旧中野刑務所正門の移築・修復工事について
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更新日:2025年9月18日
令和3年6月4日に区の有形文化財に指定された旧中野刑務所正門(文化財名:旧豊多摩監獄表門、新井三丁目37番所在。以下「正門」)は、令和6年4月より移築・修復工事を行っております。
このページでは、工事の内容や進捗状況を随時公開していきます。
移築・修復工事の概要
正門は、旧法務省矯正管区敷地内で西に約110mの位置に 曳家(建物を解体して建て直すのではなく、そのまま移動させること)により移築します。
まず、曳家に耐えられるよう現在地で正門の基礎や内部の補強を行い、移築後の高さまで揚屋(建物をジャッキを用いて持ち上げること)します。その後、曳家経路に設けたレールの上に載せ、ゆっくりと機械で押して移動させます。移築先に設置した後、基礎の下に免震装置を取り付け、全体の修復を行い、工事は完了します。
曳家概要図
移築・修復工事の進捗
正門
7月28日から8月5日の1週間で正門の曳家を行いました。
レールに取り付けた油圧ジャッキの操作は、正門の通路内の指揮所で行いました。油圧ジャッキが1m伸びきるのにかかる時間は約5分。伸びきった油圧ジャッキは、尺取り虫のように、縮め再び伸ばすということを繰り返し、1日に15~20m程度正門を押しました。約670トンある正門に影響が及ばないよう、非常にゆっくりとした動きです。
正門の進む方向が曲がっていないかは、正門の四隅に取り付けた下げ振り錘(糸の先についた円すい形の重り)で確認しました。曳家経路には曳家先まで一直線に墨が打ってあり、錘の先端がその線上を通るように下げられています。この錘の位置を常に確認し、線から外れる場合は、コロ棒をハンマーで叩いて角度を変え、進行方向の微調整を行いました。
正門の曳家開始時の様子
下げ振り錘の様子
曳家のタイムラプス動画
曳家のタイムラプス動画を区公式YouTubeに掲載しました。
画像をクリックして、動画をご覧ください。
なお、曳家期間中の7月29日から31日にかけての3日間は、抽選による見学会を開催しました。
酷暑の中、多くの方にご参加いただき誠にありがとうございました。
正門
正門は移動後の高さまで約1.2mジャッキアップが行われました。
正門をジャッキアップした様子
ジャッキアップのタイムラプス動画
ジャッキアップのタイムラプス動画を区公式YouTubeに掲載しました。
画像をクリックして、動画をご覧ください。
ジャッキアップを行った正門は木材や鋼材を組んだ移動装置の上に載せられました。移動装置の下には、上から順番にコロ棒(円柱形の金属棒)、レール、サンドル(井桁状に鋼材を組んだ支え)が設置されました。レールに設置した油圧ジャッキ(右写真の青色の装置)が少しずつ伸び、移動装置を押すことで、移動装置の下のコロ棒が転がり、正門がゆっくりと西側へ動いていきます。
移動装置やレール等を撮影した写真
油圧ジャッキを設置した様子
曳家経路・曳家先
正門の南側・中央・北側の3か所を通るよう、曳家経路上にレールが設置されました。
曳家先の免震ピット(免震装置が入る空間)の中には免震装置の基礎がつくられました。この基礎に免震装置がつき、その上に正門が載せられます。
レールが設置された様子
曳家先の様子
正門内部
内部に足場を組み、壁面の上部(左の写真の赤い点線で示したあたり)に建物の一体性の確保や補強のための鉄骨水平ブレース(枠状の補強材)を設置しました。
壁体上部の様子
鉄骨水平ブレース設置の様子
正門周囲
令和7年3月から、揚屋やレール等の設置のため、基礎の下の掘削が行われました。掘削を行ったところは、地中の硬い地盤まで仮受材(鋼材杭)を打ち込みました。この仮受材を補強基礎の部分に設置し、正門の荷重を支えました。一気に掘り進めるとバランスが崩れてしまうため、掘削を行う位置と順番を決め、慎重に進められました。正門の周囲は重機で掘削を行うことができましたが、正門の直下は重機が入ることができない高さのため、人力で土を突き崩すように掘削しました。
正門直下を掘削している様子
仮受材で支えている様子
正門直下の掘削が終わった後、地面に耐圧盤(荷重を支えるための鉄筋コンクリート製の床)が設置されました。
また、正門の補強基礎の下に、さらに補強基礎がつくられました。正門直下を掘削する前につくられた補強基礎は、正門の元の基礎を左右から挟み込むようにつくられたものです。耐圧盤設置後につくられた補強基礎は、元の基礎と補強基礎の底を覆っています。これにより、仮受材が設置されている場所以外でも正門を支えることができるため、揚屋や移動装置への設置が可能となります。
正門直下に耐圧盤が設置された様子
補強基礎が下部に設置された様子
正門内部
令和6年12月以降、正門の左右の部屋にも鉄筋コンクリートによる補強基礎梁が設けられました。左右の部屋と中央の通路の補強基礎梁には、基礎の変形を防ぐため、仮設の水平拘束部材(突っ張り棒の役割を果たす鋼材)が設置され、その上に新たな床面が造られました。
