情報公開・個人情報保護審査会答申(第9号)

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更新日:2023年8月3日

答申第9号

平成29年11月24日

中野区長殿

中野区情報公開・個人情報保護審査会 

会長 佐藤 信行

中野区区政情報の公開に関する条例第13条第3項の規定に基づく諮問について(答申)

平成29年9月7日付け、29中経行第615号による下記の諮問について、別紙のとおり答申します。

中野区区政情報の公開に関する条例に係る審査請求について(諮問)

第1 審査会の結論

 東京都国民健康保険運営方針(たたき台)等に関する区政情報の公開請求について、中野区長が中野区区政情報の公開に関する条例(以下「条例」という。)8条2項の規定により、一部を公開することとした決定のうち「公開することができない文書等の名称又は部分」は、時の経過又は事情の変化により、本答申日においては、次のようにその一部を変更するべきである。

1 東京都国民健康保険運営方針(たたき台)のうち、意思形成過程に関する情報については、当時において非公開とした決定が不当であるとは認められないが、本答申日においては、これを非公開とすべき事情が消滅していることから、一部公開決定を取消し、その全部を公開するべきである。

2 事業費納付金・標準保険料簡易計算システムに基づいて厚生労働省に報告した第1回試算、第2回試算の結果(中野区のもの、東京都全体のもの)については、これらが存在しないため公開できないとした決定は相当である。

第2 審査請求及び審査の経緯

1 区政情報の公開請求

 平成29年5月18日付けで、本件の審査請求人(○○○○さん、以下「審査請求人」という。)は、条例7条の規定に基づき、実施機関である中野区長(以下適宜、「実施機関」又は「区長」という。)に対して、

(1)東京都国民健康保険運営方針(たたき台)(以下「区政情報1」という。)

(2)東京都国民健康保険運営方針(たたき台)について中野区から提出した意見(以下「区政情報2」という。)

(3)事業費納付金・標準保険料簡易計算システムに基づいて厚生労働省に報告した第1回試算、第2回試算の結果(中野区のもの、東京都全体のもの)(以下「区政情報3」という。)

(4)第1回試算、第2回試算のために中野区が使用した所得額と被保険者数(以下「区政情報4」という。)

の公開請求を行った(以上を総称して「本件区政情報」という。)。

2 実施機関の意見照会

 実施機関は、本件区政情報のうち、区政情報1及び区政情報3には東京都に関する情報が含まれているとして、条例12条の2に基づき、東京都知事に意見を照会した(同年5月23日)ところ、同知事からは、区政情報1の一部については「都と区市町村の協議に関する情報であり、公にすることで、都及び区市町村の間の自由かつ率直な意見の交換が妨げられ、適正な意思決定が損なわれるおそれがあるため」「また、今後の合意形成に向けて円滑な議論ができず、事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるため」との理由を付して、本篇24箇所、資料1箇所を特定して公開決定に反対する意見書が示された(同年6月28日)。また、同意見書では、区政情報3については、「都において試算し厚生労働省へ報告したもので、貴区では保有していない公文書と考える」と記載されている。

3 実施機関の決定

 実施機関は、同年7月4日付けで、区政情報1のうち「意思形成過程に関する情報」を除き公開する、区政情報2については、その全部を公開する、区政情報3については、存在しないため公開できない、区政情報4については、その全部を公開する、との本件区政情報の一部を公開するとの決定を行う(以下「本件一部公開決定」という。)とともに、これを審査請求人に通知した。

 なお、本件一部公開決定において、非公開とされた区政情報1の部分は、東京都知事がその意見書で公開に反対した部分と同一である。

4 審査請求

 審査請求人は、本件一部公開決定を不服として、条例13条1項に基づき、同年7月25日付けで、実施機関に対して審査請求を行った。審査請求人は、本件区政情報一部公開決定の取消しと、全部公開決定を求めている。

5 当審査会への諮問

 実施機関は、同年8月21日付けで弁明書を提出した。これに対し、審査請求人は、反論書は提出していない。区長は、当審査会に対し、条例13条3項に基づき、同年9月7日付けで上記審査請求の審査の諮問をした。

