情報公開・個人情報保護審査会答申(第8号)

ページID:816644496

更新日:2023年8月3日

答申第8号

平成29年11月13日

中野区長殿

中野区情報公開・個人情報保護審査会 

会長 佐藤 信行

中野区区政情報の公開に関する条例第13条第3項の規定に基づく諮問について(答申)

平成29年6月30日付け、29中経行第365号による下記の諮問について、別紙のとおり答申します。

中野区区政情報の公開に関する条例に係る審査請求について(諮問)

第1 審査会の結論

 生活保護法78条の決定等に関する区政情報の公開請求について、中野区長が中野区区政情報の公開に関する条例(以下「条例」という。)8条1項の規定により、全部非公開とした決定は不当であるため、以下4を除き、以下1ないし3のとおり決定を変更するべきである。

1 生活保護法78条の決定にあたってのケース診断会議録及び添付資料については、全部非公開決定を取消し、個人情報等を除いて公開するべきである。

2 生活保護不正受給に関わる被害届、告訴状及びその原議、添付資料については、全部非公開決定を取消し、法令により公開することができない旨、規定されている情報及び個人情報等を除いて公開するべきである。

3 生活保護法78条決定にあたっての自治体独自のマニュアル、申し合わせ事項については、全部非公開決定を取消し、全て公開するべきである。

4 自治体独自の生活保護不正受給防止のためのマニュアルについては、不存在を理由に非公開とした決定は相当である。

第2 審査請求及び審査の経緯

1 区政情報の公開請求

 平成29年2月15日付けで、本件の審査請求人(○○○○さん、以下「審査請求人」という。)は、条例7条1項の規定に基づき、実施機関である中野区長(以下適宜、「実施機関」又は「区長」という。)に対して、

(1)生活保護法第78条の決定にあたってのケース診断会議録および添付資料。平成26年度、27年度分すべて(以下「区政情報1」という。)

(2)平成24年度以降の生活保護不正受給に関わる被害届、告訴状およびその原議、添付資料全て(以下「区政情報2」という。)

(3)生活保護法第78条決定にあたっての自治体独自のマニュアル、申し合わせ事項(以下「区政情報3」という。)

(4)自治体独自の生活保護不正受給防止のためのマニュアル(以下「区政情報4」という。)

の公開請求を行った(以上を総称して「本件区政情報」という。)。

2 実施機関の決定

 実施機関は、上記第2 1の公開請求に対し、平成29年3月2日付けで、区政情報1ないし3については、情報の公開により、生活保護不正受給への適正な対応を著しく妨げること(条例8条1項3号)、また、区政情報4については、区として作成しておらず存在しないことを理由として、本件区政情報を全部非公開とする決定(以下「本件非公開決定」という。)を行うとともに、審査請求人に通知した。

3 審査請求

 審査請求人は、本件非公開決定を不服として、条例13条1項に基づき、同年5月26日付けで、実施機関に対して審査請求を行った。審査請求人は、非公開とされた本件区政情報のうち、情報を公開することにより、生活保護不正受給への適正な対応を著しく妨げるおそれ(条例8条1項3号該当)を理由に非公開された区政情報は公開されるべき情報であると主張している。

4 当審査会への諮問

 実施機関は、同年6月19日付けで弁明書を提出した。これに対し、審査請求人は、同月28日付けで反論書を提出した。区長は、当審査会に対し、条例13条3項に基づき、同月30日付けで上記審査請求の審査の諮問をした。

第3 実施機関及び審査請求人の主張の整理

1 実施機関の主張

 実施機関の主張によると、本件公開請求を全部非公開とした理由は、次のとおりである(弁明書、実施機関からの事情聴取)。

 すなわち、まず、区政情報1及び2については、非常に機密性の高い個人情報が大量に含まれていることはもちろんのこと、保護の不正受給の方法や処分決定までの経過及び処分の軽重等を公開することで保護受給者が不正受給の手法を模倣するようになり、適正な保護の執行を著しく妨げるおそれ(条例8条1項3号イ)があるとする。

 次に、区政情報3については、不正受給に関する具体的な事例、処分に関する実務・留意点が記載されており、それを公開することは不正受給を誘発する可能性が小さくなく、それを公開することは区政の公正又は適正な執行を著しく妨げるおそれ(条例8条1項3号イ)があるとする。

2 審査請求人の主張

 審査請求人は、まず、個人の氏名・住所等の個人情報は非開示とし、その他については条例8条2項を適用して公開すべきであるとする。また、不正受給の具体例や処分経過を公開することが他の生活保護受給者の模倣や不正受給を誘発するとの指摘に対しては、根拠のない主張であり、保護受給者に対する著しい偏見に基づくものであるとする。

