情報公開審査会答申(第31号)
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更新日:2023年8月3日
答申第32号
2005年5月31日
中野区長様
中野区情報公開審査会
会長 井出嘉憲
中野区区政情報の公開に関する条例第13条第2項の規定に基づく諮問について(答申)
2004年6月4日付け、16中総総第591号及び16中総総第592号による下記の諮問について、別紙のとおり答申します。
区政情報一部公開決定処分に係る異議申立てについて(諮問)
審査会の結論
2004年5月17日付けの異議申立てに係る「住民基本台帳ネットワーク差止等請求事件訴訟の実施請求に対する回答について」の起案文書および同上「訴訟における指定代理人の変更等について」の起案文書につき、非公開とされた「原告の氏名」は、公開すべきである。前者の起案文書につき、原告が「住民となった年月日」を非公開としたことは、妥当であったと認められる。
本2件および不服申立ての経緯
(1) 異議申立人(以下「申立人」という。)は、2004年4月17日付けで、1.「住民基本台帳ネットワーク差止等請求事件訴訟の実施請求に対する回答について」、および2.同上「訴訟における指定代理人の変更等について」、という2つの区政情報につき、中野区区政情報の公開に関する条例(以下「条例」という。)に基づき、実施機関である中野区長(以下「実施機関」または「区長」という。)に対して公開請求を行った。
(2) それらの公開請求を同年4月19日に電子メールで収受した実施機関は、同年4月30日付けで、上記1.の起案文書(添付文書づき)に関しては「原告の氏名及び住民となった年月日」を非公開とする一部公開決定通知書を、2.の起案文書(同上)に関しては全部公開の決定通知書を、申立人に送付した。しかし2.に関しては、その後同年5月6日付けで、全部公開決定を取り消し、含まれていた原告氏名を非公開とする一部公開決定を改めて通知した。
(3) 申立人は、同年5月17日付けで、上記2つの一部公開決定に対して、区長に異議申立てを行っている。
この両件につき区長から、同年6月4日付けでそれぞれ諮問を受けた当審査会は、対象区政情報が同一の訴訟事件にかかわり、一部非公開とされた情報にも共通点があるところから、一括して審査・答申することとした(以下、両件を合わせて「本件」と称し、内訳的には、上記「1.の件」または「2.の件」と称する)。
(4) 本件の不服審査に際し、実施機関は同2004年7月5日付けで、それぞれ理由説明書を提出した。
それに対して申立人は、異議申立書のみで、意見書は提出していない。
なお当審査会は、2005年3月11日に、実施機関から意見聴取を行っている。
審査会の判断
3-1 本件訴訟の原告の氏名を公開すべきか否か
(1) 申立人が公開請求した「住民基本台帳ネットワーク差止等請求事件訴訟の実施請求に対する回答について」という上記1.の件の区政情報は、本件訴訟で中野区とともに国等が被告とされていることに基づき、2003年10月から12月にかけて、区長から法務大臣に訴訟対応の実施請求をし、それに法務省の関係審議官から依命回答がよせられた文書類にほかならない。それらに関する実施機関の一部公開決定は、本件訴訟をめぐる記載情報につき、関係公務員の職・氏名を含めて公開し、訴訟の原告の氏名および区民となった年月日だけを非公開としたものであった。
また、申立人が併せ公開請求した、本件「訴訟における指定代理人の変更等について」という上記2.の件の区政情報は、中野区の同訴訟上の指定代理人職員の人事異動にともなう変更にかかる起案文書とその添付文書であって、実施機関により、関係職員の職・氏名を含む情報公開とともに、原告の氏名のみを非公開とする一部公開決定がなされている。
(2) こうした本件訴訟に関する区政情報文書に記された原告の氏名を非公開としたことについて、申立人は、原告氏名は裁判所の訴訟上すでに公表されているので公開されるべきである、と主張している(各異議申立書)。
それに対して実施機関は、訴訟原告の氏名は条例2条3号にいう個人情報であって、条例9条1項により非公開が原則であるところ、訴訟記録の閲覧および謄写に関する民事訴訟法91条1~3項を併せ読むならば、同閲覧・謄写は法律上制限されたしくみなので、条例9条2項2号が個人情報の例外公開事由として定める「法令の規定により公開できるとされているもの」には当らない、と主張する(各理由説明書)。
(3) そこで検討するのに、民事訴訟法91条1項では、「何人も、裁判所書記官に対して、訴訟記録の閲覧を請求することができる」としたうえで、同条2項が、「公開を禁止した口頭弁論に係る訴訟記録については、当事者及び利害関係を疎明した第三者に限り」訴訟記録の閲覧を請求できると規定している。
当審査会が職権で調査したところによると、本件訴訟の東京地方裁判所における第1回口頭弁論での原告の発言主張の要旨が新聞に報道されているので(2002年11月1日朝日新聞夕刊および同年同月2日東京新聞朝刊)、原告の氏名を含む当該訴訟記録は、公開の禁止されていない口頭弁論にかかるものと認められる。したがって法律上何人でも閲覧を請求できるはずである。
それに加えて、上記の新聞記事にはいずれも、原告の氏名が個人を識別できる形で公表されており、同新聞記事およびその縮刷版で何人も原告の氏名を知りうるものと認められる。
かくして、本件訴訟の原告氏名は、すでに社会的に公開されている個人情報であるので、条例9条1項にいう「公開することを相当と認める場合」に該当し、公開すべきものと判断する。
3-2 本件訴訟の原告が区民となった年月日を公開できるか否か
(1) 前記1.の本件情報中における、原告が区民となった年月日について、実施機関は、原告の本区での居住期間という個人生活情報であって公開することはできない、と主張している(理由説明書)。
これに対し申立人は、区民となった年月日それ自体は個人情報に当たらない、と反論する(異議申立書)。
(2) 当審査会は、上記のとおり原告の氏名を公開すべきものと判断しているが、その原告が区民となった年月日は、特定個人の生活関係に関する個人情報に該当し保護に値いすると解さなければならない。
そして、条例9条1・2項に照らすとき、法令上または行政目的上で公開されるべき理由はなく、その他「公開することを相当と認める場合」にも当たらないと解されるので、実施機関の決定どおり非公開にしてよいと判断する。
以上により、当審査会は、標記のとおり、本2件の一部公開決定に関し、原告の氏名はこれを公開すべきであり、他方、前記1.の件にあって、原告が区民となった年月日を実施機関が非公開としたことは妥当であった、と結論する次第である。
審査会の判断本件不服審査の処理経過
(1) 2004年5月17日、申立人は、2004年4月17日の公開請求に対する同年4月30日付けの区政情報一部公開決定処分に不服があるとして、条例13条1項に則り区長に対して異議申立てを行った。
(2) 2004年6月4日、実施機関は、本件異議申立てについて条例13条2項の規定に基づき、当審査会に諮問を行った。
(3) 2004年6月22日、審査会は、実施機関に対して一部公開理由説明書の提出を求めた。
(4) 2004年7月5日、実施機関から審査会に対して一部公開理由説明書が提出された。
(5) 2005年3月11日、審査会は、実施機関から事情を聴取した。
(6) 審査会は、本件異議申立てにつき、2004年6月18日、7月9日、9月10日、10月25日、11月26日、12月27日、2005年1月28日、2月14日、3月11日、4月15日、5月13日と審議を重ね、上記結論を得た。
中野区情報公開審査会(五十音順)
委員 井出嘉憲(会長)
委員 岡田久枝
委員 兼子仁
委員 川島正英
委員 坂巻煕
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