第3 実施機関及び審査請求人の主張の整理

1 実施機関の主張

実施機関の主張によると、本件公開請求を一部公開とした理由は、次のとおりである(弁明書、実施機関からの意見聴取)。

 まず、区政情報1については、「請求された文書は東京都が作成しており、他の地方公共団体との協議その他の意思形成過程に関する情報であるため」との理由から公開することができないとして、条例8条1項3号ア(審議、検討、国又は他の地方公共団体等との協議その他の意思形成過程に関する情報であつて、当該情報を公開することにより、率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が損なわれるおそれ、不当に区民等の間に混乱を生じさせるおそれ又は特定の者に不当に利益を与え若しくは不利益を及ぼすおそれのあるもの)に該当することを主張するとともに、おそれの判断資料として、東京都に意見照会を行い、都からは25箇所の公開すべきでない部分を回答として得たことを主張する。

 ただし、実施機関は、平成29年10月16日に当審査会が実施した意見聴取に際して、東京都においては、同年9月20日に東京都国民健康保険運営協議会(知事の諮問機関)を開催し、同会議上、区政情報1の改訂版である「東京都国民健康保険運営方針(素案)」を資料として配付し、また、同資料は東京都のウェブサイトにおいて公開されていること等に鑑みると、現時点においては、区政情報1を公開することにより、率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が損なわれるおそれ、不当に区民等の間に混乱を生じさせるおそれ又は特定の者に不当に利益を与え若しくは不利益を及ぼすおそれがあるとは認められないので、現在は区政情報1全部の公開が可能であるとの追加的主張を行っている。

 次に、区政情報3については、今回の制度変更に伴い、東京都が作成し厚生労働省に報告したものであり、中野区はその写しの提供等も受けていないから、条例が公開を定める区政情報として存在していないと主張する。

2 審査請求人の主張

 審査請求人は、区政情報1については、「国民健康保険は来年度から大幅な制度改定が行われ、その際には幾度にも亘る意見聴取などが行われると推察される。それによって当初の案が―今回の場合はたたき台が―変更されることはありうることである。請求人は今回請求した文書が確定したものではないことは承知しており、「意思形成過程の情報だから公開できない」ことは理由にならない。また全国の様々な道府県で運営方針(案)は既に公開されており、このことからも理由にはならない。」と主張する。

 また区政情報3については、「確かに中野区はデータを東京都に報告しただけであり、文書を作成したのは東京都かもしないが、東京都によって試算はなされている。中野区区政情報の公開に関する条例第3条第2項は「区政に関する情報で文書等の記録媒体により保管していないものの公開を求められた場合は、説明等の方法により当該情報を提供するよう努めるものとする」と規定している。請求人は中野区に関する情報を求めたのであり、東京都に情報の請求をするなどして請求人の求めに応じるべきである。少なくとも「不存在」という理由は成り立たない。」と主張している。

第4 審査会の判断

1 例外としての非公開

 中野区の情報公開制度は、区民の知る権利を保障し、区民と区との情報の共有を図ることが住民自治と開かれた区政運営の推進にとって不可欠の要件であるとの考えを基礎とするものであるから、実施機関は公開請求があったときは、原則として請求情報を公開しなければならない(条例1条及び8条柱書)。

 したがって、実施機関が請求情報を非公開とするためには、条例8条1項各号の定める事由を充足する例外的な場合に限られる。

2 非公開事由の検討

(1)区政情報1について

ア 事情の変化による公開

 本審査請求に係る情報公開請求は、平成29年5月18日に行われ、実施機関は同年7月4日に一部公開決定を行っている。すなわち、同日の段階においては、実施機関は、区政情報1の一部について条例8条1項3号アに該当するとしていたところであるが、同年10月16日に当審査会が行った実施機関に対する意見聴取においては、当日の段階においては、区政情報1全部の公開が可能であると主張している。

