令和3年(2021年)第1回中野区議会定例会区長施政方針説明(2021年2月15日)

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更新日:2023年8月3日


(施政方針説明を行う酒井区長)

1 新型コロナウイルス感染症を乗り越えるために

2 次世代に引き継いでいくために

3 「つながる はじまる なかの」を実現するために

4 中野の現在(いま)と未来(あす)をつくるために

5 区民とともに区政を運営していくために

6 令和3年度の区政の方向について

7 令和3年度予算案の概要について

8 むすびに

発言に先立ちまして、一昨日の夜、宮城県と福島県で震度6強を観測した地震につきまして、被災されたすべての方々に心からお見舞い申し上げます。

中野区と災害協定を締結している自治体のうち、震源地に近いところでは、今のところ大きな被害はでていないと聞いております。区としては引き続き連携を密にしながら、必要な支援をしていきたいと考えています。

また、改めて、昨年来、新型コロナウイルス感染症によりお亡くなりになられた方々のご冥福をお祈り申し上げるとともに、現在も療養されている方々には、一日も早いご回復をお祈り申し上げます。

医療・介護・保育などの最前線の現場で従事されているエッセンシャルワーカーの皆様をはじめ、昨年来、長期間にわたり感染拡大防止のためにご協力をいただいております区民や事業者の皆様に対し、心より御礼申し上げます。

令和3年第1回中野区議会定例会に当たり、本年の区政運営に臨んで私の所信の一端を申し述べ、議員各位並びに区民の皆様のご理解とご協力を賜りたいと存じます。

昨年の第1回定例会における施政方針説明では、冒頭に新型コロナウイルス感染症の感染拡大が確認され、区でも健康危機管理対策本部を設置した旨をお伝えしましたが、その後、第2波、第3波とその波は次第に大きくなり、年末から年始にかけて新規感染者数が急増し、医療提供体制がひっ迫した結果、令和3年1月7日、東京都をはじめとする1都3県に2度目の緊急事態宣言が発出されました。さらに、2月2日には期間の延長が決定され、現在に至っています。

第3波においては、新型コロナウイルス感染症の陽性者は爆発的に増加し、これまでとは全く異なるステージに入りました。感染者の急増により、重症化リスクのある高齢者や基礎疾患のある方についても入院調整が困難な状況が続いてきました。

この間、保健所における防疫業務や自宅療養者支援などの体制の強化に加え、ワクチン接種体制を早急に構築するべく準備を進めてまいりました。特に、今年に入ってからの感染者の急増に対しては、各部からの応援職員を増加させ、保健所業務に対して全庁を挙げて臨んでいるところです。また、区内の医療体制を確保するための取組として、PCR検査等を実施する診療所に対する準備金を交付したほか、在宅療養支援の検討を進めています。1月18日には、危機管理等対策本部会議のもとに副区長をリーダーとする新型コロナウイルス感染症感染防止対策チームを設置し、さらに感染拡大防止やワクチン接種などに当たって迅速かつ的確に対応できるよう体制を整えたところです。

今後、特にワクチン接種については、国や東京都からの情報を収集しつつ、地区医師会、病院等の協力のもと、ワクチンの管理や健康被害への対応、予約システム、接種会場の環境整備等、様々な課題を想定しながら、区民の皆さんが安全・安心にワクチン接種を受けることができる体制を構築していきます。

区内の経済回復に向け、昨年12月からは中野区緊急応援プレミアム付商品券事業として、総額7億1,500万円分の「なかのわくわく商品券」を販売し、区内店舗における買い物や食事を通じた商業支援を行ってきたところですが、第3波における営業時間の短縮や緊急事態宣言の発出などにより、さらに大きな打撃を被っています。

街の中を見ると、各店舗は感染症対策を徹底し、飛沫を防ぐ様々な工夫を施した上で、テイクアウト商品を増やすなどの努力をされていますが、長年親しまれていた店舗が閉店を余儀なくされている現状を目の当たりにし、悲痛な思いを抱いています。緊急事態宣言の解除に向けて国や東京都とも連携した感染拡大の防止や医療提供体制の改善により、区民の命と健康を守る取組をしっかりと進めながら、地域経済を立て直し、街の灯り(あかり)を絶やさないよう区を挙げて取り組んでいきます。

