情報公開審査会答申(第45号)

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更新日:2023年8月3日

答申第45号
2009年3月25日

中野区長 殿

中野区情報公開審査会
会長 兼子 仁

中野区区政情報の公開に関する条例第13条第2項の規定に基づく諮問について(答申)

2006年7月19日付け、18中総総第1353号による下記の諮問について、別紙のとおり答申します。

中野区区政情報の公開に関する条例に係る異議申立てについて(諮問)

1 審査会の結論

(1) 公開請求のあった平成18(2006)年3月31日現在の住居表示台帳を実施機関が全面的に非公開としたことは妥当ではなく、非公開とすべき個人情報を分離して公開すべきである。ただし、住居表示台帳は日々更新されるので、更新されたものを公開の対象とすべきである。

(2) 公開請求の対象となる住居表示台帳はその分量が膨大であることから、写しの交付をするにあたっては対応可能な方法について異議申立人と話合いをすることが妥当であると判断する。

2 異議申立て・経緯および請求情報

(1) 異議申立人(以下「申立人」という。)は、2006年4月24日、中野区区政情報の公開に関する条例(以下「条例」という。)7条に基づき、実施機関である中野区長に対して、「平成18年3月31日現在の住居表示台帳」について、公開請求を行った。これに対し実施機関は、2006年5月10日、公開請求却下とする決定を行い、区政情報公開請求却下通知書により申立人あてに通知した。

 申立人は、2006年7月7日、区政情報非公開決定処分に対する異議申立てを行い、異議申立理由書を提出した。

 実施機関は、2007年1月11日、非公開理由説明書を提出した。

 申立人は、2007年7月24日、意見書を提出し、その中で、区政情報公開却下理由説明書に対する反論ないし申立人の主張についての補足の意見を明らかにした。

 また、申立人は、2009年3月3日、意見書を提出し、その中で、以前の意見書の主張および意見陳述の際の主張を補充した。

(2) 当審査会では、2008年6月26日、実施機関から意見聴取をし、2008年9月30日、申立人から意見聴取をした。また、当審査会では、2009年2月18日、再度、実施機関から意見聴取をした。

(3) 本件請求情報である住居表示台帳は、住居表示に関する法律(以下「法」という。)9条に基づき、市町村が法3条3項の告示に係る区域について、備えなければならない(1項)とされており、「市町村は、関係人から請求があつたときは、前項の住居表示台帳又はその写しを閲覧させなければならない」(2項)ものである。

(4) 法の規定によると、市町村は、住居表示の実施のため、市街地につき、区域を定め、当該区域における住居表示の方法を定めるとともに、当該区域について街区符号および住居番号または道路の名称および住居番号をつけなければならない(同法3条1項、2項)。中野区の住居表示に関する条例(以下「住居表示条例」という。)は、街区の区域(2条)、住居番号(3条)および住居番号の表示(4条)について規定している。また、住居表示に関する条例施行規則(以下「住居表示条例施行規則という。)は、住居表示条例の施行について必要な事項を定めている。

3 実施機関の公開請求却下理由

実施機関は、本件請求情報について公開請求を却下した理由は、つぎのとおりであると説明している。

(1) 本件請求情報は閲覧方法等について、他の法令で定められていること。

 住居表示台帳の閲覧については、法9条2項に、関係人から請求があったときは、住居表示台帳またはその写しを閲覧させなければならないと規定されており、本件請求情報は、閲覧方法等について他の法令で定められているから、条例18条1項に規定する「この条例は、他の法令の規定により、公簿又は公文図書の閲覧若しくは縦覧又は写しの交付の手続等が定められているものについては、適用しない」に該当する。

(2) 申立人は、法9条2項に規定する「関係人」に該当しないこと。

 法は住居表示の実施手続その他必要な事項を市町村の条例に委任しており、住居表示条例3条1項で、住居表示を必要とする建物等を新築した者は、区長にその旨を届けなければならないと定めている。

 また、法9条1項で、市町村は、住居表示を実施した場合は、すでに実施した区域について住居表示の台帳を備えることが義務付けられ、当該区域における実施状況を明らかにしておかなければならないとされている。

 さらに、法9条2項では、市町村は、「関係人」から請求があったときは、住居表示台帳またはその写しを関覧させなければならないとし、市町村に対し、当該住居表示に直接関係する者に限定して閲覧を認めることを義務付けている。

