情報公開審査会答申(第14号)
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更新日:2023年8月3日
答申第14号
1997年9月30日
中野区長 殿
中野区情報公開審査会
会長 井出嘉憲
中野区区政情報の公開に関する条例第13条第2項の規定に基づく諮問について(答申)
1996年9月27日付、8中総総293号による下記の諮問について別紙のとおり答申します。
区政情報一部公開決定処分に係る異議申立てについて(諮問)
1.審査会の結論
本件情報公開請求に係る文書のうち、中野区長が一部公開としたことは、「所有権者別土地面積及び買収金額一覧のNo13.M」との土地売買契約書を除いて妥当である。「所有権者別土地面積及び買収金額一覧No.13.M」との土地売買契約書は、印影部分を除き全部公開することが妥当である。
2.異議申立ての趣旨及び経緯
本件異議申立て人(以下「申立人」という。)は、1996年7月16日、中野区区政情報の公開に関する条例(以下「条例」という。)に基づき、実施機関である中野区長(以下「区長」という。)に対し、「上野原スポーツ・学習施設の土地購入について」の区政情報の公開を請求したが、同年7月24日付で、区長から一部公開決定を通知された。申立人はこの決定を不服として、1996年9月11日、区長に対し異議申立てをした。そして、1996年9月27日付で、区長から中野区情報公開審査会(以下「審査会」という。)に対し、条例に基づく諮問がなされたものが本件である。
審査会の審理において、区長は1996年10月28日付で区政情報一部公開理由説明書を提出し、これに対して申立人は、同年12月4日付で意見書を提出した。ついで1997年5月21日、審査会に対し口頭意見陳述を行っている。
3.実施機関の主張
(1) 購入先名は、特定個人を識別できるものであり、個人情報にあたる。
本件は、個人の財産に関する情報であり、 個人情報の中でも最も他人に知られたくない情報である。「所有権者別土地面積及び買収金額一覧のNo.13.M」(以下「M」という。)の場合は、宗教法人であって、個人生活と宗教法人活動の分離が困難な法人と考えられる。個人商店は企業活動をするものとして法人情報に含まれるが、宗教法人は個人商店よりも個人生活性が高いと解せられる。従って、企業活動と異なり個人情報として扱うべきである(理由説明書、口頭意見陳述)。
(2) 個人情報である本件の購入先を、特別に公開すべき合理的理由は本件には存在しない(条例9条1項)。
Mの場合は、不当な契約ではない。また、区に損害を与えてはいない。
1平方メートルあたりの契約単価が他と異なる理由は、Mの土地は、公簿上の面積と公図上の算定面積が大きく異なり、実際の面積(実測はしていない)は公図上の面積に近いと推測されたので、公図上の面積(公簿約5倍)を勘案し、1平方メートルあたりの契約単価を他の3倍強としたのである(理由説明書、口頭意見陳述)。
4.申立人の主張
(1) 契約の当事者の一方額(公的機関)である以上は、相手が個人であっても、その相手を公開する必要がある。句の税金で購入する以上、区民の前に明らかにされなければならない(口頭意見陳述)。
(2) 購入先名を個人情報保護のために公開すべきでないとしても、Mの場合は、次のような根拠で不当な契約であり、区に多大な損害を与えたと考えられる。仮に不当か否か不明であっても、このような疑惑のある取引の場合は、区民が追及するためにも、公開すべきである(揖斐申立書、意見書、口頭意見陳述)。区の執行機関の担当者は、「費用がかかるので実測せず、公簿と実際が近いということで、公簿売買とした」と区議会において説明している。にもかかわらず、実際にはうち1名Mだけは、公図と実際が近いとして公図で売買契約をしている。しかし、公図は、その成立の経緯からしてむしろ実測とかけ離れており、通常、売買の基礎とすることができないはずである(口頭意見陳述)。他の28名が同様の土地を売却しながら、M1名の場合のみ他と異なるということは、確率的にありえない(意見書)。
仮に公簿と実測に違いがあるとしても、Mの場合のように1万平方メートルが5万平方メートルに縄のびすることは、通常ありえない(異議申立書、意見書、口頭意見陳述)。
5.審査会の判断
区との契約及び句の財産の取得等に関しては、「地方自治法96条1項8号」および「議会の議決に付すべき契約及び財産の取得又は処分に関する条例」の規定により、予定価格の2,000万円以上の不動産の買入れ(土地については1件5,000平方メートル以上のものに限る)は、議会の議決に付すべきものとされている。
しかし、議決に際して、特定個人を識別できるような資料が提出されるししくみにはなっていない。本件の場合も、議会に特定個人の購入先を識別できる資料は提出されなかった。単に区の契約の相手先となり購入に区の財源を伴うからといって、一般的に個人情報を公開すべきとはいえない。
ところで、審査会に提出された本件文書(契約書)の署名は個人名ではなく、宗教法人名である。本件は、法人が法人所有財産を売買し、法人収入にしたものである。
法人情報の場合は、企業名は公開であり、区は契約内容も可能な限り公開に努める必要があるものとされる。宗教法人といえども、その特色は公益法人性にあり、本件土地売買代金は、宗教法人の所得であって、個人の所得ではない。また、支出と異なり収入について個人生活の要素が入り込むということは通常ありえない。本件の場合、例え、事実上、個人生活性が個人商店等の場合より強いことがあっても、法人所得である以上個人情報ではなく、法人情報と解せられる。
よって、非公開部分のうち、宗教法人であるMとの契約書は、印影部分を除き全部公開することが妥当である。
なお、申立人は、仮に購入先名が個人情報にあたるとしても、Mの場合は、不当な契約で区に損害を与えたか少なくとも与えたと思われる根拠があり、特別に公開すべきであると主張する。
しかしながら、当審査会は、条例上契約内容の当・不当を調査し、判断しうる立場にはない。本件の場合、Mについては個人情報に該当しないものとして、契約の内容に拘わらず前記のとおり印影部分を除き、全部公開すべきものと判断した。
6.本件不服審査の処理経過
- 1996年9月11日、申立人は1996年7月16日付けの公開請求に対する区政情報一部公開決定処分に不服があるとして、条例13条1項の規定に基づき、実施機関に異議申立てを行った。
- 1996年9月27日、実施機関は、本件異議申立てにつき条例13条2項の規定に基づき、当審査会に諮問を行った。
- 1996年9月30日、審査会は、実施機関に対して一部公開理由説明書の提出を求めた。
- 1996年10月28日、実施機関から審査会に対して一部公開理由説明書が提出された。
- 1996年11月13日、審査会は、実施機関から提出された一部公開理由説明書の写しを申立人に送付し、意見書の提出を求めた。
- 1996年12月4日、審査会は、申立人から意見書を受理した。
- 1997年4月23日、審査会は、実施機関からの意見を聴取した。
- 1997年5月21日、審査会は、申立人からの意見を聴取した。
- 審査会は、本件異議申立てにつき、1996年11月13日、12月20日、1997年1月29日、2月27日、3月27日、4月23日、5月21日、6月27日、7月23日、8月20日、9月30日と審議を重ね、上記結論を得た。
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