情報公開審査会答申(第19号)
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更新日:2023年8月3日
答申第19号
1999年6月11日
中野区長 殿
中野区情報公開審査会
会長 井出嘉憲
中野区区政情報の公開に関する条例第13条第2項の規定に基づく諮問について(答申)
1997年11月4日付、9中総総第389号による下記の諮問について別紙のとおり答申します。
区政情報非公開決定処分に係る異議申立てについて(諮問)
1.審査会の結論
本件公開請求にかかる情報のうち、営業者住所を非公開とし、一部公開決定をしたことは妥当である。
2.異議申立ての趣旨および経緯
本件異議申立人(以下「申立人」という。)は、1997年8月21日、中野区区政情報の公開に関する条例(以下「条例」という。)に基づき、実施機関である中野区長(以下「区長」という。)に対し、申立人の指定した10件の飲食店に関し、職員衛生法に基づく飲食店営業許可情報のうち営業者氏名、営業者住所および許可日について公開請求をした。区長は1997年8月28日付で、公開請求情報のうち個人事業者(7件)の営業者住所と文書不存在の情報(1件)を除き一部公開決定をした。申立人は、この決定を不服として1997年10月24日個人事業者の営業者住所の公開を求めて異議申し立てをした。そして、1997年11月4日付で、区長から中野区情報公開審査会(以下「審査会」という。)に対し、条例に基づく諮問がなされたものが本件である。
3.申立人の主張
(1) 個人事業者の営業者住所は、個人情報にあたらない。
1 条例で保護される個人情報は、個人生活情報であり、a)個人生活に関する情報であって、b)特定の個人を識別できるもの(条例2条1項3号)とされる。
個人事業者の自宅住所は、特定の個人の識別を可能とするが、中野区区政情報の公開に関する条例運営要綱(以下「要綱」という。)別表3に例示される個人生活情報の中には「5 居住状況に関する情報」とあるだけで、自宅住所そのものは例示されていないから、個人生活情報には含まれていない。
2 一般の個人生活情報と異なり、公の場で営業を行う当該飲食店の責任者の営業者住所は、個人の事業情報である。また、飲食店は、法人登録をしている場合でも会社所在地は個人の自宅である場合が多く、個人か法人かの区別によって公開か非公開かを判断することは不合理である。
(2) 個人事業者の自宅住所が個人情報にあたっても、申立人の団体としての公益性および業務としての公益性から、公益上公開すべき例外的場合に当たる(条例9条1項)。
申立人は、音楽著作権を管理する国内唯一の団体で、民法上の社団法人であり公益性をもつ。著作権については、著作権法により民事上の責任のみならず刑事上の処罰規定も設けられている(著作権法112条、114条、119条)。したがって、著作権者の権利保護は、個人の法益であるとともに社会的法益として観念されるべきである。
(3) 個人事業者の自宅住所が個人情報にあたっても、営業者住所を公表することはすでに慣行又は義務になっており、公開しても営業者のプライバシーを侵害することはない。
飲食店の営業許可書には営業者住所があり、保健所より掲示を指導されている。食品衛生監視票にも営業者住所の記載があり、店内に貼付することになっている。よって、これらの書類を店内に掲示することにより、営業者住所を公表することが慣行又は義務となっている。
(4) 特別区を含むほかの自治体において本件情報は情報公開又は情報提供されているので、同様に情報公開ないし情報提供すべきである。
4.実施機関の主張
(1) 個人事業者の営業者住所は、個人情報にあたる。
1 営業者氏名と営業者住所の組合わせで特定の個人として識別され、かつ、当該個人の住所という個人生活情報の公開を請求するものに該当する。
2 申立人の指摘する要綱別表3は、個人生活情報の例示であり(要綱10条1項)、住所、氏名は当然に個人生活情報に含まれる。
3 事業を営む個人の事業に関する情報は、個人生活情報と事業情報が判然と区別できない場合もあるが、このような場合は個人生活情報と考え保護する必要がある。
(2) 個人生活情報を公開すべき公益上の必要性があるなどの合理的理由がある場合にあたらない。
1 申立人の存在そのものに公益性があるとしても、それだけでは個人情報公開の理由にならない。
2 申立人が、著作権者の権利擁護(著作権料の徴収)を目的とした情報収集のため公開を求めることは、個人情報公開を相当と認める合理的理由に該当しない。
(3) 営業者氏名とともに営業者住所を公表することは、慣行化、義務化されていない。