 「関係人」とは、「住居表示制度の解説」(自治省振興課編、政経書院発行)中の実例、判例、質疑応答によると、「住居表示実施区域に住所を有する者のほか、当該区域に居住、事務所、その他の施設を有する者及び当該区域で新たに住所を設定しようとする者、営業を行おうとする者等」とある。

 申立人は、このいずれにも該当しないため、法に規定する「関係人」には含まれない。

 以上、法は住居表示を住民等の日常生活に影響を与えるものとして、台帳を備え、あえて関係人に限定して閲覧を認めており、これを超えて、関係人以外の者に無差別的に閲覧をさせることはできないものと考える。

(3) 条例が適用されないとされる本件については、「閲覧」の延長線上にある「写しの交付」についても当然認められないこと。

 申立人は本件請求情報について、「閲覧」ではなく、「写しの交付」による公開を求めている旨、主張している。

 しかし、本来、「写しの交付」は「閲覧」の延長線上にあるもので、本件請求のごとく、他の法令に規定があり、条例による「閲覧」を認めない場合には、「写しの交付」も当然認められないものである。

(4) 営利目的による大量情報公開請求であること。

 本件請求理由は民間営利企業として所有する地図情報のメンテナンスのためとされている。このような関係人でない者による無差別でかつ営利を目的とすることが明らかな大量情報公開請求に対し、区が応じる義務はないと考える。

4 申立人の主張要旨

申立人の主張要旨は、つぎのようになっている。

(1) 条例18条の解釈について

ア 他の自治体における解釈

 わが国の自治体の情報公開条例には条例18条1項に相当する規定(以下「調整規定」という。)が設けられている。その定め方はさまざまであるが、その意味内容については、大半の自治体が、他の法令等で公開を請求することができる場合に限って公開条例の適用を排除する趣旨であると解釈(以下「限定解釈」という。)している。

イ 限定解釈の実質的な理由

 上記のような限定解釈と異なる解釈を採用してしまうと、以下に示すような重要な行政文書が何ら実質的な理由なく(=本件公開条例8条や9条のテストを受けることなく)公開されなくなってしまう。公開の要請が強い行政文書ほど、公開の手続が定められている場合が多いと思われるが、そういったものほど公開が制限的になるのは明らかに不合理である。
 なお、限定解釈を採用したとしても、「公開できない相当な理由がある場合」や個人情報が記録されているような場合には、行政文書が公開されないのであるから(条例8条1項、9条)、不都合は生じない。
 したがって、中野区においても調整規定につき限定解釈を採用すべきであり、住居表示台帳の写しの交付を請求している本件では、条例を適用すべきである。

(2) 条例8条1項の該当性と法9条2項について

 区長は、「法第9条第2項は『関係人』に対してしか台帳の閲覧を認めておらず、申立人は『関係人』に該当しないのであるから、申立人については法による台帳の閲覧は認められない。法による閲覧が認められない以上、本件公開条例を通じての公開(写しの交付)も当然に認められない」といったことを指摘して、「公開できない相当な理由がある」ことを主張しているものと思われる。
 この点については、法が情報公開制度を通じた台帳の公開を禁止する趣旨を規定しているかどうかを検討することで、「公開できない相当な理由がある」かどうかを決する必要がある。

(3) 「営利目的による大量情報公開請求」について

ア 営利目的による公開請求が情報公開制度の対象外かどうかについて

 この点について特別に反論をする必要はないと思料する(なお、条例12条3項3号)。
 なお、区長は、民間業者が行政情報をもとに作成した地図から生ずるいっさいの便益を享受することをいますぐやめていただきたい。

イ 公開請求にかかる文書が大量であることについて

 本件行政文書の量は明らかではないが、仮にそれが大量であるとしても、そのことは、本件公開請求を拒否する理由にはならない。文書の量が大量であることは、条例10条2項所定の『やむを得ない事情』として斟酌されるに過ぎないというべきである。

(4) 権利の濫用の主張について

 区長は、「本件公開請求は権利の濫用であり、それに対して区が応ずる義務はない」旨を主張しているようにもとれる。そこで、情報公開請求と権利の濫用との関係について若干の付言・検討をしておきたい。

