情報公開審査会答申(第51号)

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更新日:2023年8月3日

答申第51号
2011年9月16日 

中野区長 殿

中野区情報公開審査会
会長 兼子 仁

中野区区政情報の公開に関する条例第13条第2項の規定に基づく諮問について(答申)

 2009年5月11日付け、21中経経第362号、2009年6月4日付け、21中経経第434号、2009年6月4日付け、21中経経第436号および2009年6月30日付け、21中経経第941号による下記の諮問について、別紙のとおり答申します。

諮問事項

中野区区政情報の公開に関する条例に係る異議申立てについて(諮問)

1 審査会の結論

(1) 警大跡地「景観検討委員会」の資料文書は、行政と開発事業者との信頼関係を理由とするその一部非公開は、“時限秘”切れで原則公開とすべきであり、今日なお特に保護に値する、1提案した法人事業者名、2意見提出個人名および意見表題に限り部分非公開とするよう、異議申立てに対する決定において原決定を公開に変更することが妥当である。

(2) 駅周辺まちづくり調査検討委員会専門部会の委員「委嘱状」が区に存在しないとする非公開決定は妥当である。

(3) 警大跡地開発「企画提案書」は、都市計画決定後に「時限秘切れ」で公開ずみであり、すでに争訟の利益が失われている。

(4) 警大跡地地区内公園の日影規制に関し地区開発協議会が作成した「根拠資料」に当る情報は、上記(3)の「企画提案書」に含まれていると判明したので、異議申立てに対する決定において、そのむね理由書きし、原決定を全部公開に変更することが妥当である。

2 不服申立ておよび審査の経緯

2-1 警大跡地景観検討委員会資料文書の一部非公開事件(1事件)

 異議申立人(○○○○さん。以下「申立人」という。) は、2009年2月12日付けで、中野区区政情報の公開に関する条例(以下「条例」という。)7条に基づき、実施機関である中野区長(以下「実施機関」または「区長」という。)に対し、警察大学校等跡地地区(以下「警大跡地」という。)「景観検討委員会」に関する諸資料の公開請求をしたが、4月13日付けで、会議開催時に配布された資料は、行政と開発事業者が共同で作成したもので、事業者保護情報が含まれているので、公開すると、行政と開発事業者との信頼関係が損なわれるおそれがあり、行政執行上著しい支障がを生じるおそれがある等の理由による一部公開・一部非公開の決定を受け、同年4月27日付けで、区長に対し一部非公開を争う異議申立てを行った。

 この不服審査につき、同年5月11日付けで区長が当審査会に諮問したのが、本1事件である。

 その審査において、実施機関から同年6月18日付けの理由説明書が、申立人から同6月25日付けの意見書が提出され、当審査会審査の全体状況から、2011年3月23日、同年5月16日および同年7月8日にいたって実施機関(まちづくり推進室)の事情聴取が行われている。

2-2 駅周辺まちづくり調査検討委員会専門部会の委員「委嘱状」不存在非公開事件(2事件)

 申立人は、2009年2月23日付けで、中野駅周辺まちづくり調査検討委員会専門部会第1~4回会議の配布資料(「議事要旨」以外)の公開請求をし、実施機関から同年4月24日付けで、第1回会議の参考資料にかかる委員「委嘱状」につき不存在を理由とする一部公開・一部非公開の決定を受け、同年5月7日付けで、区長に対し一部非公開を争う異議申立てを行った。

 この不服審査につき、同年6月4日付けで区長が当審査会に諮問したのが、本2事件である。

 その審査において、実施機関から同年7月3日付けの理由説明書が、申立人から同年7月31日付けの意見書が提出され、上記と同じく、実施機関事情聴取が2011年3月23日および同年5月16日に行われている。

2-3 警大跡地開発「企画提案書」の非公開事件(3事件)

 申立人は、2009年4月13日付けで、警大跡地開発にかかわる区の住民説明会での自動車新規発生量の説明の根拠資料を公開請求し、実施機関から同年4月28日付けで、対象となる3事業者作成の「企画提案書」は都市計画決定前には行政事務の適正執行に支障を及ぼすおそれがあるとの理由により、非公開決定を受け、同年5月7日付けで区長に対する異議申立てを行った。

 この不服審査につき、同年6月4日付けで区長が当審査会に諮問をしたのが、本3事件である。

 その審査において、実施機関から同年7月3日付けの理由説明書が、申立人から同年7月31日付けの意見書が提出され、上記と同じく、実施機関事情聴取は2011年3月23日および同年5月16日に行われている。

2-4 警大跡地地区内公園日影規制関係資料の非公開事件(4事件)

