情報公開審査会答申(第41号)
ページID:151705179
更新日:2023年8月3日
答申第22号
2001年1月15日
中野区長殿
中野区情報公開審査会
会長 井出嘉憲
中野区区政情報の公開に関する条例第13条第2項の規定に基づく諮問について(答申)
1999年10月5日付け、11中総総第86号による下記の諮問について、2001年12月22日開催の第140回情報公開審査会において審議内容を確定したので、別紙のとおり答申します。
区政情報非公開決定処分に係る異議申立てについて(諮問)
審査会の結論
本件請求にかかる情報の一部「委嘱を見送る者の氏名および委嘱を見送る理由」を非公開としたことは、妥当である。
異議申立ての趣旨および経緯
(1) 本件異議申立人(以下「申立人」という。)は、1999年4月12日、中野区区政情報の公開に関する条例(以下「条例」という。)7条に基づき、実施機関である中野区長(以下「区長」という。)に対し「上鷺宮地域センター管内の平成11年度区政協力員改選において、Aさん(以下「Aさん」という。)を含む落選(委嘱見合わせ)となった応募者の人数」を公開請求した。
区長は、同年4月20日、公開請求情報につき個人情報であることを理由に非公開決定(以下「第一次決定」という。)をした。
申立人は、この決定を不服として、同年5月24日、Aさん本人の同意があるとして、条例13条に基づき異議申立てをした。
(2) これに対し、区長は、同年6月2日、前記第一次決定を、同年5月20日にAさん作成の同意書を受理したことを理由に全部公開決定に変更し、「平成11年度区政協力員委嘱決定にかかる上鷺宮地域センター管内で委嘱を見送った人数の決定文書」を公開した(以下「第二次決定」という。)。
この公開文書に対し、申立人は、同年6月15日、「完全なる情報を求めます」として、公開決定により公開された文書が人数以外についてマスキングをしたものであることを不服とし、完全な情報(加工していない文書)の公開を求めた。
また、申立人からは、同年9月14日、異議申立補充書が提出された。
(3) これに対し、区長は、同年9月16日、前記第二次決定を一部公開に再度変更決定し、「委嘱を見送る者の氏名および委嘱を見送る理由」部分は個人情報であると共に、人事上の選定評価にかかわるとして非公開にし、その他の部分を一部公開した(以下「第三次決定」という。)。
申立人は、これを不服とし、同年9月19日当審査会への諮問を求める文書を提出した。
(4) 区長は、同年10月5日、同年5月24日付の異議申立てにつき、当審査会に諮問した。
(5) 区長から、同年11月30日、非公開理由説明書が提出され、これに対し、申立人から、2000年2月10日に意見書が、同年3月13日に補充意見書が提出された。
(6) 当審査会は、2000年4月7日実施機関から事情聴取を行い、同年5月26日申立人が口頭意見陳述を行った。
申立人の主張
(1) 区政協力員改選で「落選(委嘱見合わせ)」となった上鷺宮地域センター管内の応募者の人数そのものは、特定個人を推認させる個人情報ではない。
(2) Aさんについては個人情報であるとしても、Aさんの個人情報に関し申立人が情報公開請求することにつき、1999年5月18日Aさん自身が同意書を提出しており、条例9条2項1号に該当し公開すべきである。
(3) 第二次決定(全部公開)により公開された平成11年度区政協力員の委嘱決定にかかる上鷺宮地域センター管内で委嘱を見送った人数の決定文書は、全体の文書の一部(1枚)であり、かつわずかに委嘱について人数と地域を記載した3行を残しその余を黒くマスキングされており、不完全な情報公開である。
中野区は、請求内容受理方式であり、区より特定された文書に理由があれば申立人は、当然理由についても公開を求めた。
(4) 第三次決定(一部公開)は、審査会の諮問を経ない決定であり、争点となっている理由部分が公開されない以上、条例13条2項の諮問の省略は許されない。
(5)1 第三次決定(一部公開)により公開された文書は、委嘱を見送る者の氏名および委嘱を見送る理由が「個人情報であるとともに、さらに人事上の選定・評価にかかわる情報であるため」非公開とされているが、個人情報であることについては、Aさん自身が同意書を提出しており、条例9条2項1号により公開すべきである。Aさんは、人数の点だけでなく、選考の理由についても公開することに同意している。