また、子どもと子育て家庭の生活環境にも大きな影響が生じています。その中でも、すべての子どもの心身の健やかな成長が保障されるように、子どもの想いを大切にし、子どもの視点で学び・体験の支援、生活支援などに力を入れて取り組んでまいります。

一方、この1年の間で、区民の生活や経済活動においてテレワークやオンライン会議が浸透するなど、危機に知恵と工夫で対処する「しなやかさ」が至るところで見られました。

また、人と人とのつながりや絆を改めて感じる機会が多く、中野の最大の財産は、やはり「人」であることを実感しました。区民の皆さんの生活や営みをしっかりと支えていく決意を新たにしています。

今年7月から、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会が開催される予定です。区内における聖火リレーの実施や総合体育館の公式練習会場としての活用に向け、新型コロナウイルス感染症を乗り越え、「ONE NAKANO」をスローガンとして、準備を進めてまいります。

 新型コロナウイルス感染症の感染拡大による経済の停滞は、区の財政にも大きく影響を及ぼしています。今後の区の財政フレームについて、基幹的収入である特別区民税や特別区交付金は一旦落ち込み、その後は緩やかな回復を見込んでいるものの、一般財源については令和2年度当初予算額の水準に戻るまでには相当の期間を要する見通しです。

歳出では、生活保護等の扶助費の増加や、「2025年問題」といわれる、いわゆる「団塊の世代」が後期高齢者となり、医療や介護などの社会保障費がさらに増加することが見込まれること、今後の人口減少と少子高齢化の進展による経済、地域社会、財政への影響、加えて高度経済成長期に整備してきた区有施設が更新の時期を迎えることなどにより、財政負担は増大し、大変に厳しい財政状況が続くと見込んでいます。

令和2年第3回定例会の行政報告においては、新型コロナウイルス感染症対策に加え、財政的な非常事態と捉え、令和2年度予算における事業見直しとともに区政の構造改革を推進していくことを表明しました。

区政構造改革は、施策・施設・組織の3つの再編に取り組み、持続可能な区政を目指していくものであり、基本計画における施策の推進を下支えするものです。短期的取組としては、令和3年度予算編成において、極力区民サービスを低下させないよう配慮しながら事業や内部業務などの見直しを行いました。これにより、前年度の経常経費予算額に、令和3年度に見込まれる増減要因を加味した額から約9パーセントを削減し、過去10年に遡っても前例のない削減率となりました。中長期的な取組としては、令和6年度の新区役所への移転を見据え、概ね3年間で取り組む構造改革実行プログラムをとりまとめます。デジタル化を踏まえた行政サービスの再編、区有施設再編のさらなる検討、優先度の高い行政課題に注力するための組織の再編などに取り組み、行政需要が増加する中にあっても職員定数を極力維持しつつ、多様なニーズに応えていきたいと考えています。

今後急速に進むデジタル化など、社会経済状況が大きく変化する中で、私たちの価値観や行動様式も変わりつつあり、必要とするものには集中して資源を投入し、それ以外のものは徹底的に効率化を図る、メリハリのある区政運営を進め、この中野区を次世代に引き継いでいかなければなりません。区民や区議会のご理解とご協力のもと、力を合わせこの困難な状況を乗り越えていきたいと考えています。

私たちの共通の目標である中野区基本構想については、平成30年10月に改定の方針を示し、平成31年4月から約半年にわたり開催された基本構想審議会において、区民の視点と専門的見地から活発な議論を重ね、同年10月に答申をいただきました。さらに、これまでの検討に当たっては、区民と職員のワークショップ、区民アンケート、区民と区長のタウンミーティングなどを通じて、大変多くの区民参加を得て進めることができたことに感謝申し上げます。様々な手法を用いて広範な意見聴取に取り組む中で、これからの中野区の住民自治を担っていただく区民とつながり、さらには今後の行政を担う区職員の育成ができたことも大きな収穫でありました。

こうしたプロセスや議会での多くの議論を経て、令和2年1月に検討素案を作成しました。新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響により検討素案の見直しを行いましたが、検討案、パブリック・コメント手続を経て、本定例会において議案として提出する予定です。

その新たな基本構想では、10年後に目指すまちの姿として、「人と人とがつながり、新たな活力が生み出されるまち」、「未来ある子どもの育ちを地域全体で支えるまち」、「誰もが生涯を通じて安心して自分らしく生きられるまち」、「安全・安心で住み続けたくなる持続可能なまち」を掲げています。これらの目標を区民と共有し、区民との協働・協創により、「つながる はじまる なかの」の実現を目指していきます。

