令和5年(2023年)第1回中野区議会定例会区長施政方針説明(2023年2月13日)

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更新日:2023年8月3日

施政方針説明を行う酒井区長
(施政方針説明を行う酒井区長)

1 はじめに

2 社会経済の動向を踏まえた区政の方向性について

3 子どもにやさしいまちへ

4 困っているひとにやさしいまちへ

5 安全で活力あるまちへ

6 3つのプロジェクトを推進するために

7 令和5年度予算の概要

8 むすびに

令和5年第1回中野区議会定例会の開会にあたり、本年の区政運営に臨む、私の所信と予算の概要を申し上げ、議員各位、並びに区民の皆様にご理解とご協力を賜りたいと存じます。

2月6日にトルコ南東部において発生した大規模地震により、トルコ国内及びシリア等周辺国において犠牲になられた方々のご冥福をお祈り致しますとともに、被災された皆様に、お見舞いを申し上げます。
区では、区民の皆さんの温かいご支援をお届けできるよう、救援金の受付を開始いたしました。

新型コロナウイルス感染症の影響が長期化していますが、区内各地でさまざまなイベントが開催されるなど、中野に活気と賑わいが戻ってきました。2023年の干支は、癸卯(みずのとう)。これまでの努力が実を結び、飛躍する年になるといわれています。私は、区民の皆さんが培ってきた地域の力を再起させ、区民と区が協働して活力溢れるまちをつくっていきたいと考えています。

(感染対策)
政府は、大型連休明けの5月8日に、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付けを「5類感染症」に移行する方針を決定しました。新たな局面を迎えることになりますが、一般の医療機関で患者を受け入れるための感染防止や必要な病床の確保など実効力のある具体策が求められます。日常を取り戻し、地域や経済の活動を一層活発にするためにも、国や都の政策と動向を踏まえながら、中野区としての感染対応、感染防止に取り組んでまいります。

(物価高騰・経済対策)
地域経済に目を向けると、昨年来の物価高騰が続き、東京都区部における今年1月の消費者物価指数(速報値)は前年同月比で4.3%上昇し、高い水準で物価の上昇が続いています。20年に及ぶデフレの終結が見えてきたと言われていますが、区民生活にどのような影響を及ぼしていくかを見極め、必要に応じて機動的に対策を講じていくことが必要であると考えています。

世界的に見れば、ウクライナ危機をはじめとした国際紛争やサプライチェーンリスク、さらに深刻さを増している気候変動など、VUCA(ブーカ)と言われる不確実性の時代背景にあって、経済成長が伸び悩んでおり、注視していかなければなりません。

(子育て先進区)
政府は、「成長と分配の好循環」と「コロナ後の新しい社会の開拓」をコンセプトとした「新しい資本主義」の実現に向けて、人への投資、脱炭素、デジタル化を進めることを明らかにしました。また、子どもファーストの経済社会を作り上げ、出生率を反転させるため、従来とは次元の異なる少子化対策を実現する決意を示しています。日本の競争力と成長力を高めるきっかけとなることを期待するところですが、こうした考え方や政策は、中野区が既に取り組んでいる「子育て先進区」の実現と同じ方向性であり、子育て世代のニーズを捉えながら、取り組んできたところです。現場の課題とニーズを的確に把握し、それらにスピーディーに対応できるのは、基礎的自治体です。中野区は、子育て世代や地域の皆さん、さらに子どもたちと対話を重ね、子育て・子育ちの課題を明らかにし、それらの解決に向けて尽力しています。機会ある毎にお話ししていますが、私は「子どもにやさしいまち」は「誰にとっても住みやすいまち」であると確信しています。子育て・子育ち政策をはじめ、足元の物価高騰への対策を含めて、中野区が国や都をリードしていく気概で、「子どもにやさしいまち」、「誰にとっても住みやすいまち」を目指していきます。

(デジタルトランスフォーメーション)
これからのまちづくりやしくみづくりに欠かせないのが、DX、デジタルトランスフォーメーションです。WEB3.0、メタバースなど様々な分野において最新のデジタル技術を用いた試みがなされています。来年の5月には中野区役所は新庁舎へ移転しますが、今後、中野区が様々なサービスの提供や取組を進めていく上で、新たな技術やサービスの動向を捉えることは必須であると認識しています。また、こういった技術革新や新たなサービスを活用して、区民の皆さんの利便性を向上することに、試行や検証を重ねながらチャレンジしていくことが必要だと考えています。

