情報公開・個人情報保護審査会答申(第64号)

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更新日:2024年11月1日

答申第64号

令和5年10月6日

中 野 区 長 様

中野区情報公開・個人情報保護審査会 

会長 佐藤 信行 


 

中野区区政情報の公開に関する条例第13条第3項の規定に基づく諮問について(答申)


 下記に掲げる中野区区政情報の公開に関する条例に係る審査請求について(諮問)について、別紙のとおり答申します。

 ・ 令和4年12月2日付け4中総総第2824号(令和4年10月7日付け4中総防第1192号の処分)

第1 審査会の結論

 中野区長が非公開とした部分の内、代表者の住所、連絡先電話番号及び代表者の個人の印影並びに法人の角印の印影を除き、公開すべきである。

第2 審査請求及び審査の経緯

1 区政情報の公開請求
 令和4年9月8日、本件審査請求人(○○さん、以下「審査請求人」という。)は、中野区区政情報の公開に関する条例(以下「条例」という。)第7条の規定に基づき、区政情報公開請求書の請求情報の内容の欄に、「地域防災住民組織活動助成金の交付内容について ○○防災会 令和2・3年度分」と記載し、実施機関である中野区長(以下適宜「区長」又は「実施機関」という。)に対し、その写しの交付を求め、区政情報公開請求を行った。

2 区政情報の特定
 実施機関は、情報公開請求を受けた区政情報を、中野区地域防災住民組織活動助成制度における「地域防災住民組織活動助成金交付申請書(○○防災会 令和2年度・令和3年度分)」と特定した。

3 区政情報公開決定通知期間延長通知書の送付
 実施機関は、「請求された情報に第三者の情報が含まれており、照会等の確認に時間を要する」ことを理由として、条例第10条第1項に規定する期間内に公開の可否を通知することができないとして、同条第2項の規定に基づき、令和4年9月14日付けで、決定を通知する期間を令和4年9月26日から令和4年11月7日に延長する旨を通知した。

4 第三者への区政情報の公開に関する意見照会
 実施機関は、請求情報に請求者以外の第三者に関する情報が含まれていたことから、当該第三者に対し、令和4年9月29日付けで「区政情報の公開に関する意見照会書」を送付し、区政情報の公開に関する意見照会を行った。

5 実施機関の決定
 実施機関は、請求情報のうち、本件申請書の代表者の氏名、住所、連絡先電話番号、代表者の個人の印影の部分を個人情報(条例第8条第1項第1号)に該当するとして非公開とした。
 本件申請書に添付された領収書の法人の角印及び個人の印影、レシートの支店名入りの日付印の印影部分については、法人等情報(条例第8条第1項第2号)に該当するとして、非公開とした。
 その他の部分については公開とし、令和4年10月7日付けで条例第8条第2項の規定に基づき、一部公開決定をした旨及びその理由並びに公開を実施する日、公開の場所を文書により審査請求人に通知した。

6 審査請求
 審査請求人は、本件区政情報一部公開決定を不服とし、令和4年11月1日付けで、区長に対し、条例第13条第4項に基づき、本件公開処分を取り消すとする裁決を求める審査請求書を提出した。

7 当審査会への諮問
 区長は、当審査会に対して、条例第13条第3項に基づき、令和4年12月2日に本件審査請求に係る審査を諮問した。

8 弁明書及び反論書の提出
 当審査会は、区長からの諮問に際して、実施機関から令和4年11月8日付けの弁明書、審査請求人から令和4年11月17日付けの反論書の提出を受けた。実施機関は、弁明書において、本件処分は、請求情報に該当する区政情報を個人情報(条例第8条第1項第1号)及び法人等情報(同条第1項第2号)を除き、公開することを決定したものであり、これ以上の情報について把握していない旨主張した。
 審査請求人は、「審査請求人の反論」欄に、請求情報である地域防災住民組織活動助成金交付申請書(○○防災会 令和2年度・令和3年度分)に記載されている二件の支出について、「R2年12月6日ユニホーム購入 2022年2月12日訓練用被服購入 報告書に訓練記載なく助成金の支払に疑問」と記載し、令和4年11月17日付けで反論書を提出した。

9 意見の陳述
 当審査会は、審査請求人から、中野区情報公開・個人情報保護審査会条例第9条第1項の規定による口頭意見陳述の申立てがなされたため、令和5年1月16日、審査請求人に対する口頭意見陳述を実施し、令和5年2月13日、実施機関からの意見聴取を行った。

第3 審査会の判断

1 区政情報公開の原則
 中野区情報公開制度は、区が区政に関し区民に説明する責務を全うすることを明らかにするとともに、区政情報の公開の請求及び不服の救済についての一般的手続等を定め、もって区民の知る権利を保障することを目的とするものである。住民自治と開かれた区政運営を推進するためには、区民と区との情報の共有を図ることが不可欠であるとの考えに基づくものであるから、実施機関は公開請求があったときは、原則として、請求情報を公開しなければならない(条例第1条、第8条柱書き)。もっとも、条例第8条第1項は、同条各号に定められる例外規定の要件を充足する場合は、請求情報を非公開とすることができる旨規定する。そこで本件処分につき、条例第8条第1項各号の該当性について検討する。

