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最終更新日 2011年6月27日
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個人情報保護審査会答申(第2号)

答申第2号
1993年10月8日

中野区教育委員会 殿

中野区個人情報保護審査会
会長 井出嘉憲

中野区個人情報の保護に関する条例第33条第2項の規定に基づく諮問について(答申)

 平成5年3月15日付、4中教学庶第696号による下記の諮問について別紙のとおり答申します。

諮問事項

自己情報不開示等決定処分に係る異議申立てについて(諮問)

1 審査会の結論

 本件異議申立人の開示請求にかかる中野区立小学校及び中学校の指導要録に関し、実施機関(中野区教育委員会)が一部不開示とした部分は、本人がすでに小・中学校を卒業しているので、全部開示とすることが妥当である。

 なお、今後実施機関において、在学中の児童・生徒についても開示するような制度の変更を行うことが望ましい。

2 異議申立ての趣旨及び経緯

 異議申立人(以下「申立人」という。)は、1993年2月1993年2月19日、中野区個人情報の保護に関する条例(以下「条例」という。)22条に基づき、実施機関である中野区教育委員会(以下「区教委」という。)に対して、その自己情報である上記学校の児童指導要録及び生徒指導要録の開示を請求したが、同年3月5日付で、「各教科の学習の記録」の「所見」、「行動及び性格の記録」の「評定」および「所見」、「標準検査の記録」の部分については、不開示の決定を受けた。

 申立人はこの一部不開示決定を不服とし全部の開示を求めて、1993年3月10日区教委に対し異議申し立てをした。そして、同年3月15日付で区教委から当審査会に対し、条例に基づく諮問がなされたものが本件である。

 当審査会の審理において、実施機関・区教委から1993年4月9日付で「理由説明書」が出され、これに対して申立人側は、同年5月5日付で「意見書」を提出するとともに、同年6月9日、当審査会委員に対する口頭意見陳述を行った。

3 審査会の判断

 当審査会は、申立人と実施機関・区教委との間における各争点に対し、以下のように審理し判断する。

(1)指導要録の"原簿"性をめぐって

 児童・生徒の「指導要録」は、学校教育法施行規則(文部省令)12条の3により、「児童等の学習及び健康の状況を記録した書類の原本」として、学校で作成しなければならないものとされている。

 その位置づけについて実施機関・区教委は、「児童・生徒の学籍並びに指導の過程及び結果の要約を記録し、指導及び外部に対する証明等に役立たせるための原簿としての性格をもっており、保護者に閲覧させたり、説明したりするものではない」と主張している(理由説明書)。

 これに対し申立人は、原簿であっても本人にはまさに表示すべきものだと主張する(意見書)。

 たしかに指導要録が学校内における原簿であっても、一切部外秘というわけではなく、むしろ対外表示用の原簿であることが予定されている。当審査会が職権で調査したところでは、成績証明書や進学用「調査書」のほか、すくなくとも家庭裁判所からの「学校照会書」への回答書の原資料とされている。

 また、学校内原簿であることから学校がその部外秘的取扱いを自由に決められるというものでもない。個人情報保護条例をもつ自治体の公立学校にあっては、そこに存する個人情報記録の公文書について原則的に本人開示請求権を保障すべく義務付けられているのであって、学校内の原簿であることだけを理由に、条例対象の公文書でないとか、条例上の本人不開示事由に当ると考えることは許されないと言わなくてはならない。

(2)指導要録の本人開示と教育評価記載の適正及び公正との本質的関係について

 条例26条は、22条による個人の自己情報開示請求権の限界として、4項目の本人不開示にできる場合を定めている。

 同条1号は、「法令の定めるところにより」明らかに本人開示にできない場合で、指導要録に関してはそうした法規の定めはなく、実施機関側もこれに当るとの主張をしていない。

 同2号は、第三者個人情報が含まれている場合で、指導要録は一般にはそれに当らないであろう。

 同4号は「開示することにより実施機関の公正又は適正な職務執行が著しく妨げられるもの」を挙げているが、その前に「取締り、調査、交渉、争訟等」という例示があり、指導要録はそこに含まれないと見られる。