(中野駅周辺、西武新宿線沿線まちづくり)
中野駅周辺は、100年に一度といわれる再整備が着実に進んでおり、様相が見るからに変わってきました。来年の2月には中野二丁目地区の市街地再開発事業による建物が完成し、2026年には中野駅西側南北通路・橋上駅舎が新設され、長年の課題であった駅のバリアフリーが実現し、避難経路ともなる南北動線が開通します。2030年頃までには、中野駅新北口駅前エリアをはじめ、中野駅周辺は大きな変貌を遂げます。

西武新宿線沿線においては、連続立体交差化の早期実現に向けて、地元の皆さんと協力関係を築きながら、沿線まちづくりを進めてまいります。

(基本構想の実現)
しかし、これらは変化の一端に過ぎません。私は、中野の未来には希望と大きな可能性が溢れていると思っています。未来に希望を持つことができ、様々にチャレンジできる一方、安全に安心して暮らしていくことができる中野。この双方を併せ持つまちを必ず実現できると信じています。そのために中野区は、10年後に目指すまちの姿を描いた「中野区基本構想」の実現に向けて、区民、団体、事業者の皆さんと一緒に施策や事業を進め、最善を尽くします。具体的には、「中野区基本計画」の3つの重点プロジェクトである、「子育て先進区の実現」、「地域包括ケア体制の実現」、「活力ある持続可能なまちの実現」をしっかりと前へ進めてまいります。

(持続可能な財政運営)
将来に亘って持続可能な財政運営を確立することも不可欠です。令和4年度補正予算や令和5年度当初予算の編成過程において、国や都の支出金が当初の想定より減となった事例もあり、社会経済状況が不透明な状況の中では、一層国や都の動向を注視し、区として安定的な財源を確保していく必要があると考えています。一方、歳出にあたっては、人口動向や行政需要を見定め、効果的かつ効率的に区民サービスの提供を行っていかなければなりません。DXの推進にあたっては、業務改善とともに職員の意識改革を進めていきます。

本定例会でご審議いただく令和5年度予算案は、新たな財政運営の考え方に基づき、財政規律を守りながら、喫緊の区政課題に対応するものとなっています。未来の中野に向けて、基金の積み立てや活用を計画的に進め、強固かつ柔軟な区政運営の基盤を確立することにも一層注力してまいります。

中野区の最重要課題の一つである「子育て先進区」の実現に向けて、本年4月に内閣府の外局として設置される「こども家庭庁」の政策に対応しながら、昨年3月に制定した「中野区子どもの権利に関する条例」に基づき、子どもの権利の普及啓発、子どものセーフティネットの強化、子育て・子育ちに寄与する取組、教育の質向上と不登校対策をはじめとした教育課題への対応を着実に進めてまいります。

(子どものセーフティネット)
相談件数が増えている児童虐待について、未然防止の取組はもとより、設置2年目を迎える児童相談所を中心として、関係機関が連携して、早期発見や総合的かつ迅速な対応に努め、子どもとその家族を支援します。

また、子どもが安心して育つための家庭への支援を推進するため、ひとり親家庭への総合的な支援を実施するとともに、離婚調停中で実質ひとり親の家庭への金銭給付を実施します。

さらなる支援として、高校生等(18歳以下)の医療費助成を実施します。また、「リトルベビーハンドブック」を作成・配付し、低出生(ていしゅっしょう)体重(たいじゅう)児(じ)などのお子さんを育てる家庭への育児支援を実施いたします。子育て全般については、必要な情報を掲載した子育て支援ハンドブック「おひるね」を発行します。

社会問題となっている子どもの貧困については、中野区が実施した調査では、生活に困窮している世帯の子どもが学習、体験、食など様々な場面で困難な状況を抱えている傾向が窺えます。学習支援事業や子ども食堂への支援等、子どもの貧困対策をさらに推進していきます。

