令和6年度全国人権作文コンテスト
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更新日:2024年12月5日
令和6年度全国中学生人権作文コンテスト
中野区では区立中学校9校および東京都立富士高等学校附属中学校の全10校が人権作文コンテストに参加しました。東京都大会参加の都内304校の中学校、34,696編の中から、中野区参加の1編が「最優秀賞(東京新聞賞)」、3編が「作文委員会賞」に選ばれました。また、中野地区人権擁護委員から「中野区人権擁護委員賞」を10編選出しています。
令和6年度 全国中学生人権作文コンテスト東京都大会 「最優秀賞(東京新聞賞)」受賞作品
【中野区立第二中学校2年(氏名:非公表)】の作品をご紹介します。
「偏見にとらわれない事を大切に」
私は幼い頃から他人とコミュニケーションをとるのが苦手で、落ち着きもなかった。だから、小学校低学年の時は特別支援学級に在籍していた。特別支援学級のみんなは優しくて、気づけばたくさんの友達がいた。休み時間には紙飛行機を飛ばしたり、絵を描いたりして、私は穏やかな学校生活を送っていた。勉強も毎日頑張って、先生からもよくほめられていた。だが、その楽しい思い出は二年で終わった。
「三年生になったら、新しい所で勉強するんだよ。」
二年生の冬のある日、そう母が私に言った。その新しい所というのは普通学級のことだ。低学年での成長ぶりをみて、普通学級に転籍しても大丈夫ではないかと両親が考えたからだった。特別支援学級の友達と別れてしまうことに悲しみを感じる反面、普通学級というものにワクワクしている私がいた。どんな子たちがいるんだろう、どんなことをするんだろう、楽しそうだと。
しかし、その思いは普通学級に転籍してからすぐに変わってしまった。支援学級とは違い、授業はついていけなくなることが多くなった。支援学級にはなかった宿題という期限がある勉強に嫌気がさした。そのうえルールは厳しくなっていて、破ってしまうこともあった。そして何よりも、普通学級の新しいクラスメイトとコミュニケーションをとったり、集団行動をしたりするのがとても苦手だった。もともと消極的な性格だということもあり、友達もできずまともに人としゃべれなかった。そんな私にある女子はうんざりしたように、
「もう嫌だ。」
と言い、ある男子は私の行動にイライラし、
「早くやれよ。」
と言った。優しく接してくれた子もいたが、普通学級での生活にとまどい、うまく行動できない私に冷たい態度をとる子も少なくはなかった。そして、新しい環境に少しは慣れてきた頃、教室で授業の準備しているグループの子たちの会話が聞こえてきた。
「あいつ特別支援学級だったんでしょ。何でこのクラスにいるの。うざいんだけど。」
それを聞いて私の体はとても震えていた。陰口を言われているとは思わなかったのだ。その陰口が頭に残り、もう学校に行きたくないとまで思ったが、私は支援学級に通っていたのだから、相手がそう思うのもしょうがないのだと自分を責めていた。五年生になったある日、転機が訪れた。普通学級で友達が出来たのだ。最初は休み時間に話しかけてくれる程度だったが、そのうち一緒に絵を描いたり、学校から帰ったり、休日に遊んだりするまでになった。だから隠したかった。過去に私が特別支援学級に在籍していたことを。その友達はそのことを全く知らないようだった。もしバレたら、友達は私に対して冷たい態度を取るかもしれない、私と緑を切るかもしれない、それだけがずっと不安だった。
一年間ほど隠し続けた頃だろうか。学校の休み時間に突然その友達に、
「特別支援学級にいたんだってね。」
と言われた。私の心に衝撃が走った。「どうしよう。なぜバレたの?」という言葉が頭の中を巡った。人生終わったかもしれないというところまで考えてしまった。何と返答していいかわからず黙り込んでいた私に対して、友達は言った。
「でも、うちはそんなの全然気にしないし。」
とても意外だった。けれども、その言葉でわかった。友達は私を「特別支援学級にいた子」ではなく、「絵を描くのが好きな仲の良い子」つまり内面を見てくれているのだと。私のこれまでの不安だった気持ちが一気に楽になった。
私は中学二年生になった今でもその友達と仲良くしている。落ち着きも以前よりは出てきて、同級生ともたくさん話すようになった。勉強や部活も自分なりに頑張って、毎日が充実している。小学校で普通学級に転籍してきた頃、私自身に悪いところがあってクラスメイトから嫌われることもあったが、ただ「特別支援学級にいた子だから」という理由だけで嫌われたことも確かにあったと思う。中学校で周りから自分はどう思われているかはわからないけれど、私自身は「特別支援学級にいたから」という引け目を今は感じていない。
「特別支援学級だったから」とか関係なく、その人がどんな人間なのか内面を見ることの大切さを、私は初めての普通学級の友達から教わった。「障害者だから」「外国人だから」など、世界には様々な「〇〇だから」という偏見や差別がある。私は自分の経験を通して、「〇〇だから」というものにとらわれず、人と接していきたいと思っている。
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