審査会は、中野区情報公開・個人情報保護審査会条例第9条第1項の規定に基づき、令和5年11月27日に実施機関から意見聴取を行い、令和5年12月11日に審査請求人による口頭意見陳述を実施した。

第3 審査請求人及び実施機関の主張の整理

1 審査請求人の主張の要旨
 審査請求人は、実施機関に対し、本件写しを偽造と断じ、「真正な文書の公開を実施する」旨を主張する。その理由として、「印章又は署名を欠くこと」
「PDFのメタデータから変造・偽造が推定されること」を主張する。

 (1) 印章又は署名を欠くことについて
 審査請求人は、「真正な打ち合わせ記録簿は、発注者、受注者の双方が内容を確認し、押印して成立する」が、本件処分において公開された、
 200918中野 打ち合わせ記録簿(第1回).pdf
 201006中野 打ち合わせ記録簿(第2回).pdf
 201013中野 打ち合わせ記録簿(第3回).pdf
には、全て印影が無く、真正に成立した打ち合わせ記録簿ではないと主張する。併せて、本件写しの文字フォントや色の使用の不統一も、文書の真正性を疑わせるものである旨を主張する。

 (2) PDFのメタデータから変造・偽造が推定されることについて
 実施機関が審査請求人に光ディスクで交付した、
 200918中野 打ち合わせ記録簿(第1回).pdf
 201006中野 打ち合わせ記録簿(第2回).pdf
 201013中野 打ち合わせ記録簿(第3回).pdf
の各本件写し電子ファイルに付随して記録されているメタデータは、通常は保存の際に自動的に変更される変更日時(Modified)を除き、明示的に書き換えない限りは、原電子ファイルを新規作成した時点の内容が保たれることを前提として、(第1回)ファイルのメタデータと、(第2回)及び(第3回)分のファイルのメタデータを比較したところ、3つの本件写しファイルすべてで左上隅の欄が「第1回」となる誤記があること、また、ファイル生成の作業を行ったアプリケーションや、ファイルの作成日時(Created)や他のメタデータの記載が(第1回)のものと(第2回)(第3回)のものが異なることから、審査請求人は当該光ディスクに保存され交付された本件写しファイルが、紙面の形態で保存されている真正な記録簿原本の内容を実施機関において変造・偽造した電子ファイルを交付したものである旨主張する。

 また、反論書において審査請求人は、「第1 本件写しが虚偽の打合せ記録簿に基づくこと」「第2 公開すべきであった真正な文書が保管されていたこと」から、改めて「実施機関は、真正な文書の公開を実施」し、また、「万が一それを実施できないというなら、公文書等毀棄罪(刑法258条)にも問うべきである。」旨を主張する。さらに、反論書提出後に提出された意見書及び当審査会における口頭意見陳述において、

 (3) 令和5年6月26日付け5中企企第411号の証明妨害性について
当初の全部公開決定(令和5年2月15日付け4中企企第1525号)を変更し、一部公開決定に変更し、審査請求人に対し当初の公開文書を本件写しと交換させた令和5年6月26日付け5中企企第411号は証明妨害である旨を主張する。

 (4) 実施機関を構成する公務員の政治的行為の隠蔽について
 審査請求人は、当該展示パネルの内容に関する独自の調査研究に基づき、実施機関が当該展示パネルに特定の人物を掲載することに積極的に関与し、一方こういった関与が地方公務員法第36条第2項第4号で禁止される公務員の政治的行為であり、本件審査請求を巡る一連の文書偽造は、実施機関を構成する公務員の政治的行為を隠蔽するために行われたものである旨を主張する。

 (5) 公印の冒用について
 本件に関わる一連の手続きのうち、4つの処分の通知書に捺された公印が、区長印ではなく、中野区企画部長印(令和5年3月7日付け4中企企第1596号)及び中野区長代理印(残りの3通知書)であり、これを公印の冒用と認め、実施機関がする本件に関わる情報公開についての手続全般に不正の疑いがあり、地方公務員法が禁止する政治的行為の隠蔽に管理職を含む複数の公務員が携わったことが判明した旨を主張する。

