中野をホタルのまちへ。中野にホタルの光を。堀千ホタル研究所の挑戦!【まるっと中野】
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更新日:2026年7月2日
こんにちは!ナカノ観光レポーターの「ももここ」です。
今回は、野方にある「堀千ホタル研究所」をご紹介します。
取材に至ったきっかけは、6月に息子と一緒に参加した、絵本ラウンジLOOP中野で開催された「ホタル学習観賞会」でした。
暗い室内にふわっと浮かぶ小さな光。
人工のイルミネーションとは違う、少し不安定で、それでも確かに“生きている光”でした。
その瞬間、隣で見ていた3歳の息子が、息を飲んでホタルを見つめていて。
その横顔が、今でも鮮明に思い出されます。
帰宅後も、
「ホタル光ってたねー!また見たいね!」
と何度も話していて、あの時間がしっかり息子の記憶に残っているのだと感じました。
その体験がきっかけで、「このホタルを育てている人たちはどんな人なんだろう」と思い、取材させていただくことになりました。 「堀千ホタル研究所」は、7月4日(土曜)、5日(日曜)に中野四季の森公園で開催される「中野ホタル祭り」の運営団体でもあります。このお祭りについても、後ほど詳しくお伝えします。
取材に応じてくださったのは、堀江さんと千正さん。
2人の名字の頭文字を1文字ずつ取って「堀千ホタル研究所」と命名したそう。
お二人の雰囲気から、てっきり長年の仲だと思っていたのですが、出会いはまだ2、3年前だと聞いて驚きました。
左:研究員 堀江健一さん 右:研究員 千正英五さん(画像:堀千ホタル研究所提供)
「趣味は虫です」から始まった出会い
お二人の本業は、昆虫研究ではありません。
医療と介護の現場で働いていらっしゃいます。
堀江さんは訪問診療のクリニックに勤務しており、千正さんはケアマネジャーです。
お二人は中野区の医療・介護関係者が集まるネットワーク「MIKAN」で出会いました。
そして2023年末のとある会合で、たまたま隣同士に座ったことがきっかけで距離が縮まりました。
千正さんの何気ない「趣味は何ですか?」との問いに、
堀江さんは少し間を置いてこう答えました。「虫です」
堀江さん。 昆虫が昔から大好き!昆虫研究に際しては、ネットから情報を得るのではなく図書館で文献収集から始めるとのこと(画像:堀千ホタル研究所提供)
20年近く“封印されていた趣味”
堀江さんは幼い頃から昆虫が大好きだったそうです。
東南アジアまで一人で虫を見に行くほどの熱量。
ただ、それを人に話すことはほとんどなかったといいます。
「虫の話って、あんまり盛り上がらないんですよ(笑)。だからずっと言ってなかったです」
中学生くらいから、ほぼ誰にも趣味の話をせずに過ごしてきましたが、会合の和やかな雰囲気もあってか、自然と趣味が虫だと口に出たそう。
それを聞いた千正さんの反応はと言うと、
「それ、めちゃくちゃ面白いですね」
そして少し笑いながら、
「一緒に何かやりましょうよ」
この一言が、「堀千ホタル研究所」に繋がっていくのでした。
最初はミツバチ。でも現実は甘くなかった
お二人が最初に取り組んだのは養蜂でした。
図書館で本を借りて何冊も読み込み、巣箱を手作りし、埼玉県の畑に設置。
設置したあとも、何度も現地を見に行き、
「そろそろ来るかな」と待ち続けたそうです。
しかしミツバチは現れることなく、時間だけが過ぎていきました。
そして「ホタルってどうですか?」
養蜂をやっていることなどを地域のご年配の方々と話しているうちに、
「昔は中野には色々な虫がいたなぁ、ホタルが飛んでいたぁ」というようなことを聞く機会がありました。
そんな時に千正さんが「ホタルってどうですか?」 と。
この一言が、研究所の方向を大きく変えました。
なんか面白そう…ということで、ホタル研究を開始することに。
医療介護の現場にいると、日々ご年配の方と交流をする中で、色々なアイディアをもらいます、とお二人は言います。
生き物全般が好き。最初は養蜂にチャレンジしたいと思っていたそうで、堀江さんと一緒に活動することになったようです。(画像:堀千ホタル研究所提供)
野川で見た“一匹だけの光”
ホタルを育てる前に、まず本物を見ようと都内某所に介護仲間と向かったとのこと。
その日は雨上がりで、空気も重く、正直あまり期待できる状況ではなかったそうです。
