情報公開・個人情報保護審査会答申(第35号)
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更新日:2023年8月3日
答申第35号
令和2年10月15日
中 野 区 長 様
中野区情報公開・個人情報保護審査会
会長 佐藤 信行
中野区区政情報の公開に関する条例第13条第3項の規定に基づく諮問について(答申)
下記に掲げる中野区区政情報の公開に関する条例に係る審査請求について(諮問)について、別紙のとおり答申します。
記
・令和2年2月17日付け31中総総第4309号
第1 審査会の結論
実施機関は、本件審査請求の対象となった決定において公開した情報に加えて、本件審査請求の対象である事業に関し、実施機関が東京都から受信した電子メールも公開すべきである。
第2 審査請求及び審査の経緯
1 区政情報の公開請求
審査請求人は、中野区区政情報の公開に関する条例(以下「条例」という。)第7条の規定に基づき、実施機関である中野区長(以下適宜、「区長」又は「実施機関」という。)に対して、令和元年5月31日付けで区政情報公開請求(以下「本件請求」という。)を行った。
請求情報の内容は、「平成29年以降、国土交通省社会資本総合整備事業(以下「本件事業」という。)の申請に係り中野区が作成し、または取得した文書の一切。例えば、庁内での打合せ記録簿、国土交通省(以下「国」という。)に提出した整備計画、事前評価の結果が分かる資料、実施に関する計画、交付申請書、国からの交付決定書等を含む。」である。
2 実施機関の決定
実施機関は、令和元年7月19日付けで本件請求について、次の書類を公開する区政情報(以下「本件公開文書」という。)と特定した上で、全部公開することを決定(以下「本件決定」という。)し、審査請求人に対してその旨を通知した。
実施機関が公開した書類
(1)平成29年度社会資本整備総合交付金(都市公園等事業)に係る書類
(2)平成30年度社会資本整備総合交付金(都市公園等事業)に係る書類
(3)平成31年度社会資本整備総合交付金(都市公園等事業)に係る書類
(4)平成29年度社会資本整備総合交付金(都市再生整備事業)に係る書類
(5)平成30年度社会資本整備総合交付金(都市再生整備事業)に係る書類
(6)平成31年度社会資本整備総合交付金(都市再生整備事業)に係る書類
3 審査請求
審査請求人は、本件公開文書は虚偽のものであるとの理由で、本件決定を不服として、条例第13条第1項に基づき、令和元年7月30日付けで区長に対し、「虚偽の文書が開示された原因を調査し、全ての虚偽の文書の代わり真正な文書の再開示」を求めて本件審査請求を行った。
本件審査請求の理由は、実施機関が公開した書類には、審査請求人が本件審査請求と同一の事柄に関して国から開示を受けた書類と記載内容が異なるものがあるため、「中野区長が開示した文書には真正でない文書が含まれ、したがって、同時に開示された他の全ての文書も虚偽を含んでいると推定される。これは条例第3条「保有している情報の公開の求めに誠実に応えるように努めなければならない」に著しく反しており、公文書の偽造あるいは隠蔽にあたる。」からとしている。
なお、審査請求人は、実施機関からの区政情報公開決定通知書に、処分の内容について審査請求ができる旨の教示がなかったことも審査請求書に付記している。
4 実施機関の弁明
本件審査請求に対し、実施機関は、令和元年9月2日付けで次の理由により本件審査請求の棄却を求める弁明書を提出した。
(1)手続きの過程で本件公開文書と国が公開した文書との間に齟齬が生じているが、本件公開文書は条例第3条の規定に則ったものであり、虚偽の文書には当たらない。
(2)区政情報の公開請求に対し、実施機関が非公開又は一部公開の決定をした場合には、その通知書に審査請求ができる旨を記載しているが、本件請求については全部公開としたため審査請求については記載しなかった。
(3)本件公開文書の中に日付が入っていないものがあるのは、東京都(以下「都」という。)の審査を受ける前の段階で提出した資料のため、都の調整で、実施機関は日付なしの状態で提出したものであり、また、国が公開した文書と金額が異なるものがあるのは、実施機関が作成し都に提出した書類につき都が誤りを修正した書類を国に提出したからである。
以上の理由により、公開した文書に虚偽はなく、区から再開示できる書類は存在しない。
5 当審査会への諮問
区長は、当審査会に対し、条例第13条第3項に基づき、令和2年2月17日付けで本件審査請求に係る諮問を行った。
6 実施機関からの意見聴取
当審査会は、中野区情報公開・個人情報保護審査会条例(以下「審査会条例」という。)第9条第1項に基づき、令和2年6月23日に実施機関から意見聴取を行った。