(子育て・子育ち環境の充実)
子どもと子育て家庭を支える環境を充実させるため、老朽化が著しい区立保育園、児童館、学童クラブ等の改修工事やキッズ・プラザが未整備の区立小学校に、放課後に児童が利用できる居場所・遊び場を整備します。さらに、常設型プレーパークの設置の検討をはじめ、子どものニーズに合わせた屋内外の遊び場機能を充実していきます。

また、保育所や幼稚園を利用していない未就園児に対して、保育所等の空き定員を活用した定期的な保育をモデル事業として実施し、空き定員の活用方法や保育所の安定運営に対する効果や課題を検証します。

(教育の質向上、区立小中学校の指導体制・組織体制の充実)
個別最適な学びと協働的な学びを各学校の教育課程に位置付けるとともに、学習用端末の更なる活用を図るため、ICT支援業務を拡充し、学校に対する専門的な支援体制等を充実します。また、児童・生徒一人ひとりが英語によるコミュニケーション能力を身に付けられるよう、英語教育を充実します。

また、学校図書館の蔵書を充実し、児童・生徒の読書に対する意欲を高めるとともに、探究学習を推進するため、学校図書館の学習センター的機能を充実します。

さらに、児童・生徒一人ひとりの学習状況に応じたきめ細かな指導を行うため、任期付短時間勤務教員を増員します。また、教員の負担を軽減するとともに、授業の質を向上するため、小学校の学級担任業務を補佐する職員を配置します。

(教育相談体制の充実)
スクールカウンセラーや教育相談室等、子どもたちが学校生活に関わる問題等を相談しやすい体制を充実するとともに、ヤングケアラーなど家庭生活での問題への対応など、児童・生徒一人ひとりに必要な支援を行うため、スクールソーシャルワーカーの体制を整備します。また、福祉に係る関係機関と連携し、継続的な相談支援を進めます。

(コミュニティスクールの推進)
家庭、地域、学校が協働して学校運営を進めていくため、地域学校協働活動の推進を図るとともに、学校運営協議会制度(コミュニティ・スクール)の導入に向けた取組を進めます。

(体験活動・読書活動の充実)
区立小・中学生の豊かな感性、想像力、人間性などを育むため、様々な文化、芸術体験の機会を充実します。

また、区立小学校の選択制移動教室については、貸し切りバスや宿泊施設の手配、実地踏査日や当日の添乗・行程調整等、移動教室の準備作業及び実施時の諸業務を委託し、円滑で安定的な実施を図ります。

さらに、中学校の休日における部活動の地域移行に向けて、有識者等による委嘱委員会を立ち上げ、中野区としての考え方や方向性を協議します。

また、被爆地への平和の旅を実施するなど、平和事業の拡充を図り、次世代の参加機会を増やします。

他方、子ども読書活動を推進するため、低年齢の子どもたちに魅力のある児童コーナー等を中央図書館に整備するとともに、区立図書館の蔵書を充実します。

人生100年時代において、子どもからご高齢の方、障害のある方など誰もが住み慣れた地域で心身ともに健やかに安心して自分らしく暮らすことができる中野の実現に向けた政策を実現してまいります。具体的には、「中野区地域包括ケア総合アクションプラン」に基づき、包括的な相談支援、参加支援、地域づくりに向けた支援の3つを柱として、相談支援の質を向上するとともに、区民・団体と連携した地域づくりや関係機関を巻き込んだ基盤づくりを進めます。

また、第10期中野区健康福祉審議会を設置し、「中野区地域福祉計画」や「中野区スポーツ・健康づくり推進計画」の改定などを行いながら、新型コロナウイルス感染症への対策をはじめ、健康づくり、障害のある方への支援を充実いたします。

(支えあい活動の推進・介護人材の確保)
ヤングケアラーの支援体制を強化するため、実態調査や支援に携わる関係者への研修、当事者同士が交流できるオンラインサロンの設置、支援機関の橋渡し役となるコーディネーターの配置等を行います。

