情報公開審査会答申(第26号)

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更新日:2023年8月3日

答申第37号
2007年1月31日

中野区長 殿

中野区情報公開審査会
会長 兼子 仁

中野区区政情報の公開に関する条例第13条第2項の規定に基づく諮問について(答申)

2005年8月31日付け、17中総総第2054号による下記の諮問について、別紙のとおり答申します。

区政情報一部公開決定処分に係る異議申立てについて(諮問)

1 審査会の結論

本件の請求情報について一部非公開とした決定は、妥当であると認められる。

2 不服申立ておよび審査の経緯

(1) 異議申立人(以下「申立人」という。)は、2005年6月17日、中野区区政情報の公開に関する条例(以下「条例」という。)7条に基づき、実施機関である中野区長(以下適宜「区長」または「実施機関」という。)に対して、退職した元総務部参事(以下「本件職員」という。

 公開請求書に表示された個人名は省略する。)の退職起案および平成16年の出勤記録表に関し一定の記載部分、ならびに平成16年9月10日以降の病気休職願いおよび添付診断書等の公開請求をしたところ、同年6月30日付けで一部公開決定通知書を送付された。

(2) 申立人は、同決定において、1.退職起案における氏名・職名・退職年月日以外の記載事項、2.平成16年9月10日以降の病気休職に関する医師の診断書および休職願い・起案、3.同期間の給与等支給割合、4.出勤記録表のうち権利行使、疾病にかかる部分および平成16年に付与された有給休暇日数、の部分が非公開とされたことを不服として、2005年8月26日付けで、区長に対する異議申立てを行った。それに関し区長が同年8月31日付けで当審査会に諮問したものが、本件である。

(3) 当審査会の審査において、実施機関・区長から2005年11月17日付けで一部公開理由説明書が提出され、これに対し申立人からは2006年3月14日付けの意見書が提出された。

 次いで当審査会は、2006年5月24日に実施機関からの意見聴取をし、同年6月20日に申立人から口頭意見陳述を受けている。

3 審査会の判断

 当審査会は、本件をめぐり申立人および実施機関の主張が対立している各争点について、以下のとおり判断する。

3-1 給与等の支給割合に関する文書の存否について

 本件職員に関する「給与等の支給割合」の公開請求について、実施機関は、給与割合は「職員の給与に関する条例」に公表されているが、本件給与「支給割合を明記した文書は存在しない」と主張している(理由説明書、一部公開決定通知書)。

 当審査会が調査したところ、その文書不存在は事実と認められたので、区政情報の不存在を理由とした本件決定の部分は妥当である。

3-2 本件職員の退職起案における氏名・職名・退職年月日以外に関する記載の非公開について

 たしかに申立人は、本件職員の「退職日」に限って公開請求をしており、それに対して実施機関は、関係する退職起案文書について、職員の「氏名、職名、退職年月日」のみを公開決定し、それら以外の記載事項(退職に伴う処遇その他)は「請求外情報であることを理由に非公開とした」と主張している(理由説明書)。

 この点に関しては、一文書の一部のみを公開請求することができるかという問題はあるが、本件に関する限り、申立人の請求意思が明確と認められるので、実施機関の対応で妥当であったと判断される。

 しかし今後においては、公開請求書が関係文書の一部の記録情報のみを記している場合、その旨を請求時に申立人に指摘して申立人の請求真意をよく確かめることが肝要と思われる。

3-3 本件職員の出勤記録表における権利行使や疾病の部分および有給休暇日数の非公開について

 本件で申立人は、特定職員の平成16年の出勤記録表のうち権利行使および疾病にかかる部分(1・2月分に存在)、ならびに有給休暇日数の公開請求をしていたが、実施機関は「個人情報であることを理由に非公開とした」と主張している(理由説明書、一部公開決定通知書)。

 そうした情報は、一面では公務員の欠勤という職務関連性を有するが、職員の疾病その他の個人的権利行使および労働者としての有給休暇取りにかかわる面において、保護に値する個人情報性が認められる。

 本区の条例9条1項によると、「実施機関は、区政情報のうち個人情報の公開請求があったときは、請求理由を聴取のうえ、公開することを相当と認める場合に限り、公開するものとする」と定められている。

 本件申立人はこの点、「住民訴訟」の裁判資料としての必要性を述べているのであるが(口頭意見陳述)、本来個人情報の例外的公開を相当ならしめる場合とは、特定請求者にとっての必要事情がすべてそれに当るわけではなく、一般社会における公共的相当性を意味するはずである(情報公開にあっては請求者の特定事情は考慮されえない。)

 そこで、本件請求にかかる上記の職員個人情報の公開を例外的に相当ならしめる理由までは特に存しないと判断される(住民訴訟の手続を通じて関係文書が提出命令を受けるということは、別論である。)

 ところで、現時点において当審査会が把握している実情としては、本件職員の出勤記録表は、関係する住民訴訟における東京地方裁判所の文書提出命令によってすでに公開法廷に証拠提出されている。しかしながら、その事実が本区の条例の下で非公開が妥当とされる結論を左右しないことは、後述する((4)の末尾)とおりである。

3-4 本件職員の病気休職に関する医師診断書および休職願い等の非公開について

 本件職員は平成16年9月以降において病気休職願いを提出したこととされており、それに関する申立人の公開請求は、その休職願いと受理起案および添付された医師診断書を対象にしている。それに対して実施機関は、「特定個人の疾病等に関する個人情報であるため非公開とした」と主張している(理由説明書、一部公開決定通知書)。

 なるほど申立人の主張するとおり(意見書、口頭意見陳述)、病気休職願いと受理起案および医師の診断書は、職員の分限処分を根拠づける文書であり、とくに添付診断書は病気休職を相当と認める裏付け資料にちがいない。

 しかしながら同時に、実施機関が主張するように(理由説明書)、医師診断書をはじめそれらの人事関係情報は、特定職員の病気にかかわる「個人生活に関する情報」(条例2条3号による「個人情報」の定義)の最たるものであろう。

 そこで当審査会としては、医師診断書をふくむ病気休職願い等の最たる個人情報文書は、職員人事に関する区民監視の公共的必要という見地に立っても、本件において特段の公開相当理由を擁してはいないと総合判断するものである。

 なお、当審査会が把握しているところでは、上記の本件請求文書はいずれも、関係する住民訴訟における東京地方裁判所の文書提出命令によって公開法廷に証拠提出されている。しかしながら、そうした裁判所保管の訴訟記録を何人も書記官に閲覧請求できるというしくみ(民事訴訟法91条1項に基づく)は、本区の条例に基づく情報公開とは異なる別個の法律制度であって、条例の下における非公開を妥当とする判断を左右しないものと解される。

 以上の審査の結果、当審査会は標記のとおり結論する。

中野区情報公開審査会

委員 稲垣隆一
委員 兼子 仁(会長)
委員 堀部政男
委員 桝潟俊子

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