情報公開審査会答申(第34号)

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更新日:2023年8月3日

答申第29号
2004年6月18日

中野区長様

中野区情報公開審査会
会長 井出嘉憲

中野区区政情報の公開に関する条例第13条第2項の規定に基づく諮問について(答申)

2003年7月10日付け、15中総総第1001号による下記の諮問について、別紙のとおり答申します。

区政情報非公開決定処分に係る異議申立てについて(諮問)

審査会の結論

 本件の区政情報非公開決定のうち、住民票等交付申請書として現に存在する1件に関しては、請求者本人に開示するよう変更すべきである。その余に関しては、対象個人情報が不存在であるため、同上決定を取り消す必要はない。

本件の経緯および審査会の判断

(1) 本件異議申立ての対象情報の存否に関して

 異議申立人(以下「申立人」という。)は、2003(平成15)年5月27日に、申立人が中野区民となってから同上の前日までの間に申立人の住民票の閲覧および写し交付の申請をした者の住所・氏名・電話番号およびそれらの件数について、公開請求書を提出した。
 これに対して、実施機関である中野区長(以下、「実施機関」または「区長」という。)は、請求情報が個人情報であることなどを理由に、「区政情報非公開決定通知書」を送付し、これに関して申立人は、同年6月27日付けで異議申立てを行っている。
 当審査会は、同年7月10日付けの諮問に基づく本件の審査において、調査をした結果、申立人が請求した情報文書の状況はつぎのとおりであると認識した。
 2000(平成12)年度および2001(平成13)年度には、申立人にかかる住民票等交付申請書は全く存在せず、2002(平成14)年度に後記の1件のみ存している。
 がんらい住民票等交付申請書は、区民等が提出した文書を区が収受した情報(取得公文書)であるので、それが全く存在しないことについて区に責任はなく、「不存在」を理由とする請求拒否決定は法的に妥当と認めざるをえない。
 それに反し、2002(平成14)年度に存した1件については、区長が申立人に対して行った非公開決定が妥当かどうかを、以下に審査していく必要がある。

(2) 本件の「区政情報非公開決定」の法的妥当性について

 1.本件において実施機関・区長は、「区政情報非公開決定」を行い、その非公開理由として、中野区区政情報の公開に関する条例(以下「公開条例」という。)2条3号の「個人情報」に当り、その一般「公開」は9条1項により原則的に行えず非公開とせざるを得ない、と主張している(理由説明書)。
 それに対して申立人は、自分は請求個人情報の本人であり、自己の住民票交付申請の情報を知る権利は当然保障されるべきである、と主張している(異議申立書および意見書)。
 たしかに、本件において申立人は、公開条例に基づく「公文書公開請求書」を提出し、同条例の実施機関・区長から「区政情報非公開決定通知書」を送付されており、また区長から当審査会への諮問も、同条例13条2項に基づいてなされている。
 しかしながら、当審査会が職権で調査したところでは、本件申立人の真意が当初から、自己の住民票に関する交付申請書の記載情報および件数を、本人である自分には公開すべきであると求めていることが、明らかである(公文書公開請求書、異議申立書、意見書、参照)。
 してみれば、本件申立人の真意によりよく適合するのは、中野区個人情報の保護に関する条例(以下「保護条例」という。)22条による「自己情報の開示請求」とそれに対する実施機関・区長の決定(29条)というしくみであると言わなければならない。この点は、申立人が意見書の添付資料および追加資料において、他自治体の「個人情報保護条例」に基づく先例を挙げていることに照らしても裏づけられる。
 2.ところで、最高裁判所の2001(平成13)年12月18日第三小法廷判決では、当該自治体に個人情報保護条例が未だ存しない場合には、情報公開条例に基づいて個人情報の本人が公開請求をしてきたのに対して、両制度において個人情報保護の権利利益が共通していることを理由に、支障がないはずの“個人情報の本人公開”はこれを認めるべきであると解している。
 本区には保護条例が存しているが、本人の意向としてそれによらず、公開条例に基づく個人情報の本人公開請求が出されている案件に関しては、上記の最高裁判例の主旨を類推して、公開条例に基づく“個人情報の本人公開”を“自己情報開示”の意味あいとして特例的に容認するのが相当であると解される(この点、区民の知る権利の保障として共通性が存していることは、申立人が主張するとおりと認められる)。
 3.そこで、本件申立人の公開請求に対しては、公開条例9条1項にいう、「請求理由」に応じ個人情報を「公開することを相当と認める場合」を適用するとともに、保護条例26条を類推適用することが、後記のとおり相当と解される。

(3) 本件請求に対する妥当な対応決定について

 実は、当審査会による意見聴取の際に実施機関は、本件請求情報の本人開示が保護条例26条2号・4号に該当するかと問われれば、それらの不開示情報には該当しないと答えている(2004年4月16日)。
 当審査会が調査した結果によると、前記の本件請求情報として存在する1件の住民票等交付申請書は、2002(平成14)年5月28日付けで申立人本人が申請したものにほかならない。したがって、保護条例26条2号(本人開示により第三者に不利益を及ぼすおそれ)および4号(本人開示により実施機関の公正・適正な職務執行が著しく妨げられる)に該当する余地はなく、本人不開示(本人非公開)にはなしえないはずである。
他方、前記のとおり、不存在による不開示(本人非公開)は妥当であると判断される。

 以上により、当審査会は本件の審査について標記のとおり結論する次第である。

本件不服審査の処理経過

(1) 2003(平成15)年6月27日、申立人は、同年5月27日の公開請求に対する同年6月9日付けの区政情報非公開決定処分に不服があるとして、公開条例13条1項に則り区長に対して異議申立てを行った。
(2) 2003年7月10日、区長は本件異議申立てについて公開条例13条2項の決定に基づき、当審査会に諮問を行った。
(3) 2003年8月12日、審査会は、区長に対して非公開理由説明書の提出を求めた。
(4) 2003年9月4日、区長から審査会に対して非公開理由説明書が提出された。
(5) 2003年10月8日、審査会は、区長から提出された非公開理由説明書の写しを申立人に送付し、意見書の提出を求めた。
(6) 2003年10月30日、審査会は、申立人から意見書を受理した。
(7) 2004年1月15日、3月13日、5月6日、審査会は、申立人から追加資料を受理した。
(8) 2004年4月16日、審査会は、実施機関から意見聴取をした。
(9) 審査会は、本件異議申立てについて、2003年7月25日、8月15日、9月19日、10月24日、11月28日、12月19日、2004年1月9日、2月27日、3月19日、4月16日、5月21日、6月18日と審議を重ね、上記結論を得た。

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