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最終更新日 2015年11月16日
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情報公開審査会答申(第59号)

答申第59号
2015年3月3日

中野区長 殿

中野区情報公開審査会
会長 兼子 仁

中野区区政情報の公開に関する条例第13条第2項の
規定に基づく諮問について(答申)

2014年6月13日付け、26中経経第910号による下記の諮問について、別紙のとおり答申します。

中野区区政情報の公開に関する条例に係る異議申立てについて(諮問) 


1   審査会の結論

 課税業務支援システム開発・導入業務委託の事業者選定関係文書について、企画提案書及び機能要件一覧を一部非公開のうえ公開決定したことは妥当である。

2   異議申立て及び審査の経緯

(1) 公文書の公開請求

 中野区区政情報の公開に関する条例(以下「条例」という。)7条の規定に基づき、条例の実施機関である中野区長(以下適宜、「実施機関」又は「区長」という。)は、2014年4月2日付けで、課税業務支援システム開発・導入業務委託(以下「課税支援業務委託」という。)の事業者選定に関し提出された企画提案書及び機能要件一覧のうち、契約交渉順位1位のA社(以下「申立人」という。)の企画提案書及び機能要件一覧(以下「本件対象公文書」という。)の公開請求を受けた。

(2) 第三者たる異議申立人への意見照会

 実施機関は、これに対し、本件対象公文書を特定した上で、同年4月15日付けで、条例12条の2第1項の規定により、本件対象公文書中に情報が記載されている申立人に対し、意見書を提出する機会を付与した。
 これに対し、申立人からは、同年4月30日付けで、本件対象公文書について「公開には反対する。」旨の意見書の提出がなされた。

(3) 実施機関の決定

 実施機関は、上記公開請求に対し、同年5月30日付けで、企画提案書に記載されている情報セキュリティに関する体制(図)及び操作ログ履歴マスタ(図)部分を非公開とした一部公開決定(以下「本件公開決定」という。)を行うとともに、申立人に通知した。

(4) 異議申立て

 申立人は、本件公開決定を不服として、同年6月12日付けで、条例13条3項に基づき、公開するとされた本件対象公文書について、非公開とされるべき情報であるとして、実施機関に対して異議申立てを行った。

(5) 当審査会への諮問及び審査

 区長は、当審査会に対し、条例13条2項に基づき、同年6月13日付けで申立人の異議申立ての審査を諮問した。当審査会の審査手続において実施機関から同年9月24日付けで理由説明書が提出され、これに対し申立人は同年10月24日付けで意見書を提出した。
 その後、当審査会は同年10月28日に、実施機関からの事情聴取を行うとともに、同年11月27日に、申立人による口頭意見陳述を受けた。
 審査の過程において、当審査会は実施機関に本件対象公文書の文書の提出を求めた。
なお、交渉順位第1位となった申立人は、同年4月22日に中野区と課税支援業務委託契約を締結した。

3   当事者の主張と理由

(1)  申立人

 申立人は、2014年6月12日付けの異議申立理由書(以下「理由書」という。)において、本件対象公文書は非公開とされるべき情報であると主張している。その根拠として、おおきく次の2点をあげている。

ア 本件対象公文書は、「法人その他の団体に関する情報又は個人が従事する事業に関する情報で、当該情報を公開することにより、事業上明らかに不利益を与えると認められるもの」(条例8条1項2号)に該当する。
 その理由として、申立人が提案したシステムは、申立人が独自に所有しているパッケージシステムをベースに中野区が求める機能要件を盛り込んだものであり、1独自のルールエンジンを伴う「計算チェック機能」、2課税資料の帳票種別に応じて最も適切なOCRエンジンを自動で使い分ける「ハイブリッドOCR」機能を実装している国内唯一のパッケージシステムであり、公開されると競争上の優位性が著しく損なわれると主張している。また、自治体税務事務の分析内容や考えを企画提案書に記載するという手法も競争上の優位性を基礎付ける大きな特徴となっていると主張している。