 申立人は、2009年5月21日付けで、警大跡地地区における新設公園の日影規制にかかわる資料一式を公開請求し、実施機関から同年6月5日付で、同跡地「地区開発協議会」が作成した区都市計画審議会資料「地区全体の複合日影の影響」の根拠資料は、その公開が事業の執行に著しい影響を与えるという理由による非公開決定を受け、同年6月25日付けで区長に対する異議申立てを行った。

 この不服審査につき、同年6月30日付けで区長が当審査会に諮問したのが、本4事件である。

 その審査において、実施機関から同年7月24日付けで理由説明書が、申立人から同年8月19日付けで意見書が提出され、上記と同じく、実施機関事情聴取は2011年3月23日および同年5月16日に行われている。

3 審査会の判断

 本4事件は、同一の申立人が警大跡地開発にかかわる情報公開請求をした案件として共通性があると認められるので、不服審査は併合して行い、一括して答申することが適当であると当審査会は判断する。

3-1 1事件に関する審査・判断

(1) 警大跡地「景観検討委員会」の議事録が不存在である点について

1) 実施機関は、同上委員会の「議事要旨」等の一部公開によって、請求情報の多くは公開されており、詳細な議事録を作成していないのは、跡地地区の景観形成に行政と開発事業者の協働の場が「非公開の委員会」であることを前提していたからである、と主張している(理由説明書、事情聴取)。これに対し申立人は、一部墨ぬりでも議事録は作成されているべきだと反論している(異議申立書)。

2) がんらい非公開会議の議事記録がいかになされるのが適当かは、非公開会議の議事内容に因ると解される。
 この点、跡地地区「景観検討委員会」の詳細な議事録を作成しない理由として実施機関が主張する、行政と開発事業者との協働における非公開性という前提の当否については、次項目で判断を詰めるのが適当と考えられる。

(2) 同上委員会の配布資料の非公開性をめぐって

1)  標記に関しては、会議開催に際して配布された資料が非公開と決定され、その理由が、「行政と開発事業者が共同で作成したもので、事業者保護情報が含まれており、……公にすることは、……行政執行上著しい支障を生じる恐れがあるため」と通知され(同年4月13日付け決定通知書)、さらに不服審査における実施機関の主張としては、「委員会で討議される内容は、開発事業者にとって建物の競争力そのものを示す景観形成や空間デザインなど、企業ノウハウの塊であり、……そうした情報の提供を受けるためには開発事業者との信頼関係は特に重要となっている。本件情報公開請求後、各開発事業者へヒヤリングしたところ、……非公開の委員会の前提で参加しており……との回答があった」と記されている(理由説明書)。

 これに対して申立人は、「業者と実施機関がなれ合い」で跡地景観形成をするのでは、「区民との信頼関係の構築」が抜けており、事業者情報保護は部分墨ぬりで足りるはずだと反論している(異議申立書、意見書)。

2)  そこで当審査会が判断するのに、警大跡地地区開発の事業内容の決定に際し、行政と開発事業者との非公開的な協働と、区民・周辺住民参加の透明・公正な事業推進、とをどう位置づけるかという問題は、事業進捗の段階によって異なるように考えられる。

 同上「景観検討委員会」の第1~3回(2008年11月~09年2月)の議事資料に関する非公開の当否を、跡地開発事業が現実にかなり進捗した現時点で判断する場合には、いわゆる“時限秘”という問題が肝要と言わなければならない。
実施機関が主張する、行政と開発事業者との非公開的協働の信頼関係は、協議計画内容が確定・実行されつつある今日にあっては、もはや“時限秘切れ”で、条例上の公開原則に服せしめるのが相当であると解される。

 もっとも、景観形成にかかるデザイン・ノウハウ等の各事業者の提出情報が、今日なお事業者情報保護として特に部分非公開として区分しうるならば別論であると考えられるので、審査会が実施機関(現、都市政策推進室)に部分非公開の可能性について釈明したところ、実施機関から次の2点のみの部分非公開が提案されてきた。

1 景観検討委員会に参加する法人事業者の考案提示情報を保護する必要から、提案した特定法人名
2 同委員会に内部的に提出した専門家の個人意見情報を保護するため、当該個人名と意見の表題

 当審査会の審議において、上記2点に限る部分非公開は妥当であると認められた。

よって区長は、本件異議申立てに対する決定において原決定を部分公開に変更することが適法になされうるので(行政不服審査法47条3項に基づく)、そうすることが妥当であると判断される。

3-2 2事件に関する審査・判断

1) 主争点は、駅周辺まちづくり調査検討委員会専門部会の委員「委嘱状」が区に現存しないことに関してであった。

 同上専門部会委員の委嘱状に関し、申立人は、区にその写しが存しないことはありえないと主張し(異議申立書)、これに対し実施機関は、同上委員会の民間委員は、設置者である東京都新都市建設公社が区からの推薦者に委嘱するしくみなので、委嘱自体にかかる文書は区に残存していない、と主張する(理由説明書)。