 新たな基本計画については、基本構想の実現を図るため、基本構想に掲げる4つのまちの姿を基本目標とし、20の政策と56の施策、重点プロジェクト及び区政運営の基本方針を定めました。本定例会では、この新たな基本計画及び区有施設整備計画を素案として報告する予定です。

重点プロジェクトは、組織横断的に対応することが必要な政策課題に対して、政策及び施策を効果的かつ効率的に推進していくため、早期に対応が必要となる「誰一人取り残さない」という視点と、中長期的に対応が求められる「将来を見据えた投資」という視点を重視して設定しました。

基本計画の期間内において重点的に取り組むに当たり、職員によるボトムアップと成果を上げていくマネジメントの体制を構築していきます。また、区の限られた経営資源だけでなく、地域や民間における種々の資源との協働・協創により重点プロジェクトを進めていきます。

(1)子育て先進区の実現

重点プロジェクトの一つ目、「子育て先進区の実現」については、区長就任以来、最も重視してきた政策のひとつであり、「子育てしてよかったまち、育ってよかったまち、子育てしたいまち」を目指してきました。これからも、あらゆる子育てや教育の環境を整えるため、注力していきます。

これまでに区民や現場の声を聞き、子育てに関する調査などを実施し、実態の把握に努めてきた中で、まず取り組まなければならないのが、子ども・子育て家庭に対するセーフティネットの強化です。近年、児童虐待相談や対応件数が増加傾向であることに加え、新型コロナウイルス感染症の感染拡大によって、子どもと子育て家庭の生活環境や学習環境など様々な場面に影響が及んでいます。生まれ育った環境に左右されることのない地域社会を実現するため、セーフティネットの強化を図ってまいります。

区は現在、児童相談所の設置及びその機能を含む子ども・若者支援センターの開設に向けて準備を進めています。これは、「児童虐待を生まない」という視点に重点を置くとともに、その理念を地域全体で共有し、地域が一体となって児童虐待を発生させないための取組を推進していくきっかけとなる、大切な機会であると捉えています。今後は、子ども・若者支援センターが中心となって関係機関、地域のネットワークと連携し、相談支援体制を強化していきます。

子どもの貧困対策に当たっては、貧困の連鎖を断ち切るという「未来」を見据えた視点とともに、現在困難を抱えている子どもへの対応を早急に進めるという「今」を大切にした視点が重要になります。子どもの最善の利益の実現と未来を切り拓く力の習得の支援、多面的・複合的な課題の解決や予防としての支援、地域全体での包括的かつ早期の支援、行政・地域・民間事業者の連携強化、こうした基本理念に基づいて貧困対策を構築し取組を進めていきます。

また、学習支援や子ども食堂など区民による子育て支援活動との協働を進め、すべての子どもが夢や希望を持って成長できる社会の実現を目指していきます。

さらに、子ども・子育て家庭にとって魅力的なハード・ソフト両面からの環境づくりや、子どもの学びを地域全体で支えるための環境づくりを進めます。

これらの取組に加え、子どもを見守り、子育てを応援し、一人ひとりの子どもの成長を支える地域を実現するため、子育て関連団体の活性化や新たな担い手の確保など、地域全体で子育てを応援するための体制づくりを進めます。

(2)地域包括ケア体制の実現

重点プロジェクトの二つ目、「地域包括ケア体制の実現」は、今般の新型コロナウイルス感染症対策の中で、地域のポテンシャルと地域包括ケアの課題を改めて認識することができました。国の特別定額給付金の申請に際しては、地域包括ケアの拠点である区民活動センター及びすこやか福祉センターにおける申請支援やアウトリーチチームによる個別支援などを行い、また、ひとり暮らし高齢者等の状況については、民生委員の協力を得て、把握することができました。

今後、新型コロナウイルス感染症の状況を見定めながら、区民による地域活動の再開に向けて、ガイドラインを活用した感染予防対策の徹底を図り、地域活動団体への情報提供や助言を行うなど、地域で活動する皆さんの力を活かせるよう、区として支援していきます。

