情報公開・個人情報保護審査会答申(第77号)

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更新日:2024年11月1日

答申第77号

令和6年9月4日

中 野 区 長 様

中野区情報公開・個人情報保護審査会 

会長 佐藤 信行 


 

中野区区政情報の公開に関する条例第13条第3項の規定に基づく諮問について(答申)


 
 
 下記に掲げる中野区区政情報の公開に関する条例に係る審査請求について(諮問)について、別紙のとおり答申します。


 令和4年12月28日付け4中総総第2815号(令和3年6月7日付け3中健援第1303号の処分)

第1 審査会の結論

 本件処分のうち「社会福祉主事資格」の欄を非公開とした部分については、これを取り消すべきである。

第2 審査請求及び審査の経緯

1 区政情報公開請求
 審査請求人は、令和3年4月8日付けで、中野区区政情報の公開に関する条例(以下「条例」という。)に基づき、請求情報の内容の欄に「中野区福祉事務所(健康福祉部生活援護課)の専問(ママ)職・一般職の職員名簿求める。※東京都福祉保健局生活福祉部保護課中野区指導担当:○○課長代理回答(令和3年3/31)「中野区福祉事務所職員名簿(身分別)の提出有。」「※中野区福祉事務所南部係○○地区担当員(CW)「身分の回答(専問(ママ)職・一般職)出来ない。」主張繰り返す。」と記載して、実施機関である中野区長(以下適宜、「実施機関」又は「区長」という。)に対して区政情報公開請求を行った。

2 実施機関の決定
 実施機関は、令和3年6月7日付けで、請求情報の内容を「中野区福祉事務所生活保護関係職員名簿」として特定し、区政情報一部公開決定通知を行った。この際、公開することができない文書等の名称又は部分として「年齢、現担当事務経験年数の一部、生活保護地区担当員通算経験年数、その他社会福祉事務経験年数、社会福祉主事資格、社会福祉士資格、福祉職、当事務所配属年月の一部、当事務所配属前直近の所属」が指定され、公開することができない理由として、「担当職員の職務経歴、資格、職種等が記載されており個人情報に当たる情報であるため。」とされている。
 なお、一部公開決定された文書は、職員1名につき1行で構成される名簿であり、氏名のほか、課名・係名、職層名等が公開されている。また「社会福祉主事資格」の欄があるが、墨塗されており、内容を知ることはできない。

3 審査請求
 審査請求人は、令和3年7月19日付けで、上記区政情報一部公開決定の処分の取り消しを求める審査請求を行った。審査請求の趣旨には、「専門職は公務実施。」「社会福祉法第18条社会福祉主事(国家資格者)の専門職部分開示せよ。」との記載があり、その請求の趣旨は明確である。

4 弁明書及び反論書の提出
 実施機関は、令和3年12月20日付けで「「本件審査請求を棄却する。」との裁決を求める。」とする弁明書を提出した。これに対し、審査請求人は、令和4年3月9日付けで反論書を提出した。

5 当審査会への諮問
 区長は、令和4年12月28日付けで条例第13条に基づき、当審査会に対し、本件審査請求に係る諮問を行った。

第3 実施機関及び審査請求人の主張の整理

1 実施機関の主張
 実施機関は、弁明書において「請求情報に該当する「中野区福祉事務所生活保護関係職員名簿」を公開したが、そのうち「「年齢、現担当事務経験年数の一部、生活保護地区担当員通算経験年数、その他社会福祉事務経験年数、社会福祉主事資格、社会福祉士資格、福祉職、当事務所配属年月の一部、当事務所配属前直近の所属」については、担当職員の職務経歴、資格、職種等が記載されており個人情報に当たる情報である為、一部非公開とした。」と主張している。

2 審査請求人の主張
 審査請求人は、反論書において「社会福祉法「社会福祉主事」(国家資格)。公務員(公人)の専門職知る権利有る。」と述べており、社会福祉法第18条に基づき中野区が置く職員である社会福祉主事がどの者であるかについて知ることが認められるべきである旨主張している。