2 実施機関の主張の要旨
 実施機関は、本件処分により公開した本件写しにつき、実施機関において虚偽作成、変造した事実はなく、作成事業者から提出されたものをそのままPDF化したものであり、本件審査請求についても棄却の裁決を求めている。

第4 審査会の判断

1 本件審査請求について
 審査請求人は、当該展示パネルの内容及びその制作過程に関する独自調査とそれに基づく推論に基づき、実施機関は特定団体の宗教的・政治的立場から、史実に基づかない記載が当該展示パネルに施された、とする存念を持つに至った。本件審査請求においては、令和5年2月15日付け4中企企第1525号及び令和5年6月26日付け5中企企第411号の処分において公開された本件写しは、当該展示パネルの制作過程を真正に記録したものとはいえず、上記の存念及び本件公開請求及び審査請求に関係する一連の通知や公開文書(本件写しを含む)の記載内容やメタデータの不統一、公印捺印の誤りに照らして、本件写しは実施機関が改ざんまたは偽造したものであり、本件に関する真正な記録文書(パネル制作委託事業者と実施機関との間で交わされた打ち合わせ記録簿)の公開を求めているものである。
これに対し、実施機関は本件写しこそが請求情報に該当する真正な文書であると主張している。

2 本件処分について
 当審査会は本件写しを実施機関から徴して披見し、加えて1回の対面による実施機関聴取を行い、また審査請求人の口頭意見陳述も受け、状況を確認した。本答申第3「1 審査請求人の主張の要旨」中の各項目につき、本件処分の妥当性に関するものについて当審査会の見解を述べる。

 (1) 印章又は署名を欠くことについて
 本件写しは、3点ともに「打ち合わせ記録簿」というタイトルの付された同一の様式の上に作成されており、この様式は「発注者・印(うち監督職員2欄・空白欄2欄)」及び「受注者・印(うち主任技術者1欄・空欄1欄)」の押印欄が用意されたものである。その意味においては、「打ち合わせ記録簿」を作成する場合には、その内容が確定した際には、実施機関と事業者との間で内容確認のための押印または署名が施されることを想定した様式として作成されている。
 しかし、実施機関は、「本件処分により公開した本件写しにつき、実施機関において虚偽作成、変造した事実はなく、作成事業者から様式を含め提出されたものを、そのままPDF化したものである」と主張しており、実施機関聴取においても、実施機関において、この方法及び内容が事業者にパネル等の制作を依頼する際に行う一般的かつ標準的な記録の取り方である旨を確認した。
 条例第2条第1項第2号では、公開請求の対象となる区政情報を「実施機関の職員が職務上作成し、又は入手した情報で、当該実施機関の職員が組織的に用いるものとして、文書、図画、写真、フィルム、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られた記録をいう。以下同じ。)その他の記録媒体により保管しているものをいう。」と定めており、区政情報として真正に文書が成立するための要件として、実施機関における職務上作成(入手)性及び組織共用性を以て足りるものと解される。審査請求人が反論書の中で述べるような「打合せ記録簿の所定欄に押印する方式は、私見では、参与者全員が本人の意思に基づき各々の印影を顕出して内容を成立させる趣旨であり、2通作成して発注者受注者各1通を保管するところまでが通常想定され期待される」といった厳格な文書関与者の認証手順を必ずしも経なければならないものではない。むしろこのような厳格な文書認証手順を経なければ区政情報と認められないとすれば、多くの情報公開請求の対象文書が不存在として公開されなくなるという、条例の立法趣旨に著しく反する事態を招来することとなり、この見解を採用することはできない。
 また、実施機関は弁明書において、「印章及び署名がないのは、提出されたものに問題が無いため、当該文書に押印等を求めることを担当者が失念していたのみであり、内容は確定していたものである。」としており、審査請求人はこれを以て、実施機関が本件写しの原本の作成の際に「所定の方式及び趣旨に反したと認めている。」と述べているが、実施機関聴取の結果、むしろ実態は、打ち合わせの記録の作成自体を当該パネル制作事業者にいわば丸投げしたものであり、また契約書のように実施機関とパネル制作事業者の利益相反が際立つような交渉性の高い文書でも無く、単に記録として「徴した」ものと理解される。(もっとも、弁明書において実施機関が述べるように、本来必要な押印を担当者が失念していたのであるならば、それは不注意な状態を漫然と継続していたことになり、改善されなければならない。)
 以上の諸点から、本件写し及びその原本において印章又は署名を欠くことは、実施機関の実務的運用上問題なしとはしないが、全く不自然な、理解不能な運用であるともいえず、区政情報すなわち本件においてはこれら打ち合わせ記録簿の真正性を否定する事実とまでは認められない。