他方、「密集」「密接」「密閉」の3つの「密」を避ける行動が求められる中、これまで積極的に地域で活動し、交流をしていた方であっても、身体機能の低下や健康状態の悪化を招く事態となっていると聞いています。

また、引きこもりが長期化するなどの理由で、80代の親が50代の子どもの生活を支える、いわゆる「8050問題」や、18歳未満の子どもが家族の介護を担う「ヤングケアラー」など、地域の中で孤立している区民や、心身・生活上の課題を抱えながらも、様々な理由により自ら声を上げることができずにいる区民を把握していくことの困難さも、現場から上がってきています。

地域包括ケア体制の構築は、これらの区民を含めた全ての人が可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを続けていくため、住まい・健康づくり、予防、見守り、介護、生活支援、医療が一体的に提供されるシステムを、区民や区内関係団体とともにつくっていく取組です。これまで取り組んできた災害時避難行動要支援者への支援、フレイルや認知症予防の取組の充実、地域の多様な主体と連携したアウトリーチ活動などを積極的に推進し、地域包括ケア体制の実現を目指していきます。

(3)活力ある持続可能なまちの実現

重点プロジェクトの三つ目、「活力ある持続可能なまちの実現」においては、新型コロナウイルス感染症による地域経済の低迷を踏まえ、地域経済の回復・活性化、さらには中長期的な視点に立ち、各地区のまちづくり、脱炭素社会の実現を見据えたまちづくりなどを進めていきます。

ここでまず取り上げるべきは、中野駅周辺各地区のまちづくりの中核として位置付けられる中野駅新北口駅前エリア再整備事業です。昨年2月に当事業の民間事業者募集を開始し、最終的に2グループから提案書の提出がありました。その後、外部有識者で構成された審査委員会における審査を経て、市街地再開発事業の施行予定者候補として、野村不動産株式会社を代表事業者とするグループを選定したところです。

このグループから提案されたプランは、中野サンプラザのDNAを継承した東京西部都市圏の新たなシンボルとなる拠点整備であり、オフィスや住宅等からなるシンボル性の高い高層タワー、着席5,000人、最大収容人数7000人規模で中野固有の文化に加えて、eスポーツやアーバンスポーツなど新たな文化を創造し情報発信していくことが可能な多目的ホール、区民をはじめとして中野を訪れる人々の交流を深め、にぎわいを創出する多彩な大規模広場空間などから構成されています。現在、整備工事が進められている中野駅西側南北通路・橋上駅舎とあわせて、区民に親しまれ、誇りになるものと確信しています。今後の事業推進に向け、施行予定者候補との協定締結協議に始まり、事業計画の作成、都市計画決定、事業認可、整備工事着手といったプロセスを経ていくことになります。これまで以上に区民や区議会のご理解とご協力が必要であり、適時適切な情報提供や意見交換などを行っていきます。

中野駅周辺まちづくりについては、平成13年の警察大学校等の移転を契機として、中野四季の都市(まち)、中野二丁目地区、中野三丁目地区などのまちづくりを推進してきました。中野駅新北口駅前エリアの整備とともに、各地区整備の推進によって、中野駅周辺の利便性と回遊性を向上させ、新たなにぎわいや交流を生み出すとともに、エリアマネジメントの仕組みを構築し、官民連携のまちづくりを進めながら、区全体の活力とにぎわいを高めていきます。

また、まちが更新されることによって良好な景観の形成や環境性・防災性を高め、安全・安心で快適な空間の創出につなげていきます。これらは、中野区全体が「活力ある持続可能なまち」となるための大変重要な取組となります。

西武新宿線の連続立体交差事業を契機とした沿線各駅周辺のまちづくりも着実に進めていかなければなりません。既に事業化している新井薬師前・沼袋駅周辺の基盤整備はもとより、両駅前の新たな顔づくりのための拠点整備のほか、早期事業化が望まれる野方以西各駅周辺のまちづくりなど、いずれも地元の思いを形にしていきます。また、これら沿線まちづくりと連携した商店街の活性化やまちのにぎわいの創出に向けた取組についても進めていきます。

次世代に向けた取組として、脱炭素社会の実現も大きなテーマです。

気候変動に関する世界的な危機意識の高まりの中、国は2050年までに脱炭素社会の実現を目指すことを宣言し、環境省では「第五次環境基本計画」において「持続可能な開発目標(SDGs)」が掲げている環境と経済と社会の統合的向上を具体化するとしています。