第3 審査請求人及び実施機関の主張の整理
審査請求人は、本件公開文書は虚偽のものであるとの理由に基づき、その原因を調査し、真正な文書の再開示を求めているのに対し、実施機関は、本件公開文書と国が公開した文書との間に齟齬があるものの虚偽ではないとの理由に基づき再開示できる文書は存在しないと主張している。
第4 当審査会の判断
1 本件公開文書の真偽に関する当審査会の権限について
まず、審査請求人と実施機関との間で争点となっている本件公開文書の真偽について検討する。
本件決定のごとく実施機関が公開請求に対して全部公開とする決定を下した場合でも、公開請求を行った者は、その決定に不服があるときは、実施機関に対し審査請求をすることができる。(条例第13条第1項)
審査請求を受けた実施機関は、一定の事由に該当する場合を除き当審査会に諮問しなければならない。(条例第13条第3項)
当審査会は、諮問を受けた事項について審議を行うために必要があると認めるときは、実施機関に対し、公開した区政情報の提出を求めることができる。(審査会条例第8条第1項)
このほか、意見書または資料の提出を求めること、適当と認める者にその知っている事実の陳述又は鑑定を求めることその他必要な調査を行うことができる。(審査会条例第8条第3項)
そこで、当審査会が本件審査請求につき審議を行うために本件公開文書の真偽について調査をする必要があるかどうかについて検討する。
情報公開制度により公開される情報は、実施機関が保有しているあるがままの状態で公開されなければならない。例えば、実施機関が保有していなかった文書を保有していたかのように、後日、新たに作成した文書、又は保有していた文書の一部を改ざんした文書が公開され、請求人から「全部又は一部が虚偽である」との理由で審査請求が出され、区長が当審査会に諮問したとする。この場合、当審査会は、当該文書はあるがままの状態で公開されているという情報公開制度の趣旨に当たらないので、当然、その真偽について調査することでができ、また、その必要性があるといえる。
しかし、本件公開文書は、国に提出する前に調整するため、都の審査を受け、都が国に提出する手続きをとることになっていたため、提出日が未記入であったのは、都が国へ提出する日付が未確定であったので、日付を記載しなかったという事情によるものであり、また、都が国に提出した文書と金額が異なっているのは、区が記載した金額を都が変更したものである。
このような事情に鑑みれば、確かに、同一の申請書でありながら、区が都に提出したものと都が国に提出したものとの間に齟齬が生じてはいるものの、本件公開文書は、あるがままの状態で公開された文書であり、決して、後日、偽造されたり、改ざんされたりした文書ではなく、そもそも真か偽かの判断の対象になるものではない。
したがって、当審査会は本件審査請求の審議において、本件公開文書の真偽について調査する必要はないと判断する。
2 本件公開文書の特定について
当審査会は、実施機関が特定した本件公開文書が審査請求人の求める文書の全てであるかどうかを判断することができ、その判断のために実施機関から意見を求めることができる。
実施機関は、意見聴取において、次のように陳述している。
「実施機関が本件事業に関し都に提出した書類を、都は国に提出するに当たって修正した。都は、修正した内容の書類を電子メール(以下「本件電子メール」という。)で実施機関に送付しており、実施機関は、都から受信している。」
このため、本件電子メールは、実施機関の職員が職務上入手し、組織的に用いるものとして電磁的記録により保管しているものであるから、条例により公開の対象とされている区政情報に該当する(条例第2条第2号)ので、審査請求人が請求している本件事業の申請に係り中野区が取得した文書に該当する。
したがって、実施機関は、本件決定において特定し、公開するとした区政情報に加えて、本件電子メールも審査請求人に公開すべきである。
3 結論
以上により、上記第1に記載したとおり判断する。
なお、中野区は全部公開とする区政情報公開決定通知書において、処分の内容について審査請求ができる旨を記載していないが、公開した情報が審査請求人の求めている情報の全てでない場合もあり、これは、実質的に一部非公開に当たることに鑑みると、今後は、全部公開の場合であっても、区政情報公開決定通知書に審査請求ができる旨を付記することが望ましい。
中野区情報公開・個人情報保護審査会
委員 岩 隈 道 洋
委員 岸 本 有 巨
委員 熊 田 裕 之
委員 小 池 知 子
委員 佐 藤 信 行(会長)
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