また、現在のひきこもり支援事業の内容を拡充し、新たにひきこもり相談会やサポーター養成事業を実施するほか、専門相談窓口での対応、啓発活動などを継続して行います。

さらに、困難な問題を抱える女性への支援に関しては、婦人相談員による関係機関との連携・調整や同行支援などの体制を強化します。

他方、行政だけでは解決困難な複雑化・複合化した地域課題を解決するため、孤独対策やフレイル予防など、教育機関(大学等)や企業・団体が有する知見・ノウハウの活用を図り、コンソーシアム(共同基盤)を整備します。

介護保険サービスに関しては、同サービスを提供する事業所職員を対象とした宿舎の借り上げを支援し、住宅費負担を軽減することで、介護人材の確保と定着を図ります。

(区民公益活動の充実)
区民公益活動を活性化するとともに、住民の参加を促進するため、地域団体活動の情報発信とその取得が簡単にできるWEBアプリを導入します。併せて、地域データの基盤を整備し、地域課題の解決に向けた地域でのネットワークづくりを支援します。

(多文化共生の推進)
多文化共生を進めるため、中野区国際交流協会を通じて、やさしい日本語出前講座の地域での普及啓発事業を実施するとともに、外国人等を対象とした日本語講座の地域展開を進めます。

(障害者支援)
重度障害者が修学するために必要な支援体制を大学等が整備するまでの間、重度障害者に対して修学に必要な身体介護等を提供します。また、重度障害者等が就労する場合に、職場等における身体介護や通勤介助等を行い、重度障害者等の就労機会の拡大を図ります。

失語症者が参加している団体に対しては、意思疎通支援者を派遣するとともに、失語症者と意思疎通支援者が集うサロンを開催し、会話の支援を行うことで、失語症者の自立や社会参加を促進します。

重症心身障害児や医療的ケア児が、地域において必要な支援を円滑に受けることができるよう、保健、医療、福祉、教育等の関係機関による協議の場を設置します。併せて、医療的ケア児コーディネーターを中心として関係機関が有機的に連携し、区内の社会資源や相談援助技術を共有するための場を確保します。

より多くの障害児者が参加できるよう文化スポーツ事業の充実を図ります。また、スポーツ推進員が障害児者施設に赴き、ボッチャ体験会などを実施します。

(健康づくり)
高齢者の保険事業と介護予防事業を一体的に実施します。国保データベースシステムから抽出した検診データ等を医療職が分析し、健康課題や支援対象者を特定することで、高齢者に対する個別アプローチ(ハイリスクアプローチ)と通いの場等への積極的関与等(ポピュレーションアプローチ)を行います。

他方、男子HPVワクチン任意予防接種費用助成を実施します。HPVに感染した男性から女性への感染や子宮頸がんの発症を予防するとともに、男性の性感染症等を防止するため、小学6年生から高校1年生までの男子を対象に任意予防接種の費用助成を行います。

また、口腔がんに関する啓発を充実するため、中野区歯科医師会が行う口腔がん啓発に要する経費を補助します。

さらに、食育の一環として、子どもから高齢者までの各ライフステージに合わせた食育リーフレットを作成し、関係各課や関係機関と連携して健康的な食習慣等について講座等を実施します。

また、好評の「中野ランニングフェスタ」の開催を支援するため、同フェスタを主催する実行委員会に対し、補助金を交付します。

中野駅周辺の再整備を核として、多様性を認め合い、様々な主体による連携・協力により中野のまちをデザインし、歴史と未来をつなぐまちづくり、文化・芸術を育むまちづくりを、庁内の体制を強化して進めてまいります。

本年9月1日に関東大震災から100年を迎えます。昨年10年ぶりに見直された首都直下地震の被害想定なども踏まえ、ハード・ソフト両面の防災まちづくりを着実に進めます。また、「2050ゼロカーボンシティなかの」の実現に向けた取組を実施してまいります。

(文化・芸術活動の振興)
中野区内の壁画制作プロジェクトである「中野ミューラルプロジェクト」を実施するとともに、もみじ山文化センター本館の旧レストランスペースを活用し、区民や区内文化芸術団体の作品展示やワークショップを実施するなど、身近に文化・芸術に親しみ、つながりが生まれる機会を創出します。また、旧中野刑務所正門の修復・移築を進めます。

