情報公開・個人情報保護審査会答申(第2号)

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更新日:2023年8月3日

答申第2号

平成28年10月17日

中野区長殿

中野区情報公開・個人情報保護審査会 

会長佐藤信行

中野区個人情報の保護に関する条例第33条第3項の規定に基づく諮問について(答申)

平成27年8月31日付け、27中経経第1755号による下記の諮問について、別紙のとおり答申します。

 なお、本諮問に関する審査については、中野区情報公開・個人情報保護審査会条例(平成28年中野区条例第41号)附則第5条の規定により、改正する前の中野区個人情報の保護に関する条例第33条第3項に基づき中野区個人情報保護審査会に諮問され、当該審査会(委員:兼子仁、岸本有巨、幸田雅治、佐藤信行、府川繭子)で実質的審査を行い、本答申とほぼ同一内容の答申案策定までが行われたものでありました。

 しかしながら、当該審査会の任期である平成28年8月末日に調査審議の手続が終了しなかったため、本諮問については、中野区情報公開・個人情報保護審査会条例附則第6条第1項の規定により、中野区情報公開・個人情報保護審査会にされた諮問とみなし、中野区個人情報保護審査会がした調査審議の手続は、中野区情報公開・個人情報保護審査会がした調査審議の手続とされることから、中野区情報公開・個人情報保護審査会が引継ぎ、本件答申に至ったものでありますので、この点申し添えます。

中野区個人情報の保護に関する条例に係る異議申立てについて(諮問)

1 審査会の結論

 「相談援助台帳」(2014年10月3日から2015年1月13日)に記載された自己情報につき、その一部を不開示とした決定について、区が不開示とすべきとしている部分については、別表「当審査会がなお不開示とする部分」欄に掲げる部分を除き開示すべきである。

2 不服申立て及び審査の経緯

(1)異議申立人(○○○○さん。以下「申立人」という。)は、2015年6月15日付けで、中野区個人情報の保護に関する条例(以下「条例」という。)22条1項に基づき、申立人の母親(以下「母親」という。)の病状及び支援記録等(2014年10月から2015年1月まで及び同年1月10日以降)に関して、実施機関である中野区長(以下適宜、「実施機関」または「区長」という。)に対して自己情報開示請求を行った。

これに対し、実施機関は、2015年6月30日付けで、「相談援助台帳」(2014年10月3日から2015年1月13日)の内、「第三者に係る記録の部分」及び「団体との連絡調整に係る記録部分及び団体名に関する記録部分」を除いた一部開示を決定する「自己情報不開示等決定通知書」を申立人に通知した。

申立人は同決定につき、同年8月20日付けで区長に異議申立てをし、区長が同年8月31日付けで当審査会に不服審査の諮問をしたのが、本件である。

(2)当審査会の審査手続において、実施機関から同年10月2日付けで理由説明書が提出され、これに対し、申立人は、同年11月9日付けで意見書を提出した。

加えて、当審査会は、2015年12月16日及び2016年6月14日に実施機関から事情聴取を行ったが、申立人からの口頭意見陳述は申立人が希望しなかったため実施しなかった。

3 審査会の判断

(1)実施機関及び申立人の主張の整理

 実施機関の主張によると、本件決定により申立人から開示請求のあった自己情報を一部開示とした理由は、次のとおりである(理由説明書、実施機関からの事情聴取)。

 すなわち、不開示とされた「第三者に係る記録の部分」は、法令等により誰でも閲覧できる情報や一般に公開されている情報ではなく、開示することにより第三者である特定の個人が識別され、当該第三者に不利益を及ぼすおそれがある(条例26条2号)。また、不開示とされた「団体との連絡調整に係る記録部分及び団体名に関する記録部分」に記載されている「相談・支援業務」及び「指導調整事務」が「取締り、調査、交渉、争訟等」に含まれ、当該情報を開示することにより、介護サービス事業所を含む関係機関との信頼関係が破壊され、業務の公正または適正な職務執行が著しく妨げられる(条例26条4号)。

 これに対して、申立人は、上記の実施機関の主張を争うとともに、特に、申立人が開示を求めている情報は、既に申立人が認識している、あるいは、開示されても第三者に不利益を及ぼさないものが含まれているにも関わらず、これらを幅広く不開示とされていると主張する(異議申立書、意見書)。

(2)死者の情報について

 条例22条1項は、区民は、実施機関が保管している自己を本人とする個人情報(以下「自己情報」という。)について、実施機関に対し、その開示を請求することができると定め、個人情報の保護に関する法律や行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律と異なり、「死者」も個人情報保護対象に含まれると解釈されている。

 もっとも、区民が開示請求できるのは自己情報に限定されていることから、死者の個人情報が無限定に開示対象となるものではなく、死者の個人情報が請求者と密接に関係するもので請求者自身の個人情報と考えられる場合、あるいは、死者に関する情報に請求者本人の情報が含まれている場合にのみ死者の情報の開示請求ができると解するべきである。

