情報公開審査会答申(第15号)
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更新日:2023年8月3日
答申第15号
1997年12月24日
中野区長 殿
中野区情報公開審査会
会長 井出嘉憲
中野区区政情報の公開に関する条例第13条第2項の規定に基づく諮問について(答申)
1996年10月28日付、8中総総第40号による下記の諮問について別紙のとおり答申します。
区政情報の公開に関する条例に係る異議申立てについて(諮問)
1.審査会の結論
本件の2つの異議申し立ては法的に一体であると解され、異議申立てに係る公文書が不存在であると認められるので、棄却することが妥当である。
2.異議申立ておよび審査の経緯
(1) 異議申立人(以下「申立人」という。)は1996年3月6日、中野区区政情報の公開に関する条例(以下「条例という。)7条に基づき、実施機関である中野区長(以下「区長」という。)に対し、「区政協力員・○○○○氏の『当地域における事業に対する取り扱いについて』に対する文書等の回答の全部」について公開請求をし、実施機関・区長から同月19日付で、「上鷺宮住区協議会における2月16日役員会、2月23日全体会の一切」の「公開決定通知書」を受けた。しかし申立人は同年4月1日、公開決定された当該文書はすでに図書コーナーにおいて公表済みのもので、請求対象情報はそれ以外のものであると主張し、原処分を非公開決定に変更することをも求めて、異議申立てを行った(以下「1次申立」という。)。
(2) それに対して区長は、当審査会に諮問する前、同年4月4日付で「文書の不存在」を理由とする「非公開決定通知書」を発した。これに接した申立人は同月10日、1次申立てに関する不諮問の問題性及び請求対象情報の存在を主張しつつ異議申立てを行っている(以下「2時申立て」という。)。
(3) 区長は、同年10月28日、上記2つの異議申立てにつき、一括して当審査会に諮問をした。そして実施機関・区長から、1997年1月10日付の非公開「理由説明書」が提出され、これに対し申立人からは、同年3月31日、一括の「意見書」が提出されている。
3.審査会の判断
(1) 本件における争点は、法解釈問題を主としていると認められるので、それとしてまず職権による法的判断をしていく。
本件「1次申立て」の対象とされた1996年3月19日付の「公開決定通知書」は、形式上及び実施機関の意思としては、全部公開決定であるが、異議申立ての対象処分(原処分)としては、その客観的実質にかんがみた趣旨解釈を施す必要がある。
その際、前提となる「公開請求書」の趣旨解釈が関連し、請求書の真意が自明でないかぎり請求書の文面及びその後の本人の表示意思とに則した解釈となり、本件の場合にあっては、請求情報に当たる文書の「全部」を公開請求したものと解される。
そこで本件当初の原処分は、形式上は全部「公開決定」ではあるが、申立人の請求真意には対応していないもので、実質的には一部非公開、公開請求一部拒否の処分をその半面に含んでおり、申立人の第1次の異議申立てはその部分の処分を対象にしたものであった、と解すべきであった。
(2) ところが、申立人はその「1次申立て」の中で、原公開処分を非公開処分に変更すべきことを主張したため、異議審査庁・区長によって、それは不利益変更を自ら求める不適法な異議申立てであるとみなされるにいたった(理由説明書、参照)。
しかしながら、上記のとおり一部非公開の実質ありとしたと解釈されるべき申立人の本件「公開決定」に対する異議申立ては、適法なものとして受理審査されるべきであった。
(3) 本件のその後の経緯において、区長は同年4月4日付で、1次申立ての処理とは別途に、申立人の公開請求に対する「非公開決定」を行ったので、つぎにその趣旨解釈が問題となる。これは、上記の実質的趣旨解釈の筋に照らせば、すでに原「公開決定通知書」に半面において含まれていた一部非公開決定を追加的に確認した第2次処分通知であって、原公開処分をすべて取消し・変更したものと解すべきではなかろう(原「公開決定」も申立人の公開請求に部分的に対応した一部公開処分を成していたと解されるからである)。
(4) さらに申立人は、その第2次非公開処分に対して本件「2次申立て」をしたわけであって、これは申立人側としてはむりからぬ次第であると認められる。
しかしここでも客観的趣旨解釈としては、この「2次申立て」は元来「1次申立て」に含まれていたところと解され、結局本件2つの異議申立ての審査は法的に一体のものとして一括することが相当と考えられる(この点、理由説明書に表明された区長側の主張が結論的に正当である)。
(5) さて本件異議審査における1争点として、申立人は、区長が「1次申立て」について条例13条2項により速やかに当審査会に諮問すべきであったのに、それをせずに別途職権で第2次の非公開決定をしたことは法的に疑問であると主張している(4月10日付異議申立書)。確かに、「1次申立て」が「2次申立て」と同質的で全く不適法でもなかったとすれば、区長は「1次申立て」について当審査会に諮問をすべきであったと解される。
しかし本件の経緯に照らすとき、区長が諮問前に第2次の非公開決定を通知したことは、現「公開決定通知書」の半面に含まれる一部非公開処分の部分をその「文書不存在」の理由ともども追加的に明示する意味あいで、これまたむりからぬ次第であったと認められ、現にその結果、本件2つの異議申立てを一括審査する際の対処分が明確になるメリットを生じているのである。したがって、区長が「1次申立て」につき直ちに当審査会に諮問しなかった法的「瑕疵」は、本件「2次申立て」後の一括諮問によって「治癒」されたものと解するのが相当である。
(6) 本件の経緯が以上のように錯綜した制度的原因は、やはり、そもそも「公開請求書」が、存在する「区政情報」(公文書)の件名を特定することなく請求情報の「内容」を記すだけで受理されるしくみとなっており(条例施行規則第1号様式、参照)、その結果、請求受理時において必ずしも請求対象「区政情報」(公文書)に関する請求者の真意が実施機関側に把握されないという事態が生じうること、に存すると考えられる。しかも、こうした「情報内容」請求書受理方式は請求者の知る権利を保障するメリットを多く有していると認められるので、上記のデメリットはその半面に伴いうるところとして、今後とも関係者に留意されていなければならないであろう。
(7) 以上を要するに、本件の1次・2次申立ては一括審査されるべきもので、その審査対象は、申立人の請求を実質的に拒否した非公開処分の部分であると解されるので、以下、それに関する対象文書不存在をめぐる争点について判断する。
申立人は、公開請求の対象情報は、原「公開決定」で公開とされた文書以外にも存在していると主張し、その理由として、平成8年1月12日上鷺宮地域センター住区協議会開催記録書における地域センター所長の発言記録を上げている(1996年4月10日異議申立書)。
これに対し実施機関・区長は、上記の記録に見られる「『文書等で回答を出している』という発言の真意は、○○氏が○○要望書よりも前に提出したほかの文書に対する区の回答文書をさしたものであった」と主張している(理由説明書)。
当審査会として職権で調査した結果、事実は実施機関側が主張するとおりであって、申立人が請求する他の回答文書は不存在であると認められる。
したがって、申立人に対する別途の口頭説明書等の情報提供は別として、本件2つの異議申立ては、結局理由がないので、一括して棄却の決定をするのが妥当であると判断される。
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