 (2) PDFのメタデータから変造・偽造が推定されることについて
 当審査会は、令和5年12月11日の口頭意見陳述の際に、審査請求人より当初の全部公開決定(令和5年2月15日付け4中企企第1525号公開決定)によって実施機関から審査請求人に交付された光ディスク(本件写しファイルが全て記録されたもの)の提出を受け、これのメタデータを含む内容を精査した。
 本件写しファイルのメタデータのうち、「200918中野 打ち合わせ記録簿(第1回).pdf」は、Titleに「文字数と行数を指定テンプレート」の、Authorには「技術1部」の記載があるが、他の2ファイル「201006中野 打ち合わせ記録簿(第2回).pdf」「201013中野 打ち合わせ記録簿(第3回).pdf」にはその記載がない。また、(第1回)のファイルのみ、Createdに2020/9/24 09時59分:12のタイムスタンプが記録されており、他のファイルはいずれも2023/2/14の17時22分以降の近接した時刻が記録されている。Modifiedには3点何れも2023/2/14 18時2分以降の近接した時刻が記録されている。また、Applicationには(第1回)のファイルのみ、「Word用Acrobat PDFMaker20」の記載がある。PDF Producerには(第1回)のファイルのみ「Adobe PDF Library20.12.75」の記載があり、他の2ファイルには「JUST Note」の記載がある。
 そこで当審査会において、実施機関が事業者から受信したファイルについて確認したところ、(第1回)のファイルについては、WordファイルではなくPDFファイルを受信していたことが確認された。
 以上を総合すると、(第1回)のファイルのみ、事業者の事業所に所在する端末においてWordより出力したPDFファイルが実施機関に送付されものであることを示し、一方(第2回) (第3回)のファイルについては事業者から原Wordファイルそのものが送付され、実施機関においてJUST Noteを用いて原Wordファイルの内容をPDFファイル形式で出力したことを示していると認めることができる。PDFを生成するアプリケーションであるAcrobat(WordやJUST Noteに組み込まれ、連動している。)は、ファイル形式を変換して出力した際には、Createdに変換(PDFファイル生成)時点のタイムスタンプが記録されるが、以上の経緯に鑑みれば、メタデータ記載内容の各ファイル間での偏差が、審査請求人の指摘する実施機関による本件写しファイルの変造・偽造を示す証跡であるとは認められない。

3 審査請求人のその余の主張について
 当審査会に対する審査請求人の意見書に関して、実施機関に対して上記聴取に加え、2回の文書による資料提出(公印関係)を求め、また先述の審査請求人の口頭意見陳述も受け、状況を確認した。本答申第3「1 審査請求人の主張の要旨」中、反論書に関する各項目につき、当審査会の見解を述べる。

