【まるっと中野】沙央くらまがご案内 中野のアチコチいいところ「中野が誇る小劇場『ポケットスクエア』編」
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更新日:2023年10月17日
こんにちは。沙央(さおう)くらまと申します。
宝塚歌劇団で舞台活動をスタートした私は、生まれ育った、中野で歌劇の基礎を学びました。
ずっとあるもの、変わっていくもの。昔も今も、大好きなまち中野。
この度ご縁があって、中野の素敵なところを、皆さんにお届けすることになりました。
どうぞ、よろしくお願いいたします。
住宅街の劇場群「ポケットスクエア」
中野駅南口から徒歩5分、小劇場が集まった区画をご存じですか?4つの劇場が隣接するこのエリアは「ポケットスクエア」と呼ばれています。
一年中新しい演劇が生まれ、演じる側と観る側のエネルギーに満ちた、中野でも特に熱いこの一画。
私の記念すべき初レポートとして、宝塚の先輩や芝居の仲間たちも舞台に立ったこちらを紹介します。
劇場支配人は劇団主宰
今回、ポケットスクエア支配人の寺戸隆之さんに『劇場HOPE』でお話を伺います。
沙央「客席と舞台がぐっと近いですね。こちら『劇場HOPE』の収容はどれくらいですか」
寺戸「ここが一番小さい劇場で、約70席です。一番大きい『ザ・ポケット』で約180席ですね」
沙央「劇場の名前でもあるこの『ザ・ポケット』ですが、どのような由来ですか」
寺戸「『ふしぎなポケット』っていう童謡があるじゃないですか。ポケットを叩いてビスケットが増えるやつ。あの『ポケット』みたいに、いろんな多くの人たちにお芝居をやって欲しい、という願いが込められています」
沙央「なるほど、可愛くありつつ深いですね。寺戸さんはいつ支配人に就任されたのですか」
寺戸「コロナ禍の直前です。もともと14~15年前にここで働いていた知人の代わりに働き始めたのがきっかけです。最初はあくまで音響スタッフだけという話だったのですが、気付いたら支配人という感じです。自分も劇団を主宰していたので断っていたんですけどね」
沙央「すごい!劇場支配人、劇団主宰、演出、作家、音響って一人で全部出来ちゃう。ご自身ではどのような作品を創られているのですか」
寺戸「古典が多いです。大学でロシア語を学んでいたこともあり、チェーホフやイプセンのリ・クリエイションなどを手がけています」
沙央「古典は良いですよね。私は両親が昔、俳優として劇団シェイクスピアシアターに所属してジァン・ジァン*という劇場でずっと演劇をしていました。そんな繋がりから芸名の沙央は翻訳家の小田島雄志先生につけていただき、シェイクスピア(沙翁)という意味があります。ロシアの作品ですと、私はカラマーゾフの兄弟のアレクセイ役を演じました」
寺戸「この劇場も、前の支配人がジァン・ジァンからも影響を受けていて。あんな劇場を造りたいという想いで、新宿からほど近い中野のこの場所を見つけたそうです」
小劇場だから魅きつける
沙央「小劇場と言えば、客席との近さ。大きな劇場とは違う緊張感を感じます。客席のかすかな物音や、小さな喋り声も聞こえるので、どれだけ集中できるのかを試されますよね」
寺戸「お客さんにも集中力が求められます。お客さんと演じる側が一体になって、どちらも緊張感を持って最後まで行くと、本当にいい舞台になる。これをぜひ小劇場で体験して欲しい。小劇場の魅力を味わっていただきたい」
沙央「宝塚ではデビューから2,500人の大きい舞台を経験します。小劇場で芝居をしていた両親からは、『それは当たり前じゃないんだ』って何度も言われました。みんな芝居がしたいからアルバイトを掛け持ちしたし、芝居に来てもらうのは大変なんだって」
寺戸「劇場は、まず来ていただかないといけないですからね」
新しい演劇の祭典「ぽけふぇす」
沙央「寺戸さんが支配人になられて、新しい試みをされたと聞きました」
寺戸「今年の8月から9月にかけて1か月間、演劇フェスティバル『ぽけふぇす』を開催しました。4劇場を最大限に活用し、14団体が連日公演を打ち、たくさんの方に来ていただきました。『ザ・ポケット』のヘッドライナーは何と『少年社中』でした」
沙央「私も『少年社中』、『星の飛行士』という作品で出させていただきました。毛利さん*は本当に懐の深い方ですよね」
寺戸「全部受け入れる(笑)。『少年社中』とは外部の旗揚げ公演が『ザ・ポケット』というご縁です。今年『少年社中』の25周年ということで、フェスの目玉として声を掛けさせていただいたら快諾していただいて。おかげさまでフェス全体で約1万人の方にご来場いただきました」
沙央「観やすいように、チケットにも工夫をされたとか」