第4 審査会の判断

1 例外として非公開

 中野区の情報公開制度は、区民の知る権利を保障し、区民と区との情報の共有を図ることが住民自治と開かれた区政運営の推進にとって不可欠の要件であるとの考えを基礎とするものであるから、実施機関は公開請求があったときは、原則として請求情報を公開しなければならない(条例1条、8条柱書)。

 したがって、実施機関が請求情報を非公開とするためには、条例8条1項各号の定める事由を充足する例外的な場合に限られる。

2 非公開事由の検討

(1)区政情報1(生活保護法第78条の決定にあたってのケース診断会議録及び添付資料。平成26年度、27年度分すべて)について

ア 条例8条1項3号イの非公開事由該当性

 実施機関が非公開の根拠として挙げている条例8条1項3号イは、「監査、検査、取締り、租税の賦課又は徴収、契約、交渉、協議、争訟、調査研究、人事管理その他の事務に係る情報であつて、事務の性質上、当該情報を公開することにより、区政の公正又は適正な執行を著しく妨げるおそれのあるもの」を非公開事由として定めるものである。

 まず、生活保護法78条1項は、いわゆる生活保護費の不正受給をした者から、都道府県または市区町村等の長が保護費を徴収することができる旨を定めた規定であるが、生活保護の不正受給に係る保護費徴収の事務の情報は、事務の性質上それ自体からして、公開すると、当該事務の公正又は適正な執行を著しく妨げる性質があるものとは解されない。したがって、当該事務に関する区政情報が上記の非公開事由に該当するかを判断するにあたっては、上記第4 1に記載したとおり、非公開が例外的な場合であることに鑑み、「区政の公正又は適正な執行を著しく妨げるおそれ」があるかを慎重に検討しなければならない。

 実施機関は、保護の不正受給の方法や処分決定までの経過及び処分の軽重等を公開することで保護受給者が不正受給の手法を模倣するようになることを非公開の根拠として主張する。しかしながら、弁明書の記載及び実施機関からの事情聴取内容を検討した限りにおいて、区政情報1を公開することと、不正受給の手法が模倣されるなどの弊害が生じることとの関係性について、実施機関から合理的な説明がなされたとはいえない。

 また、一般に、保護受給者は、保護費以外の収入を得た場合には、当該収入を申告するよう義務づけられており、収入を得た場合には、速やかに申告するように担当の職員等から指導等を受けているから、公開された区政情報1の情報を契機として他の保護受給者が不正受給を行った事実やその方法を知ったとしても、その方法を模倣して新たに不正受給をすることは考え難い。むしろ、不正受給に対する処分やその決定までの経過及び処分の軽重等を公開することで、今後の不正受給を抑止する効果があることはもとより、生活保護行政の透明性を高めることに繋がるものである。

 したがって、区政情報1については、条例8条1項3号イの非公開事由はないため、同規定を根拠として、区政情報1を全部非公開とした実施機関の決定には理由がない。

イ その他の非公開事由該当性

 ケース診断会議録及び添付資料には、被保護世帯の世帯主及び家族の氏名、住所、生年月日、勤務先、入通院先の病院等の情報が含まれており、これらの個人情報及び個人を識別しうる情報(以下「個人情報等」という。)については、原則非公開となる(条例8条1項1号)。今回、実施機関は、条例8条1項1号の非公開事由該当性については検討していないが、区政情報1については、個人情報等に該当する部分を特定し、非公開部分を検討するべきである。

ウ 小括

 よって、区政情報1に含まれる個人情報等について、一部非公開とするべきである(条例8条1項1号)が、その他の情報については、公開するべきである。

(2)区政情報2(平成24年度以降の生活保護不正受給に関わる被害届、告訴状およびその原議、添付資料全て)について

ア 条例8条1項3号イの非公開事由該当性

 実施機関は、区政情報2についても、非公開とした理由について、保護の不正受給の方法や処分決定までの経過及び処分の軽重等を公開することで保護受給者が不正受給の手法を模倣するようになることを挙げる。

 しかしながら、弁明書及び実施機関からの事情聴取によれば、実施機関は、抽象的に不正受給の方法を模倣されるおそれを主張するのみで、実施機関からは、区政情報2に含まれるいかなる情報を公開することで、具体的にどのような模倣等の弊害が生じうるのかといった説明はなされなかった。また、保護受給者は、公開された区政情報2を契機として他の保護受給者が不正受給を行った事実やその方法を知ったとしても、その方法を模倣して新たに不正受給をすることは考え難いことは、上記第4 2(1)アに記載したとおりである。

