情報公開・個人情報保護審査会答申(第56号)

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更新日:2023年11月10日

答申第56号

令和5年8月9日

中 野 区 長 様

中野区情報公開・個人情報保護審査会 

会長 佐藤 信行 


 

中野区個人情報の保護に関する条例第33条第3項の規定に基づく諮問について(答申)


 下記に掲げる中野区個人情報の保護に関する条例に係る審査請求について(諮問)について、別紙のとおり答申します。


 ・令和4年6月21日付け4中総総第795号

第1 審査会の結論

 本件審査請求は、棄却すべきである。ただし、実施機関においては、審査請求人が本件審査請求を行ったという事実及びそこにおいて求めた訂正の内容について、現時点における審査請求人に係る情報として、世帯台帳に記録するべきか否かを検討するべきである。

第2 審査請求及び審査の経緯

1 自己情報訂正及び削除請求
 審査請求人は、令和3年2月16日付けで、請求に係る個人情報の内容欄に「生活援護課で保有している世帯台帳の記録 別紙あり」と記載し、また、別紙において次のような自己情報の訂正及び削除を求めた。
 訂正及び削除前の記述:
「令和元年(2019年)5月27日 自己情報開示請求で見当たらなかった主提出の書類について、キャビネット内から見つかったため、主に報告する。こういうことが過去にもあったとの指摘はあったが、それ以上の言及はなかった。」(太字部分は別紙では赤字表記である。)
 訂正及び削除を求める記述内容:
「令和元年(2019年)5月27日 自己情報開示請求で見当たらなかった主提出の書類について、キャビネット内から見つかったため、主に報告する。こういうことが過去にもあったとの指摘があった。全てとはこの事です。と言われた。
 なお、別紙には続けて「この文面通りでなくても、対象者が言っている事から全く外れてない文面であればよろしいのではないか。崩さなければ。」との記述があるほか、理由として、審査請求人と担当職員のやり取り等を記載している。

2 実施機関の決定
 実施機関は、令和3年3月1日付けで「世帯台帳記録(ケース記録)に、追記し訂正を行う。」との決定を行った。具体的には、「令和元年5月27日ケース記録のうち、「こういうことが過去にもあったとの指摘があったが、それ以上の言及はなかった。」との文言を正しくは「こういうことが過去にもあったとの指摘があり、続く発言からも今回を含めこれまでの福祉事務所の対応に強い憤りが感じられた。」であることを令和3年2月26日ケース記録に追記し、訂正する。」との内容であった。

3 審査請求
 審査請求人は、令和3年6月3日付けで、上記自己情報訂正決定に対して、別紙を付して、審査請求を行った。請求の趣旨は、原決定による訂正を不服として、訂正後の文章を次のようにすることを求めるものである。「自己情報開示請求で見当たらなかった主提出の書類について、キャビネット内から見つかったため、主に報告する。こういうことが過去にもあったとの指摘はこれまでの面談の際に幾度もあった。今回出てきた事に関して主から「全てとはこのことです。」と強い言葉があった。」
 また、審査請求人は、審査請求の理由についても別紙で述べている。

