情報公開・個人情報保護審査会答申(第36号)

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更新日:2023年8月3日

答申第36号 
令和2年10月15日 

中 野 区 長 様

中野区情報公開・個人情報保護審査会 
会長 佐藤 信行 

中野区区政情報の公開に関する条例第13条第3項の規定に基づく諮問について(答申)

 下記に掲げる中野区区政情報の公開に関する条例に係る審査請求について(諮問)について、別紙のとおり答申します。

・令和2年2月17日付け31中総総第4311号

第1 審査会の結論

 中野区長が行った区政情報の不存在を理由とする非公開決定は妥当であるため、本件審査請求を棄却すべきである。

第2 審査請求及び審査の経緯

1 区政情報の公開請求
 審査請求人は、中野区区政情報の公開に関する条例(以下「条例」という。)第7条の規定に基づき、実施機関である中野区長(以下適宜「区長」又は「実施機関」という。)に対して、令和元年11月2日付けで区政情報公開請求(以下「本件請求」という。)を行った。
 請求情報の内容は、平和の森公園再整備工事第二工区の工事(以下「工事」という。)に関し、委託監理業務を行っている者(工事監理者あるいは監理技術者、その業者など、以下「監理業務受託者」という。)から今までに受領した出来形の検査に関係する一切の文書(中野区が当該出来形の検査に関係する文書を受領した際に、それを承認したことが分かる文書を含むこと。)である。

2 実施機関の決定
 実施機関は、本件請求につき、「請求情報の内容に関する当該検査をしていないことから、文書の作成及び保存をしていない。」との理由により、請求情報は存在しなとの決定(以下「本件決定」という。)を下し、条例第10条第1項の規定により、令和元年11月18日付けで審査請求人に対し、区政情報不存在通知書を送付した。

3 審査請求
 審査請求人は、令和元年11月20日付けで本件決定を不服として、条例第13条第1項に基づき、実施機関に対し、「請求情報の内容の全部開示」を求めて審査請求(以下「本件審査請求」という。)を行った。
 本件審査請求の理由は、以下のとおりである。
 第1に、審査請求人が工事作業所で撮影したホワイトボードの写真には、監理業務受託者が検査に類する行為を行った記録が写っており、また、そもそも監理業務受託者に委託した業務は、工事が設計図通りに施工されているかを監理するものであるから、実施機関が主張する「検査をしていないこと」はあり得ない。
 第2に、実施機関は不存在理由として文書の「作成及び保存をしていない」ことのみを挙げ、審査請求人が求めた「受領した文書」に関して一切触れていないので、本件決定は請求内容を理解していないか、または曲解したものであり、条例第3条の「保有している情報の公開の求めに誠実に応えるよう努めなければならない」に反している。

4 弁明書
 実施機関は、令和元年12月23日付けで「工事に係る検査は、区の検査員又は監督員が行うものである。監理業務受託者は請負人に対し助言及び指導する立場にあり、検査をする業務を委託されている者ではないので、請求情報の内容に関する検査を行っていない。したがって、監理業務受託者から検査に関する文書を受領することもしていない。」との理由により、「本件審査請求の棄却を求める」との弁明書を提出した。

5 当審査会への諮問
 区長は、令和2年2月17日付けで条例第13条第3項に基づき、本件審査請求に係る諮問を行った。

6 実施機関からの意見聴取
 当審査会は、中野区情報公開請求・個人情報保護審査会条例第9条第1項に基づき、令和2年6月23日に実施機関から意見聴取を行った。

第3 実施機関及び審査請求人の主張の整理

 実施機関は、監理業務受託者は請求情報の内容に関する検査を行う業務を委託された者ではなく、また、現に検査を行っていないと主張しているのに対して、審査請求人は、監理業務受託者は委託の内容として検査を行うことができ、また、現に検査に類する工事を行っていたと反論している。

