令和4年(2022年)第2回中野区議会定例会区長施政方針説明(2022年6月22日)

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更新日:2023年8月3日

施政方針説明を行う酒井区長
(施政方針説明を行う酒井区長)

1 はじめに
2 支え、支えられるお互いさまの地域社会へ
3 「子どもにやさしいまち」へ
4 「困っているひとにやさしいまち」へ
5 「安全で活力のあるまち」へ
6 持続可能な区政運営の確立
7 区職員の育成、ボトムアップの区政運営の確立
8 むすびに

令和4年第2回中野区議会定例会の開会にあたり、今後の区政運営に臨む、私の所信を申し上げ、議員各位並びに区民の皆様にご理解とご協力を賜りたいと存じます。

この度の中野区長選挙におきまして、多くの区民の皆様から温かいご支援を賜り、引き続き、区政運営の重責を担わせていただくことになりました。使命と責任の重さに身の引き締まる思いです。私は、新型コロナウイルス感染症を乗り越え、活動を力強く再開し、経済と活力を取り戻す。そして、さらにその先へ。また、誰一人取り残されることのない地域社会を実現していくため、最善を尽くしてまいります。

私は4年前、子育て支援の必要性を訴え、中野区長に就任しました。中野区子どもの権利に関する条例を制定するとともに、子ども・若者支援センターと児童相談所を開設、また、計画的な保育施設の整備・誘致により待機児童数がゼロになるなど、中野を「子育て先進区」にしていくための基礎は築けたと思っています。一方で、子育て世代や地域の皆様と対話を重ねる中で、乳幼児親子の居場所や子どもの遊び場をはじめ、子どもがのびのび遊び、子育てしやすい環境は、未だ十分でないことを実感しています。子育て・子育ちは、地域全体の課題となっていることも改めて認識したところです。私は、「子どもにやさしいまち」、「困っているひとにやさしいまち」は、「誰にとっても住みやすいまち」だと考えています。これからの4年は、「中野区基本計画」に基づき、特に子育て支援に重点を置きながら、区民や団体、事業者の皆様と一緒に、オール中野で取組を進め、「中野区基本構想」で目指すまちの姿の実現を使命としていく所存です。

2024年5月に区役所は新庁舎へ移転します。2026年には新しい中野駅が誕生し、まちの内外をつなぐ橋上駅舎と南北をつなぐ歩行者専用道路が完成いたします。シンボルタワーをはじめとした中野駅新北口駅前エリアの再整備は、2029年の竣工を目指して進めています。一方、2025年には団塊の世代が後期高齢者となり、2035年には人口がピークを迎えます。まち、社会、暮らしが大きく変化していく中で、子どもたちをはじめ、誰もが安心して暮らし、活躍できる中野をどのようにして築いていくのか。区がSDGsの目標達成に貢献するにはどうすべきか。基本計画に基づく施策や事業の成果を着実に上げるとともに、未来への責任を果たしていく4年にしていく決意です。

「子育て先進区」の実現に向けて、今年3月に制定した「中野区子どもの権利に関する条例」に基づき、子どものセーフティネットを強化するとともに、子育て・子育ち環境や地域全体で子育てを応援するための体制を整備してまいります。また、2023年4月に内閣府の外局として創設予定のこども家庭庁が実施する政策に対応できるよう、区の体制を整えていく考えです。

児童虐待については、未然防止の取組を重点とするとともに、一時保護所の機能を有した児童相談所において、早期発見や総合的かつ迅速に対応する体制を強化し、子どもやその家族を支援いたします。

また、妊娠・出産・子育てトータルケアの一環として、産後ケア事業の改善・拡充をはじめ、多胎児のいる保護者に対する1歳以降の支援を拡充してまいります。

児童館は、乳幼児親子の子育てひろばとしてのニーズが高く、2023年度以降の事業展開や運営方法について再検討し、それを踏まえた人的資源を確保した上で、学童クラブ移転後のスペースを活用した新たな機能の具体策を明らかにいたします。また、児童館における一時預かり事業を拡充するとともに、相談支援や団体支援・ネットワーク推進を強化したいと考えています。さらに、高齢者会館における多世代交流や施設のシェア利用、区民活動センターなどの地域施設の有効活用を検討してまいります。

子どもの遊び場に関しては、子どもたちの意見も参考にしながら、公園の利用ルールの見直しや遊具の更新を行ってまいります。また、プレーパーク活動を支援するとともに、常設プレーパークを設置いたします。さらに、中野駅周辺に子どもの遊び場となる施設の誘致を図ってまいります。

学校教育においては、ネットワーク環境や機材などを充実するとともに、教員のサポートや、子どもたちのインターネットリテラシーを高めるための取組を進めます。さまざまな学習コンテンツを導入するなど、児童・生徒の習熟に合わせた学習が効果的にできるようにしていきます。また、学童クラブや児童館など、学校や家庭以外の場所でタブレットを使うことができる環境を整備し、家庭学習や自主学習ができるようにしてまいります。