 従って、当審査会としては、区政情報1の公開については、もはや実施機関と審査請求人との間に実質的な紛争は生じていないといえ、これを公開すべきと判断する。

イ 条例8条1項3号アの非公開事由該当性

 上記のように判断する以上、当審査会としては、同年7月4日の段階において、区政情報1の一部が条例8条1項3号アに該当していたかについては、これを判断する必要がないが、念のために、以下付言する。

 実施機関は、区政情報1の一部について条例8条1項3号ア「審議、検討、国又は他の地方公共団体等との協議その他の意思形成過程に関する情報であつて、当該情報を公開することにより、率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が損なわれるおそれ、不当に区民等の間に混乱を生じさせるおそれ又は特定の者に不当に利益を与え若しくは不利益を及ぼすおそれのあるもの」に該当すると主張し、その根拠として、東京都に対して行った意見照会の結果、文書作成者である東京都が、区政情報1の一部については「都と区市町村の協議に関する情報であり、公にすることで、都及び区市町村の間の自由かつ率直な意見の交換が妨げられ、適正な意思決定が損なわれるおそれがあるため」「また、今後の合意形成に向けて円滑な議論ができず、事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるため」と公開に反対する意見を述べたことを挙げる。

 ところで、条例2条2号は、区政情報について「実施機関の職員が職務上作成し、又は入手した情報で、当該実施機関の職員が組織的に用いるものとして、文書、図画、写真、フィルム、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られた記録をいう。以下同じ。)その他の記録媒体により保管しているものをいう。」と定義するから、東京都が作成者である区政情報1も条例に定める区政情報であることは疑いがなく、公開の対象となることはいうまでもないのみならず、その条例8条1項3号ア該当性についても、都の主張を鵜呑みにするのではなく、区として自律的な判断を行うことが求められる。

 この点、今回の一部公開決定では、都からの意見書で指定された部分と非公開部分が一致している。もとより、都の見解と区の見解が一致することはあり得るところであるが、条例が採用する「原則として公開、例外として非公開」の観点から、実施機関には、区の自律的判断の過程等を明らかにできるよう業務を遂行されるべく留意されたい。

(2)区政情報3について 

 実施機関は、区政情報3について、東京都が作成し、厚生労働省に提出したものであり、区にはその写しの提供も受けていないと主張する。そこで、当審査会は職権に基づき、東京都に対して事実照会を行ったところ、平成29年11月8日付けで「東京都は中野区に対して」(区政情報3の)「通知又は連絡を行っていない」との回答を得た。このことから、実施機関が区政情報3を不存在とした判断は、是認できる。

 なおこの点に関連して、審査請求人は、「中野区区政情報の公開に関する条例第3条第2項は「区政に関する情報で文書等の記録媒体により保管していないものの公開を求められた場合は、説明等の方法により当該情報を提供するよう努めるものとする」と規定している。請求人は中野区に関する情報を求めたのであり、東京都に情報の請求をするなどして請求人の求めに応じるべきである。少なくとも「不存在」という理由は成り立たない。」と主張する。

 しかし同項は、区が記録媒体により保管していない区政に関する情報(典型的には、実施機関の職員の記憶等)の提供努力を定めるものであって、条例1条が条例の目的を「実施機関の保有する情報」について、これ「を公開することにより区が区政に関し区民に説明する責務を全うすることを明らかにするとともに、区政情報の公開の請求及び不服の救済についての一般的手続等を定め、もつて区民の知る権利を保障し、区民と区との情報の共有を図ることにより住民自治と開かれた区政運営を推進することを目的とする。」とすることに鑑みても、およそ区に関連する情報であれば、一般に、他の地方公共団体等の法主体から取得の上保有して、これを提供することまでも求めているとはいえない。よって、区が都に対して区政情報3の提供を求め、取得する可能性があったことをもって、区政情報が不存在であるということはできないとする審査請求人の主張は、これを採用することができない。

第5 結論

以上により、上記第1記載のとおり、判断する。

中野区情報公開・個人情報保護審査会

委員 岸本 有巨

委員 熊田 裕之

委員 小池 知子

委員 幸田 雅治

委員 佐藤 信行(会長)

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