情報公開審査会答申(第9号)

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更新日:2023年8月3日

答申第9号
1993年5月20日

中野区長
神山好市 殿

中野区情報公開審査会
会長 井出嘉憲

中野区区政情報の公開に関する条例第13条第2項の規定に基づく諮問について(答申)

1992年2月25日付、3中総総第673号による下記の諮問について別紙のとおり答申します。

諮問事項

区政情報非公開決定処分に係る異議申立てについて(諮問)

1 結論

 公開請求および異議申立ての対象となった情報について、実施機関の「公開しない」との決定は、当を得たものといいがたい。異議申立て人に対して情報提供をはかるべきである。

2 異議申立ての概要

 異議申立人は中野区民・○○○○氏であり、対象の情報は「中野区からの当選祝い品を辞退した区議会議員の氏名」である。

 この祝い品は、1991年4月21日投票の区議会議員選挙で当選した議員48人に贈られた清酒2本ずつである。当選決定後、選挙事務所に届けられた。この贈答は、区議会議員選挙のたびに行われているもので、慣習化していたといえる。

 今回は10名の区議議員が受け取りをことわる事態が起き、異議申立人は、1991年12月12日、辞退した区議会議員の氏名を明らかにするよう公開請求した。実施機関は、これに対し「個人情報に該当する」との理由をあげて非公開を決め、同月26日、異議申立人に伝えた。

 異議申立ては、この処分の取り消しを求めたものである。

3 実施機関の考え

 対象の情報について公開できないとした実施機関の判断は「個人情報に当たる」という点にある。祝い品贈答を二つの段階に分解して、届けるという行為については「公的業務」と解釈する一方で、受け取った後の取り扱いについては「個人生活の範囲」に含まれると解釈した。
 だからこそ、中野区区政情報の公開に関する条例第9条の個人情報非公開の原則を解除する理由に当たらない、さかのぼって当情報公開審査会の意見を聞く事例に当たらないとの判断を示した。

 さらに、当情報公開条例と中野区個人情報の保護に関する条例にあっては、公職の地位にあるものの個人情報と、一般の人のそれとを区別して扱う規定が置かれていないことをつけ加えて説明している。

4 異議申立人の主張

 異議申立人は、対象の情報について、区の行政情報であるとの判断に立ち、実施機関の考えに反論している。「公選公務員情報」という表現をとって、贈答が公金支出の原因となる区行政の公的な措置である、それへの区議会議員の対応も、区議会議員の地位を離れた個人生活の問題とはいえないとの主張である。

 祝い品の目的についても「区役所と、区議会を構成する議員との相互関係が円滑でありたいとの願いが込められていると理解するのが自然である」と解釈する。また、区長、区議会議員のプライバシーについては「社会公共の利益のために一定の制限があってもやむを得ない」と述べている。

5 審査会の判断

(1) 基本的な考えと状況の変化

 中野区の情報公開制度は、区民の知る権利を保障するとともに、区民と区との情報の共有によって「開かれた区政を推進する」ことを目的としている。公開をしないのは「相当な理由がある場合に限る」のであり、たとえ記録媒体によって保管されていない場合でも、情報提供という形によって誠実にこたえなければならない。

 当審査会は、この基本的な考えに立って審査を進めたことはいうまでもない。

 さらに、公選された公務員の情報を社会がどう見てきたか、その状況変化についても考慮した。政治・行政の中で、政治倫理への世論の動きから主張、議会議員ら公選公務員に対しては、個人生活での制約、資産公開の両面できびしい注文が行われる段階に来ているからである。

 その一つは、1991年2月、公職選挙法の改正によって、公職選挙の立候補者に対して、冠婚葬祭、年賀の挨拶、地域での寄付などに加えられた制限である。これは、かつて個人生活と見られていた分野でも、公選公務員に一般人と異なる公的な対応を求めはじめた傾向といえる。

 もう一つは、公選公務員のうち、首長の資産公開制度である。1995年末までに条例化することが義務付けられた。市区町村議会議員の資産公開も合わせて実施に移される空気が出てきている。いずれも公選された公務員の個人情報の範囲をせばめていくものであり、この状況の変化と情報公開制度とは相互に影響しあっている。