 (1) (3) 令和5年6月26日付け5中企企第411号の証明妨害性について
 審査請求人は、当初の全部公開決定(令和5年2月15日付け4中企企第1525号)を変更し、一部公開決定に変更し、審査請求人に対し当初の公開文書を本件写しと交換させた令和5年6月26日付け5中企企第411号は証明妨害である旨を主張するが、当初の全部公開決定が条例第8条第1項第1号(実施機関は、公開請求があつたときは、次に掲げる情報を除き、請求情報を公開しなければならない。(1)個人情報又は特定の個人を識別することはできないが、公開することで、個人の権利利益を害するおそれがあるもの。)の規定に違反して行われたものであり、当該一部公開決定への処分変更は、これを訂正したものである。
 審査請求人は、この変更処分に基づいて、当初の全部公開決定により交付された光ディスク(及びその中に保存された電子ファイル)を実施機関に返納し、本件写しを改めて交付されることで、当審査会が実施し得るインカメラ審理の際に、メタデータによる本件写しと原本データの同一性の確認が不可能になると考え、以て実施機関が、当審査会の行うであろうインカメラ審理を妨害したと主張する。当審査会では、当初の全部公開決定の際に審査請求人に交付された光ディスクを審査請求人から提出を受けて披見し、上記2(2)の通り本件写しファイルの変造・偽造は行われていないと判断した。
 上記の事情及び本件を巡る諸事情を勘案し、令和5年6月26日付け5中企企第411号が証明妨害であるとは認められない。 

 (2) (4) 実施機関を構成する公務員の政治的行為の隠蔽について
 当該展示パネル中、かつて中野に立地していた刑務所(特に本件請求との関わりにおいては豊多摩刑務所(1922~1957))の「主な収監者」項目に、当時の宗教法人創価学会の指導者戸田城聖氏(故人)が記載されているが、審査請求人の独自調査とそれに基づく推論によれば、戸田氏が収監されていたのは巣鴨に所在していた東京拘置所であり、豊多摩刑務所に収監されていたとする説は、同法人の次代指導者である池田大作氏(故人)の著作において唱えられたものであり、史実の誤解または改ざんであるとされる。審査請求人は、同法人ではこの誤った事実認識に基づいて、豊多摩刑務所とその遺跡が聖地のような存在となり、同法人の影響または要望を受けた実施機関が、当該展示パネルに戸田氏を掲載することに積極的に関与したと推測している。更に、こういった関与が地方公務員法第36条第2項第4号で禁止される公務員の政治的行為であり、本件審査請求を巡る一連の文書偽造は、実施機関を構成する公務員の政治的行為を隠蔽するために行われたものである旨を主張する。
 実施機関に聴取したところ、当該パネル内容の調査検討についても、当該パネル制作事業者にいわば丸投げしたものであり、実施機関において、その内容について何らかの意図を持って当該パネル制作事業者に対して指示や働きかけを行ったとは認められない。また、本件写しの内容を披見し、その内容と上記の実施機関聴取の内容と比較検討した結果、不自然な点は見当たらず、この限りにおいて、実施機関が政治的な意図を持って当該パネルに関わったとは認められない。併せて本件写しについても、当該パネル制作事業者から実施機関に対する報告的な打ち合わせの内容が記録されているものと認められる。
 尚、当審査会はその職掌上、本件においても情報公開条例の解釈を伴う案件として必要な事実認定と法解釈を行う機関であり、その職掌を超え、上記内容以上の実質的な実施機関の業務監査や区政調査、更には歴史的事実に対する学問的あるいはジャーナリスティックな探求とそれに基づく見解の報告や論評を行うことはできない。