ア 情報公開請求と権利の濫用について

 わが国の情報公開制度においては、文書を特定して開示請求がなされる以上、請求の対象となった文書は原則として開示され、それを拒むことができるのは文書に一定の非開示情報が記録されている場合に限られる。また、文書に非開示情報が記録されているかどうかを判断する場面では、請求者と文書との関連性を問われることはなく、さらには、文書を利用する目的も原則として考慮されることがない。そして、開示請求にかかる文書が大量であっても請求を拒む理由にはならず、むしろ、他の事務と並行して開示手続を進行させていくための規定が置かれているのが通常である。このようなわが国情報公開法制の基本的構造にかんがみれば、個々の情報公開請求を権利の濫用として拒むことができるのは、もっぱら行政の事務に著しい支障を生じさせることを目的として開示請求をするような極めて例外的な場合に限られるというべきである。

(ア) 具体的には、公文書を適切に管理しているにもかかわらず、公開に至るまで相当な手数を要し、その処理を行うことにより実施機関の通常事務に著しい支障(公開請求者の側に一定の譲歩が求められて然りである程の支障)が生じる場合が考えられる。

(イ) (ア)が肯定されることを理由に実施機関から公開請求の方法につき一定の譲歩を求められたにもかかわらず、それを拒否し、あえて迂遠な方法に固執することといった要件を満たす場合にはじめて、権利の濫用と評価することができるものと解すべきである。このように解したとしても、文書が開示されることによって生ずる不利益との調整は非開示情報該当性の判断によって完結していると解されるし、開示に伴う負担についても、文書の適正な管理その他制度を円滑に運用するための人的物的工夫をすることによって軽減することが可能であり、いざとなれば、自主財政措置を適切に講ずることによって解消することが許されるのであるから、不都合は考えられない。

イ 申立人としては、実施機関から何らかの要請があった場合には(公開請求をする側としては、実施機関からの要望がなければ配慮のしようがない)、実施機関の負担について相当な範囲で配慮(公開に至るまでの期間の猶予、外注した費用の余分な負担、請求の分割、請求の差控え等)をする用意がある。しかしそれは、文書の管理が適正になされているにもかかわらず、通常事務に著しい支障が生じてしまう場合に限られるのであって、本件でそういったことはほとんど考えられない。

5 審査会の判断

(1) 法9条2項の規定の趣旨

 法9条2項は、「市町村は、関係人から請求があったときは、前項の住居表示台帳又はその写しを閲覧させなければならない」と規定している。実施機関は、この規定を根拠に、「この条例は、他の法令の規定により、公簿又は公文図書の閲覧若しくは縦覧又は写しの交付の手続等が定められているものについては、適用しない」(条例18条1項)に該当する、と主張しているので、法9条2項の規定の趣旨について検討する。

 法の規定を見ると、法には、住民表示そのものが公開される情報であることが規定されている。そのことは、1.市町村は、住居表示の実施のため、市街地につき、区域を定め、当該区域における住居表示の方法を定めるとともに、当該区域について街区符号および住居番号または道路の名称および住居番号をつけなければならないこと(3条1項、2項)、2.市町村は、このようにしてつけられた住居番号等を告示するとともに、関係人および関係行政機関の長に通知し、かつ都道府県知事に報告しなければならないこと(同条3項)、3.住居番号等は、上記告示に掲げる日以降、当該区域の住居表示として、私人ならびに国および地方公共団体の機関により広く一般に用いられることとなること(6条1項、2項)、4.市町村は、住居表示が記載された表示板を当該区域の見やすい場所に設けなければならないこと(8条1項)、5.建物等の所有者等は、建物等の住居番号を見やすい場所に表示しなければならないこと(同条2項)、また6.市町村は、当該区域について、その住居表示に係る情報を記録した住居表示台帳を備えることとされていること(9条1項)から、明らかである。

 これらを総合すると、住居表示台帳に記録された情報は、一般に公開される情報であるということができる。

 ところが、法9条2項は、すでに明らかなように、「市町村は、関係人から請求があったときは、前項の住居表示台帳又はその写しを閲覧させなければならない」と規定している。そこで、実施機関は、「関係人」からの請求という規定について、市町村に対し、当該住居表示に直接関係する者に限定して閲覧を認めることを義務付けている、と主張する。

 確かに、法9条2項のみを見るならば、そのように解釈することも可能であろう。しかし、法全体が住居表示の公開原則を規定している趣旨にかんがみると、関係人には必ず閲覧させなければならないことを規定したもの(必要的供覧規定)であると解することができる。したがって、法9条2項は、関係人以外の者に閲覧させることを禁じている趣旨ではないと解すべきである。