イ 本件対象公文書のうち、企画提案書は、著作物に該当し、著作権法18条3項3号の「別段の意思表示」をしているので、著作権法により公表することができない情報に該当する。

 その後、申立人は、同年10月24日付けの意見書(以下「意見書」という。)において、理由書と同様、本件対象公文書は非公開とされるべき情報であるとしつつ、結論的には、実施機関の述べる区民に対する説明責任の点を考慮し、企画提案書の8頁~10頁のみを非公開とすることを求めた。その主張の根拠として、おおきく次の2点をあげている。

ア 著作権法18条3項3号の「別段の意思表示」に関しては、実施機関が公開決定の決定理由欄においては「別段の意思表示」に該当しないとしていたにも関わらず、理由説明書においては、その該当性を認めた上で、新たに著作権法18条4項5号を持ち出し、条例8条1項2号が著作権法18条4項5号にいう行政機関情報公開法(以下「公開法」という。)7条の規定に相当する規定であることを理由としていることについて、決定理由の変更・追加は許されないとともに、条例8条1項2号は同法7条の規定に相当する条例ではない。
 また、条例8条1項2号ただし書きの適用に関して、実施機関が「公益上特に必要と認める」理由としてあげている「プロポーザル方式の透明性の確保」及び「税金の使途についての透明性の確保」の観点からは、企画提案書に含まれる技術的な情報やノウハウに関する情報を公開する必要は認められない。

イ 条例8条1項2号本文の「事業上明らかに不利益を与えると認められる」場合に該当するかに関しては、技術的な情報やノウハウを基に競合他社が新たなアイディア・発想を得ることが考えられるし、申立人の手の内を知ることができること自体、他社にとっては今後の申立人との競争において大きなメリットを得ることができるのであり、これにより競争上の優位性が低下することは明らかである。特に、企画提案書の8頁~10頁は、「計算チェック機能」に関する具体的な説明を独自のパッケージシステム(ルールエンジンを独自に設計・開発した上で、自治体税務事務向けに各種ルールを設定したものがパッケージとして組み込まれている。)を実画面例を用いて説明しており、競合他社に対し最も競争上の優位性を有する部分である。
 また、企画提案書の表現内容は、表面的な表現手法のことではなく、分析の視点・観点及びそれに基づく分析の深さであり、競争上の優位性を基礎付ける重要な要素である。システム画面は中野区を想定した具体的なものとなっており、公開されると事業上明らかな不利益が生じる可能性がある。

(2)  実施機関

 実施機関は、同年5月30日付けの本件公開決定に関する通知書では、決定の理由として、次の3点をあげている。

ア 企画提案公募型事業者選定の実施要領において、あらかじめ条例に即し、原則公開するとしている。

イ 条例8条1項3号に規定する法人その他の団体に関する情報で、当該情報を公開することにより、事業上明らかに不利益を与えるとは認められない。

ウ 著作権法18条3項3号の「別段の意思表示」に当たらないと判断した。

その後、実施機関は、同年9月24日付けの理由説明書で、決定の理由として、次の2点をあげている。
ア 企画提案書は、競争上の優位性が著しく損なわれ、事業上明らかに不利益が生じる蓋然性についての具体的説明はないこと、企画提案書の表現方法については一般的な手法であり、事業上明らかな不利益が生じるとは考えにくい。
イ 著作権法との関係については、企画提案書は著作権法上の著作物に該当するが、機能要件一覧は著作権法の著作物ではない。条例8条1項2号ただし書きの除外規定は、著作権法18条4項5号にいう公開法7条の規定に相当するものである。本件については、「公益上特に必要と認める」理由として、「プロポーザル方式の透明性の確保」及び「税金の使途についての透明性の確保」をあげて、この考え方により公開する範囲を決定した。

4   審査会の判断

(1)  著作権法と情報公開制度の関係

ア   著作物の該当性

本件対象公文書のうち企画提案書は、審査会が見分したところ、申立人が所有しているパッケージシステムをベースに中野区が求める機能要件を盛り込んだものを「文章」や「図表」などによって創作的に表現したものであり、著作権法2条1項1号の「著作物」に該当する。