 したがって、区政情報2については、条例8条1項3号イの非公開事由はないため、同規定を根拠として、区政情報2を全て非公開とした実施機関の決定には理由がない。

イ その他の非公開事由該当性

(ア)区政情報2に含まれる対象文書

 区政情報2は、大きく1「生活保護不正受給に関する被害届の提出について」と題する書面(以下、同書面及び添付書面を併せて「書面1」といい、書面1本文のみを「書面1本文」という。)、2「生活保護費の不正受給に関する告発状の提出について」と題する書面(以下同書面及び添付書面を併せて「書面2」といい、書面2本文のみを「書面2本文」という。)の2つの文書で構成されている。

 このうち、書面1本文には、添付書面として、特定人の保護の経過が記載された書面(以下「書面1添付文書1」という。)、被害届(以下「書面1添付文書2」という。)、捜査機関作成の捜査関係事項照会書2通(以下2通を併せて「書面1添付文書3」という。)及び捜査機関作成の協力依頼文書(以下「書面1添付文書4」という。)が添付されている。

 また、書面2本文には、特定人の保護の経過が記載された書面(以下「書面2添付文書1という。」)、告発状(以下「書面2添付文書2」という。)、障害者加算及び重度障害者加算の支給根拠となる文書(以下「書面2添付文書3」という。)及び関連条文が記載された文書(以下「書面2添付文書4」という。)が添付されている。

以下において、これら書面1及び書面2を構成する文書について、それぞれ条例の非公開事由に該当するかを検討する。

(イ)書面1本文の非公開事由該当性

 同文書には、保護受給者の氏名、生年月日、住所等の個人情報が含まれていることから、これらの個人情報等については、原則非公開とするべきである(条例8条1項1号)。今回、実施機関は、条例8条1項1号の非公開事由該当性については検討していないが、書面1本文については、個人情報等に該当する部分を特定し、非公開とするべき部分を検討するべきである。

 また、同文書には、書面1添付文書3(捜査関係事項照会書)を特定する番号が記載されている。捜査関係事項照会は、刑事訴訟法(以下、「刑訴法」という。)197条2項を根拠として実施されているものであるところ、同条5項には、同2項の照会を行う場合において、「必要があるときは、みだりにこれらに関する事項を漏らさないよう求めることができる」と規定されている。実際に、書面1添付文書3については、捜査機関が刑訴法197条5項に基づき、照会に関する事項を漏らさないよう求めている。もとより、この求め自体は実施機関の条例に基づく公開又は非公開の判断を直ちに法的に拘束するものではないが、実施機関が、当該事案処理に係る事情を総合的に考慮して、当該情報が条例8条1項5号の「法令又は条例により公開することができない旨、規定されている情報」に該当すると自ら判断したことが違法又は不当であると判断すべき積極的な理由は認められず、捜査関係事項照会書を特定する番号についても、同文書を構成する情報の一部であると考えられることから、文書本体と同様に刑訴法197条5項の適用を受けるものと解される。

 したがって、書面1添付文書3を特定する番号は、「法令により公開することができない旨、規定されている情報」に該当することから、非公開とするべきである(条例8条1項5号)。

 さらに、書面1本文には、書面1添付文書4(捜査機関作成の捜査協力依頼文書)の内容及び同文書を特定する番号が記載されている。後記(カ)のとおり、書面1添付文書4は、「訴訟に関する書類」(刑訴法53条の2第1項)であるため、後記(エ)のとおり「法令により公開することができない旨、規定されている情報」に該当し、全体として非公開とするべきである(条例8条1項5号)。また、書面1添付文書4を特定する番号についても、同文書を構成する情報の一部である。したがって、書面1本文中、書面1添付文書4の内容が記載された部分及び書面1添付文書4を特定する番号については、非公開とするべきである。

 以上をまとめると、書面1本文については、個人情報等、書面1添付文書3を特定する番号、ならびに書面1添付文書4の内容が記載された部分及び書面1添付文書4を特定する番号については非公開とし、その他の情報については、公開するべきである。

(ウ)特定人の保護の経過が記載された書面(書面1添付文書1)の非公開事由該当性

 同文書には、保護受給者の氏名が記載されているところ、これは個人情報に該当することから、非公開とするべきである(条例8条1項1号)。今回、実施機関は、条例8条1項1号の非公開事由該当性については検討していないが、書面1添付文書1については、個人情報に該当する部分を特定し、非公開部分を検討するべきである。