第4 審査会の判断

1 請求情報の特定―検査の概念と実施主体
 実施機関と審査請求人との間で、工事の検査とは具体的に何を意味するのか、また、その実施主体は、実施機関か監理業務受託者であるかについて主張が異なっている。これは請求情報の特定に係る問題なので、この点について検討する。
 工事に関し、実施機関と監理業務受託者との間で交わされた委託契約は、実施機関が弁明書に確認書類として添付した「工事監理業務委託約款」(以下「約款」という。)に準拠したものである。約款第8条は「検査」という見出しのもと、第1項で「乙は、委託業務が完了したときは、遅滞なく甲に対して監理業務完了届とともに必要図書を提出し、検査を受けなければならない。」第2項で「甲は、前項の提出があった日から10日以内に検査を行わなければならない。」と規定している(甲は中野区、乙は監理業務受託者を示す。)同条の定めによれば、検査は、中野区、つまり実施機関が、工事完了後に行うものである。
 一方、審査請求人は、区政情報公開請求書の請求情報の内容欄に「出来形の検査に関係する一切の文書」と記載している。「出来形」とは、工事全体が竣工する前に工事が済んだ部分であるから、審査請求人が求めている文書は、約款第5条及び第6条が定めている竣工前に監理業務受託者が実施機関に対して行う報告の際に提出した文書と解することも可能である。
 実施機関からの意見聴取によれば、工事が完了、つまり竣工したのは、令和2年3月6日である。したがって、検査を前者の意味に解すると、区長が区政情報不存在通知書を送付した令和元年11月18日の時点で工事は完了しておらず、検査は行われていなかったので、文書不存在の本件決定は妥当ということになる。しかし、後者の意味に解すると、出来形の検査に関係する文書が本件決定前に既に実施機関に提出されていた可能性もある。
 そこで、意味を確定するため、実施機関は、審査請求人に対して、公開を求めている区政情報の補正を求めようとしたが(条例第7条第4項)連絡がつかず、また、当審査会も、審査請求人に対して意見を陳述するかどうかを問い合わせたが、回答がなかったため、審査請求人が意図している検査の意味を聴取することができなかった。
 したがって、審査請求人の意思が明らかでないので、当審査会は、客観的な資料に基づき、検査とは、当事者間の契約関係を定めた約款第8条に定めて検査であると解さざるを得ない。その結果、区長が審査請求人に本件決定を通知した時点では検査は行われておらず、実施機関は、検査に関する一切の文書を作成、保存及び受領していなかったのであるから、本件決定は妥当である。

2 結論
 以上により、上記第1に記載したとおり、判断する。
 なお、本件決定通知後に実施機関が取得した区政情報の取扱いについて付言する。
 実施機関は、意見聴取において、本件決定通知後の令和2年3月6日に工事の検査を行い、監理業務受託者から約款第8条第1項に基づき検査に関係する文書(以下「本件文書」という。)を受領したことを明らかにした。
 本件文書は、本件決定通知後に実施機関が取得したものであるから、本件請求の対象とならない。もちろん審査請求人が改めて情報公開請求をすれば、本件文書を入手することはできる。
 しかし、当審査会が本件決定につき、本件決定後から区長に対して答申をするまでの間に実施機関が本件請求に係る文書を取得したにもかかわらず、当該文書の不存在を妥当とする結論を出すことに若干の疑問を覚えるものである。
 この疑問の一部を解消する方法として、条例第13条第3項を適用することが考えられる。同項によれば、公開の可否に関する決定に対して審査請求が行われた場合であっても、実施機関は、審査請求の全部を容認し、当該審査請求に係る区政情報の全部を公開する裁決をする場合(同項第2号)には、当審査会へ諮問をする必要がない。すなわち、実施機関が区政情報不存在と決定した後、当審査会へ諮問するまでの間に当該区政情報を取得した場合、実施機関は同項を適用し、当審査会に諮問せずに当該区政情報を公開することができるのである。
 実施機関が本件文書を取得したのは、令和2年2月17日に区長が当審査会に諮問した後の同年3月6日であったので、本件の事案につき条例第13条第3項を適用することはできないが、今後、実施機関は、非公開決定から諮問までの間に請求情報を取得した場合、又は諮問予定日の直後に請求情報を取得することが確実な場合には、条例第13条第3項を積極的に適用し、当審査会に諮問せずに、情報公開することが望ましい。これは、情報公開の原則に資するものであり、より具体的には、改めて区政情報公開請求をしなければならないという請求人の手間を省くことになり、実施機関としても、情報公開に要する負担の軽減につながるものである。

 中野区情報公開・個人情報保護審査会
 委員 岩 隈 道 洋
 委員 岸 本 有 巨
 委員 熊 田 裕 之
 委員 小 池 知 子
 委員 佐 藤 信 行(会長)

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