暗闇の中、しばらく何も見えない時間が続きます。
そのとき、ふわっと一つの光が現れました。
ホタルが一匹。
それだけでした。
でも、その一瞬で空気が変わったといいます。
「虫が苦手な人まで、みんな静かに見ていました」
その瞬間、ホタル研究をしよう!と二人は決めたようです。
堀江さん曰く、
「僕は普通にテンション上がっていました(笑)」とのことでした。
「中野では難しい」現実との対峙
その後、二人は全国のホタル保護地を調べていきます。
そこで見つけたのが、中野区の過去のホタル復活事業の報告書でした。
数年かけて行われた大規模な取り組みの結論は、
「自生は困難」というもの。
しかし二人は、その言葉を“終わり”としては受け取りませんでした。
むしろそこから、挑戦は一気に動き出します。
立ち上げから現在まで
堀千ホタル研究所の歩みを振り返ります。
- 2023年末:堀江さん、千正さんが医療介護の現場で出会い、とある会合で意気投合
- 2024年1~4月:養蜂をスタート(図書館で本を読み込みながら本気で研究)
- 2024年4月頃~:ホタル飼育へ方向転換
- 2024年6月:堀千ホタル研究所として活動開始
ホタル飼育は、「ホタルを買う」ことではなく、自ら採集することからスタートしました。
後ほど詳説しますが、このような場所に採集に行くそうです(画像:堀千ホタル研究所提供)
そこからまず取り組んだのは、高齢者会館や老人ホームでのホタル観賞イベントです。
外に出ることが難しい方にも、本物のホタルの光を届ける。
その活動は少しずつ広がり、次の段階へと進んでいきました。
ホタル観賞イベントの様子(画像:堀千ホタル研究所提供)
- 2025年7月:子ども向けイベントにチャレンジ(そのほか引き続き高齢者会館老人ホームや保育園などを訪問)
- 2026年6月:絵本ラウンジLOOP中野でイベント開催
- 2026年7月:中野ホタル祭り開催予定
「高齢者のためのホタル」から、「地域全体、老若男女で楽しむホタル」へ。
活動を重ねるごとに、その形は進化していきました。
絵本ラウンジLOOP中野でのイベントの様子 (画像:堀千ホタル研究所提供)
我が家の3歳の息子も大喜び !ホタルを見るだけでなくホタルについての研究報告もあり、よりホタルへの知識が深められます。
立ち上げの裏側は、かなり“野生的”でした
先述した通り、研究所スタート時のホタルは、購入されたものではなく、“野生採集”された個体。
その採集方法もかなり独特で、ホタルがいそうな場所を探すために、日本各地を約30か所も巡ったそうです。
ネットの情報に頼らず、「ホタルの自生地」を探す旅。
中には、Googleマップの航空写真を見ながら、「この地形ならいそうだな」
と目星をつけて現地に向かう、かなり直感的な方法もあったといいます。
そしてその読みは当たることも多く、結果的に最初の10匹のホタルを採集できました。
途中、野生のイノシシに遭遇したり、マムシが出そうな環境に足を踏み入れたり、虫に刺されたり、数々の困難を乗り越えてきました。
「自生しているホタルのほとんどは、危ない場所にしかいないんですよね」とお二人が笑いながら話していたのが印象的でした。
ホタル採集を行う様子(画像:堀千ホタル研究所提供)
さらに、ある場所ではわらべ歌「ほたるこい」にまつわる石碑を訪れ、その近くのご家庭で、歌のルーツについて話を聞くこともあったそうです。 ホタルを見つけ出すだけでなく、ホタルにまつわる文化にも触れる旅でもあったそう。
『堀千ホタル研究所』の他にはない強み
こうした経験の積み重ねが、堀千ホタル研究所の大きな強みです。
- とにかく行動が早い。思い立ったらすぐ動くフットワークの軽さ
- 図書館や現地調査を含め、徹底的に自分の足で情報を集める姿勢
- ゼロからホタルを育ててきた実体験
(画像:堀千ホタル研究所提供)
単なるイベント運営ではなく、積み重ねた“現場の知識”があること。
それが一番の強みだといいます。
ホタル研究のためなら本気で、努力を惜しまず、日本全国を飛び回ったそうです
(話の内容は過酷ですが、笑顔が素敵なおふたりです)
ホタルという生き物
ここで少し、ホタルそのものについても教えていただきました。
日本には約50種類のホタルが生息しており、その中でも有名なのがゲンジボタルとヘイケボタルです。