寺戸「やはり初の試みなんですが、3作品観られるチケットを作りました。学生は特別料金の5,500円。1作品あたりにすると、映画とあまり変わりません」
沙央「素晴らしい取り組みですね。日本でも若い人たちがもっと気軽に楽しめるような環境にしたいですね」
寺戸「海外では、学生が安い入場料で演劇などの文化を体験できるよう、お金を出している国もあります。日本では物価とともにチケット代も上がり、若い世代が気軽にというのはまだまだ難しいです」
人が結ぶ劇場と地域
沙央「支配人として大変なことはありますか」
寺戸「劇場の周りが住宅街なので、迷惑が掛からないようにするのが一番の仕事です。4つの劇場すべてが稼働すると、500人くらいが中野駅から集うこともあるので」
沙央「支配人ならではのご苦労ですね。私は南口というとポケットスクエアとレンガ坂というイメージですが、駅から来る方はレンガ坂を通っていらっしゃるんですか」
寺戸「レンガ坂商店会のお店では、ポケットスクエアのチケットの半券を持参すると、サービスを受けられるんですよ」
沙央「素敵!」
寺戸「実は提携前からやってくださっていたみたいで、劇場のお客さんから教えてもらいました(笑)。あとで商店会の方が来てくださって、『こういうサービスやってるんですけど、公式で認めてくれますか?』『え、もうやってるんですか!?』と。うちにもお客さんにもありがたいことなので、どうぞどうぞと。感謝しています」
沙央「中野はそういうおおらかなところがありますよね(笑)。観て、食べて、帰る。これって本当に大切なことで、私も歌舞伎役者さんから、まちとエンターテインメントが助け合ってみんなで盛り上げているという話を聞いています」
寺戸「芝居の後にお客様がご飯を食べながら感想を話したり、役者が打ち上げで利用したり、食事処と演劇、役者の関係は深いですよね。私は、特に支配人になってからは『支配人が飲んでいる』と見つけられてしまうので、レンガ坂には行きづらくなりましたが(笑)」
沙央「では、どのあたりに行かれるのですか(笑)」
寺戸「南口では五差路のあたりかな。北口はあまり行かないですね。何か線路の向こう側に行くということに結界を感じます」
沙央「小劇場で有名な下北沢なんかは、結界が無くて、むしろダンジョン化していますよね。気づいたら変なところに出ていて、それが楽しい」
寺戸「中野も大学が出来た時期は人の流れの変化を感じましたが、戻った感じがしますね。駅に新しい出口が出来るので、劇場に向けて人の流れが変わることを期待しています」
沙央「中野のまち全体としてはどんな印象ですか」
寺戸「サブカルのまちとよく言われますが、“個”なかんじがして、もっと全体で盛り上がればいいのにと思います。小劇場の演劇もサブカルに含んでいいと思うし、いろいろな文化が融合していったら面白いですね」
とにかく小劇場に"いらっしゃい"
最後に、寺戸さんからメッセージをいただきました。
「ポケットスクエアじゃなくていいので、とにかくお芝居を観に劇場へ足を運んでください。大変な時期を経験して、劇場はお客様のことを考えた、もっといい劇場になっています。小劇場の良さを感じていただいて、それが中野のまちを訪れるきっかけになれば嬉しいです。心からお待ちしています」
寺戸さん、ありがとうございました。
演劇人ならではの熱い想いがひしひしと伝わってきました。うーん、話し足りない。ここで一緒にやりたいね、なんてお話も盛り上がりました!
ちなみに、来月私の知人である駿河太郎さんと宮澤佐江さんが、ポケットスクエアのテアトルBONBONに出演します。
気になる方はぜひこの機会に遊びに来てください。
ポケットスクエアで演劇を体験した方が、「中野ってこんなに面白いまちなんだ」と思って、別の機会にも気軽に来てもらえるようになれば嬉しいです。
私のYouTubeチャンネル「こまログ」でも中野の見どころを発信しています。だいぶプライベートな私が楽しくまちを紹介していますので、ご覧ください。
またお会いしましょう!
※渋谷ジァン・ジァン
渋谷の山手教会地下にあった小劇場。前衛演劇やライブなど先端文化芸術の発信地として知られた。
※毛利亘宏氏
劇団少年社中の作、演出を手掛ける主宰。
インフォメーション
ポケットスクエア
所在地:中野区中野3-22-8
アクセス:JR中央線「中野駅」南口より徒歩5分
電話:03-3381-8422
https://www.pocketsquare.jp/(外部サイト)
駿河太郎×宮澤佐江「よじれたギャラリー」
日時:2023年10月27日(金曜日)から10月29日(日曜日)
場所:テアトルBONBON
https://yojiretagallery.amebaownd.com/(外部サイト)
お問い合わせ
このページは区民部 文化振興・多文化共生推進課が担当しています。