一方、機能要件一覧は、区が提示する様式により、機能要件に対する可否を記述しているものであり、創作的に表現したものとはいえないので、著作物ではない。 

イ   公表権と情報公開制度の調整

企画提案書は、未公表の著作物に該当するが、未公表の著作物の公表権については著作権法18条が定めており、公表権は同条1項により著作者が有する。ただし、同条3項及び4項において、著作者の公表権と情報公開制度の調整が図られている。

 第一に、著作権法18条3項3号により、著作者は「その著作物でまだ公表されていないものを地方公共団体…に提供した場合(開示する旨の決定の時までに別段の意思表示をした場合を除く。)、情報公開条例…の規定により当該地方公共団体の機関…が当該著作物を公衆に提供し、又は提示すること」について同意したものとみなされる。
 本件対象公文書については、著作者である申立人は、本件公開決定に先立ち、公開に反対する旨を表明しており、これは同号かっこ書きの「別段の意思表示」をした場合に該当すると解されるので、公開に同意したとみなすことはできず、同号は適用されない。
 なお、申立人は、実施機関が公開決定の決定理由欄においては「別段の意思表示」に該当しないとしていたにも関わらず、理由説明書においては、その該当性を認めた上で、新たに同法18条4項5号を持ち出していることを批判しているが、「別段の意思表示」の該当性を認めることは申立人の主張を認める方向での変更であり、問題はないと考える。さらに、情報公開に関する決定理由の変更・追加に関しては、最二小判平成11・11・19民集53巻8号1862頁は、「目的は非公開理由を具体的に記載して通知させること…自体をもってひとまず実現されるところ、本件条例の規定をみても、右の理由通知の定めが、右の趣旨を超えて、一たび通知書に理由を付記した以上、実施機関が当該理由以外の理由を非公開決定処分の取消訴訟において主張することを許さないものとする趣旨をも含むと解すべき根拠はないとみるのが相当である」と判示している。

 第二に、著作権法18条4項3号により、「情報公開条例…の規定により地方公共団体の機関…が著作物でまだ公表されていないもの(行政機関情報公開法第5条…第2号ただし書に規定する情報に相当する情報が記録されているものに限る。)を公衆に提供し、又は提示するとき」に公表権の規定を適用除外とする旨定めている。この規定は、公益上の義務的開示に関する規定を条例が有する場合の規定であるが、ここでの「行政機関情報公開法第5条…第2号ただし書に規定する情報に相当する情報」とは、「人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報」であり、本件対象公文書に適用することは難しい。

 第三に、著作権法18条4項5号により、「情報公開条例の規定で行政機関情報公開法第7条の規定に相当するものにより地方公共団体の機関…が著作物でまだ公表されていないものを公衆に提供し、又は提示するとき」に公表権の規定を適用除外とする旨定めている。この規定は、公益上の裁量的開示に関する規定を条例が有する場合の規定であるが、ここでの公開法7条の規定に「相当する」条例の規定をどのように捉えるかが問題となる。
 そもそも、同法7条は、同法5条2号本文で不開示事由を定めていることを前提として、公益上の理由による開示を認めるものであるので、不開示事由の基本的考えを定める同法5条2号本文と条例8条2号本文を比較する必要がある。同法5条2号本文では、不開示事由として、次の2事由を定めている。
 「法人…に関する情報…であって、次に掲げるもの。

イ 公にすることにより、当該法人…の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの

ロ 行政機関の要請を受けて、公にしないとの条件で任意に提供されたものであって、法人等又は個人における通例として公にしないこととされているものその他の当該条件を付することが当該情報の性質、当時の状況等に照らして合理的であると認められるもの」