また、「人事上の選定・評価にかかわる」というだけでは、何ら具体的・客観的でなく、中野区個人情報保護条例(以下「保護条例」という。)26条各号の本人に開示しないことが正当であると認められる説明の理由付けにならない。理由付記が不備で、取り消されるべきである。
2 区政協力員の制度の趣旨、職務内容からいって、バランスのとれた区民の納得できる人選でなければならず、選考理由を公開することで妥当性を確保できる。
落選者に対し通知された「平成11年度区政協力員募集選考結果について(通知)」には、委嘱を見合わせた理由が記載されたものと、記載されていないものがあり、Aさんについては記載されていない。
本件では、区がAさんに再任を依頼しながら拒否しており、社会条理からも理由を知らせるべきである。
Aさんは、委嘱を見送る理由が公開されないことにより、かえって周囲の誤解や憶測、根拠のない噂の対象となり、特定の個人として浮き彫りされ、名誉を傷つけられている。Aさんの正当な弁明権を保障するためにも、理由を公開すべきである。
実施機関の主張
(1) 本件請求情報は、個人情報に当たる。
1 本件請求情報は、特定の個人を識別できる情報に当たる。
「人数」それ自体は「特定の個人を識別できる」情報とはいえないが、本件では、委嘱を見合わせた「人数」を公開すると、本件情報公開請求書の内容と事実上一体となった情報を形成することになり、区政協力員の改選において委嘱を見合わせた人数の中にAさんという特定個人が含まれるということを識別できることになる。
2 本件請求情報は、個人生活情報に当たる。
すなわち、条例運営要綱別表3に例示されている同表6項の「社会的活動に関する情報」に分類される情報に当たる。
(2) 本件請求情報は、個人情報非公開の原則を解除する要件に当たらない。
1 すなわち、個人情報は原則非公開であり、公開が相当と認められる合理的理由がある場合にのみ公開される。
本件では、申立人による情報公開請求の際、Aさんの同意についての記載がなく、同意書面の添付もなかった。よって、「公開することについて、本人が同意している」ことが認められず、個人情報の公開が相当と認められる合理的理由がある場合には該当しなかった。
2 しかし、第一次決定(非公開)後、5月24日Aさんの同意書を収受し、Aさん本人に同意を確認したので、6月2日公開決定通知をした。
(3) 第二次決定(全部公開)通知は、請求からみると全部であるが、文書としては一部公開なので、本来的には「一部公開決定」として処理すべきものであった。
(4)1 第三次決定(一部公開)で、非公開とした区政協力員の委嘱に係る決定文書における選考理由等は、個人情報である。また、Aさんの同意は4月21日付であり、人数についてのもので、選考の理由についてではない。
2 人事上の選定・評価にかかわる情報であるため非公開とすべきである。保護条例26条3号の「評価、診断、選考、指導などに関するもので本人に開示しないことが正当と認められるもの」にあたり、たとえ、本人が請求しても、非開示となる内容である。
審査会の判断
(1) 本件請求の範囲について
申立人は、中野区は請求内容受理方式であるから、請求者の意思を考慮すべきであり、同一文書中に人数だけでなく委嘱しなかった理由の記載があれば、当然その理由も開示請求していると考えるべきで、当初から理由部分を含めて開示・不開示を判断すべきであると主張している。
確かに、中野区のように、請求文書を特定させるのではなく請求内容をもとに文書を特定していく場合、公開請求書の記載のみでなく、請求者の意思や文書の形式をも考慮すべきであろう。しかし、本件公開請求書には「落選(委嘱見合わせ)となった応募者のAさんを含む人数」と明示的に記載されており、これだけでは当然に理由をも請求対象としたとまではいえず、当初において区が人数のみを公開(第二次決定)したこともやむを得ない。
(2) 諮問の省略、時期について
申立人は、区長が第一次決定(非公開)に対する異議申立て後、当審査会への諮問を経ず第二次決定(全部公開)をしたことは、利益的変更だから許されるが、第二次決定を第三次決定(一部公開)に変更したことは、実質上はともあれ形式的には不利益変更であるから、条例13条2項による審査会への諮問を省略したことは問題である旨主張している。