(区内経済支援)
中野区内の継続的な事業活動を支えるため、中小企業や商店街のニーズを捉えた支援を進めます。業況の低迷に苦しむ区内中小企業者への支援のため、小規模事業者経営改善資金への100%利子補給を継続します。また、商店街のデジタル化推進を支援すると共に、個店や創業者に対する伴走型支援の試行を行い、にぎわいと魅力ある商店街の形成に向けた取組を進めて参ります。

(中野駅周辺まちづくりとにぎわいの創出)
中野駅周辺のまちづくりでは、中野駅西側南北通路・橋上駅舎整備の建物本体工事を進めます。また、中野二丁目地区で実施する土地区画整理事業、中野三丁目地区及び中野四丁目新北口駅前地区で実施する土地区画整理事業、中野二丁目地区及び囲町東地区で実施する第一種市街地再開発事業について、事業費の一部を補助し、各事業の推進を図ります。

さらに、中野駅周辺のエリアマネジメントを推進するため、民間主体の中野駅周辺エリアマネジメント協議会の運営などを支援します。

また、本年7月に中野サンプラザが閉館することを契機として、サンプラザの外壁を利用したプロジェクションマッピングやサンプラザの3Dマッピングなどのシティプロモーション事業を実施します。

(西武新宿線沿線まちづくり)
新井薬師前駅・沼袋駅周辺では、連続立体交差事業に合わせ、補助第220号線、区画街路第3号・4号線の都市計画道路の整備推進により交通環境を改善します。また、新たな駅前の顔にふさわしい拠点整備や上高田一・二丁目及び三丁目周辺地区における防災まちづくりの検討などを行います。一方、野方駅・都立家政駅・鷺ノ宮駅周辺のまちづくりでは、連続立体交差化の早期実現を目指し、各駅周辺まちづくり、駅前の拠点づくり及び基盤計画の検討を進めます。

(防災まちづくり、防災対策の推進)
地域危険度が高い地域や木造住宅密集地域等において、新たな防火規制の導入拡大に向けた検討を行います。また、若宮地区では、地域の市街地特性を活かした防災まちづくりを推進します。

弥生町三丁目周辺では、地区計画や避難道路整備、防災街区整備事業等を、大和町では、地区計画導入検討、避難道路の整備等をそれぞれ進めるとともに、両地区で不燃化特区制度等による不燃化促進を図ります。

南台及び平和の森公園周辺では、地区計画により、良好な住環境への誘導と防災性の確保を行うとともに、地区施設道路を整備します。また、広域避難場所の周辺及び避難路沿道において建物の不燃化を促進します。

このほか、中野区役所と区内関係機関に設置の移動系防災行政無線設備を更新するとともに、災害対策用被服を一目で区職員であると認識できるものに変更します。さらに、緊急を要する情報の迅速な配信のために導入している中野区一斉情報配信システムにおいて、多言語化や連携機能の強化等を行い、より多くの方への情報配信を可能にします。

さらに、小規模保育施設等における防災対策として、認可保育施設等のうち、総合的な防災対策の取組を行う施設に対して区加算分を支給します。

(脱炭素社会の実現に向けた取組の推進)
脱炭素社会の実現に向けて、地域特性を踏まえた二酸化炭素排出量の削減ポテンシャル等の分析調査を実施します。また、太陽光発電システムの設置に対する補助を創設し、再生可能エネルギーの活用を促進します。

(景観施策の推進)
区民や来訪者等が、快適さ、美しさを感じ、愛着や誇りのもてる都市景観の創造に向けて、景観計画及び景観条例の策定に向けた検討を進めます。

(交通環境の整備)
区内交通環境の整備については、中野区交通政策基本方針に基づき、公民の連携と地域の協働による新たな交通手段の導入を含めた地域公共交通ネットワークの構築に向けて、地域公共交通計画を策定します。また、地域公共交通ネットワークの形成について、実証実験の分析・効果検証を踏まえながら取組を進めます。