4 弁明書の提出
 実施機関は、令和3年8月12日付けで「「本件審査請求を棄却する。」との裁決を求める。」とする弁明書を提出した。

5 当審査会への諮問
 区長は、令和4年6月21日付けで条例第33条第3項に基づき、当審査会に対し、本件審査請求に係る諮問を行った。

6 実施機関からの意見聴取
 当審査会は、中野区情報公開・個人情報保護審査会条例第9条第1項に基づき、令和4年9月20日に実施機関から意見聴取を行った。

7 反論書の提出
 審査請求人は、令和4年9月22日付けで反論書を提出した。

第3 実施機関及び審査請求人の主張の整理

1 実施機関の主張
 実施機関は、弁明書において、大旨、次のように主張している。
(1)「ケース記録の令和元年(2019年)5月27日の記載部分は同月22日に審査請求人の担当査察指導員であった○○職員が審査請求人と面談をした際の内容を令和元年(2019年)5月27日付けで記載したものであるが、○○職員は同月22日の面談時に審査請求人から「全てとはこの事です。」との発言があったか否かをはっきりとは覚えておらず、事実確認のできないことをケース記録として残すことはできないことから、「全てとはこの事です。」との追記を行わないこととする一方、「それ以上の言及はなかった。」との記載は正確ではないことから、訂正することとし」た。
(2)「本件訂正・削除請求に係る請求書の別紙に記載されていた「憤りを覚える。」との点については、令和元年(2019年)5月22日の面談時において○○職員も感じていたことから、直接的に訂正・削除を求められていた部分ではないが、便宜上、「続く発言からも今回を含めこれまでの福祉事務所の対応に強い憤りが感じられた。」との記載を追記することとし」た。
(3)「ケース記録は、審査請求人の日常的自立助長のために、ケースワーカーや査察指導員が日々の業務遂行や他の職員への引継ぎが可能な程度に記録しているものであり、その範囲を超える細かいやりとりを一言一句漏らさずに正確に記録する性質を有するものではなく、福祉事務所の対応記録として簡潔かつ客観的なものとし、誰が見てもわかりやすい文章であることが求められる。ケース記録の訂正が求められるのは、客観的事実関係からうかがわれる趣旨や印象と明らかに異なるものを記載している場合に限られ、それが自己の情報であったとしても、審査請求人の求めのままに訂正・削除する性質を有するものではない。」

2 審査請求人の主張
 審査請求人が提出した本件審査請求に係る自己情報等訂正・削除・中止請求書、審査請求書及び反論書にそれぞれ記載されている事柄を総合すると、審査請求人は、実施機関に審査請求人に係る自己情報の訂正は、事実と異なる点を含んでおり、先行する自己情報開示請求対象文書の後に発見されたものを含むことを意味する「全てとはこの事です。」という表現を用いたことを記録しないことが違法又は不当であると主張している。

第4 審査会の判断

 本件は、実施機関が行った審査請求人の世帯台帳記録への元記載については、その一部が不適切であったことを実施機関が認め、付記の方法による訂正を行ったところ、審査請求人がその付記内容について不服を申し立てているものである。
 争点は、審査請求人においては、先行する自己情報開示請求においていったん不存在とされた文書が後に発見されたことに対して、対象文書の「全てとはこの事です。」との表現を用いたことが重要な事実であって、世帯台帳に記録されるべきと考えているところ、実施機関においては、(1)当該発言があったか否かをはっきりとは覚えてないこと、(2)世帯台帳の記録は、業務遂行や他の職員への引継ぎが可能な程度に記録しているものであり、その範囲を超える細かいやりとりを一言一句漏らさずに正確に記録する性質を有するものではなく、福祉事務所の対応記録として簡潔かつ客観的なものとし、誰が見ても分かりやすい文章であることが求められるから、ケース記録の訂正が求められるのは、客観的事実関係からうかがわれる趣旨や印象と明らかに異なるものを記載している場合に限られる、としている点である。
 このうち、(1)については、審査請求人の提出した審査請求書等の記載は、当該発言があったと推認することが可能な程度の迫真性に富んでおり、他方で、実施機関が「覚えてない」との理由で自己情報訂正を否定するならば、結果として、如何なる自己情報も訂正不能となることから、その主張を認めることはできない。
 他方で、(2)については、確かに実施機関の主張するとおり、世帯台帳記録の作成主体は実施機関であり、その業務目的のために必要な内容を記載すべきであることが認められる。ところで本件においては、令和3年(2019年)2月22日の段階で審査請求人が「全てとはこの事です。」という表現を用いて憤りを表明したと主張しているということ自体は、事実として認められる。とすると、実施機関がいう「他の職員への引継ぎ」という世帯台帳記録の目的からみても、少なくとも、審査請求人が本件訂正についてなお不服を有しているという事実を示すものとして、上記内容が世帯台帳に記載されるべきか否かを検討する必要がある。ただし、その検討は、世帯台帳の目的や機能に鑑みると、生活保護行政を担う実施機関においてなされるべきものであって、原則として、当審査会がその判断を代置すべきものとは考えられないことから、当審査会としては、審査請求人が本件審査請求を行ったという事実及びそこにおいて求めた訂正の内容について、現時点における審査請求人に係る情報として、世帯台帳に記録するべきか否かを実施機関に検討することを求めるものである。

第5 結論

 以上により、上記第1記載のとおり判断する。

中野区情報公開・個人情報保護審査会 

委員 岩 隈 道 洋 

委員 岸 本 有 巨 

委員 小 池 知 子 

委員 神 山 静 香 

委員 佐 藤 信 行(会長)


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