2 条例第8条第1項第1号の定める非公開事由の存在
 個人情報とは、「実施機関が保管する個人生活に関する情報で、特定の個人を識別できるもの」をいう(条例第2条第1項第3号)。
 実施機関は、個人情報に係る区民の基本的人権を尊重するとともに、個人情報の保護を図るため必要な措置を講じる責務を負う。条例第8条第1項第1号は、公開の原則について個人情報に係る例外を規定し、「個人情報又は特定の個人を識別することはできないが、公開することで、個人の権利利益を害するおそれがあるもの」の要件を充足する場合は、当該情報を非公開とすることができる旨規定する。
 本件請求情報に該当する区政情報のうち、地域防災住民組織の代表者個人の氏名は、特定の個人が識別可能な情報ではあるが、公的立場・活動に関する情報であり、条例第2条第1項第3号に規定される個人情報に該当しないと解される。
 一方、地縁による団体(法人格のない権利能力なき社団)として、一定の区域に住所を有する者を構成員とする地域防災住民組織の代表者個人の住所、連絡先電話番号、代表者の個人の印影については、特定の個人に与えられる各種番号であって個人生活に関する情報であり、条例第2条第1項第3号に規定される個人情報に該当する。
 実施機関は、請求情報に公開できない情報が含まれている場合において、当該公開できない情報の記録部分を公開請求の趣旨を損なわない程度に分離できるときは、当該公開できない情報の記録部分を除いて公開しなければならない(条例第8条第2項)。 
 以上のことから、本件審査請求に係る令和4年10月7日付け区政情報一部公開決定処分のうち、個人情報に該当するとして黒塗りの上、非公開とした地域防災住民組織の代表者個人の氏名については公開すべきである。その他の代表者個人の住所、連絡先電話番号、代表者の個人の印影については、個人情報に該当するとして、非公開とした実施機関の判断は妥当である。 

3 条例第8条第1項第2号の定める非公開事由の存在
 条例第8条第1項第2号は、「法人その他の団体(国、独立行政法人等、地方公共団体及び地方独立行政法人を除く。)に関する情報又は個人が従事する事業に関する情報で、当該情報を公開することにより、事業上明らかに不利益を与えると認められるもの」(同条2号本文。以下「法人等情報」という。)の要件を充足する情報を非公開とすることができる旨規定する。
 一方、第8条第1項第2号ただし書きは、「人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公開することが公益上必要と認められる情報」(同号ア。)、「違法又は不当な事業活動による消費生活上の障害等から区民を保護するため、公開することが公益上必要と認められる情報」(同号イ。)を非公開情報から除外する旨規定する。
 本件処分において、実施機関が、条例第8条第1項第2号規定の非公開情報に該当するとして黒塗りとしたのは、(1)領収書、納品書及びレシートの法人の角印と個人の印影、(2)飲食店の領収書の支店名入りの日付印の印影である。
 法人の角印については認証機能を有し、法人の実印として登記所に登録された登録印と併用することで民事上の効力を持ち得るものである。本件処分では、商号、法人の所在地、電話番号が記載された社印は公開決定されていることから、当該の情報と組み合わせることで書類作成等に悪用されるおそれがある。
 以上のことから、法人の角印の印影は、条例第8条第1項第2号の情報に該当し、同号ただし書き各号の要件も充足しないことから、法人の事業情報であり偽造防止を理由として非公開とした実施機関の判断は妥当である。
 他方、領収書の個人の印影については、個人が従事する商店・事業所等の事業に関する情報は、一般の企業の事業情報と同様に解されるから、保護の対象から除外されるべきである。飲食店の領収書にある支店名入りの日付印の印影については、顧客に配布されるポイントカード等の日付印と同じものであり、一般消費者に広く知り得る状態に置かれているものである。これらの情報は、条例第8条第1項第2号に規定される法人等情報に該当しない。
 よって、本件審査請求に係る令和4年10月7日付け区政情報一部公開決定処分のうち、代表者の住所、連絡先電話番号及び代表者の個人の印影並びに法人の角印の印影を除く情報については、公開すべきである。

第4 結論

 以上により、上記第1記載のとおり、判断する。

第5 付言

 審査請求人は、令和4年11月17日付け反論書において、請求情報である地域防災住民組織活動助成金交付申請書(○○防災会 令和2年度・令和3年度分)に記載されている二件の支出について、「報告書に訓練記載なく助成金の支払に疑問」と主張している。しかし、助成金の支払に係る財務会計等に関わる主張は、情報公開制度とは関係なく、その当否を判断することは、当審査会の掌握事項ではないことを付言する。

中野区情報公開・個人情報保護審査会 

委員 岩 隈 道 洋 

委員 岸 本 有 巨 

委員 小 池 知 子 

委員 神 山 静 香 

委員 佐 藤 信 行(会長)


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