「中野区基本計画」の3つの重点プロジェクトを推進するため、持続可能な区政運営を確立してまいります。

先行きが不透明な中で、支え、支えられるお互いさまの地域社会を実現していくためには、「サステナビリティ」が不可欠です。「サステナビリティ」とは、環境や地域社会、健康、経済などあらゆる場面において、将来に亘って機能を失わずに続けていくことです。この一環として、新庁舎への移転を契機としたDXを進めます。デジタル技術を用いて、業務フローの改善や新たなモデルを創設するなど業務の変革を図り、区民サービスと利便性を向上します。また、新しい働き方を推進します。区民の皆さんにとって、もっと役に立つ便利な区役所に、職員にとっても働きやすい環境を整備してまいります。

(基本計画の実施計画策定、資産の有効活用推進)

「中野区基本計画」の進捗状況を踏まえつつ、後期(令和5~7年度)の取組を着実に推進するため、後期を計画期間とした実施計画を策定します。後期の事業展開を具体化するとともに、財政フレームを変更した実施計画を策定します。

また、区有施設などの資産の有効活用にあたり、不動産関連業務の専門性やリスク管理の観点などについて、専門的知見を有する事業者等を活用しながら、進めていきます。

(区ホームページのリニューアル、統合型GISの構築・運用)
スマートフォン対応やトップページのデザインの見直し、検索性の向上などの課題を改善し、区民にとって必要な情報がわかりやすく、かつ探しやすくするために、区ホームページをリニューアルします。また、災害などの危機情報などを迅速に発信するため、区ホームページと区公式SNSを連携します。

さらに、庁内情報資産の横断的かつ効率的な共有と活用を図り、統合型GISの運用を開始します。約6,000カ所の街頭消火器設置位置データなどの地図情報を公開し、区民や事業者が検索・閲覧等が可能な状態で地図情報を公開することにより、区民サービスを向上させます。さらに、統合型GISの構築を契機として、共通のプラットホームとしてのデジタル道路現況平面図の整備と公開するデータの電子化を進めます。

(行政手続きのオンライン化推進)
中野区公式LINEアカウントに運用支援ツールを導入します。子育て世帯を中心にアクティブユーザーが多く、かつ拡張性の高いツールであるLINEを活用することで、行政手続きのオンライン化を進めるとともに、区政情報の発信をより効果的に実施し、区民の利便性を向上します。

(ペーパーレス化の推進)
新区役所整備では、令和6年5月に予定している新庁舎への移転に向け、新庁舎の建設工事を進めるほか、ペーパーレスの取組など業務改善を推進します。

(職員の人材育成強化)
区政課題への対応やDXの推進は、職員の成長があってこそ実現できるものだと考えています。そのためには、まず、地域や現場に出て、区民、事業者・団体との協働・協創ができる職員、失敗やミスをおそれず、またそれを生かす職員を育成していきます。新たに導入する人財マネジメントシステムを活用し、長期的・効果的な人材育成、能力開発及び適切な人事配置を行うとともに、人事異動及び人事評価業務の効率化を図ります。

一方、多様化・高度化している区政課題への対応には、専門性を有する多様な人材の確保が不可欠です。また、プロフェッショナル人材と区職員がともに業務にあたることで、職員の意識改革とスキルアップにつながると考えています。これらを通じて、ボトムアップによる政策立案と実行を推進していきます。

(予算の特徴)
令和5年度予算案は、「新庁舎移転を見据え、区民サービスと業務の改善を進め、未来の中野の礎を築く予算」とするため、「中野区基本計画」で掲げた重点プロジェクト、区有施設整備計画に基づく施設整備、構造改革実行プログラムに基づく取組、新型コロナウイルス感染症対策と様々な活動の活性化策及び新庁舎移転を見据えた業務改善に係る取組等の5項目を重点事項として編成しています。

(予算規模)
一般会計が1,956億3,000万円で、前年度比23.9%増。

4つの特別会計(用地特別会計、国民健康保険事業特別会計、後期高齢者医療特別会計、介護保険特別会計)の合計は、772億200万円、前年度比19.7%増。

全会計合わせて2,728億3,200万円で、前年度比22.7%の増。過去最大の予算となっております。

(一般会計の増減理由)
一般会計の歳入予算は、納税義務者数や所得の増加による特別区税の増や、特別区交付金や地方消費税交付金の増加を見込んでいます。さらに、新型コロナウイルスワクチン接種体制確保事業の実施等による国庫支出金の増や、区役所新庁舎整備、囲町東地区市街地再開発事業、学校施設整備や平和の森小学校等の用地購入などにより基金繰入金や特別区債が増となっています。