また、東京都もゼロエミッション東京戦略を策定し、2030年に向けた目標とアクションを掲げています。

区では、区民一人あたりのごみ排出量が23区で一番少なくなるなど、環境施策に力を入れてきました。引き続き、区民、事業者との連携のもと、これまでの取組を推進していきます。また、令和3年度の第4次中野区環境基本計画の策定にあわせ「2050年ゼロカーボンシティ」を宣言する考えであり、国や東京都と連携し、脱炭素社会の実現への取組の推進及び気候変動への適応の課題について取り組み、都市における快適で持続可能な生活環境を次世代に引き継いでいきます。

「活力ある持続可能なまちの実現」は、ハードとソフトが融合し、相乗効果を上げていくことが重要です。新型コロナウイルス感染症の影響による経済状況からの回復やまちのブランディングなどとあわせ、総合的に取り組んでいきます。

議案として提出する予定の新たな基本構想では、目指すまちの姿を実現するため、「区民に信頼される対話と参加の区政を進めます」、「職員力でまちの価値と地域の力を高めます」、「持続可能な財政運営を進めます」、「社会の変化を見据えた質の高い行政サービスを提供します」、「危機の発生に備えた体制を強化します」といった区政運営における5つの原則を掲げています。

さらに新たな基本計画の素案たたき台では、この5つの原則を踏まえ、区政運営における3つの基本方針を示しています。

基本方針の1点目、「対話・参加・協働に基づく区政運営」は、区民と区、区民同士の対話、区民の区政への主体的な参加、地域課題の解決に向けた協働を重視して、政策形成、組織運営、財政運営に取り組むとともに、取組と検証を積み重ねて着実に成果を上げていくマネジメントを実施していきます。そのためにも、私たち公務員が地域に飛び出す機会を増やし、地域の課題を発見し、区民の皆さんとの協働によって解決していくように取り組んでまいります。

特に重点プロジェクトをはじめとして、組織横断的な取組や短期集中対応が求められる事案については、権限と責任を明確にした推進体制を構築し、成果を上げるためのプロジェクト・マネジメントの徹底を図ります。

2点目は「危機の発生に備えた体制の強化」です。今後発生する可能性がある首都直下地震などへの震災対策を改めて点検するとともに、区民に対する働きかけを継続していくことが必要です。また、災害応急対策を迅速かつ円滑に実施できるよう、新たになかの里・まち連携自治体である千葉県館山市や福島県喜多方市に加え、東京都助産師会や東京都行政書士会など、民間団体との災害時の各種活動に関する協定を締結し、協力体制の構築を積極的に進めています。さらに、全国各地で甚大な影響を及ぼす自然災害、新型コロナウイルス感染症等の新興感染症の流行など、健康危機に対しても、非常時における危機管理体制と組織執行体制を強化し、区政や地域が機能不全に陥らないよう、事業継続計画(BCP)の継続的な改善など、リスクマネジメントの強化を図っていきます。

3点目は「社会の変化に対応した質の高い行政サービスの提供」です。区では、これまでもRPAやAIなどのデジタルツールを用い、区民サービスの向上や業務の効率化を図ってきたところです。しかしながら、先般の特別定額給付金にかかるオンライン申請では、行政の情報システム間のデータ連携が図られていないなどの原因により、結果的に手作業で行わなければならない業務があり、デジタル化の遅れを露呈しました。今後急速に進むDX(デジタル・トランスフォーメーション)に対応し、国や東京都との連携を進めるため、デジタル化を推進していきます。

新区役所整備については、旧中野体育館の解体も始まり、着々と進んでおり、移転に向けて区民の利便性向上のための情報システムなど、インフラ整備とあわせて、これを契機としたペーパーレス化や業務効率化など、区役所の働き方改革に取り組んでいきます。

今後、さらなる行政サービスのデジタル化やワンストップ化を推進し、あわせて区の事業や施設等の管理・運営コストの最適化を進めるなど、区民にとって質の高い行政サービスの提供と事務の効率化を目指していきます。

厳しい財政状況にあっては、迅速な判断のもと、柔軟な区政運営が求められています。こうした3つの基本方針に基づき、現場の職員の声を受け止め、ボトムアップによる政策形成や業務改善を進め、正確な現状分析に基づく的確な意思決定、成果を上げていくためのマネジメントを行い、リーダーシップを発揮し、力強く区政を前進させていきます。