第4 審査会の判断

 本件における争点は、実施機関が一部公開決定した文書に含まれる「社会福祉主事資格」の欄を墨塗りしたことの適否である。本件においては、実施機関は、「中野区福祉事務所生活保護関係職員名簿」を一部公開しているが、同名簿の公開によって、職員の課名及び係名、職層名、氏名、担当事務のうち「係総括」であるか否か、査察指導員(相談担当踏む)であるか否か、地区担当員であるか否か、面接員であるか否か、経理担当の分野(生・自・身・知・老・母)、医療介護統計の分野(医・介・統)、嘱託医としての分野(精・内・他)、その他の担当事務が全員について公開されており、さらに、現担当事務経験年数及び当事務所配属年月については、所長及び課長について公開されているが、「社会福祉主事資格」の欄については墨塗されており、非公開となっている。なお、実施機関は、他の欄についても墨塗を行っているが、本件審査請求においては、その点は争われていない。
 そもそも、ある者が公務員であるか否かの事実は、区政情報公開制度の趣旨からして、個人情報として保護されるべきものとはいえない。この点、条例は、「個人情報又は特定の個人を識別することはできないが、公開することで、個人の権利利益を害するおそれがあるもの」を公開してはならない情報としつつ(第8条第1項第1号本文)、その例外として公開すべき情報として「当該個人が公務員等(次のいずれかに該当する者をいう。)である場合において、当該情報がその職務の遂行に係る情報であるときは、当該情報のうち、当該公務員等の職、氏名及び当該職務遂行の内容に係る部分(当該氏名を公開することにより当該公務員等の職務遂行に支障を及ぼすおそれがある場合又は当該公務員等の権利利益を保護するため当該氏名を公開しないことが必要であると認められる場合にあつては、当該公務員等の職及び当該職務遂行の内容に係る部分)」を規定している(同号ウ号)。そこで、本件においても、実施機関は、職員の氏名、課係、職層を公開しており、これは適切な判断である。
 問題は、さらに進んで、社会福祉法が規定する社会福祉主事に任用されているか否かという個別の業務上の地位も、公開すべき区政情報であるか否かである。この点、ある者が社会福祉主事であることは、上記条例上の「当該職務遂行の内容に係る情報」であると考えることができるから、この公開を求めることは、一般的には可能であると解すべきである。
 ところで、社会福祉主事とは、社会福祉法第18条に基づいて当区が置くことを義務づけられている職員であって、同法第19条第1項により、区長の補助機関とされている。またこれに任用されるためには、同法第19条第1項第1号から第5号のいずれかに該当する者であることが必要であり、この要件のいずれかを具備することについて、一般には「社会福祉主事任用資格を有する」と称している。すると、ある者が社会福祉主事であるということを公開すると、それは結果として、この5号のいずれかに該当する者であることを公開することを意味する。具体的には、社会福祉主事任用資格には、「1 学校教育法に基づく大学……中略……において、厚生労働大臣の指定する社会福祉に関する科目を修めて卒業した者(当該科目を修めて同法に基づく専門職大学の前期課程を修了した者を含む。)」「2 都道府県知事の指定する養成機関又は講習会の課程を修了した者」「3 社会福祉士」「4 厚生労働大臣の指定する社会福祉事業従事者試験に合格した者」「5 前各号に掲げる者と同等以上の能力を有すると認められる者として厚生労働省令で定めるもの」の5つが定められているから、ある者が社会福祉主事であるということは、このいずれかに合致することが示されることになるところ、これらには、いわゆる学歴情報が含まれており、これは条例による公開対象情報である「当該職務遂行の内容に係る情報」とは区別される個人情報であるとする解釈の可能性も否定できない。
 そこで、問題は、ある者が社会福祉主事であるという公開すべき情報と、ある者が社会福祉主事任用資格を有するという個人情報が不可分に存在している場合において、どちらを優先して判断を行うべきかという点に帰着することになる。
 この点、確かに、ある者が社会福祉主事任用資格を有するという事実の背景には、出身大学やどのような科目を修めたかといった学習履歴に係る個人情報が存在していることは否めず、保護の必要性も認められる。実施機関は、審査の過程における当審査会からの問い合わせに対して、社会福祉主事に任用される前提としての社会福祉主事任用資格の有無や職務経験年数等が個人情報に該当するとの意見を述べているところである。しかし、本件で争われているのは、中野区全職員のうち誰が社会福祉主事任用資格を有するかという情報の公開ではなく、現に中野区福祉事務所生活援護課において勤務する社会福祉主事に係る区政情報の公開であって、かつ、本件におけるように、一覧表の中に「社会福祉主事資格」という欄を設け、そこにチェックをするという方法での公開であれば、5号のいずれによる資格かは特定されず、ましてや、特定の大学や教育課程の卒業生であること自体が公開されることにはならない。
 なお、条例第8条第1項第1号ウ号は、職員の氏名を公開について、「当該氏名を公開することにより当該公務員等の職務遂行に支障を及ぼすおそれがある場合又は当該公務員等の権利利益を保護するため当該氏名を公開しないことが必要であると認められる場合」の存在を認め、この際には、「当該公務員等の職及び当該職務遂行の内容に係る部分」のみを公開し、氏名を非公開とすることを定めている。本号は、たとえば、犯罪の告発等に係る守秘性の高い公務に従事する公務員について、調査対象者からの妨害が想定されるような場合に適用されると考えられるが、本件においては、実施機関は本号の適用を求めていないほか、仮に本号に基づいたとしても、非公開とできるのは氏名であって、社会福祉主事資格の有無ではない。
 以上に鑑みると、当区条例の下では、「社会福祉主事資格」の欄を非公開とした決定は、取り消されるべきものと認めるのが相当である。

第5 結論

 以上により、上記第1記載のとおり判断する。

中野区情報公開・個人情報保護審査会 

委員 岩 隈 道 洋 

委員 岸 本 有 巨 

委員 小 池 知 子 

委員 神 山 静 香 

委員 佐 藤 信 行(会長)


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