東京では野生のホタルが見られる場所はほとんどなく、多くは保護された環境で育てられています。
ホタルは一生のほとんどを幼虫として過ごします。
- 水中で約10か月過ごす
- ゲンジボタルはカワニナ、ヘイケボタルはタニシを食べる
- その後土に潜り約1か月サナギになる
- 成虫として光るのはわずか1週間
その短い1週間の間に相手を見つけ、卵を産み、一生を終えます。
まさに“光るために生きているような生き物“です。
ホタルの様子(光っていないホタルをしっかりと見たのは私も初めてでした)(画像:堀千ホタル研究所提供)
ホタルが減った理由
ホタルが見られなくなった理由は、環境汚染だけではありません。
主な要因としては以下が挙げられます。
- 農薬:幼虫の餌となるタニシやカワニナが減少
- 光害:街灯などの人工光により繁殖行動が妨げられる
- 河川改修:コンクリート化により、幼虫が土に潜れない環境に
一つの原因ではなく、複数の環境変化が重なっていることが分かります。
ホタル産卵の様子(画像:堀千ホタル研究所提供)
「ゼロから育てる」という現実
堀千ホタル研究所は、
単にホタルを持ってきてイベントをするのではなく、環境づくりからすべて手作業で行っています。
ホタルの数は最初の10匹から、今では約2000匹へ。
その成功の裏側では、地道すぎる作業も続いています。
幼虫の餌となるカワニナやタニシを、川や田んぼに採りに行く日々。
しかもそれだけでは足りず、今ではその餌そのものも育てているといいます。
「気づいたら、ホタルより餌の管理の方が大変になってきました」
そんな冗談交じりの言葉も出るほどです。
ホタルの研究もしつつ、ホタルの餌も採りに行き、更に育てる…本当に驚きです。(画像:堀千ホタル研究所提供)
ホタルを飼育するリアルな現場も印象的でした。
実際に絵本ラウンジLOOP中野での準備中に、カワニナを見せてもらったのですが……
正直に言うと、かなり強烈な匂いがします。
一匹でもしっかり存在感があるレベルの匂いで、それを大量に管理するというのは想像を絶するものです。
初めての大規模イベント、そして想定外の反響
ホタルの活動は徐々に地域へ広がっていきます。
最初は、外出が難しい高齢者に向けた小さな鑑賞会を行っていました。
転機となったのは、昨年の野方区民ホールでのイベントです。
昨年の野方区民ホールでのイベントの様子(画像:堀千ホタル研究所提供)
会場は暗転され、カエルや虫たちの鳴き声のBGMを流した、完全な“ホタル空間”。
静かな暗闇の中で、ホタルの光だけが浮かび上がる構成でした。
その結果――
想定を大きく超える反響が。
270席の会場に対して、来場者はその3倍以上。
会場は終始混雑し、「次の回どうぞ!」と案内が止まらない状態だったといいます。
ホタルのいる暗室に入る前の様子。まるでテーマパークのよう!(画像:堀千ホタル研究所提供)
その経験を経て、今年はさらにスケールアップ。
前段として2026年6月に絵本ラウンジLOOP中野で3日間のイベントを開催。私も参加させていただきました。
ホタルの講義、観賞、希望者にはふれあい体験も用意され、予約はすぐに埋まりました。
そしてその流れのまま、いよいよ次のステージへ進みます。
中野ホタル祭りへ
2026年7月4日・5日。
中野区の中心で、「中野ホタル祭り」が開催されます。
今回のテーマはシンプルです。
「中野でホタルを楽しむ」
昨年は野方エリアでの開催でしたが、今年はより広く、中野全体へと広がりました。
子どもも、大人も、おじいちゃん、おばあちゃんも。
世代を問わず楽しめる“まちのイベント”として計画されています。
中野ホタル祭りのフライヤー(画像:堀千ホタル研究所提供)
ホタル観賞スペースは…まさかの四季の森のど真ん中
メイン会場となるのは、多目的ホール。
ガラス張りの空間を完全に目張りし、暗闇をつくり出します。
その中でホタルが舞う空間を再現するという、かなり大胆な設計です。
このアイデアは、現場での会話から生まれたものでした。
「このホール、もっと面白く使えるんじゃないですか?」
そんな一言から、構想が動き出したといいます。
さらに今回は、天井にもホタルの光を感じられるような仕掛けが用意されています。
四季の森公園のこのガラス張りの建物で、ホタルの光を見ることができます!(画像:堀千ホタル研究所提供)
“お祭り”の内容は…?