令和3年度は、新たな基本構想に掲げる10年後に目指すまちの姿を実現するための取組がスタートします。基本目標である4つのまちの姿ごとに、令和3年度の主な取組について、ご説明します。

(1)人と人とがつながり、新たな活力が生み出されるまち

はじめに、「人と人とがつながり、新たな活力が生み出されるまち」の取組です。

性別、性自認や性的指向、国籍や文化等の多様性を認め合いながら、個性や能力を発揮できる地域社会の実現に向け、男女共同参画・多文化共生推進にかかる条例制定の検討を進めます。

今年は、東日本大震災の発災から10年を迎えます。区では引き続き、被災地への継続的な支援や区民の防災意識の向上、震災の記憶風化防止の取組を進めるため、「東北復興大祭典なかの」を開催いたします。

開催に当たっては、区民や学生ボランティア等の参加を募る方法や新たな自主財源の確保策について、実行委員会や関係団体等と連携しながら進めていきます。

また、地域での自主的な活動を支援するため、区民活動センター集会室の利用団体が情報収集などに利用できるよう、インターネット環境を整備し、利便性の向上を図ります。

区内の商店街への支援では、商店街全体としてキャッシュレス化を推進する事業に対して、東京都の支援事業等に上乗せして補助します。

中野駅周辺各地区のまちづくりの取組では、中野駅西側南北通路・橋上駅舎の整備工事を行うほか、中野三丁目地区及び中野四丁目新北口駅前地区において実施する土地区画整理事業、中野二丁目地区及び囲町東地区において実施する市街地再開発事業にかかる事業費の一部を補助します。

中野らしい歴史・伝統文化の取組として、区民が身近に触れ、感じることができる環境づくりを進めるとともに、文化財保護の観点から旧中野刑務所正門の保存・活用に向けた検討を進めます。

(2)未来ある子どもの育ちを地域全体で支えるまち

次に、「未来ある子どもの育ちを地域全体で支えるまち」の取組になります。

区は、子ども・若者やその家庭における課題について、専門相談、支援、措置、家庭・社会復帰までを総合的に実施するため、児童相談所機能を含む子ども・若者支援センターを開設します。

児童相談所設置に伴い、児童福祉審議会の設置など児童相談所設置市事務についての準備を進めます。

妊娠・出産・子育てにかかるトータル支援事業については、父親などを対象とした事業や多胎児家庭支援事業を拡充して実施します。

子どもの命と権利を守る区を実現するため、子どもの権利擁護にかかる条例の制定に向けた検討を引き続き行います。

子ども家庭相談における支援策の一つとして、経済的な理由や保護者の疾病など、食事の支援が必要な家庭に対して配食を行うとともに、利用申請時や配達時に家庭の状況等を把握することにより、相談・支援の充実を図り、児童虐待の未然防止などを進めます。

また、子どもへの食の支援の必要性の高まり、地域での子ども食堂の活動の広がり等を踏まえ、子ども食堂の運営にかかる支援を強化します。

さらに、子育て中の保護者やその子どものストレスの緩和・虐待リスクの低減策として、身近な施設での一時預かりを区有施設で試験的に実施します。

子育て支援の新たな取組として、LINEを活用した子育て支援情報の配信やインターネットを通じて子ども総合相談窓口の「受付待ち人数」等の情報配信を実施します。

保育サービスの充実に当たっては、入園申込みにかかる申請書及び入園利用調整処理のICT化を進め、申請手続の簡素化を図ります。

また、保育施設の更新や定員の拡大を図るため、区立保育園の民設民営化や民間保育所誘致、認可外保育施設の認可化移行を支援し、保育の質の向上や保育定員の拡充を図ります。

保育園等の巡回訪問指導を保育所等訪問支援に転換するとともに、療育相談を充実させることにより、療育センター機能を強化します。また、保育ソーシャルワーカーを配置し、各家庭や子どもの状況に応じて保育園等への支援を行うソーシャルワーク事業を実施します。

次に、子どもの教育環境の充実に向けた取組になります。

区立小中学校におけるGIGAスクール構想を推進するため、児童・生徒向けに整備した1人1台の情報端末の円滑な運用を進めます。

また、家庭の経済状況に応じて就学に必要な経費を支援する就学援助を拡充するため、認定基準を見直します。GIGAスクール構想の推進に当たり、就学援助世帯に対し通信費の支援を行います。

