情報公開審査会答申(第56号)

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更新日:2023年8月3日

答申第56号
2014年3月12日

中野区長 殿

中野区情報公開審査会

会長 兼子 仁

中野区区政情報の公開に関する条例第13条第2項の規定に基づく諮問について(答申)

2012年2月3日付け、23中経経第3059号による下記の諮問について、別紙のとおり答申します。

区政情報非公開決定処分に係る異議申立てについて(諮問)

1 審査会の結論

 本件の公開請求対象文書(提案書)については、実施機関の非公開決定を取り消し、契約締結に至った事業者およびその他の事業者すべてについて公開すべきである。

2 異議申立ておよび審査の経緯

(1) 異議申立人(○○○○さん。 以下「申立人」という。)は、2011年10月18日、桃丘小学校の跡施設を活用し、表現・文化活動支援施設を設置する事業者を公募・審査し、交渉順位を決定した際の事務に関して、中野区区政情報の公開に関する条例(2013年4月1日施行改正前のもの。以下「条例」という。)7条に基づき、条例の実施機関である中野区長(以下適宜、「実施機関」または「区長」という。)に、応募事業者が提出した文書の公開請求を行った。
 請求対象文書は、2010年12月に中野区区民生活部が実施した「桃丘小学校跡への表現・文化活動支援施設の誘致に関する公募型プロポーザル」(以下「プロポーザル」という。)における、[1]事業者の提出資料の全て(印鑑証明、納税証明書、参加表明書、参加申込書を除く)、および[2]審査員評価の原紙であった。
 なお、交渉順位第1位となった学校法人タイケン学園は、2011年6月24日に中野区と「桃丘小学校跡施設活用に関する事業に係る基本協定書」を取り交わし、2011年10月には、同跡施設に教育・文化施設「中野マンガ・アートコート」が開設された。

(2) 実施機関は、請求者に対し、請求目的等について聞き取りを行い、プロポーザルに関連する対象文書を特定し、審査員評価の原紙など一部は公開決定したが、[1]事業者申告書の印影及び事業者の申告書の添付文書に含まれる被雇用者氏名等、[2]提案書、[3]書類提出日前3ヶ月以内に発行された履歴事項全部証明書(原本)、[4]直近3期分の決算書のコピー、については非公開とした(2011年11月28日付け区政情報一部公開決定通知書、および2012年3月7日付け理由説明書)。

(3) これに対して、申立人は、2012年1月19日付けで、条例13条1項に基づき、事業者の提出書類の一部公開決定のうち公開することができないとされた「提案書」について、非公開の理由がないとし、上記非公開決定の取り消しを求めて区長に異議申立てを行った。

(4) 区長は、当審査会に対し、条例13条2項に基づき、同年2月3日付けで申立人の異議申立ての審査を諮問した。当審査会の審査手続において実施機関から同年3月7日付けで理由説明書が提出され、これに対し申立人は同年4月25日付けで意見書を提出した。
 その後、当審査会は2012年8月10日に、申立人による口頭意見陳述を受けた。その際、申立人から4月25日付けの意見書に追加して意見書(補足)が提出された。
 実施機関に対して、2012年9月7日および9月24日に意見聴取を行った。

(5) 審査の過程において、当審査会は実施機関に下記の文書の提出を求めた。
桃丘小学校跡への表現・文化活動支援施設の誘致に関する公募型プロポーザル実施要領(2010年12月)(以下「公募型プロポーザル実施要領」)

3 当事者の主張と理由

(1) 申立人

 申立人は、桃丘小学校跡施設活用に関する事業者の公募・審査に提出された提出文書のうち、上記(2 不服申立ておよび審査の経緯)のとおり、非公開とされた文書1)~4)のうち、結局のところ、提案書に限って公開を求めている。その根拠として、おおきく次の3点をあげている。

ア 提案書は、知的財産基本法の「知的財産」には当たらない。

イ さらに、意見書(補足)では、大阪地裁の「行政文書不開示決定処分取消請求事件」の判決例に照らし、「事業者の営業利益および営業競争力に著しい影響を与えるおそれのある法人情報」であることを理由に非公開とするには、「法的保護に値する程度の蓋然性をもって利益侵害が生じ得ると認められる」理由の説明が実施機関によって述べられていないと主張している。

ウ また、本件のプロポーザルは、中野区や桃丘小学校という条件の下での提案書であるから、汎用性が低く、他地域では転用がきかないものであるから、「少なくとも締結事業者においては保護性が失われていると考えるため、公開可能である」とする(意見書)。
 そして、契約締結に至った事業者の提案書について公開している自治体(練馬区「プロポーザル方式による業者選定情報に係る情報公開基準」)を例に公開を主張している。

(2) 実施機関

ア 実施機関は、2012年3月7日付けの区政情報一部公開決定理由説明書で、提案書は、条例8条、同条例の運営要綱(以下「運営要綱」という。)5条の2第1項1号に該当し、「事業者の知的財産を含み、事業者の主体的判断以外の公開により、事業者の営業利益および営業競争力に著しい影響を与えるおそれのある法人情報である」とし、非公開とした。
 ところが、同年9月24日の実施機関意見聴取では、9月7日の実施機関意見聴取の場において、提案書の知的財産性について「知的財産基本法2条でいう意匠権等に該当する」と説明したが、これを「誤り」として撤回した。非公開とする理由は、運営要綱5条の2第1項1号に該当する法人情報に当たり、「事業者の競争上の地位、正当な利益を害する」と考え、非公開としている。その蓋然性の根拠は「模倣のおそれ」だとしている。

