情報公開審査会答申(第55号)

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更新日:2023年8月3日

答申第55号
2012年9月7日 

中野区長 殿

中野区情報公開審査会
会長 兼子 仁

中野区区政情報の公開に関する条例第13条第2項の規定に基づく諮問について(答申)

2011年1月18日付け、22中経経第2433号による下記の諮問について、別紙のとおり答申します。

諮問事項

中野区区政情報の公開に関する条例に係る異議申立てについて(諮問)

1 審査会の結論

(1) 非公開とされた氏名は、公開すべきである。

(2) 法人の地位および事業活動上の正当な利益を害するおそれがあるとは認められない情報は、公開すべきである。

(3) 規制情報など誤解を生じさせるおそれなどがある情報を非公開としたことは、妥当である。

(4) 鉄道の地下化工事にかかる情報を不存在と決定したことは、妥当である。

2 請求情報・一部公開決定・異議申立て・諮問

(1) 請求情報

 異議申立人(○○○○さん。以下「申立人」という。) は、2010年10月26日、中野区区政情報の公開に関する条例(以下「条例」という。)7条に基づき、実施機関である中野区長に対して、つぎのように情報を請求した。

1 西武新宿線連続立体交差計画の中野区が駅前広場を設計することについて、バス会社や警察の条件やそのことについて話し合っていた経緯の記された資料を開示してください。

2 西武の地下化が先なので隣接する家は地下が20メートル以上掘削されるわけだから地盤の心配が生じる。それについての説明を開示してください。

(2) 一部公開決定

 これに対し実施機関は、2010年11月10日、区政情報一部公開決定を行い、申立人あてに区政情報一部公開決定通知書により通知した。

 実施機関は、2010年11月30日、一部公開決定に基づく公開情報について、担当分野窓口においてその写しを公開し、全12枚のうち3枚(2009年10月15日関東バスヒアリング、2009年10月23日京王バスヒアリング、2010年3月3日駅広、関連街路交通管理者協議)の写しを請求され、同日交付した。

 また、実施機関は、2010年12月上旬、申立人に写しの未公開部分9枚を追加交付した。

(3) 異議申立て

申立人は、2011年1月4日、区政情報一部公開決定処分に対する異議申立てを行い、異議申立書を提出した。

(4) 諮問

実施機関は、2011年1月18日、本件異議申立ての審査について当審査会に諮問した。

3 一部公開決定に対する異議申立理由

申立人は、2011年1月4日、異議申立てを行うとともに、異議申立書を提出した。その理由は、おおむねつぎのようになる。

(1) 広場について

 広場に関しては中野区が警察やバス会社と話し合っていた交渉内容の中で、黒塗りで記されている数行の部分では内容があまり詳しいとは思えない。広場に関してはほとんど話し合いがないのではないかとも受け取れる。個人情報でない部分について開示してくださればいいわけで、その中で必要とされている広場においての条件であるとか機能的なものが何であるかということの開示を求める。広場をつくるにあたり、どのような条件があるかということが解れば、住民としては、理解がしやすい。そのようなことをお互いに考慮して話し合うことが基本ではないか。中野区が情報を公開することで計画検討に支障を及ぼすというのはおかしいことである。地方住民なのだから公開するべきである。

(2) 地盤について

 西武鉄道新宿線連続立体化計画において駅構内の地下化の工事により、隣接する地盤の強度に対して、影響があるのではないかと住民としては大変不安である。沼袋の南側地区は、当該連続立体交差事業の環境影響評価書案・資料編(114頁~127頁)に示されているように、地質の調査はなされていない。西武は地盤に関する30年前の情報を持っているが、定かではないようである。中野区だって関係する地方自治体であるならば、地盤についての情報・データー・資料を保有するべきである。存在しないのはおかしい。地盤に関する情報やデーターについては、中野区がダメであるならばその提供を東京都にお願いしてほしい。

4 本件請求情報を非公開とした理由

実施機関は、2011年2月24日、つぎのような区政情報一部公開決定理由説明書を提出した。

(1) 文書の特定

 請求内容のうち、請求情報1については、「駅前広場および関連街路等基盤施設にかかる打合せ議事録」を特定した。
同じく請求情報2については、対象となる関連資料は中野区に存在しない。