 また、書面1添付文書1には、書面1添付文書3を特定する番号が記載されているところ、上記(イ)において述べたとおり、同情報は刑訴法197条5項の適用を受けるため、非公開とするべきである(条例8条1項5号)。

 さらに、書面1添付文書1には、書面1添付文書4の内容が記載された部分及び書面1添付文書4を特定する番号が記載されているところ、上記(イ)において述べたとおり、同情報は、「訴訟に関する書類」(刑訴法53条の2第1項)の内容であるから、非公開とするべきである(条例8条1項5号)。

 以上から、書面1添付文書1については、個人情報、書面1添付文書3を特定する番号、ならびに書面1添付文書4の内容が記載された部分及び書面1添付文書4を特定する番号については非公開とし、その他の情報については、公開するべきである。

(エ)被害届(書面1添付文書2)の非公開事由該当性

 刑訴法53条の2第1項は、「訴訟に関する書類」について、行政機関の保有する情報の公開に関する法律(以下「情報公開法」という。)の適用を除外している。そして、同規定にいう「訴訟に関する書類」について定義した規定はないが、下級審裁判例によれば、「書類の性質・内容の如何を問わず、被疑事件・被告事件に関して作成された書類をいい、裁判所ないし裁判官の保管する書類に限らず、検察官・弁護人・司法警察員その他の者が保管しているものも含まれると解するのが相当である」と判示されている(平成16年1月16日大阪地裁判決(平成14年(行ウ)第156号))。また、ある文書がひとたび「訴訟に関する書類」に該当することとなった以上は、当該文書はその後も引き続き情報公開法の適用除外となるものと解される(平成26年4月16日東京地裁判決(平成24年(行ウ)第552号)参照)。

 被害届は、被害者が犯罪による被害を届け出るものであるが、被疑事件に関して作成された書面であり、当該事件が公訴提起された場合には、捜査の端緒として、重要な証拠書類になりうる書類である。したがって、書面1添付文書2は、「訴訟に関する書類」(刑訴法53条の2第1項)として、情報公開法の適用除外となるものと解される。もとより、条例は、国の情報公開法の適用除外となる文書について直ちに条例の適用がないとする規定を有さないが、実施機関が、上記の国の法令の趣旨を含めた当該事案処理に係る事情を総合的に考慮して、当該情報が条例8条1項5号「法令又は条例により公開することができない旨、規定されている情報」に該当すると自ら判断したことが違法又は不当であると判断すべき積極的な理由は認められないから、別紙も含め、全体として非公開とすることが許されるというべきである(条例8条1項5号)。

(オ)捜査機関作成の捜査関係事項照会書2通(書面1添付文書3)の非公開事由該当性

 上記(イ)において記載したとおり、書面1添付文書3については、捜査機関が刑訴法197条5項に基づいて、照会に関する事項について漏らさないように求めているものである。

 したがって、書面1添付文書3は、「法令により公開することができない旨、規定されている情報」に該当することから、全体として非公開とするべきである(条例8条1項5号)。

(カ)捜査機関作成の協力依頼文書(書面1添付文書4)の非公開事由該当性

 当審査会が内容を見分したところ、書面1添付文書4は、被疑事件に関して捜査機関が作成した書面であり、当該事件が公訴提起された場合には、捜査の端緒に関する書類として、重要な証拠書類になりうる書類であった。

 したがって、書面1添付文書4は、「訴訟に関する書類」(刑訴法53条の2第1項)であるため、上記(エ)において記載したとおり「法令により公開することができない旨、規定されている情報」に該当することから、全体として非公開とするべきである(条例8条1項5号)。

(キ)書面2本文の非公開事由該当性

 同文書には、保護受給者の氏名、生年月日、現住所及び旧住所、保護受給者の入院していた病院名等が記載されているところ、これらは個人情報等に該当することから、非公開とするべきである(条例8条1項1号)。今回、実施機関は、条例8条1項1号の非公開事由該当性については検討していないが、書面2本文については、個人情報等に該当する部分を特定し、非公開部分を検討するべきである。

以上から、書面2本文は、個人情報等については非公開とし、その他の情報については、公開するべきである。

(ク)特定人の保護の経過が記載された書面(書面2添付文書1)の非公開事由該当性

 同文書には、保護受給者が入通院していた病院名等が記載されているところ、これら情報は、個人を識別しうる個人情報等に該当することから、非公開とするべきである(条例8条1項1号)。今回、実施機関は、条例8条1項1号の非公開事由該当性については検討していないが、書面2添付文書1については、個人情報等に該当する部分を特定し、非公開部分を検討するべきである。