営業許可書は、食品衛生法21条の規定により営業を許可されたものに対し、中野区食品衛生法施行細則7条により交付されるもので、営業者氏名、営業者住所等が記入される。営業許可書の掲示を義務付ける法令上の規定はないが、昭和48年2月2日付東京都衛生局環境衛生部長の通知により、営業許可書に「必ず見やすいところに掲示してください」との記載を入れ、掲示を指導している。しかし、この営業許可書掲示の指導は、円滑な営業許可更新の事務手続きの遂行のために、営業者に許可期限を認識させるためのものである。食品衛生間指標は、食品衛生法施行規則18条の3第2項の規定により食品衛生監視員によって作成され、その写しは当該営業施設内に貼り付けられるが、営業者住所の記入欄はない。また、これらの書類が必ず飲食店の店内に貼付されているわけではない。
(4) 情報公開制度や個人情報保護制度の運用は、自治体によって異なっており、本件請求に対する情報公開の可否は、中野区が独自に判断すべきものである。
5.審査会の判断
(1) 本件情報は個人情報か
当審査会の審査によれば、本件情報は個人事業者の連絡先であり、届出の際に住民票など提出は求めておらず、必ずしも自宅住所であるわけではない。しかし、実態としてはほとんど個人事業者の自宅住所(居所)と判断される。
したがって、本件情報は個人事業情報の側面を有するものの、個人の住所すなわち個人生活情報の根幹として保護されるべきものである。
(2) 公益上公開すべき例外的場合にあたるか
申立人は、自己が公益団体であることを理由として公開を求めているが、団体の公益性の如何ではなく、公開請求する理由に公益性があるか否かが問題となる。さらに、申立人は申立人の業務の公益性から公開すべきであると主張しているが、本件情報が必要であると主張されている申立人の業務は、著作権料の徴収、著作権者の権利保護である。申立人は、著作権法上に刑事罰の規定があることをもって社会的法益が存するとし、また相手方に対し刑事罰を免れさせるという意味があると主張している。しかし、仮にそうであっても、これらの業務が個人生活情報を公開させるべき公益上の理由にあたるとまでは言えない。
また、本区の情報公開は、何人に対しても公開するものであり、公開先を特定して公開する限定公開を認めていない。したがって、いかに申立人が主張する業務の公益性を重く見ても、申立人にだけ情報公開するということはできない。(後述(4)参照)
(3) 個人事業者の住所を公表することが慣行又は義務になっているか
当審査会の審査によれば、実施機関の主張どおりの事実が認められ、また、現実にこれらの営業許可書や食品衛生監視票を店内に掲示している飲食店は少数にとどまる。よって、個人事業者の住所が、これらの書類の店内掲示によって一般に知られることはほとんどなく、個人事業者が予め同意しているのでない以上、その営業者住所を公開することはできない。
(4) 本件情報を申立人に情報提供することができるか
以上検討してきたように、本件情報は公開されるべきではなく、実施機関の判断は妥当である。
なお、申立人は、申立人に対する情報提供も求めているようであるので、この点について検討する。
申立人が本件情報の公開を求めるのは、前述のとおり著作権料の徴収のため営業者を特定する必要があるからである。しかし、そのために本件情報が必要不可欠であるとまでは考えられない。著作権料の公平、円滑な徴収を図るには、まず著作権についての理解を深める一般的広報活動が重要である。また、営業所の住所(当該飲食店の所在地)は判明しているので、著作権料不払い個人事業者に対し個別に接触、説明することは可能である。さらに不払い者に対し厳正な法的手続きを取るなどのために個人事業者の住所を知る必要が生じれば、別途弁護士会照会制度(弁護士法23条の2)などの手続きも考えられる。したがって、著作権料の徴収のために、特別に個人事業者の住所を申立人に対し情報提供する必要性も認められない。
6.本件不服審査の処理経過
- 1997年10月24日、申立人は、1997年8月28日付の公開請求に対する区政情報一部公開決定処分に不服があるとして、条例13条1項の規定に基づき、実施期間に異議申立てを行った。
- 1997年11月4日、実施期間は、本件異議申立てにつき条例13条2項の規定に基づき、当審査会に諮問を行った。
- 1997年12月4日、審査会は、実施機関に対して非公開理由説明書の提出を求めた。
- 1998年6月3日、実施期間から審査会に対して非公開理由説明書が提出された。
- 1998年7月1日、審査会は、実施機関から提出された非公開理由説明書の写しを申立人に送付し、意見書の提出を求めた。
- 1998年8月31日、審査会は、申立人から意見書を受理した。
- 1998年1月25日、審査会は、実施期間からの意見を聴取した。
- 1999年2月15日、審査会は、申立人からの意見を聴取した。
- 審査会は、本件異議申立てにつき、1998年11月28日、12月24日、1998年1月14日、2月4日、2月12日、3月23日、4月6日、5月22日、6月26日、7月11日、8月14日、9月11日、10月13日、11月13日、12月11日、1999年1月25日、2月15日、3月5日、4月12日、5月17日、と審議を重ね、上記結論をえた。
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