小中学校施設の整備については、体育館の冷暖房効率向上のための改修や校庭整備等を進めるほか、第二中学校の体育館棟の大規模改修を行います。また、児童数の増加に伴い、普通教室の不足が見込まれる学校について、増築等の対応を図ります。

小中学校の再編を行うための学校の改修・解体・新築等の整備工事を行うとともに、新校舎の物品整備等移転準備を行います。

保護者・地域住民の参画を得て、地域全体で子どもたちの「学び」や「成長」を支えるため、地域と学校が相互に「連携・協働」して行う地域学校協働活動の制度導入に向けて、関係団体等との意見交換を行い、導入の手順等を検討します。

(3)誰もが生涯を通じて安心して自分らしく生きられるまち

次に、「誰もが生涯を通じて安心して自分らしく生きられるまち」の取組になります。

はじめに、地域包括ケアシステムの取組では、すべての人を対象に展開していく取組を推進し、区内の関係団体とともに、(仮称)地域包括ケア総合計画の策定に取り組みます。計画に広く区民や関係者の意見を取り入れるため、地域包括ケア理念共有事業を行います。

認知症対策では、初期の段階から相談、診断、支援ができる体制を整備するため、認知症検診及び地域拠点による支援事業の実施に向けた検討を行います。

また、成年後見等権利擁護支援が必要と思われるケースについて、支援の方針等を司法や福祉等の専門職とともに、多角的に検討する会議を設置します。

中野三丁目用地に民間事業者が整備する堀江敬老館代替施設において、事業者による高齢者会館相当事業を開始します。

区内の公衆浴場でAEDを設置する場合については、購入経費に対して補助を行います。

ICTを活用した取組として、PHR(パーソナルヘルスレコード)の推進を図るため、健(検)診結果情報をデジタル化し、マイナポータルを活用した情報提供体制を構築します。

区民が図書館を学びや課題解決に活用できるよう、利便性の向上や環境の充実を図り、乳幼児親子や子どもの読書活動を促進します。旧第十中学校跡地には、新たに、課題解決支援型の図書館を開設し、区民の学びと自立を支える運営を目指していきます。

(4)安全・安心で住み続けたくなる持続可能なまち

最後に、「安全・安心で住み続けたくなる持続可能なまち」の取組になります。

はじめに、新型コロナウイルス感染症等の対策については、クラスターが発生しやすい施設などに、保健所が所管課とともに、平時からの感染症予防研修を実施し、感染症に関する相談・助言体制を充実させます。また、PCR検査センター事業、軽症者患者移送、コールセンター人材派遣、積極的疫学調査看護師派遣、自宅療養陽性者緊急支援事業、感染症対策物品購入等について、引き続き進めていきます。

次に、災害対策の取組では、各避難所に配備しているガソリン発電機に加え、太陽光でも蓄電できる蓄電池や乳児用液体ミルクを配備するほか、各避難所に備蓄している災害対策用毛布のクリーニング及び長期保存用真空パック包装を行います。また、防災リーダーのスキルアップ及び地域防災会との連携強化のため、防災リーダーの希望者に応急手当普及員の資格取得を支援します。

都市基盤の整備や各まちづくり事業を円滑に進めるため、都市計画の基本方針となる都市計画マスタープランの改定を行います。また、地域特性に応じた良好な都市景観の誘導を進めるため、景観に関する基本的な考え方を示した方針及びガイドラインを策定します。

まちの防災性の向上や景観に配慮した良好な都市空間の創出、安全な歩行空間を確保するため無電柱化を推進します。また、無電柱化とあわせた、道路のバリアフリー化整備の検討を行います。

公園の安全・安心を図ることを目的に、平和の森公園及び中野四季の森公園に防犯カメラの設置を進めます。中野四季の森公園においては、民間活力の導入に向けた検討を行います。また、老朽化が著しい旧野方配水塔の保全・補修工事を行います。

