情報公開審査会答申(第62号)
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更新日:2023年8月3日
答申第62号
2016年7月19日
中野区長 殿
中野区情報公開審査会
会長 兼子 仁
中野区区政情報の公開に関する条例第13条第2項の
規定に基づく諮問について(答申)
2015年10月21日付け、27中経経第2373号 による下記の諮問について、別紙のとおり答申します。
記
中野区区政情報の公開に関する条例に係る異議申立てについて(諮問)
1 審査会の結論
中野区役所本庁舎総合案内業務委託の事業者選定関係文書について、企画提案書を公開するとした中野区長の決定のうち、個人情報に該当する箇所については非公開とすべきである。それ以外の公開決定は妥当である。
2 不服申立て及び審査の経緯
(1)公文書の公開請求
中野区区政情報の公開に関する条例(以下「条例」という。)7条の規定に基づき、条例の実施機関である中野区長(以下適宜、「実施機関」または「区長」という。)は、2015年7月31日付けで、中野区役所本庁舎総合案内業務委託(以下「総合案内業務委託」という。)の事業者選定に関し提出された企画提案書(以下「本件対象公文書」という。)の公開請求を受けた。
(2) 第三者たる異議申立人への意見照会
実施機関は、これに対し、本件対象公文書を特定した上で、同年8月6日付けで、条例12条の2第1項の規定により、本件対象公文書中に情報が記載されている異議申立人(A社。以下「申立人」という。)に対し、意見書を提出する機会を付与した。
これに対し、申立人からは、同年8月28日付けで、本件対象公文書について「公開には反対する。」旨の意見書の提出がなされた。
(3) 実施機関の決定
実施機関は、上記公開請求に対し、同年10月2日付けで、本件対象公文書を全部公開とする決定(以下「本件公開決定」という。)を行うとともに、申立人に通知した。
(4) 異議申立て
申立人は、本件公開決定を不服として、同年10月21日付けで、条例13条3項に基づき、公開するとされた本件対象公文書について、非公開とされるべき情報であるとして、実施機関に対して異議申立てを行った。
(5)当審査会への諮問及び審査
区長は、当審査会に対し、条例13条2項に基づき、同年10月21日付けで申立人の異議申立ての審査を諮問した。当審査会の審査手続において実施機関から同年11月12日付けで理由説明書が提出され、これに対し申立人は同年12月10日付けで意見書を提出した。さらに、2016年5月31日付けで公開できない箇所及び理由に関する資料(以下「追加資料」という。)を提出した。
その後、当審査会は同年4月5日に、実施機関からの事情聴取を行うとともに、同年5月10日に、申立人による口頭意見陳述を受けた。
審査の過程において、当審査会は実施機関に本件対象公文書の文書の提出を求めた。
なお、交渉順位第1位となった申立人は、2015年6月26日に中野区と総合案内業務委託契約を締結した。
3 当事者の主張と理由
(1) 申立人
申立人は、2015年12月10日付けの意見書及び追加資料において、本件対象公文書は非公開とされるべき情報であると主張している。その根拠として、おおきく次の2点をあげている。
ア 本件対象公文書は、「法人その他の団体に関する情報又は個人が従事する事業に関する情報で、当該情報を公開することにより、事業上明らかに不利益を与えると認められるもの」(条例8条1項2号)に該当する。
その理由として、本件対象公文書は、申立人が長年培ってきたノウハウをもとに作成したものであり、1公開されると、他地区でそのまま使用される可能性があること、2そのことにより、明らかに申立人に不利益が与えられるものと考えると主張している。
イ 本件対象公文書のうち個人情報を記載している部分は、「個人情報又は特定の個人を識別することはできないが、公開することで、個人の権利利益を害するおそれがあるもの」(条例8条1項1号)に該当する。
(2)実施機関
実施機関は、同年10月2日付けの本件公開決定に関する通知書では、決定の理由として、「法的保護の対象となるほどの独自性を認めるに足りる具体的な不利益は見当たらないと判断された」ことをあげている。
その後、実施機関は、同年11月12日付けの理由説明書で、決定の理由として、次の3点をあげている。
ア 企画提案書は、中野区が作成した仕様に準拠し作成されたもので極めて個別性が高いこと、特定の場所での業務であり限定されたものであることなどから、公開されることにより事業上明らかに利益侵害が生じる蓋然性があり法的保護が必要なものとは認められない。
イ 中野区情報公開審査会答申第56号及び第57号における付言を受け、本件企画提案公募型事業者選定実施要領(以下「実施要領」という。)では、「提出された書類について、情報公開請求があった場合に、中野区区政情報の公開に関する条例に基づき公開する。」と記載しており、参加を申し出る事業者は公開されることを前提に企画提案書を作成していると認識している。
ウ 企画提案公募型事業者選定方式は、応募者の技術力、信頼性・社会性及び提案価格の評価を行い、その合計点で順位を決定する仕組みであり、選定に至る評価の中において大きな比重を占める企画提案書の公開請求があった場合には公開し、選定過程の透明性を確保しなければならない。
4 審査会の判断