 それに対して、同3号は「評価、診断、選考、相談、指導等に関するもので、本人に開示しないことが正当と認められるもの」と定めており、実施機関・区教委は本件の不開示部分が本号に該当すると認め、その根拠をつぎのとおり主張している。「『各教科の学習の記録』の所見、『行動及び性格の記録』の評定及び所見については、教育的配慮の上に立って学習及び生活の指導を行うための教師間における参考資料で、教師が生徒の特長や指導上の留意点を総合的専門的見地から客観的かつ公平に判断し、記入するものであり、これらを本人に開示することは、記載内容に客観性及び公平性を確保することが困難になる恐れがある(理由説明書)。

 これに対して申立人側は、評価記載の「客観性、公平性」は、教師への信頼を前提として成り立つもので、不信をもった者には通用しないし、本人をはじめ外部に示してこそ「客観的」になりうるのだと主張する(意見書、口頭陳述)。

 そこで判断するのに、たしかに、学校教師による児童・生徒の教育評価の所見的記載をすべて本人や親に見せるとなれば、厳正な不利益記載をしにくくなることは一般常識的であると見られ、特にそれは行動・性格に関する人物的評価について顕著であろう。したがって、本人不開示による学校教育評価の適正・厳正の確保という伝統的な考え方が存在していたのであった。

 しかしながら、子どもの「教育への権利」(「教育を受ける権利」)に基礎を置く今日の学校教育にあっては、不利益な評価結果であるほど、しかるべく親や本人に知らされる必要があり、教師間だけにおける適正・厳正な不利益評価とその秘密記載に大きな教育的意味を付する制度の合理性は疑わしい。現に、各学期ごとの学校教育評価の情報伝達はいわゆる通知表によって正式になされているのであって、それと一応別個に各学年ごとの総合的評価情報が指導要録に記されている場合、それを秘密の"二重帳簿"にする合理性は乏しいと考えられる。不利益評価とその記載の本人側への伝達をなしうるような教育専門的な工夫・検討が学校の教育責任に属するであろう。

 さらに、それ以上に、学校教師の教育評価記載に時としてありうる誤りを是正し、その「公正」を確保するために本人側への開示が必要不可欠であるという、申立人側の主張の重要性を考慮しなければならない。申立人側は評価情報内容の当事者であるから、校長をはじめ学校が評価記載の公正確保や是正を考える際に、当事者からの指摘をふまえることが相当に有効であろう。しかも、指導要録の評価記載は、進学その他の対外関係において機能するので、その公正確保には本人・親の法的利益が深くかかわっている。

 そこで、指導要録の本人開示をめぐって、教育評価の「適正」確保と「公正」確保との間を調整する必要が生ずるとするならば、公正確保のほうを優先させるべきものと考えられる。実施機関・区教委は評価記載の「客観性及び公平性」を唱えているが、それは単に評価の適正性にとどまらず公正性を十分に擁したものでなければならないのである。

 かくして、指導要録における教育評価記載について、今日ではその本人開示には、教育の本質に反する面が存しないのみならず、公正な教育への権利の保障という意味合いが存するので、条例26条3号にいう不開示の正当事由に本質的に該当するとは解せられない。

(3)指導要録の本人開示に伴う現実の教育支障と条例の効果について

 本件において実施機関・区教委の側は、その「理由説明書」のなかで、「自己情報開示等の要請の高まりが時代の趨勢であるという認識のもと、指導要録の開示のあり方などについて十分な検討」を行う必要のあることを認めている。さらに、当審査会における事情聴取の中で、将来における本人開示制への変更の余地もありうることを表明している。しかしながら同時に、現行制度にあってはあくまで本人開示の前提で学校教師が評価記載を行っているので、そのままの本人側への開示には現実の教育的支障が大きいと陳述している。

 これに対し申立人は、すでに学校の管理下から離れた卒業者は対象外であると主張する(意見書)。

 たしかに、伝統的な指導要録制度における評価記載を、条例の効果としてすべて本人開示とした場合には、教師にとって予想外の負担となるような内容的反発が親や本人の側から出てくる可能性があり、とりわけ本人が現に在学中であるときは、その可能性が大きいことに配慮する必要があろう。また、その反発が条例に基づく訂正請求に連動することも予想される。