(2) 請求情報1についての非公開理由

ア 協議場所および区以外の担当者の役職名

 交通管理者との協議においては、部署および担当者を推測されることは、交通協議の安定実施に著しく支障をきたすおそれが大きいため非公開とした。

イ 民間事業者の担当者名

 区以外の出席者のうち、民間事業者の担当者名は当該個人の職業の情報となるため個人情報として非公開とした。

ウ 協議の内容

 区が行う交渉過程の内容であり、未だ双方で確認、または決定されていない内容等であるため、情報を公開することにより、協議対象者との協議上の信頼関係に著しい支障を及ぼすおそれがあり、以後の円滑な協議や、計画検討に大きな障害を及ぼすおそれがある。また、バス事業者との協議内容には、事業者の今後の事業計画についての内容が含まれているため、事業者の今後の事業に影響を与えるおそれがあると判断し非公開とした。

 未公開情報の公開は、計画地周辺の住民の間で、憶測や無用な不安などが生じかねず、地元住民と今後築くべき信頼関係にも齟齬を来すおそれがあり、各種の整備事業の適切な執行の妨げとなる。

 以上の理由によりー部公開としたものである。

(3) 請求情報 2の不存在理由

 鉄道の地下化工事にかかる情報は、連続立体交差事業として東京都が事業主体となって実施されるものであり、中野区役所9階の区民生活部環境とくらし分野で閲覧が可能な環境影響評価書案以上の情報は保有していない。

 なお、平成23年1月東京都発行の「環境影響評価書案に係る見解書」における地盤に関する見解では、地盤面の都民の懸念に対して、適切な対応をすると回答している。

(4) その他

 なお、請求情報2について、中野区ではこれまで申立人に対し、東京都都市整備局が発行している、西武鉄道新宿線(中井駅~野方駅間)連続立体交差事業の環境影響評価書案に、地盤についての予測、評価等の記載があり、当該書案については、中野区役所9階の区民生活部環境とくらし分野で閲覧が可能な旨の案内をしている。

5 区政情報一部公開決定理由説明書に対する意見

 申立人は、2011年3月25日、区政情報一部公開決定理由説明書に対する意見を提出した。その意見は、おおむねつぎのようになる。

(1) 問題意識が欠如している。

 先日、東京都の環境影響評価書案に対しての都民の意見を言う会があった。今回の事業においてどのように環境に対して影響するかをチェックすることを必要としている。設計においても、これでいいとは決まっていない。素案の段階である。現在、駅構内の設計もまだチェックの段階なのに、中野区まちづくり推進室と沼袋の一部の商店会だけが先走りすぎている。にもかかわらず、駅構内の設計に問題があり、基本的な考え方がおかしなことが多い。沼袋でこの工事ができるのかどうかを議論した方が先なのではないかという見解であると私は主張している。

 ニュージーランドのクライストチャーチで起こった地震に続いて、ついに、平成23年3月11日マグニチュード9.0の東北関東大震災が宮城県を中心に東日本海全域を襲った。津波の被害は今までの例にない深刻な事態になってしまった。日本は地震災害において、最悪な事態における備えやその知恵にかけているのではないか。専門家の間では予測されていたのに「もし、東京に地震があったら」という問題意識がなく、あまりにも無防備だからである。東京電力は「予想もつかない出来事だった」と言っていまだに社長が出てこない。情報が開示されないと海外からも酷評であった。一部の学者が予想していたことで、予期せぬ出来事とは、インチキであり、怠慢であり、無能である。

 今回の事業においても、地盤が弱い地域について、予備検査もなく設計していたことは実に問題意識がなく、何も考えていないということである。また、地下水の工事が周りの地盤について、住民の住居の安全性が第一なこととかをあまり考えてはいない。私は、環境影響評価書案・都民の意見を聞く会においてもその重要性を述べたが、沼袋においては開削工事を含めた今回の設計では「沼袋の地盤が危ない」とぞっとしているのである。沼袋の地盤が沖積層、特に腐食土の地層で、軟弱地盤であるから、それにまた輪をかけて、地下水をくみ上げることで、その地盤が軟弱になってしまうからだ。地下化そのものは別に反対ではない(地下深く掘ればいい)が、このままでは大変な地盤沈下が考えられる。そして、地震の時の強度が弱くなる。中野区はいったいこの事について知識を持ち、地方住民を守っているのかと疑問である。住民を守るという姿勢があれば、東京都に資料を開示してもらったりして工事がどのように進んでいくのか、この設計で良いのかというような行程を住民と一緒に考えていくはずなのだ。それなのに、それが見当らなかった。