しかし、本件異議申立ての趣旨、経緯をみると、第二次決定を第三次決定に変更したのは、請求対象に対する申立人の意思が追加的に明らかになったことに対応するもので、かつ実質的にも公開部分を広くしており、申立人の意思および利益にかなうものであり、条例の趣旨に反するものではない。
また、区長は前記第三次決定に対し、申立人の異議の意思が明らかになってから速やかに当審査会に対し、諮問しているといえる。
(3) 理由付記不備について
申立人は、「人事上の選定・評価にかかわる」というだけでは何ら具体的・客観的でなく理由の記載としては不十分であると主張する。しかし、非公開の理由として具体的事実を記載することは、非公開とした文書の内容を明らかにする結果となる。非公開理由の記載は、異議申立てに便宜を与え特定の非公開理由に該当することを明らかにするためのものであり、本件においては上記程度で足りるものと判断される。
(4) 本件請求情報は個人情報か否か
本件請求の対象たる「人数」は、実施機関の主張のとおり公開請求書の内容と事実上一体となる情報を形成し、Aさんという特定個人を識別させるものであるから、個人情報である。また「委嘱を見合わせた理由」は、人事上の選定・評価にかかわる情報であり、通常他人に知られたくない個人情報として保護すべきものである。
(5) 本人同意により公開すべきか
本件請求情報のうち「人数」については、Aさんの本人同意により条例9条2項1号にあたるとして既に公開されているが、申立人は、「理由」についても本人の同意により同じく公開すべきであると主張している。
しかし、Aさんの同意は、4月21日付であり、本件請求の経緯からして、はたしてAさんが理由の公開についても同意しているかどうかは不明である。
ところで、条例9条2項は、本人同意のある場合は個人情報の公開につき審査会に諮問せず公開しても良いということを定めたに過ぎず、同意があれば必ず全てを公開すべきであるとしているものではない。たとえ本人同意があったとしても、個人情報を公開するにあたっては、同条1項により公開が相当と認められる合理的理由のある場合に限られる。
特に、本件は、人事上の選定や特定個人の評価にかかわるものであり、これを第三者に公開した場合、本人に対する区の評価情報が一人歩きし、公開された個人に予想外の影響を与えることも、容易に推測される。申立人は「皆の問題として考えたい」と、個人の評価が本人以外の者に公開され検討されることによって区の選考の妥当性が担保されると主張しているが、真実本人が自己の評価等を何人に公開してもよいとするのであれば、その情報を保護条例によって本人が開示請求することも考えられ、あえて何人にも公開される情報公開によって、特定個人の評価等を公開する必要性は存しない。
本件不服審査の処理経過
(1)1999年5月24日、申立人は、1999年4月12日付けの公開請求に対する区政情報非公開決定処分に不服があるとして、条例13条1項の規定に基づき、実施機関に異議申立てを行った。
(2)1999年6月2日、実施機関は、1999年4月20日付けの区政情報非公開決定処分を公開決定処分に変更決定を行った。
(3)1999年9月16日、実施機関は、1999年6月2日付けの区政情報公開決定処分を一部公開決定処分に変更決定を行った。
(4)1999年10月5日、実施機関は、本件異議申立てにつき条例13条2項の規定に基づき、当審査会に諮問を行った。
(5)1999年10月25日、審査会は、実施機関に対して非公開理由説明書の提出を求めた。
(6)1999年11月30日、実施機関から審査会に対して非公開理由説明書が提出された。
(7)1999年12月27日、審査会は、実施機関から提出された非公開理由説明書の写しを申立人に送付し、意見書の提出を求めた。
(8)2000年2月10日、審査会は、申立人から意見書を受理した。
(9)2000年3月13日、審査会は、申立人から補充意見書を受理した。
(10)2000年4月7日、審査会は、実施機関から事情を聴取した。
(11)2000年5月26日、審査会は、申立人から意見を聴取した。
(12)審査会は、本件異議申立てにつき、1999年10月22日、11月26日、12月20日、2000年1月18日、2月7日、3月14日、4月7日、5月26日、6月23日、7月21日、9月29日、11月17日、12月22日と審議を重ね、上記結論を得た。
関連情報
お問い合わせ
このページは総務部 総務課が担当しています。