(3)申立人本人に係る個人情報該当性について

ア 本件請求の対象とすべき情報について

 本件開示請求情報は、上記2の通り、母親の病状及び支援記録等(2014年10月から2015年1月まで及び同年1月10日以降)に関する相談援助台帳の記録である。

イ 申立人本人に係る個人情報該当性について

 上記相談援助台帳に記載された個人情報について当審査会が確認したところ、その記載内容は母親の病状・介護状況・介護方針等に関して、家族や関係機関等から聞き取った内容が中心となっており、不開示部分に申立人自身の発言等の情報が含まれていないことから、本件では、既に死亡している母親の個人情報の開示が問題となる。

 申立人が意見書において指摘のとおり、「母の病状や支援記録等、介護に関する記録等は、診療や介護において何らかの過誤がなかったか等を判断するための情報」との側面がある。母親の死亡が診療や介護等の不備や過誤に起因するものであれば、申立人が母親の相続人として損害賠償請求権を相続するだけでなく、遺族として個別に慰謝料請求もなしうる地位にあるから、その請求権の有無を正しく理解するに必要な限りにおいて死者である母親の個人情報は申立人自身の個人情報であると認められる。

 よって、母親の病状や介護経過に関する記録など、申立人本人が上記請求権の存否の判断に必要な範囲の情報は自己情報の開示対象とすべきである。

(4)本件決定に関する検討

ア 第三者に係る記録の部分

 自己情報開示請求権は、自己情報コントロール権を住民に保障するものであり、個人に関する情報は原則として本人に開示されなくてはならない(条例26条)。

 しかし、この権利も絶対的なものではなく、条例26条各号は例外として本人不開示にできる場合を定めている。条例26条2号において、第三者のプライバシーや生活の平穏等の保護との関係によって、合理的な制約を受けることを定めている。

 本件では、相談援助台帳には母親の介護に関わる第三者から得た情報の記載があり、これらは申立人が母親の診療や介護サービスに不備ないし過誤があったか否かを判断するに必要な情報といえる。

 一方で、第三者の個人名、身分、職業はもとより、その記載されている第三者から得た情報の内容によっては、申立人が当該第三者に対して問い合わせをすることなどにより、第三者の生活の平穏が害されるおそれのある部分もある。

 よって、この部分については、条例26条2号に該当するものとして、本人不開示が妥当であるが、それ以外の部分は開示すべきである。

 なお、申立人は、第三者の個人名は既知であると主張するが、申立人の発言内容との関係で個人名を憶測できるにすぎず、また、法令規定等により申立人が知ることが予定されている情報とはいえない。

イ 団体との連絡調整に係る記録部分及び団体名に関する記録の部分

 本決定では、団体との連絡調整に係る記録部分及び団体名に関する記録部分について、開示により「相談・支援業務の公正又は適正な職務執行が著しく妨げられるため」として不開示とされている。

 まず、「取締り、調査、交渉、争訟等に関するもの」(条例26条4号)は、実施機関の公正又は適正な職務執行が著しく妨げられるものの例示に過ぎず、本件の「相談・支援業務」も、これに含まれると解する。

 そして、団体との連絡調整に係る記録部分及び団体名に関する記録は、母親の病状、介護の支援状況や方針など多岐にわたり、申立人が開示を求める医療・介護サービスが適切に実施されたか否かを判断する上で必要な情報が含まれている。

 この点、実施機関は、不開示とした団体との連絡調整に係る記録部分及び団体名に関する記録を開示したのでは、区と関係団体等との信頼関係が損なわれると主張するが、条例は、できるだけ本人に自己情報を開示することを原則としているのであって、例外は厳密に検討すべきである。

 団体との連絡調整に係る記録部分及び団体名に関する記録の内、介護方針や介護施設の選定に関する意見や評価など、医療機関を含めた関係団体等との間で率直な意見交換が期待され、第三者に開示されることを前提としていない部分がある。仮に、そのような部分が開示されるのであれば、行政との信頼関係が害されるおそれとともに、率直な意見交換が阻害されて相談・支援業務の適正な職務執行が著しく妨げられる可能性が否定できない。そのような観点から、医療機関・医師名などの特定の個人や団体を識別させる部分についても、申立人が既知の情報もあるものの、開示された記載内容との関係で、直接、申立人が医療機関等に対し問い合わせる可能性も考慮して不開示とすべき部分があるといえる。そのため、これらの部分については、条例26条4号に該当するものとして、本人不開示が妥当である。

 一方で、団体との連絡調整に係る記録部分及び団体名に関する記録の内、母親の通院・転院などの客観的記録、母親を診察した医師の診断結果、提供されている介護サービスの状況や方針などに関する事項は、一般に介護保険被保険者である母親が認識し、あるいは提供されている情報と考えられ、これらを開示したからといって、特に区と医療機関を含む関係団体等との信頼関係が損なわれるとはいえない。

 よって、この部分については開示すべきである。

 なお、今回の判断にあたって、当審査会は、本件の対象となった個人情報が特に取扱いに留意すべきものであったことから、いわゆるインカメラ審理によって、「相談援助台帳」を精査の上、個別具体的な判断をした。

 

4 結論

 以上により、「1 審査会の結論」のとおり、判断する。

中野区情報公開・個人情報保護審査会 

委員 岸 本 有 巨

委員 熊 田 裕 之

委員 小 池 知 子

委員 幸 田 雅 治

委員 佐 藤 信 行(会長)

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