(1) 法人情報等で、当該情報を公開することにより、事業上明らかに不利益を与えると認められる情報
条例1条(目的)に、「区民の知る権利を保障し、区民と区との情報の共有を図ることにより住民自治と開かれた区政運営を推進すること」とあるように、区が取得した企画提案書の非公開は、事業者利益保護を勘案しつつも、本来例外的に行うべきものである。条例8条1項2号にいう「公開することにより、事業上明らかに不利益を与えると認められるもの」とは、法人等の事業活動に何らかの不利益を与える可能性があるというだけでなく、法人等の権利や競争上の地位、正当な利益が明らかに侵害されると認められる場合をいう。行政機関の保有する情報の公開に関する法律が不利益性の判断を「害するおそれ」と規定しているのと比較して、条例は情報公開の範囲を広く捉えているところであり、条例上は、法的保護に値する程度の蓋然性をもって公開による事業上の利益侵害が生じ得る場合でなければならない。
また、本件は、総合案内業務委託であり、中野区の行政活動そのものに関わるものである。当該業務の事業者を選定するために提出された企画提案書は事業者選定事務の透明性を確保し、区民に対する説明責任を果たすためには、原則全部公開することが不可欠である。中野区では、このことを明確にするため、応募事業者に対して、実施要領にその旨を明記している。
申立人は、「申立人が長年培ってきたノウハウをもとに作成したものであり、1公開されると、他地区でそのまま使用される可能性があること、2そのことにより、明らかに申立人に不利益が与えられるものと考える。」と主張するが、いかなる競争上等の地位が害されるのかが主張、立証されていないと言わざるをえない。例えば、当該情報が事業活動上の機密事項や生産技術上の秘密に属する内容であるならば、これが開示されることにより競争上の地位が具体的に侵害されることが客観的に明白であろうが、本件対象公文書に関しては、申立人が有している競争上等の地位が当該情報の開示によって具体的に侵害されることが客観的に明白な場合とはいえない。
申立人が追加資料において独自の提案事項として非公開を求めている本件対象公文書の7頁から8頁の研修内容、10頁のサービス向上及び効率化のための提案について見てみると、具体的な提案を行っているが、研修内容そのものを記述しているわけではないし、当該提案を実現するための詳細なマニュアルや提案実現のための技術ソフトを記述しているわけでもなく、法的保護に値する程度の蓋然性をもって公開による事業上の利益侵害が生じるとは言えない。むしろ、本件対象公文書の重要部分として、他の事業者の企画提案との比較を行うことによって、事業者選定の妥当性を判断する材料となるものであり、公開すべき公益性が高いと言える。
なお、事業者においては、条例8条1項2号の規定及び実施要領の記載を強く意識し、公開することを前提に企画提案書を作成すべきであると考える。
(2)個人情報又は公開することで個人の権利利益を害するおそれがあるもの
条例では、8条1項1号で、「個人情報又は特定の個人を識別することはできないが、公開することで、個人の権利利益を害するおそれがあるもの」とするとともに、条例2条3号で、個人情報は「実施機関が保管する個人生活に関する情報で、特定の個人を識別できるものをいう」と定義している。このことを前提に、申立人が追加資料において個人情報に該当するとしている箇所を個別に検討する。
まず、企画提案書の3頁の連絡ノートであるが、申立人は筆跡が個人情報に該当する旨を主張する。しかし、筆跡により個人が推定されるかどうかについては、当該個人の関係者以外のいわゆる一般人からみて判断すべきであり、通常、個人の筆跡については、それにより一般人が特定の個人を識別することができるとは認められない。また、個人の権利利益を害するおそれについては、法的保護に値する蓋然性が必要であるが、申立人から具体的説明はなく、法的保護に値する蓋然性があるとは判断できない。
次に、企画提案書の4頁の2つの表であるが、生年月、経験年数は、特定の個人を識別できるものに該当するとともに、特定個人の生活関係に関する情報に該当し保護に値すると解さなければならない。「選任済」の記載及び「TOEIC」の点数については、「特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することにより、特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)」に該当すると考えられるため、個人情報として保護に値すると解する。また、これら情報は、条例8条1項ただし書に照らすとき、法令上または公益上公開されるべき理由は特段ないと解される。以上から、添付文書の箇所に限り、非公開とすることが適当である。
最後に、企画提案書の6頁の連絡体制例の図であるが、申立人は、これを業務外の行動が含まれるとするが、業務に関連した連絡体制は業務そのものであり、個人情報には該当しない。
なお、(1)と同様に事業者においては、条例8条1項2号の規定及び実施要領の記載を強く意識し、個人情報に該当する記載を企画提案書に記載しないように留意すべきであると考える。
以上により、当審査会は前記1のとおり結論する。
中野区情報公開審査会
委員 兼子 仁(会長)
委員 岸本有巨
委員 幸田雅治
委員 佐藤信行
委員 府川繭子
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