 (3) (5) 公印の冒用について
 本件に関わる一連の手続きのうち、
令和5年3月7日付け4中企企第1596号(決定通知期間延長通知書)
令和5年6月23日付け5中企企第309号(決定通知期間延長通知書)
令和5年6月26日付け5中企企第411号(公開処分変更通知)
令和5年7月28日付け5中企企第523号(区政情報不存在通知書)
 各処分の通知書に捺された公印が、区長印ではなく、中野区企画部長印(令和5年3月7日付け4中企企第1596号)及び中野区長代理印(残りの3通知書)であり、これを公印の冒用と認め、「実施機関がする情報公開についての疑いは補強され、地方公務員法が禁止する政治的行為の隠蔽に携わった職員は係長一人ではなく部長級を含む複数であることが判明した」旨を主張する。
 実施機関に対して2回にわたり文書による資料提出(公印関係)を求めたところ、いずれの文書についても、「本来、中野区専用区長印であるべきところ、当時担当した職員が押印時に公印を取り違え押印したものである。 また、当時、中野区企画部長印、中野区専用区長印及び中野区長代理印を同じ印箱で保管しており、公印の取り違えが起こってしまったものである。なお、現在は各公印の持ち手部分に公印の名称及び番号を明記し、取り違えが起こらないよう管理している。」との回答を得た。
 本来押されるべき公印を担当者が取り違えたという不注意は、決して軽視されるべきではないが、これら公印の取り違えの結果、その後の審査請求人の行う審査請求その他一連の関連手続きにおいて、実施機関が、正しい公印でないことを理由として処分及び通知の無効や不存在を主張したわけではない。この事実を踏まえると、実施機関がよしんば公印を実際に冒用したとしても、関連する同区の他の機関がチェックする可能性もあり、また審査請求人のような処分対象者を通じて区の外部にも公印冒用や何らかの情報隠蔽の疑いがあるとして広く区民や一般社会の目に晒されることとなり、実施機関においてそのようなリスクを冒してまで、公印冒用により公開対象文書の公開を妨害することや、本来存在する区政情報をあたかも不存在のものとして取り扱うとは、考えにくい。
 もちろん、上記4件の処分に渉って、公印を取り違え続けたことは、実施機関ひいては区の機関全ての発行する公文書の信頼性を重く損なう事態といえよう。しかし、以上の諸点から、上記4件の処分の通知書において、職員の不注意により公印の取り違えが発生したことが認められ、実施機関の実務的運用上大きな問題であるとはいえるが、現在は対策も取られており、実質的な問題は解決されていると認められる。審査請求人が主張するような、公印の冒用と管理職を含む関係職員による区政情報の隠蔽があったとは認められない。

第5 結論

 以上のことから、上記第1記載のとおり判断する。

付言

 実施機関においては、

 甲、当初の全部公開決定(令和5年2月15日付け4中企企第1525号)が条例第8条第1項第1号に違反していたこと。(また、これに基づく一部公開決定(令和5年6月26日付け5中企企第411号)への処分変更がおこなわれたこと。)
 乙、本件写しに関して、印章又は署名を欠くことにつき、弁明書では必要な押印を担当者が失念していたと述べ、実施機関聴取においては実施機関において事業者との作業打合せの際に徴する記録につき一般的・標準的な取り扱いであると述べるなど、そもそも打合せ記録について区政情報としての考え方や管理体制が徹底しておらず、不備が見られること。
 丙、本件審査請求に関わる4件の処分通知書において、捺印されるべき公印は、本来、中野区専用区長印であるべきところ、当時担当した職員が押印時に公印を取り違え押印したこと。

 以上の3点について、情報公開制度と、その背後にある区政の適正な運用管理に対して認識が甘く、その結果としてこのような結果を惹起していることにつき猛省を促したい。
 これら一つ一つのトラブルは、それら自体が本件審査請求において、実施機関の責任を問う方向に結論を大きく導くような問題とは認められなかったが、一住民(審査請求人)の審査請求に対して、これだけ連続的に、職員の不注意に基づく区政情報管理及び情報公開手続に関する失敗を重ねてしまったことに影響されて、審査請求人がその背後に大きな区政に関する不正や隠蔽があるという存念を抱いてしまったとしても無理はない。
 本件答申は、実施機関の主張を認めたものではあるが、これが公表されることにより、当区の区政情報管理及び情報公開手続に対して、住民が不安を抱くことは避けられないであろう。実施機関はもちろん、当区を挙げて、再度日常的な業務における区政情報管理体制の再点検や情報公開手続についての理解の深化及び適切な実践を進めて頂きたい。

中野区情報公開・個人情報保護審査会 

委員 岩 隈 道 洋 

委員 岸 本 有 巨 

委員 小 池 知 子 

委員 神 山 静 香 

委員 佐 藤 信 行(会長)


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