 東京都に開示請求を出した。開示された文書で見られるのは土留め壁の途中の開示であるが、西武が平成22年の3月に東京都に提出したものである。であったら、平成22年10月の説明会のときにこのことを住民の前に出して説明するべきである。土留め壁の地図で考えられることは壁を作る機械(多軸混練オーガー機)を使うために立ち退き者が出るのではないかということが考えられる。私が東京都に開示請求を出したのは中野区の立ち退きを強いられる人に対しての説明不足があるからである。工事はどのように進行していくのかといったことを住民がまず先に知りたいことである。それは、本来、東京都と西武鉄道と中野区が私達に説明して、理解させながら仕事を進めていくことである。中野区は東京都と工事のことについても、立ち退き者のことについてもまだよく解ってないようである。つまり怠慢である。本来は住民のために責任を持ってこの計画について東京都に調べに行ったりするのは中野区の仕事であるはずだ。私が東京都に開示請求をし、中野区の仕事をやっているみたいである。にもかかわらず、私に対して、業務に支障があるというのは中野区まちづくり推進室に仕事の能力がないからである。中野区長を出してほしい。

 とにかく説明が先である。説明や調べが怠慢なのだから、計画決定は先延ばしにするベきである。

(2) 中野区の姿勢には説明責任がない。

ア 住民が環境の不安を訴える窓口が中野区にはない。まちづくり推進室の権力が強すぎて客観的な立場で監視する係がないのではないかと思う。今や国はこれからどうなるかわからないのに暴走はできない。「お金のかからないまちづくり」に転換しなければならないのではないかと思う。まちづくり推進室の中に「環境や災害に対して考える係」を設置することを提案する。また、いったんこの計画を凍結することも提案する。

イ 立ち退きに対しての説明がない。平成22年2月と10月の2回の説明会では西武から説明のできる人が来たわけでなく、工事などの説明会としては不十分である。沼袋、上高田北地区の住民に対しての「立ち退きに関する説明」が何もない。また、平成23年2月に地域センターであった広場に関する立ち退きに対しても平成22年12月に提出した要望書の中で、西武の地下化により空いた土地の有効利用を考えていない。広場の広さもJR並みの広さは必要がないのではないか。税金の無駄使いである。設計において、最低限の車両軌跡や歩行者幅が説明されていないためピンとこない。理屈がわからない。駅の出入り口をどこに決めるかにより駅前広場の機能、広さ、形も変わってくるはずである。西武の空き地利用に対しても西武を含めて話し合いがなければいけない。「駅の設計をどのように決めたいのかを西武に聞きたい」「西武が出てこなくてずるい」と言う人の意見がある。

(3) 測量がアバウトすぎる。

 航空写真による赤い線で示したものを対象者としている。これから測量して線引きするので正確な線ではない。対象者がだれであるかはっきりしていないのは問題がある。

(4) 広場は西側に作り、「北側と南側を結ぶ顔」にするべきである。

 商店の顔が見えなくなり、北と南が自由に行き来できるスペースにするべき。北も南も栄えなくなる。広場は西側に浅く、縮小するべきである。

(5) 懸念がある。

 以上のことから「広場をつくることの条件について」と「工事方法について」は、計画を決定する前に、住民が参加できる「検討会」および「協議会」を開催していただきたい。でなければ納得はできないし、それができないのであれば、今回の事業はいったん凍結にするべきである。こんな大震災が起こり、これからの、日本経済は危機になるかもしれないときに、開発事業は縮小しなければいけないのではないかと思う。650億のお金があったら、被災地に送るべきかもしれない。うかうかしていると、いつ東京に地震が来るかもしれない。豊洲は、液状化でドロドロだそうである。福島原発の問題がこれから先、何十年と尾を引いて国民に経済的にも精神的にも大きな損害と不安を残していくのである。開発事業、新しいものを求めることに夢中になりすぎて、大切な人間の命を尊重するということを見失っている。そんな愚かで、無駄なことをするくらいなら、命をも守り、震災対策にお金を投じるべきであろう。例えば、東京湾に津波が来ないような防波堤を作るとか。一般住宅の耐震補強の補助金を出すとか。他にもたくさんある。「もし、東京にマグニチュード9.0の地震があったら」、日本は経済破綻のどん底になるであろう。もう、使えるものを生かさないですぐ捨てる時代は終わりにしなければいけないのではないか。これからは、「地域の震災対策」と「東北関東大震災の被災者たちの救済」に切り替えて、西武新宿線立体交差化事業の資金を回すことが国を助けることにつながることのように思う。