一方、改善に取り組んでいる学校図書館や区立図書館の蔵書をさらに充実させ、子どもたちの読書習慣が向上するよう環境を整備します。

また、発達の課題や障害のある子どもの教育的ニーズに応じた指導の支援や、放課後ケアの実施を検討するなど医療的ケア児への支援を進めるとともに、インクルーシブ教育の一層の充実を図ってまいります。

そして、地域全体で子育てを応援する取組の一つとして、「中野区コミュニティ・スクール」の構想を進めてまいります。

新型コロナウイルス感染症の拡大・長期化により、生活の格差が大きくなったことをさまざまな機会を通じて実感しています。今後の新型コロナウイルス感染症対策については、ワクチンの4回目接種を着実に進めるとともに、生活に困窮している世帯への支援を、時宜を逸することなく実施していくことが最も重要だと考えます。感染症の影響が長期化している中での子育てを応援するため、保育サービスを利用せずに在宅で育児している家庭への支援も実施いたします。さらに、生活困窮者自立支援体制の充実を図るとともに、生活困窮者に対する包括的支援を検討してまいります。

また、現在の世界的な物価高騰による経済と生活への影響を見極めながら、区として必要な策を講じていきたいと考えています

人生100年時代において、ひとりでも安心して暮らし続けられる中野を実現するため、地域での見守り支えあいのネットワークを強化いたします。本年3月に策定した「中野区地域包括ケア総合アクションプラン」に基づき、各現場において取組を具体化し、実施します。在宅医療介護連携を図り、かかりつけ医を推進するとともに、医療や介護人材の確保の取組を検討いたします。また、多様な課題を抱えている人やその家族に寄り添い、適切な支援を継続的に行っていくため、すこやか福祉センターの体制の見直し・強化を図り、区の重層的支援体制を確立してまいります。その一環として、区と事業者、団体、大学などの連携力を高め、共同で事業を企画・実施するための、コンソーシアムの設立など、地域包括ケアをオール中野で進めるための新たな体制の構築を検討します。

さらに、高齢者や障害者など交通弱者の移動手段の確保も視野に入れ、新たな公共交通システムの実証実験を実施するなど、コミュニティ交通の導入を検討いたします。

子どもの貧困対策としては、学習支援事業を拡充するとともに、子ども食堂の支援を充実します。また、ひとり親家庭への支援を強化いたします。生活や就労を総合的に支援する「ひとり親コンシェルジュ」の設置を検討するとともに、ひとり親家庭家事支援や学習支援サービスを充実していく考えです。さらに、経済的に困窮している別居中や離婚前の家庭への経済的支援や、体験学習付き旅行の実施を検討いたします。

ヤングケアラーへの支援については、調査の実施や関係者への聞き取りなど実態の把握に努めながら、スクールソーシャルワーカーやすこやか福祉センターなどの専門職間の連携を強化し、支援体制の構築を図り、地域での見守りを実施してまいります。

また、子どもから大人まであらゆる世代のひきこもりの状態にある人やその家族への支援を充実いたします。

中野駅周辺では、各地区の整備事業が着実に進んでおり、まちは大きく変わりつつあります。区民の皆様や関係者の方々の意見を反映した再開発と駅周辺のエリアマネジメントを実現してまいります。

また、文化芸術によるまちづくりを進めます。区内のあらゆる場所で気軽に文化・芸術に触れ、楽しむことができるよう、文化・芸術振興基本方針を策定するとともに、文化・芸術活動を行う団体の支援を充実します。今後、文化・芸術の象徴的な場所となるのは、現中野サンプラザのDNAを継承した、中野駅新北口駅前エリアに整備するシンボルタワーや多目的ホールです。音楽、サブカルチャー、スポーツ、地域の文化の4分野を中心として、新たな文化・芸術の発信拠点にしてまいります。

さらに、中野区の個性となる魅力やゆとりある空間の創出や、地域に根差した歴史的・文化的景観の保全・活用を支える景観条例を制定してまいります。

他方、西武新宿線沿線では、連続立体交差事業が進む新井薬師前駅・沼袋駅周辺地区での交通環境の改善、にぎわいの創出や防災まちづくりを進めるとともに、野方駅から井荻駅間の連続立体交差事業の早期実現を目指して、野方駅、都立家政駅及び鷺ノ宮駅各駅周辺のまちづくりを検討してまいります。

多文化共生の取組もさらに進めてまいります。今年3月に制定した「中野区人権及び多様性を尊重するまちづくり条例」で目指す地域社会の実現に向けて、コミュニケーション支援、暮らしやすい生活の支援、意識啓発と地域社会へ参画の支援を図ってまいります。生理用品の無料配布などジェンダーギャップを解消するための取組を進めるとともに、パートナーシップ宣誓条例の検討など、性的マイノリティ(LGBTQ)の人たちへの支援を充実いたします。

経済とまちの活力を回復することも喫緊の課題です。中小企業や商店街支援を充実いたします。ビッグ・データの収集、分析、活用を行うとともに、キャッシュレス対応など、商業振興の取組を強化します。