 これに対して、条例8条1項2号本文では、非公開事由として、次の事由を定めている。
「法人…に関する情報…で、当該情報を公開することにより、事業上明らかに不利益を与えると認められるもの。」
 非公開事由について、条例の方が公開法よりも限定的に規定しており、条例の方が同法よりも公開すべき範囲が広い。
 つまり、同法5条2号本文で、正当な利益を害する「おそれ」があるものは不開示事由に該当すると定められているが、同法7条の規定は、この広く定められた不開示事由に該当する場合においても、公益上の観点から情報公開を優先すべき場合があることを認めた規定と解することができる。これに対して、条例8条1項2号本文は、事業上「明らかに」不利益を与えると認められるもの以外は広く公開するとしているものであり、同法5条2号本文の「おそれ」に該当する場合でも、公益上の観点から情報公開することを認めているという意味で、同法7条に優に「相当する」規定と解することができる。

 以上から、本件対象公文書に関する著作権法上の公表権の適用除外の可否を検討することは、すなわち、条例8条1項2号の適用の可否を検討することに他ならないと考えることができる。

(2)  非公開事由該当性

 条例1条(目的)に、「区民の知る権利を保障し、区民と区との情報の共有を図ることにより住民自治と開かれた区政運営を推進すること」とあるように、区が取得した企画提案書の非公開は、事業者利益保護を勘案しつつも、本来例外的に行うべきものであることを踏まえれば、区が取得した企画提案書の非公開は、事業者利益保護を勘案しつつも、本来例外的に行うべきものである。条例8条1項2号にいう「公開することにより、事業上明らかに不利益を与えると認められるもの」とは、法人等の事業活動に何らかの不利益を与える可能性があるというだけでなく、法人等の権利や競争上の地位、正当な利益が明らかに侵害されると認められる場合をいう。公開法が不利益性の判断を「害するおそれ」と規定しているのと比較して、条例は情報公開の範囲を広く捉えているところであり、条例上は、法的保護に値する程度の蓋然性をもって公開による事業上の利益侵害が生じ得る場合でなければならない。

 また、本件は、中野区の課税業務支援システムについての業務委託であり、中野区の行政活動そのものに関わるものである。当該業務をプロポーザル方式によって事業者を選定するために提出された企画提案書は事業者選定事務の透明性を確保し、区民に対する説明責任を果たすためには、原則全部公開することが公益上必要であると解される。中野区では、このことを明確にするため、応募事業者に対して、実施要領であらかじめ「区は、提出書類について、情報公開請求があった場合は、中野区区政情報の公開に関する条例に即し、原則公開する。」と明示している。

  申立人は、「技術的な情報やノウハウを基に競合他社が新たなアイディア・発想を得ることも考えられるし、異議申立人の手の内を知ることができること自体、他社にとっては今後の異議申立人との競争において大きなメリットを得ることができるのであり、これにより異議申立人の競争上の優位性が低下することは明らかである。」とするが、いかなる競争上の地位が害されるのかが有意味に主張、立証されてはいないと言わざるをえない。すなわち、当該情報が事業活動上の機密事項や生産技術上の秘密に属する内容であるならば、これが公開されることにより競争上等の地位が具体的に侵害されることが客観的に明白であろうが、本件対象公文書に関しては、申立人が有している競争上等の地位が当該情報の公開によって具体的に侵害されるとはいえない。

 申立人が意見書において最も競争上の優位性を有する部分として非公開を求めている企画提案書の8頁~10頁について見てみると、確かに、「計算チェック機能」に関する具体的な説明を実画面例を用いて説明している。しかし、「計算チェック機能」自体は一般的な機能であって、様々なチェックの方法がありうるところであり、計算チェックの具体的ソフト自体が記述されているわけでもなく、法的保護に値する程度の蓋然性をもって公開による事業上の利益侵害が生じるとはいえない。むしろ、企画提案書の重要部分として、他の事業者の企画提案との比較を行うことによって、事業者選定の妥当性を判断する材料となるものであり、公開すべき公益性が高いと言える。

 以上により、当審査会は前記1のとおり結論する。

中野区情報公開審査会

委員 兼子 仁(会長)
委員 岸本有巨
委員 幸田雅治
委員 佐藤信行
委員 府川繭子

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