<東京黎明アートルーム>特別展 良寛の書簡 (3)―地域の絆編

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更新日:2025年12月23日

神号『天満大自在天神』良寛(江戸時代 19世紀)東京黎明アートルーム蔵

菅原道真公を称える神号。越後では天神信仰が盛んで、良寛は幼い頃から菅原道真公を尊敬していたといいます。地域の人々の依頼に応えて、こうした神号を揮毫することもありました。

与板・和泉屋山田家との親交

書簡 およしさ宛 『ぬのこー』良寛(江戸時代 19世紀)

与板(長岡市)の造り酒屋・和泉屋山田家の女将、およせに宛てた手紙。綿入れのお礼に和歌が添えられています。

「さむくなりぬ いまハ蛍も光なし こ金の水を たれかたまはむ―蛍(良寛)」
~寒くなり蛍も光を失ってしまった 黄金の水(酒)をくださるのは貴女以外に誰がいるというのだろうか~

「蛍」とは、夕暮れ時になると酒を飲ませてもらうことを楽しみに訪れていた良寛に、およせがつけたあだ名です。二人はこうした戯れ歌を交わし合う親しい間柄でした。

書簡 山田杜皐宛『このごろは』良寛(江戸時代 19世紀)

山田杜皐(とこう)は和泉屋山田家の当主であり、およせの夫。俳諧や絵をこよなく愛した、良寛より16歳年下の親友です。

山田家へのお礼状も多く遺されており、この手紙は踊り用の手拭いを頂いたお礼。病をおして頬かぶりをし、盆踊りの輪に加わり踊り明かしたことを伝えています。

およせがつけたあだ名を良寛も気に入っていたようで、酒を求める手紙では「蛍」、こちらの踊りの手紙では「すがた」と署名しています。

書簡 山田杜皐宛『今日□人たまはり』良寛(江戸時代 19世紀)

良寛が亡くなる10日前、1830年(天保元年)12月27日のものと思われる手紙。贈り物(赤人=炭とする説が有力)へのお礼に和歌が添えられています。

「火とわれとさむし すき間風 いづくもおなじおひらくの身は―良寛」
~炭火とわたしと寒いすきま風 どこも同じことだけれど老いた体には身にしみることだ~

震災を乗り越えて

文政11年(1828)11月12日朝7時頃。良寛がよく訪れていた三条を中心に「文政三条地震」が起こりました。良寛71歳の時のことでした。推定マグニチュード6.9の大きな地震の被害は、良寛が愛した与板の町にも及び、親友・山田杜皐に送った見舞状の一節には次のような言葉が記されていたといいます。

“災難に逢う時節には災難に逢うがよく候
死ぬ時節には死ぬがよく候
是ハこれ災難を逃るる妙法にて候“

この言葉は厳しい自然環境と孤独に向き合ってきた良寛の、無為自然な死生観を物語るものとして知られています。(本展では展示されていません)

漢詩 『地震後詩』良寛(江戸時代 19世紀)

この漢詩は震災から約2年後に書かれたものだといわれています。良寛が目にした地震の凄惨な様子とともに、太平に慣れ堕落した世への憂いが綴られています。

漢詩 『地震後詩』良寛(江戸時代 19世紀)

良寛はこの詩で、地震を人々の堕落した心が引き起こした大地からの警告と捉えています。そして、ひとりひとりが自らを律し、何度倒れても起き上がる三角達磨のように立ち直ってほしいとエールを送っています。

書簡 三輪権平宛『こたびまねく』良寛(江戸時代 19世紀)

良寛が『万葉集略解』を借り受けるなど、親しくしていた三輪権平(ごんぺい・1797-1852)は越後屈指の富豪でした。文政三条地震の際、権平は多くの支援物資を被災者へ提供したといわれています。

良寛はこうした権平の善行に深く感動し、喜びを伝える歌を送っています。

「新玉(あらたま)の 年は経(ふ)るとも さす竹の 君が心を 我が忘れめや―良寛」
~新しい年がいくつ過ぎ去ったとしても 竹のように真っ直ぐなあなたの心を わたしは決して忘れないでしょう~

東京黎明アートルーム特別展とは

良寛の書簡 特別展冊子 (オールカラー 全24ページ)

東京黎明アートルームで年に数回開催される特別展は、独自の視点による企画が注目を集めています。

2023年に続き2回目となる良寛展。今回も全国良寛会会長であり、良寛研究の第一人者でもある小島正芳氏が監修を務めています。入場者全員に配布される冊子には小島氏による詳しい作品解説が収録されており、良寛の書の世界と生涯への理解が深まる内容となっています。
良寛が生涯をかけて体現した心の豊かさの世界を、ぜひ会場でご覧ください。

ナカノ観光レポーター、Kana Nakaがお届けしました。

東京黎明アートルーム

《特別展 良寛の書簡》
開室期間:2025年12月25日(木)まで
休室日:12月23日(火)
開館時間:10:00~16:00
※最終入室は15:30
入室料金:一般 800円(20歳未満は無料)
※障害者手帳をお持ちの方及び介護者の方は400円引き
※20歳未満の方は年齢を確認させていただく場合がございますので、年齢のわかるものをご用意下さい。
所在地:東京都中野区東中野2-10-13
アクセス:JR 東中野駅徒歩7分/都営大江戸線 東中野駅徒歩約7分/東京メトロ 東西線 落合駅徒歩約14分/丸の内線 中野坂上駅徒歩約13分
電話:03-3369-1868
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このページは区民部 文化振興・多文化共生推進課が担当しています。

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