6 実施機関事情聴取および申立人口頭意見陳述

当審査会は、2012年2月29日に、実施機関からの事情聴取を行うとともに、申立人による口頭意見陳述を受けた。

7 審査会の判断

(1) 非公開部分および非公開根拠の是非の検討

ア 担当者が特定されるおそれがある個人情報

 条例は、個人情報について「実施機関が保管する個人生活に関する情報で、特定の個人を識別できるものをいう」(2条3号)と定義している。そして、解説は、「個人生活に関する情報」について、「個人生活に関する情報としては、おおむね次のようなものが考えられ」るとし、中野区区政情報の公開に関する条例運営要綱(以下「運営要綱」という。)別表3に具体的な例を掲げている。その中で「特定の個人を識別できる情報」として氏名などを挙げている。

 また、条例5条は、「実施機関は、この条例の解釈及び運用にあたっては、個人情報の保護について最大限の配慮をしなければならない」と規定し、条例9条は、個人情報の公開にあたっては、慎重な取扱いを求めている。そして、条例9条の解説は、「この条例では、区政情報は公開できない相当な理由がある場合以外は公開すること」としているが、「プライバシー保護のため個人情報については非公開を原則とし、公益上の必要など公開が相当とされる場合に限って例外的に公開すること」と説明している。

 しかしながら、条例は、前述のように、「実施機関が保管する個人生活に関する情報で、特定の個人を識別できるものをいう」(2条3号)と定義している。非公開とされた氏名は、担当者が特定されるおそれがある個人情報という側面はあるけれども、それぞれの職務の遂行との関係で記載されているものであって、条例の特色である「個人生活に関する情報」(2条3号)という定義に該当すると判断することはできない。(職務の性質から脅迫や嫌がらせを受けるなど、生命や身体に危険が及ぶおそれが生じる場合もありうる。しかし、本件で非公開とされた氏名は、そのような職務と直接的に関係があるとは認められない。)

 したがって、非公開とされた氏名は、公開すべきである。

イ 法人の地位および事業活動上の正当な利益を害するおそれのある情報

 運営要綱5条は、「区長は、請求情報に次の各号のいずれかに該当するものが含まれているときは、公開の可否の判断の参考とするため、請求者から請求理由を聞くものとする」と規定し、その1号は「別表1に例示する、法人その他の団体又は事業を営む個人(以下「法人等」という。)の当該事業に関する情報」としている。

 非公開とされた法人の担当情報は、部署を示しているものであって、事業活動上の地位その他正当な利益を害するおそれのあるものとは認められないので、公開すべきである。

 また、非公開とされた情報の中には、運営要綱別表1に例示されている情報に該当しないものが含まれており、それらは、法人の地位および事業活動上の正当な利益を害するおそれがあるとは認められないので、公開すべきである。

 一方、バス路線を変更するとの発言やバス停を設置するとの発言は、それを公 開することにより、バス路線変更やバス停ができることに対する期待を抱かせることが考えられる。しかし、その発言は企業として決定されたことではなく担当者個人の意見であり、その時点では未成熟の情報であることから、それを公開することにより、事業活動上の正当な利益を害するおそれがあると認められるので、非公開としたことは、妥当である。

ウ 規制情報など未成熟な情報

 交通規制をかけるか否かについては警視庁で現段階では決定されていないため、規制情報などの未成熟な情報は、運営要綱5条の2第1項2号アに該当すると認められるので、非公開としたことは、妥当である。

(2) 鉄道の地下化工事にかかる情報の不存在理由の検討

 実施機関は、鉄道の地下化工事にかかる情報を不存在とした理由について、「鉄道の地下化工事にかかる情報は、連続立体交差事業として東京都が事業主体となって実施されるものであり、中野区役所9階の区民生活部環境とくらし分野で閲覧が可能な環境影響評価書案以上の情報は保有していない」と説明している。

 連続立体交差事業として東京都が事業主体となって実施されるものであるため、鉄道の地下化工事にかかる情報は中野区役所9階の区民生活部環境とくらし分野で閲覧が可能な環境影響評価書案以上の情報は保有していないとの説明は、納得できる。

中野区情報公開審査会

委員 稲垣隆一
委員 大塚孝子
委員 兼子 仁(会長)
委員 堀部政男
委員 桝潟俊子

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