また、区民の公益活動の活性化に向け、支援体制を強化します。地域でのボランティア活動のスタートアップや高齢者のICTリテラシーの向上を支援するとともに、区内団体のネットワーク化を進め、活動の促進を図ります。さらに、産業振興センターは、公益活動を中心とした複合交流拠点として整備することを検討してまいります。

首都直下地震などの被害想定が10年ぶりに見直されました。建替えや道路の拡幅などが進み、都心南部直下地震で想定される中野区の被害は、死者数69、負傷者数1,677、全壊棟数665となりましたが、地震発生時における地域危険度が高い地域や木造住宅密集地域では、防災まちづくりを進めることは必須です。不燃化の促進と地域の市街地状況に即した防災まちづくりを推進するとともに、関係機関と連携した防災訓練を実施するなどハード・ソフト両面で取り組んでまいります。さらに、感染症と水災害・地震災害などの複合災害への備えを充実していく考えです。

「2050ゼロカーボンシティなかの」の実現に向けては、高断熱窓・ドアへの改修支援など、家庭での取組を促進する一方、区有施設において、再生可能エネルギー100%の電力調達を進めます。また、グリーンインフラによる自然環境の保全と創出を図ってまいります。

「中野区基本構想」の実現に向けて、「中野区基本計画」を着実に実施し、各政策の実効性を高めるため、さまざまな工夫をしていく考えです。

平和行政を政策目標としている当区にとって、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻は、断じて容認できるものではありません。そして、軍事侵攻に伴い、緊迫している世界情勢の影響が、日本の社会や経済にも大きな影を落としています。先行きが不透明な中で、支え、支えられるお互いさまの地域社会を実現していくためには、「サステナビリティ」が不可欠です。「サステナビリティ」は、環境や地域社会、健康、経済などあらゆる場面において、将来に亘って機能を失わずに続けていくことができるシステムやプロセスだと理解しています。区が構造改革を進めているのはこのためです。また、その一環として、新区役所への移転を契機として、DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進し、区民サービスの向上と業務の変革を図ってまいります。区民の皆さんにとって、もっと役に立つ便利な区役所に、また、職員にとっても働きやすい環境を整備していく考えです。

さらに、どのような状況においても、区民サービスを向上させていくことができるよう、新たな財政運営を確立したいと考えています。区では、予算編成にあたり、税収見込等を勘案して歳入を見積もるとともに、「基準となる一般財源規模」を設定してきました。行政需要を一定の水準で保つための基準として機能していたものの、歳入が上振れする局面では基準との乖離が生じています。一方、今後増加する見込みの区有施設の更新や将来の区の人口減少などに伴う区財政の影響が懸念されます。

以上により、財政状況の捉え方や予算編成手法、基金の積立ての考え方などを見直し、新たな財政運営方法を確立してまいります。

支え、支えられるお互いさまの地域社会とそれを支えるサステナビリティは、区職員の成長なくして、実現は成し得ません。私は、自らの経験から、地域や現場に出て、さまざまに実感を得ながら、また体験していくことが、職員の成長に欠かせないものであることを実感しています。それは、職員自身が豊かになることにもつながるものです。こういったことを促すため、職員の評価のしくみなどを工夫いたします。さらに、職員が真摯に職責を果たしながら、地域活動やNPO活動、副業などに取り組んでほしいと考えており、そのための支援を検討します。また、職員の調査・分析技能を高め、EBPM(エビデンスに基づく政策立案)を進めていきます。さらに、専門性や実務力を有する外部人材を積極的に登用いたします。これらにより、ボトムアップによる区政運営を確立していきたいと考えています。

中野区にとって、今年は、区制90周年、憲法擁護・非核都市の宣言40周年という節目であり、これまで培ってきた基礎の下、新たな歩みを進める年となります。国際情勢とその枠組みが激変している不安定な今だからこそ、中野区は、「中野区基本構想」の実現に向けて、区政を前へ、さらに前へ進めていかなければなりません。

そのために、まず、区民の皆様に届く、伝わる区政の情報発信力を向上させます。また、区民の皆様とのタウンミーティングを充実するなど、私自身がさらにまちに出て、対話に一層努めてまいります。

私は、「和」という言葉を大事にしています。「和」には、協調的な関係を保つこと、調和がとれていること、足し算(力を合わせる)の和という意味があります。中野の最大の財産は、「人」。中野は「和」を実現できる人たちのまちだと確信しています。区政のさまざまな課題へ対応し、支え、支えられるお互いさまの地域社会を実現するためには、パートナーシップが不可欠です。私は、ボトムアップによる区政運営を基本として、「巻き込み型のリーダーシップ」を発揮し、職員とともに、区議会並びに区民の皆様との協働・協創で「つながる はじまる なかの」を実現するべく、全力を尽くしていく所存です。

子どもたちをはじめ、あらゆる人たちが安心して暮らし活躍することができる中野の未来を一緒に築いてまいりましょう。

以上、区議会並びに区民の皆様のご理解とご協力をお願い申し上げ、施政方針説明といたします。

(注)本文は、口述筆記ではありませんので、表現その他若干の変更があることがあります。

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