一般会計の歳出予算では、中野二丁目地区市街地再開発事業関連経費、中野三丁目地区土地区画整理事業関連経費や学校体育館の冷暖房化経費等の投資的経費が減となったほか、児童手当、住居確保給付金、退職手当や基金への積立金等が減となりました。

一方で、区役所新庁舎整備費、平和の森小学校等の用地購入費、囲町東地区市街地再開発事業関連経費や学校施設整備費等の投資的経費が増となったほか、新型コロナウイルスワクチン接種体制確保等の感染症対策経費、教育・保育施設給付費、区有施設の光熱水費、新庁舎移転経費等が増となり、前年度を上回る予算となっています。

昨年は、ロシアのウクライナ侵攻をはじめとした国際紛争とその緊張が特にクローズアップされた一年でした。私たちが安全に安心して生活し、営むことができる日常の尊さとその重要性を再認識したところです。平和行政を政策目的としている中野区は、平和への思いを馳せながら、今、区としてできる平和への取組が何かを改めて考えるときなのだと思います。そして、平和への第一歩は、相互に理解すること、それに努めることではないでしょうか。今年は、広島での主要7か国首脳会議やワールド・ベースボール・クラシックをはじめとした国際的なイベントが日本で開催されます。こういったイベントは、そのテーマを通じて、国籍や文化を越えてお互いの理解を深めることができる絶好の機会です。中野には120を超える国と地域の方が生活しています。また、銭湯や飲食店をはじめ、若い人からご高齢の方まで、様々な世代が同じ空間で触れ合うことができる場所と、それらを楽しんでいる人が多いまちだと思います。多様性を受け入れ、人と想いがつながり、相互理解できる中野を一層そういったまちにし、全国に、そして世界に発信していきたいと考えています。

国際情勢、技術革新など区政を取り巻く社会状況は大きく変わり続けています。変化に常にアンテナを張り、キャッチすることがこれまで以上に必要だと肝に銘じています。足元を見つめて、しなやかに、かつ堅実、そして、スピーディーに対応することが不可欠です。その上で、深謀遠慮。将来を見据え、計画的であることもまた必要です。双方なくして持続可能な区政運営は確立できないことを強く意識しています。

こうした区政を実現していくためには、私をはじめ、職員が、臨機応変な対応力、多様性を生かすコミュニケーション力、物事の本質を見極める問題解決力を向上していかなければなりません。支え、支えられるお互いさまの地域社会とそれを支えるサステナビリティは、区職員の成長なくして、実現は成し得ません。地域へ飛び出すこと、他自治体職員との交流を持つことを積極的に促すなど、若手職員を中心とした区職員の育成にも一層力を入れてまいります。

私は、中野区長に就任して以来、区民や事業者の皆さんとの対話に努めてきました。そして、今、現場へ赴くタウンミーティングを様々な分野で実施するなど、区民や団体の皆さんとの対話を質・量ともに充実し、それらを政策や業務改善に反映していくことに手ごたえを感じています。SDGs、世界を変えるための目標の17番目「パートナーシップで目標を達成しよう」は、中野の得意分野であり、強みだと思っています。これを最大限生かして、区政の課題に対応していくとともに、区民の皆さんと区の協働・協創の取組のプロセスに喜びや楽しさを感じる人たちを増やしていきたい、それが中野のファンを創り、中野への愛着を高めることになると思うのです。社会は、そして中野は変わり続けています。中野駅周辺の再整備をはじめ、中野の変化に私も大いに期待していますが、その変化を魅力や安心につなげるのは「人」です。中野の最大財産である「人」と、その「つながり」を大切に、「オールなかの」で、子どもたちの笑顔が溢れ、すべての人たちが安心して暮らし、活躍できる、中野の未来の礎をしっかりと築いていく決意です。

以上、区議会並びに区民の皆様のご理解とご協力をお願い申し上げ、施政方針説明といたします。

(注)本文は、口述筆記ではありませんので、表現その他若干の変更があることがあります。

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