中野ホタル祭りの会場には、さまざまな体験が用意されています。
- カブトムシやドジョウのふれあい体験
- 金魚すくい
- 水生昆虫の観察
- ヒーローショー
- キッチンカーによる飲食提供
昼から夜まで、ずっと滞在できる構成になっています。
そして夜。
19時頃から、いよいよホタルの観賞が始まります。
子どもに飽きさせない工夫「海ほたる」
ホタルを見るまでの時間も楽しめるよう用意されたのが、もうひとつの目玉。
“海ほたる(海の発光生物)”の展示です。
さらに昼の時間帯には、体験型の展示や観察コーナーもあり、子どもたちが飽きずに過ごせるよう工夫されています。
ホタルを「待つ時間」さえも、イベントの一部として設計されているのです。
そして驚くことに、展示する海ほたるを実際に採取しに行ったそうです。
ここまで来ると、研究所というより、もはや探検隊のような領域です。
ホタルがつなぐ記憶と気づき
お二人とも医療介護現場での主業務がある中で活動されているので、ホタル研究の原動力・やりがいについて聞いてみました。
何より嬉しいのは、目の前で生まれる“初めての体験”だそう。
子どもたちがホタルを見て、素直にこぼす言葉。
「初めて見た」「きれい」
その一言一言が、そのままこの活動の意味になっているといいます。
そして意外なことに、子ども以上に夢中になっているのが親世代だそうです。
気づけば大人の方が静かに見入っている。
そんな光景も、何度も目にしたといいます。
先日のイベントで私がホタルを撮影した写真(涙)
感動が伝わらないので、お祭り当日、現地に足を運んでいただければと思います。
さらに印象的だったのは、高齢者施設での出来事です。
ホタルの光を見た瞬間、それまで口数の少なかった方が、ふと昔話を始めることがありました。
「昔はね、この辺にもいっぱい飛んでいてね」
「子どもの頃は夜になると外で遊んでいたんだよ」
まるで記憶の蓋が開くように、言葉が次々とあふれてくる。
その様子を目の当たりにしたとき、堀江さんは強く心を動かされたといいます。
ホタルは人の中に眠っていた記憶をそっと引き出す存在になるのかもしれないーーそんな実感があったと話してくれました。
一方で、千正さんが強調するのは「子どもから教えられることの多さ」です。
昨年のイベントで、一人の子どもが何気なくこう言いました。
「ホタル同士が近づくと、光り方変わるね」
その場では軽く聞き流しそうになるような一言でしたが、後から改めて観察してみると、確かにその通りだったといいます。
大人たちが見落としていた変化に、子どもは気づいていた。
その瞬間の驚きは、今でも忘れられないそうです。
「子どもってすごいですよね」 と呟く千正さん。ホタルを通して、色々なことに気づかされるそうです。
ホタルの光は、ただ美しいだけではなく、人の記憶をほどき、視点を変え、気づきを生み出していく。
その小さな光の中に、想像以上に大きな力が宿っているのかもしれません。
そして未来へ
お二人が見ている未来は、シンプルながら壮大です。
「ホタルと名前がつくものは全部やりたい」
ホタルイカ、ウミホタル、そしてホタル。
中野を“ホタルのまち”としてブランディングし、子育てや地域の文化と結びつけていくことを目指しています。
インタビュー当日の様子
大胆な発言が次々飛び出す中、お二人は終始にこやか。とても刺激的で楽しいインタビューでした!
あとがき
今回の取材を通して、堀千ホタル研究所の活動は “止まらない実験”に近いものだと感じました。
失敗もあれば、想定外もある。
それでも活動を続け、次の場所に向かっている。
そんな二人の姿に、こちらが圧倒される場面が何度もありました。
中野ホタル祭りは、ただのホタル観賞イベントにとどまらず、お二人がここまで積み重ねてきた時間、経験の延長線上にあるものです。
7月4日・5日、中野四季の森公園にて。
ぜひ会場で、お二人の挑戦を体感してみてください。
イベント当日のレポートも別途投稿できればと思います!
堀千ホタル研究所
中野ホタル祭り
場所:中野四季の森公園
日時:2026年 7月4日、5日 11時から21時(ホタル観賞会:19時から21時)
入館料:1500円
予約不要でご参加いただけます。
お問い合わせ
このページは区民部 文化振興・多文化共生推進課が担当しています。