(2) 非公開に当たる「個人生活情報」とはいえない

 審査の主眼は、対象の情報が「個人生活情報」であるかどうか、その適否の判断にあった。区議会議員当選の祝い品は、中野区が、予算化された金品を、正当な行政手続きに沿って届けたものである。これを受け取る段階については、公的な議員活動としての対応であるとの解釈に立ち、情報公開されることには、異議申立人はもちろん、実施機関も異論を唱えていない。

 見解が分かれるのは、いったん受け取った後に間をおいて返却したという事態についてである。それが、依然として議員活動の範囲にあるのか、「個人生活情報」の生活をもつのか。選挙直後という状況を考慮すれば、返却までの間合いは、贈答に対して受け取るか否かの意思表示の過程であるとの見方をとりたい。議員活動としての対応と見る方が妥当といえよう。

 一般に、議員活動について、個人生活の範囲にあるのはどんなものか、公開すべきでない情報とはどの程度までか、基準の形を区分けすることは容易でない。だが、たとえ、「議員にも個人として保護される情報がある」としても、基本的な考えと状況の変化を考え合わせれば、こんかいの事例について当情報公開条例第8条の「公開できない相当の理由」があると見ることは適当といえない。

 中野区からの祝い品が「議員個人の交友関係に伴う冠婚葬祭等の贈答品と何ら区別されるものではない」とした実施機関の判断は、消極的である。中野区の場合、「相当の理由」を判断するに当たって、"判例積み上げ方式"と呼ぶ形で取り組んでいるが、審査会としては情報公開制度を積極的に解釈する立場から、今回の事例を公開すべきだと判断したものである。

(3) 「文書不存在」だから情報提供すべきである

 公開請求の対象となった「当選祝い品辞退区議会議員の氏名」は、審査の過程で、文書として記録されていないことが判明した。したがって、公開の請求に対して「文書不存在」として対応しなかったのは的確ではないといえるかもしれない。

 ただし、文書が存在しなくても当情報公開条例第3条によって、情報提供につとめなければならないことは自明である。そして本件では情報提供が可能な状態にあると判断される。異議申立人の要求どおりに祝い品を辞退した区議会議員の氏名を明らかにすべきである。

6 付記

(1) 審査の過程で、対象の情報について「文書不存在」であることがわかった。

 中野区から区議会議員への当選祝い品は、予算化された公金の支出であり、それが用途どおりに執行されなかったにもかかわらず、文書として記録されていなかったことは文書管理のありかたからいって問題であろう。

 実施機関に対し、情報公開制度の前提の一つとなる正確な記録とその保持について、あらためて注意を喚起しておきたい。

(2) この当選祝い品について、審査過程で、その贈答の是非をめぐっても意見があった。

 公選公務員の金品のやり取りについて制約される方向への状況変化から言って、この区議会議員当選祝い品も見直しの時期に来ているという点で、異議申立人も実施機関も認識は一致した。

 開かれた区政をつくっていくという意味で、情報公開制度が成果をあげた一例といえるかもしれない。付記しておく。

7 本件不服審査の処理経過

  1. 1992年2月18日、異議申立人は、区政情報の非公開決定に不服があるとして、情報公開条例第13条第1項の規定に基づき、実施機関に異議申立書を提出した。
  2. 同年2月25日、実施機関は、本件異議申立てにつき、情報公開条例第13条第2項に基づき、当審査会に諮問を行った。
  3. 同年3月10日、審査会は、実施機関に対して非公開理由説明書の提出を求めた。
  4. 同年3月26日、実施機関から審査会に対して非公開理由説明書が提出された。
  5. 同年4月7日、審査会は、実施機関から提出された非公開理由説明書の写しを異議申立人に送付し、意見書の提出を求めた。
  6. 同年5月8日、異議申立人から意見書が提出された。
  7. 同年5月8日、審査会は、異議申立人から提出された意見書を実施機関に送付した。
  8. 同年11月27日、審査会は、異議申立人からの意見を聴取した。
  9. 1993年1月25日、審査会は、実施機関からの意見を聴取した。
  10. 審査会は、本件異議申立てにつき、1992年4月3日、11月27日、1993年1月25日、4月1日、4月26日、5月20日と審議を重ね、上記結論を得た。

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