(2) 情報公開の制度化とGIS(地理情報システム)の重要性

 法は、1962年に制定されたが、情報公開の制度化について全国に先駆けて1970年代末に組織的に検討するようになった神奈川県で情報公開条例が制定されたのは、1982年であり、その組織的検討が契機となって全国の地方公共団体において情報公開条例が制定されるようになったばかりでなく、国においても、1999年に情報公開法が成立するに至った。法制定の1962年当時においては情報公開という思想も概念も論じられていなかったが、1980年代初頭以降における情報公開の条例化は地方公共団体が保有する各種情報を原則公開することになったことも、法の解釈にあたっては考慮する必要がある。

 加えて、近年では、公的記録が地理情報システム(GeographicalInformationSystem,GIS)において必要不可欠なものとなっている。住居表示台帳に記録された情報は、地理空間情報活用推進基本法(2007年5月30日法律第63号)2条において「この法律において『地理空間情報』とは、第一号の情報又は同号及び第二号の情報からなる情報をいう」として、「空間上の特定の地点又は区域の位置を示す情報(当該情報に係る時点に関する情報を含む」(1号)および「前号の情報に関連付けられた情報」(2号)と定義されているところに該当するといえる。GISの重要性は、基本法の制定に端的にあらわれているように、今日では広く認識されるようになっていることも、法の解釈においては、考慮されなければならない。

(3) 条例18条の規定の非該当性

 法9条2項について、前述のように解することができることから、条例18条1項に規定する「この条例は、他の法令の規定により、公簿又は公文図書の閲覧若しくは縦覧又は写しの交付の手続等が定められているものについては、適用しない」には該当しないと判断する。

(4) 条例1条の規定と条例7条の規定の関係

 条例1条は、「この条例は、実施機関の保有する情報を公開することにより区が区政に関し区民に説明する責務を全うすることを明らかにするとともに、区政情報の公開の請求及び不服の救済についての一般的手続等を定め、もって区民の知る権利を保障し、区民と区との情報の共有を図ることにより住民自治と開かれた区政運営を推進することを目的とする」と規定している。これは、条例が区民本位のものであって、区民以外の者の請求を予定していないと解することもできる。

しかし、条例7条1項は、「何人も、実施機関に対し、当該実施機関が定める事項を記載した文書により、区政情報の公開を請求することができる」と規定し、請求権者を区民に限定していない。

 その趣旨は、「中野区区政情報の公開に関する条例の解釈・運用指針(第4次改訂版 2)」(2008年4月)でつぎのように説かれている。
 「本条の趣旨は、区政情報の公開を請求することができる者の範囲を制限しないということです。

 その理由は、次のとおりです。

1. 『知る権利』は、憲法が保障する基本的人権であって、その保障は『何人』にも及ぶと考えられます。その観点から、区政情報を入手したい人はだれでも公開を請求することができるとすることが適当と思われるからです

2. 区政情報の公開は、請求権者を区民に限ることなく、他の自治体の住民にもその機会を与えることにより、自治意識を高めるとともに開かれた区政の推進に寄与することになります。」

 この解説からすると、情報公開請求権は、住民に限定されていないことは、明白である。

 したがって、申立人には情報公開請求権があると判断する。

(5) 閲覧と写しの交付

 実施機関は、「申立人は本件請求情報について、『閲覧』ではなく、『写しの交付』による公開を求めている」と解釈し、「本来、『写しの交付』は『閲覧』の延長線上にあるもので」、「条例による『閲覧』を認めない場合には、『写しの交付』も当然認められない」と主張する。

 しかし、条例は、「公開」という概念を用い、「公開」とは「情報を閲覧若しくは視聴に供し、又はその写しを交付することをいう」(2条)と定義している。したがって、「写しの交付」による公開は認められるべきであり、実施機関の主張は失当である。

(6) 大量請求と対応可能な方法の話合い

 実施機関は、「本件請求理由は民間営利企業として所有する地図情報のメンテナンスのためとされている。このような関係人でない者による無差別でかつ営利を目的とすることが明らかな大量情報公開請求に対し、区が応じる義務はないと考える」と主張している。これに対し、申立人は、「開示請求にかかる文書が大量であっても請求を拒む理由にはならず」、「個々の情報公開請求を権利の濫用として拒むことができるのは、もっぱら行政の事務に著しい支障を生じさせることを目的として開示請求をするような極めて例外的な場合に限られるというべきである」などと反論している。

