情報公開・個人情報保護審査会答申(第70号)

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更新日:2024年2月21日

答申第70号

令和6年1月26日

中 野 区 長 様

中野区情報公開・個人情報保護審査会 

会長 佐藤 信行 


 

中野区区政情報の公開に関する条例第13条第3項の規定に基づく諮問について(答申)


 下記に掲げる中野区区政情報の公開に関する条例に係る審査請求について(諮問)について、別紙のとおり答申します。


 ・ 令和5年1月24日付け4中総総第3374号

第1 審査会の結論

 本件審査請求は、棄却すべきである。

第2 審査請求及び審査の経緯

1 区政情報の公開請求
 実施機関である中野区長(以下適宜「区長」又は「実施機関」という。)は、中野区区政情報の公開に関する条例(以下「条例」という。)第7条の規定に基づき、令和4年9月21日付けで「遺族のための手続ガイド」(おくやみハンドブック)を区と協働で発行する事業者募集に係る資料の区政情報公開請求(以下「本件請求」という。)を受けた。

2 第三者への意見照会
 実施機関は、請求情報のうち、「官民協働発行型おくやみハンドブック制作業務企画ご提案書」について、請求者以外の第三者である審査請求人(○○○○、以下「審査請求人」という。)に関する情報が記載されていたため、条例第12条の2第1項の規定により、審査請求人に対し、令和4年9月29日付けで当該提案書内容について意見を求める意見照会書を送付した。
 これに対し、審査請求人からは、同年10月13日付けで、請求情報のうち、一部の公開に反対する旨の意見書が提出された。

3 実施機関の決定
 実施機関は、本件請求につき、広告イメージの税理士氏名及び顔写真を条例第8条第1項第1号に、電子メールアドレスについては条例第8条第1項第2号にそれぞれ該当するとして非公開とし、それ以外の部分については、「公開決定に反対する理由として提出された事項は、当該文書について、そのことを覆す法的保護の対象となるほどの具体的な不利益は見当たらない」として公開するとの決定を行うとともに、令和4年10月26日付けで条例第12条の2第3項に基づき、一部公開決定をした旨及びその理由並びに公開を実施する日を文書により審査請求人に通知した。

4 審査請求
 審査請求人は、令和4年11月9日付けで、中野区長(実施機関)による令和4年10月26日付けの情報公開請求者(本審査請求外)に対する「官民協働発行型おくやみハンドブック制作業務企画提案書」の一部公開に関する処分(4中区戸第1605号)のうち、当該提案書のp6~p10に関する部分を取消すとの裁決を求める審査請求書を提出する(以下「本件審査請求」という。)とともに、執行停止の申立てを行った。

5 執行停止の決定
 執行停止の申立てを受けた区長は、行政不服審査法第25条第2項の規定により、同年11月11日から最終的な判断を決定するまでの間、当該処分の執行を停止することを決定し、その旨を同日付けの文書で審査請求人に通知した。

6 当審査会への諮問
 区長は、令和5年1月24日付けで条例第13条第3項に基づき、本件審査請求に係る審査を諮問した。

7 弁明書及び反論書の提出
 当審査会は、区長からの諮問に際して、実施機関から令和4年12月15日付けの弁明書及び審査請求人から令和5年1月12日付けの反論書の提出を受けた。

第3 審査請求人及び実施機関の主張の整理

1 審査請求人の主張の要旨
 本件処分において、実施機関は「官民協働発行型おくやみハンドブック制作業務企画提案書」のp14にある広告イメージの税理士氏名及び顔写真(条例第8条第1項第1号該当)及び事業者等メールアドレス(条例第8条第1項第2号)のみを非公開とし、その余の部分を公開する旨決定した。
 当該提案書の作成者である審査請求人は、当該処分前に実施機関の求めに応じて実施機関に対して提出した意見書において、「今後も継続的に事業運営をするため」として当該提案書のp2~p14及び裏表紙を非公開とする旨を主張していたところ、実施機関が本件公開処分に至ったことから、本件審査請求において、改めて当該提案書のp6~p10につき、審査請求人が過去40年間にわたり培ってきた、当該分野独自のノウハウに基づく冊子のデザイン構成や提案内容について図画を用いることで詳細に記載しており、これらの情報を公にすることでそれらノウハウやデザインを他者に使用されることによって継続的な事業運営に支障をきたし、法的保護に値する程度の蓋然性をもって公開による事業上明らかな利益侵害が生じるため、条例第8条第1項第2号に該当し、非公開とすべきである旨を主張している。
 また、当該提案書を実施機関が取得するにあたり実施したプロポーザルの実施要項において、提出された企画提案書の原則全部公開といったような内容の記載がなかったことから、この点においても審査請求人は、自身の有する独自のノウハウを記載している部分については公開される前提で作成していない旨を主張している。

2 実施機関の主張の要旨
 実施機関は、当該文書p6~p10につき、条例第8条第1項第2号に規定する法的保護の対象となるほどの具体的な不利益を与えると認められないとし、本件審査請求の棄却を求めている。

第4 審査会の判断の理由

 条例第8条第1項第2号では、「法人その他の団体に関する情報又は個人が従事する事業に関する情報で、当該情報を公開することにより、事業上明らかに不利益を与えると認められるもの。」を非公開とする旨規定している。
 当審査会が当該提案書及び同じプロポーザル手続において他1社(本件処分に関連して特段の非公開の求めを行っていない)から提出された提案書を併せて見分したところ、本件審査請求において争いとなっている当該提案書のp6~p10につき、部分的に審査請求人の保有する独自のノウハウを読み取れる箇所もあるとはいえるが、全体として、他1社の提案書と比較して見た時に、それぞれの業務プロセスや着眼点の相違はあるものの、これら各項目が公開されることにより、事業上明らかに不利益を与えるものとは認められない。また、審査請求人は、既に97自治体において同種の提案を行い、「おくやみハンドブック」またはそれに類するパンフレットの導入を行っている。これらパンフレットは広く審査請求人と協働を行った自治体の住民が入手し得るものであって、本件提案書の内容に相当するノウハウに基づいて、冊子デザイン(それらがすべて同一のデザインではないにせよ)が行われたものであることに鑑みると、その多くのノウハウやデザインは、公表済みのものであると考えられる。また、審査請求人が解説しているWebページ上においても、当該提案書の一部ページと同様の内容が公表されていることも確認した。
 従って、実施機関において、当該文書p6~p10につき、条例8条第1項第2号に規定する法的保護の対象となるほどの具体的な不利益を与えると認められないとした点について問題はない。

第5 結論

 以上により、上記第1記載の通り、判断する。

中野区情報公開・個人情報保護審査会 

委員 岩 隈 道 洋 

委員 岸 本 有 巨 

委員 小 池 知 子 

委員 神 山 静 香 

委員 佐 藤 信 行(会長)


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