以上から、書面2添付文書1は、個人情報等については非公開とし、その他の情報については、公開するべきである。

(ケ)告発状(書面2添付文書2)の非公開事由該当性

 告発状は、捜査の端緒となる告発(刑訴法239条)の内容を示す文書であるところ、告発状は、被疑事件に関連して作成された書面であり、当該事件が公訴提起された場合には、当該事件の訴訟記録として保管されうる書類である。したがって、書面2添付文書2は、「訴訟に関する書類」(刑訴法53条の2第1項)として、情報公開法の適用除外となるものと解され、上記(エ)において記載したとおり、「法令により公開することができない旨、規定されている情報」に該当し、全体として非公開とするべきである(条例8条1項5号)。

(コ)障害者加算及び重度障害者加算の支給根拠となる文書(書面2添付文書3)及び関連条文が記載された文書(書面2添付文書4)について

これら書面については、非公開事由に該当する情報が記載されていないことから、全て公開するべきである。

(サ)小括

 よって、区政情報2に含まれる個人情報等について、一部非公開とするべきである(条例8条1項1号、条例8条1項5号)が、その他の情報については、公開するべきである。

 

(3)区政情報3(生活保護法第78条決定にあたっての自治体独自のマニュアル、申し合わせ事項)について

ア 条例8条1項3号イの非公開事由該当性

 実施機関は、区政情報3について、非公開とした理由について、実施機関において過去に実際に発生した不正受給に関する事案に基づいて作成された資料であり、これらを公開することで、保護受給者に対し、不正受給を誘発する可能性を挙げる。

 しかしながら、弁明書及び実施機関からの事情聴取によれば、実施機関は、抽象的に不正受給が誘発されるおそれを主張するのみで、実施機関からは、区政情報3に含まれるいかなる情報を公開することで、具体的にどのように不正受給を誘発するおそれが生じうるのかといった説明はなされなかった。また、一般に、区政情報3の公開を契機として、保護受給者が新たに不正受給を行うことは考えにくく、不正受給が誘発される可能性があるともいえない。さらに、実施機関によれば、区政情報3は、実施機関が厚生労働省通知や生活保護に関する文献等を参考にして、生活保護法63条及び78条の適用事例の事務処理手続について記載したものであるが、実施機関が参考とした厚生労働省の通知及び文献等の内容はいずれも公開されているものであった。

以上からすれば、区政情報3を公開したとしても、不正受給が誘発されるおそれがあるとはいえない。

したがって、条例8条1項3号イを根拠として、区政情報3を全て非公開とした実施機関の決定には理由がない。

イ その他の非公開事由該当性

区政情報3には、非公開事由に該当する情報が含まれているとは解されない。

ウ 小括 

以上から、区政情報3については、全て公開するべきである。

(4)区政情報4(自治体独自の生活保護不正受給防止のためのマニュアル)について

 実施機関は、区政情報4について、区として作成しておらず存在しないことを理由として、非公開決定を行っている。区政情報4について、作成・保有していないとの実施機関の説明には特段不合理な点は見当たらず、また、審査請求人からも区政情報4が存在することを裏付ける主張等はないことから、不存在を理由とする非公開決定は妥当である。

第5 結論

以上により、上記第1記載のとおり、判断する。

第6 本答申に際しての付言事項

 実施機関は、区政情報1ないし3について、これら区政情報を公開することで、保護受給者が不正受給の手法を模倣するようになることや不正受給を誘発する可能性があることを挙げ、条例8条1項3号イの非公開事由に該当することを理由に、本件非公開決定を行った。しかしながら、当審査会が検討したところ、実施機関が主張する非公開事由は、いずれも理由がないことは明らかであった。

 今後、実施機関において、情報公開請求に対し、非公開決定をする場合については、原則として請求情報を公開すべきと規定する条例の趣旨を踏まえ、適用条項及び非公開事由の該当性について、慎重に精査した上、決定するべきである。

中野区情報公開・個人情報保護審査会

委員 岸本 有巨

委員 熊田 裕之

委員 小池 知子

委員 幸田 雅治

委員 佐藤 信行(会長 )

関連情報

お問い合わせ

このページは総務部 総務課が担当しています。

本文ここまで

サブナビゲーションここから
サブナビゲーションここまで