 条例は、前述のように、「何人も、実施機関に対し、当該実施機関が定める事項を記載した文書により、区政情報の公開を請求することができる」(7条1項)と規定している。条例の解釈・運用指針は、「公開請求書」について、「区政情報の公開請求は、『区政情報公開請求書』(中略)により行いますが、次の事項が記載されている文書であれば、この請求書によらずに請求することができます(施行規則第3条)」とし、その事項として、1.請求者の氏名、2.請求者の住所、3.公開請求に係る区政情報の内容、4.請求理由(個人情報を請求する場合に限る。)および5.希望する公開の方法を掲げているにすぎない。このことは、条例も、日本における情報公開制度のほとんどのものが請求目的を問わないことになっていることと軌を一にしている。

 実施機関によると、区の街区数は3,478であり、住居表示台帳の分量は極め大きい。そのため、実施機関としては、大量請求であるととらえたことも納得できる。

実施機関は、本件請求が営利目的であると主張するが、請求目的を問わない条例においては公益目的であるか営利目的であるかにかかわりなく、公開可能なものについてはその請求に応じなければならない。

 また、このように解するならば、申立人の公開請求は権利の濫用であるという実施機関の主張は、当を得ない。

 実施機関が大量請求に対応することは実際問題として至難であることも理解できる。しかし、本件においては、申立人が、付言的にではあるが、「申立人としては、実施機関から何らかの要請があった場合には(公開請求をする側としては、実施機関からの要望がなければ配慮のしようがない)、実施機関の負担について相当な範囲で配慮(公開に至るまでの期間の猶予、外注した費用の余分な負担、請求の分割、請求の差控え等)をする用意がある」と述べている。

 当審査会としては、公開請求の対象となる住居表示台帳はその分量が膨大であることから、写しの交付をするにあたっては対応可能な方法について異議申立人と話合いをすることが妥当であると判断する。両者の話合いは、後述するように、部分公開(条例8条2項)をするにあたっては、その事務量も相当なものになると推測されることから、特に重要であると考える。

(7) 適正使用

 条例上は、適正使用(6条)の規定があるので、「情報を得た者」が「当該情報を不当に使用してはならい」ことは多言を要しない。

(8) 個人情報の分離

 当審査会が見分したところでは、住居表示台帳には、氏名、名称もしくは施設名または勝手口を「主たる出入口」とする旨の説明等が記載されている場合がある。

 条例は、個人情報について、「実施機関が保管する個人生活に関する情報で、特定の個人を識別できるものをいう」(2条3号)と定義している。

 氏名は、個人情報であると判断する。

 名称または施設名は、個人識別情報が記載されている場合を除き、個人情報ではないと判断する。

 勝手口を「主たる出入口」とする旨の説明は、個人生活情報に該当するので、特定 の個人を識別できる場合は、個人情報であると判断する。

 個人情報について、条例は「実施機関は、この条例の解釈及び運用にあたっては、個人情報の保護について最大限の配慮をしなければならない」(5条)とするとともに、「第8条の規定にかかわらず、実施機関は、区政情報のうち個人情報の公開請求があったときは、請求理由を聴取のうえ、公開することを相当と認める場合に限り、公開するものとする」(9条1項)と規定し、個人情報の保護の重要性を強調している。

 条例の趣旨からすれば、住居表示台帳に記載されている個人情報は非公開としなければならないと判断する。

 その場合、実施機関は、「当該公開できない情報の記録部分を公開請求の趣旨を損なわない程度に分離できるときは、当該公開できない情報の記録部分を除いて公開」(8条2項)することになる。

 したがって、非公開とすべき個人情報を分離して公開すべきである。

 ただし、公開請求のあった平成18(2006)年3月31日現在の住居表示台帳は日々更新されるので、更新されたものを公開の対象とすべきである。

 既述のように、部分公開をする事務量は相当なものになることが考えられることから、写しの交付の方法について話合いを行い、現実的に対応することを工夫すべきである。

 以上の審査の結果、当審査会は標記のとおり結論する。

中野区情報公開審査会
委員 稲垣隆一
委員 大塚孝子
委員 兼子 仁(会長)
委員 堀部政男
委員 桝潟俊子

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