イ また、実施機関は、「プロポーザルの提案書には応募団体の独創的な企画や考え方など、知的財産を含む部分が多く、情報の分離についても困難と判断し」、事業者からの「意見申出書の内容についても勘案し、応募団体の利益を害するおそれ」を認めている。

ウ さらに、今回のプロポーザルは提案内容をそのまま実現することを条件に選定したものではないことから、「施設の開設によって、提案書の情報としての保護性が失われるとは言えない」と判断し、非公開とした。

4 審査会の判断

(1) 提案書の知的財産性について

 実施機関が提案書非公開の根拠として理由説明書において「知的財産」という文言を用いたが、「提案書の内容は、知的財産基本法2条でいう意匠権等に該当するものではない」と、上記3の(2)のとおり「誤り」を認めた。

 また、提案書に「知的財産」にあたる「意匠」などが含まれていたとしても、それらの模倣等については知的財産基本法によって保護され得るのであるから、提案書の内容の知的財産性は非公開の根拠とはならない。

(2) 法人の地位および事業活動上の正当な利益を害するおそれのある情報とは

 実施機関の理由説明書によると、提案書は、運営要綱5条の2第1項1号に該当し、「事業者の主体的判断以外の公開により、事業者の営業利益および営業競争力に著しい影響を与えるおそれのある法人情報」であり、「模倣による事業者利益損失のおそれ」が非公開の根拠となっている。しかし、その蓋然性についての説明はなされておらず、法的保護に値する程度の蓋然性をもって利益侵害が生じ得ると判断しがたい。

 運営要綱5条1項に該当する情報については、「公開の可否判断の参考とするため、請求者から請求理由を聞くものとする」と規定されている。それに関し、意見書には、「プロポーザルは通常の入札と比べると選定までの経過が区民から見てわかりにくく、恣意的な選定が行われる可能性を秘めている」、「提案内容から大きく逸脱する施設の運営が行われたとするならば、それはプロポーザルの正当性そのものが問われる事態となる」と、申立人の危惧が述べられている。申立人は、プロポーザル方式の事業者選定・契約の透明性の確保の観点からの提案書の公開を求めている。また、条例1条(目的)には、「区民の知る権利を保障し、区民と区との情報の共有を図ることにより住民自治と開かれた区政運営を推進すること」とある。

 よって、区が取得した提案書の非公開は、事業者利益保護を勘案しつつも、本来例外的に行うべきものである。したがって、条例8条にいう「公開できない相当な理由がある場合」とは、法的保護に値する程度の蓋然性をもって公開による事業上の利益侵害が生じ得る場合を指すものと解される。

(3) 事業者の意見聴取と情報公開

 実施機関がプロポーザルに参加した事業者から聴取した意見のなかに、「提案書は独自のアイディア、企画であり、財産である。アイディアの模倣などを避けたい情報であるため、非公開として欲しい」という申し出があったことを非公開の一つの根拠としている。

 しかし、本件の公募型プロポーザル実施要領には、提出した文書等の取り扱いに関して、「4-11-(2)-[3]区は運営事業者の選考以外の目的で提出書類等の使用、又は公表をしない。ただし、中野区区政情報の公開に関する条例の規定に基づき、公開対象になることがある。」と記載されている。また、著作権法18条3項3号の規定によれば、条例の手続により、事業者に公開する意思がなくとも法人情報を公開できる。よって、事業者の「利益を害するおそれのある情報」であっても、条例上の手続に従って公開相当とすることができるものである。

(4) 公開を相当とする提案書

 以上、申立人および実施機関の意見を検討した結果、本件のプロポーザルは、桃丘小学校の跡施設利用という公共的業務に関する提案書であり、すでに終了した行政選定の比較根拠資料として原則公開が求められるものであって、法的保護に値する程度の蓋然性をもって利益侵害が生じ得るとは判断しがたい。

 よって、審査会の上記結論のとおり判断する。

5 本答申に際しての付言事項

 区政の一部ないしそれに類する公共的業務を担当する事業者の適格性を選定する行政公募において、応募事業者が提出した「提案書」は、行政の公的な選定根拠資料として公開することが原則的に要請されるが、2013年4月1日改正の中野区区政情報の公開に関する条例8条1項2号に基づく事業者情報の例外的非公開との関係があることも確かである。

 当審査会は、この問題への中野区らしい取り組み方として、今後は事業者公募の募集要項に、「提案書は公開するものとする」と明記し、そこで文書公開される法人情報の如何を応募事業者の選択にゆだねることが適切であると考える。もっともこの場合にあっても、非公開の選定委員会に口頭提示され記録された法人情報が、条例8条1項2号に該当する範囲で非公開とされることは、業務上生じ得るであろう。ただしこうした上記のことは、選定事業者と非選定事業者とで別異になることはないと解されるのである。

中野区情報公開審査会
委員 稲垣隆一
委員 大塚孝子
委員 兼子 仁(会長)
委員 幸田雅治
委員 桝潟俊子

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