区内の総合的な交通環境整備に向けて、交通政策基本方針を策定するとともに、新たな公共交通サービス導入の検討を進めます。

木造住宅密集地域等における不燃化の促進と防災性の向上を優先的に行うべき地区の防災まちづくりを進めます。弥生町三丁目周辺地区及び大和町地区については、避難道路の整備等を進めるとともに、不燃化特区制度による不燃化を促進します。南台及び平和の森公園周辺地区については、地区計画により、良好な住環境への誘導と防災性の確保を行うとともに、地区施設道路を整備します。地域危険度の高い地域のうち、事業が実施されていない地区については、新たな防火規制の導入により、耐火性に優れた建物への誘導を促進します。また、新たな防火規制だけでは改善されない若宮地区については、地区計画による防災まちづくりの検討を進めていきます。

西武新宿線の連続立体交差事業を契機とした、新井薬師前駅・沼袋駅周辺地区においては、交通環境の改善、にぎわいと魅力あるまちづくりや防災性の向上に向けた取組を進めるとともに、連続立体交差事業に連動した都市計画道路の整備を推進します。

また、野方駅以西については、西武新宿線連続立体交差事業の早期実現を関係機関に働きかけるとともに、各駅周辺地区のまちづくりを進めるため、地区計画、駅前の拠点づくり及び駅周辺基盤計画の検討を行います。

環境施策では、脱炭素社会の実現に向けて、家庭等における太陽光発電システムと連携する蓄電システム導入への支援を行います。

(5)持続可能な行財政運営

今、述べさせていただきました4つのまちの姿を実現するための取組を円滑かつ確実に進めるとともに、持続可能な行財政運営を行っていく必要があります。

区政情報については、区民に必要な情報がわかりやすく、かつ探しやすい形で提供するとともに、SNS等との連動により、タイムリーに発信していきます。

また、令和6年度の新区役所への移転に向けて、社会の変化に対応した質の高い行政サービスを提供するため、総合窓口でのワンストップサービスの提供やデジタルシフトによる利便性と生産性を向上していくための整備を進めていきます。

次に、本定例会においてご審議いただく、令和3年度予算案の概要を述べさせていただきます。

まず、予算の規模ですが、
一般会計は、1,472億4,100万円、前年度に比べ0.3%増。
特別会計は、643億2,500万円、前年度に比べ0.3%減。
全会計総計では、2,115億6,600万円、前年度に比べ、2億3,000万円、0.1%の増となりました。

一般会計の歳入予算は、新型コロナウイルス感染症の影響等を踏まえました。特別区税は、納税義務者数の減少等により減収を見込み、特別区交付金等の一般財源についても、大幅な減収を見込みました。一方、中野駅周辺のまちづくりの進捗などにより、国庫支出金の増を見込んだほか、新区役所整備などの投資的事業の財源に起債を活用することから特別区債は増加しました。

次に、歳出では、義務的経費のうち、職員の退職金等の人件費が減少したほか、計画的な償還により公債費が減少しましたが、待機児童対策の推進に伴い教育・保育にかかる給付費等の扶助費が大幅に伸びたことにより、義務的経費全体は増となりました。

投資的経費では、新区役所整備や中野二丁目地区及び囲町東地区の市街地再開発事業の関連経費が増となったことから、大幅な増となっています。

令和3年度予算では、厳しい財政が見込まれる中、事業の廃止、縮小、先送りといった抜本的な見直しを行って歳出抑制を図る一方で、区民の命と健康を守るための施策は最優先で進めるとともに、基本構想の実現を図るための新たな取組を展開します。また、区の財政運営を安定的に進めるために、中長期的な展望を視野に入れて区政構造改革の取組を進め、持続可能な区政運営を行っていきたいと考えています。

なお、予算案の詳しい内容につきましては、提案の際にご説明をさせていただきます。

本定例会におきまして、私が、区長に就任して以来、区民の皆さんと検討を進めてきました新たな基本構想の議案のご提案を申し上げます。

中野区のこれまでに培ってきた歴史、文化、伝統、まちの魅力を大切に育みながら、人々が寄り添い、より豊かな暮らしを実現するため、この基本構想を定めます。区議会、区民の皆さんと新たな基本構想に掲げる10年後に目指すまちの姿を共有し、ともに歩んでいくため、全力を尽くす覚悟でございます。

以上、本年の区政運営に臨む所信の一端を述べたところです。

最後に、区議会並びに区民の皆様のご理解とご協力をお願い申し上げて、令和3年第1回中野区議会定例会における施政方針説明とさせていただきます。

(注)本文は、口述筆記ではありませんので、表現その他若干の変更があることがあります。

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