2) たしかに、区は委員委嘱に関し都の公社に推薦するだけで、その「推薦起案」文書が区に存していると認められる。

 そして「推薦起案」は、2008年5月26日に申立人に公開ずみであり(理由説明書の記載)、その結果申立人も、上記委嘱のしくみが明示されたことから、委嘱状の写し等が区に不存在であることを了解したむね表明している(意見書)。

 かくして当審査会は、本件「委嘱状」の不存在をめぐる争点は、すでに解消しており、結果的に非公開決定は妥当であると判断する。

3-3 3事件に関する審査・判断

(1) 警大跡地開発「企画提案書」を請求対象文書と特定したことをめぐって

 申立人は本件によって、上記のとおり警大跡地開発にかかる区主催の住民説明会での自動車新規発生量の説明の根拠資料を請求したが、実施機関は、それに対応する文書は、3事業者による「企画提案書」であると特定し、申立人はそれ以外に行政作成資料がなければならないと反論している(異議申立書)。

 当審査会が調査したところでは、住民説明会での説明内容で請求情報に関する資料文書が事業者提出の「企画提案書」のみと特定されたことが、事実に反してはいないと認められた。

(2) 企画提案書の非公開根拠が行政信頼関係を損なう事業執行支障であるとされたことについて

1) 実施機関によると、上記「企画提案書」は各事業者の事業計画等の保護すべき情報を含み、公開が行政への信頼関係を損なうおそれから、都市計画決定前は公開できなかったが、2009年6月22日に東京都の都市計画変更決定(告示)がなされた後には、同年6月30日に申立人に写しの交付による公開をしている(理由説明書)。

 これに対して申立人の反論は、東京都の意向にかかわらず中野区が保有する上記情報は、「周辺住民の重大関心事」である「情報を隠ぺいすることは許されない」というものであった(意見書)。

2)  たしかに本件では、前記の跡地開発にかかわる環境関係情報につき、開発事業者と東京都との意向にかんがみた中野区の行政上の公開支障判断が問われていた。

 しかし、そこにおける非公開性はがんらい「時限秘」であることが明示され(決定通知書理由欄)、都市計画決定後は「時限秘切れ」で公開措置が採られている。

したがって、情報公開後の今日では、「時限秘」の当否を争う利益が失われていると解される。

3-4 4事件に関する審査・判断

(1) 警大跡地地区内公園日影規制関係資料の請求対象の特定をめぐって

 本件ではまず、同上跡地内の新設公園にかかる日影規制に関する検討資料という請求の対象情報を、実施機関が、「地区全体の複合日影の影響」につき地区開発協議会が作成した根拠資料文書であると特定したのに対して、申立人は、対象文書の一方的な書き換えだと争っている(異議申立書)。

 たしかに、本件の事前に、申立人に対する情報提供を経ており、また事後的に申立人による口頭補正があり、結果として上記「根拠資料」文書が特定されたということなので、そのプロセスおよび結果としての請求文書特定に不相当は認められない。

(2) 公園日影規制の根拠資料である事業者情報の公開が、行政信頼関係を損なう事業執行への著しい影響を及ぼすとされたことについて

1) 申立人が強く主張しているのは、跡地新設公園の日影規制に関し、事業者から出された複合日影図などを非公開とすることは、開発事業者が違法に受ける不当利得を区が近隣住民の利益をぎせいに擁護するのにほかならないという指摘である(意見書)。

 それに対して実施機関は、地区計画変更の都市計画決定での段階では各建築計画の違法性審査は行わないのであって、請求「根拠資料」には個別建築計画の立面図など建築法令上の非公開情報が含まれ、それらを公開するようでは跡地まちづくり事業の執行に著しい影響を与え、かえって区民の利益を阻害することになる、と主張している(理由説明書、事情聴取)。

2) ところが当審査会の調査によって、上記の請求「根拠資料」に当る情報は、実は3事件において時限秘切れで公開されている、各事業者作成の「企画提案書」に含まれているものであることが判明した。

 したがって、本件異議申立てに対する決定において、原処分を全部公開決定に変 更するとともに、請求情報がすでに別途公開ずみである旨を、その理由として付記することが、本4事件の妥当な解決であると判断される。

 以上により、当審査会は前記1のとおり結論する。

中野区情報公開審査会

委員 稲垣隆一
委員 大塚孝子
委員 兼子 仁(会長)
委員 堀部政男
委員 桝潟俊子

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