 もっとも、条例23条が定める「訂正請求」は、評価の不当を根拠にできるものではなく、事実の「誤り」や「不正確」を根拠とする権利ではあるが、特に卒業年次の年度末における指導要録の開示・訂正請求に学校が集中的に対応することなどを想定するならば、今日の過渡的状況としてはかなりの現実的な学校活動上の支障も生じうるところと考えられる。そして、こうした現実的な学校活動上の支障も、当面は条例26条3号にいう不開示事由の要素になると解せられる。

 指導要録記載の開示・訂正請求は、各学校段階の在学中、とりわけ卒業年次において重視されるであろうが、過渡期の現時点では、そのもたらす学校生活上の支障を問題視していることになる。こうした支障は、すでに各学校段階を卒業した卒業生については、さほど集中的に生ずるとは考えられない。ここでは、自己情報を知る権利の働きが優先すると解されるのである。

 以上により、当審査会は、指導要録におけ得る教育評価記載の本人開示は、各学校段階の卒業生については支障なく認められるべきであり、在学生にあっては、卒業後に可とすべきだが、それまでは条例上の不開示事由に該当する、と解するのが相当であると判断する。

(4)標準検査記録の本人開示をめぐって

 本件において、「標準検査の記録」の欄が不開示とされ、その理由につき、、実施機関はこう主張している。「教師が教育効果の客観的な把握をねらいとし、生徒を理解する参考資料のひとつとして、学習指導に生かすためのものであり、これを開示することは、生徒及び保護者にいたずらに混乱をもたらし、……適切な学習指導を行うことが困難になる恐れがある」(理由説明書)。

 これに対し申立人は、いたずらな混乱は秘密にすることからかえって生ずるのだと主張する(意見書)。

 なるほど、標準化された知能検査等の結果である指数や点数などは、教育専門的な説明なしには親や本人の容易に理解する情報ではないかもしれない。しかし、児童・生徒に特別な受験の負担を課しながら、その教育的資料結果を親・本人に一切知らせないことの合理性はきわめて疑わしい。教育への権利に加えて、個人情報事項に関する自己決定権の見地からすれば、元来そうした標準検査を受験するかどうかの自由も重要な問題のはずであって、受験結果を本人秘とまですることは、自己情報開示請求権の保証に反する。指導要録開示の際に、しかるべき教育専門的な説明を行うことによって本人側の混乱を防止することが、実施機関・区教委側の責務であろう。

 ただしこの点についても、条例の効果として本人開示制に変更されることに伴う過渡的な学校活動上の支障を重視する必要があると考えられるので、上記と同じく、当面は卒業生に即時開示し、在学生には卒業後に開示することが、条例の要求を充たすゆえんであると解する。

 以上のとおりであるが、申立人はすでに、本件請求にかかる指導要録の属する学校段階を卒業しているので、条例に基づき、一部不開示とされた部分も全部開示されるべきであると判断する。

 なお、今日では、指導要録における教育評価記載を本人不開示とすべき本質的な理由はないと判断されるので、今後実施機関・区教委において、在学中の児童・生徒についても本人開示制とするような制度の変更を行うことが望ましいと考える。

4 本件不服審査の処理経過

  1. 1993年3月10日、異議申立人は、自己情報不開示等決定処分に不服があるとして、個人情報保護条例33条1項の規定に基づき、実施機関に異議申立書を提出した。
  2. 同年3月15日、実施機関は、本件異議申立てにつき、個人情報保護条例33条2項に基づき、当審査会に諮問を行った。
  3. 同年4月5日、審査会は、実施機関に対して不開示等理由説明書の提出を求めた。
  4. 同年4月13日、実施機関から審査会に対して不開示等理由説明書が提出された。
  5. 同年4月16日、審査会は、実施機関から提出された不開示等理由説明書の写しを異議申立人に送付し、意見書の提出を求めた。
  6. 同年4月26日、審査会は、実施機関からの意見を聴取した。
  7. 同年5月10日、異議申立人から意見書が提出された。
  8. 同年5月11日、審査会は、異議申立人から提出された意見書を実施機関に送付した。
  9. 同年6月9日、審査会は、異議申立人からの意見を聴取した。
  10. 審査会は、本件異議申立てにつき、1993年4月1日、4月26日、5月20日、6月9日、6月28日、7月12日、8月23日、9月20日と審議を重ね、上記結論を得た。

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