正門周囲
曳家経路と曳家先は、令和6年11月末時点で、掘削や耐圧盤(荷重を支えるための鉄筋コンクリート製の床)の設置まで完了しています。令和7年1月、正門周囲についても掘削が行われました。周囲の掘削された箇所には耐圧盤が設けられ、正門の東面・南面・西面には、耐圧盤の上に水平拘束鉛直ブレース(鉄骨による赤い三角形の支え)が設置されました。この鉛直ブレースや北面の山留の部材と補強基礎の間には、床下同様水平拘束部材が設置され、正門の四周から押さえるように固定することで、基礎の変形や水平方向の移動を防いでいます。令和7年3月以降、正門直下(ブルーシートで覆われている箇所)についても掘削が進められます。
床面の設置状況
正門周囲の状況
正門本体
解体調査の実施
これまでにも正門では様々な調査が行われていますが、あくまでも設計等に必要な最低限のものでした。そのため、正門の大扉や煉瓦壁面の劣化状況、基礎全体の形状の把握など、詳細を明らかにするためには広範囲にわたる解体(建物を取り壊すことではなく、修復等を行うために、記録を取りながら部位ごとに順番に取り外していくこと)や掘削が必要となる調査は、移築・修復工事の中で実施されました。
令和6年4月から5月を中心に、この調査のために、正門南面木製大扉及び北面鋼製大扉、敷石や敷居石の解体、壁面の漆喰の除去、天井材や土間床コンクリートの解体が実施されました。取り外された部材は、調査が進められており、再利用する部材や補修箇所の選定が行われています。
正門南面木製大扉解体の様子
正門北面鋼製大扉解体の様子
元守衛室漆喰・木摺り下地解体の様子
解体調査の動画(令和6年4月から5月)
令和6年4月から5月に実施した解体調査中に撮影した動画を区公式YouTubeに掲載しました。
画像をクリックして、動画をご覧ください。
基礎の補強工事
「移築・修復工事の概要」にも記載のとおり、揚屋・曳家を行うためには、基礎の補強が必要です。
正門の基礎は、左右の部屋の下にしか造られておらず、通路部分でつながっていないことがこれまでの調査で判明しています。揚屋・曳家が行えるよう基礎の一体性と強度を確保するため、元の基礎を覆うように鉄筋コンクリートによる補強工事を行います。
この基礎の補強を行うため、土間床を解体した後、室内の掘削を行い、基礎部分の調査を行ったところ、基礎幅が当初の想定より大きい箇所があることが判明しました。そのため、工事を一時中断して補強方法の再検討を行った結果、当初想定していた大きさを超える部分を撤去したうえで補強することとなりました(このことについては「旧中野刑務所正門移築・修復工事の工事期間の延伸について」をご覧ください)。
工事再開後、上記の基礎の撤去工事や、補強のための鉄筋やPC鋼棒(新たに設けたコンクリートの梁と元々の煉瓦基礎を一体化させるための鋼棒)を通すための貫通孔の削孔が行われました。令和6年11月末現在、中央の通路部分に鉄筋コンクリートによる補強基礎が設けられています。
元守衛室掘削の様子
通路部分の基礎補強の様子
曳家経路
曳家工事 仮設構成図
上の図のように、曳家経路にはサンドル(井桁状に鋼材を組んだ支え)で高さを合わせたレールを敷設し、その上に移動装置と正門が載せられます。これらの荷重を支えるためには、しっかりとした地盤が必要となりますが、令和3年度に実施された地盤調査の結果、地表面から約2mの深さまでは埋土が堆積しており、さらに、旧法務省矯正研修所の建物を解体した際に掘り起こされていたため、曳家を行うには地耐力(地盤が建物の荷重にどれだけ耐えられるかという力)が弱いということが判明しています。そのため、地耐力の弱い地表面から約2.5mの深さまでの部分を掘削し、耐圧盤(荷重を支えるための厚さ30cmの鉄筋コンクリート製の床)を設けたうえで、曳家を行うためのレール等を設置します。
着工後、まずは山留(掘削を行う際、地盤が崩れないように壁などの構造物を設けること)が行われ、徐々に掘削が進められました(その際に確認された遺構は「旧中野刑務所正門の移築・修復工事中に発見された遺構の紹介」をご覧ください)。令和6年11月末現在、経路の掘削は完了し、耐圧盤の打設が進められています。
曳家経路耐圧盤打設中の様子
曳家経路耐圧盤の様子
曳家先
正門の基礎は免震構造となるため、曳家先には、免震ピットという免震基礎を入れるための空間が設けられます。山留と掘削の後、免震ピットや正門をしっかりと支えるため、地盤改良と耐圧盤の設置が行われました。令和6年11月末現在、免震ピットの西・南・北面の擁壁を設けるための鉄筋及び型枠の設置が進められています。
曳家先掘削中の様子
曳家先耐圧盤設置後養生の様子
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このページは区民部 文化振興・多文化共生推進課が担当しています。