個人情報保護審査会答申(第16号)

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更新日:2023年8月3日

答申第16号
2004年5月21日

中野区長様

中野区個人情報保護審査会
 会長 井出嘉憲

中野区個人情報の保護に関する条例第33条第2項の規定に基づく諮問について(答申)

2003年12月11日付け、15中総総第2303号による下記の諮問について、別紙のとおり答申します。

自己情報不開示等決定処分に係る異議申立てについて(諮問)

1 審査会の結論

 本件決定により一部不開示とされた戸籍謄本・住民票写し等職務上請求における「使用目的・提出先」の欄は、開示すべきであり、請求者弁護士の印影および電話番号は、異議申立人の自己情報にあたらないので不開示のままで妥当である。

2 本件および不服申立ての経緯

(1) 異議申立人(以下「申立人」という。)は、2003年10月9日に、中野区個人情報の保護に関する条例(以下「条例」という。)22条に基づき、実施機関である中野区長(以下「実施機関」または「区長」という。)に対し、自己にかかる戸籍謄抄本・附票の第三者交付申請書(同年1月から10月8日までの間)の自己情報開示請求を行った。
 それに対して実施機関から同年10月23日付けで、弁護士による「戸籍謄本・住民票の写し等職務上請求書」(同年8月26日付け)の写しが開示決定され、それに基づき申立人の戸籍謄本と戸籍の附票各1通を請求した弁護士の氏名・所属弁護士会・登録番号・事務所所在地は示されたが、「使用目的・提出先」の記載および職印の印影と電話番号は不開示とされた。
 そこで申立人は、同年11月13日付けで、区長のこの自己情報不開示等決定処分に対して異議申立てをし、本件は同年12月11日付けで区長から当審査会に諮問されている。

3 審査会の判断

(1) 戸籍謄本・住民票の写し等職務上請求書とその記載事項は本人の自己情報であるか
 本件の職務上請求書には、戸籍筆頭者としての申立人の氏名および本籍が記されているので、請求者弁護士の情報であるとともに、申立人の自己情報に原則的に当ると認められる。ただし、弁護士の職印の印影および電話番号は、請求弁護士を特定させるのに不可欠な情報ではないので、条例22条に基づき申立人が開示請求できる「自己情報」に属しないと解される。

(2) 職務上請求書における「使用目的・提出先」欄を不開示としたことについて
 1. 戸籍法10条2項によれば、戸籍の謄抄本の交付請求は法務省令で定める場合を除いて「その事由を明らかにしてしなければならない」。そして同法施行規則(法務省令)11条により、請求事由を明示しなくてよい請求は、戸籍記載者とその配偶者・直系血族がする場合(1号)のほか、弁護士等の法定士業者による職務上請求(3号)などであるとされている。
 また、戸籍の附票の写し交付の請求については、住民基本台帳法20条2項に規定があり、そこで準用される同法12条3項が、省令で定める場合を除いて「請求事由を明らかにしてしなければならない」とし、戸籍の附票の写しの交付に関する省令2条においてやはり、弁護士等の法定士業者による職務上請求の場合が挙げられている。
 2. そこで、本件におけるように弁護士が職務上請求として他人の戸籍の謄本と附票の写しの交付を求める場合には、法令上「請求事由」を詳らかにする必要はないとされている。しかし実際には、日本弁護士連合会統一用紙における様式に、「使用目的・提出先」の欄があり、本件においてその記載が不開示とされたのであった。
 3. たしかに、弁護士には、個人または法人の依頼関係について守秘義務があり(弁護士法23条本文)、「職務上請求」制度はそれに対応していると解される。
 しかしながら他方、「戸籍」は親族身分関係を公証する法制度であり、相続関係や人事上などでそれを第三者が確認する必要が時に大であるとはいえ、非嫡出子や離婚歴といった高度のプライバシー情報をも含むことが公知である。また「戸籍の附票」には、住所移転歴というプライバシー情報が記載されている(住民基本台帳法17条3・4号、19条)。
 したがって、個人情報保護の条例が保障する本人の自己情報コントロール権にとっては、自己の戸籍情報を第三者がいかなる事由によって請求取得したかを知ることは、きわめて肝要であると考えられる。そしてこの点は、弁護士による職務上請求の場合にも変りなく、法定士業者なればこそ他人の戸籍情報を取り扱うことに重い責任を有するはずである。
 4. この点をめぐり実施機関は、職務上請求書における「使用目的・提出先」の記載は法令上不要なものであり、特段の疑義のない限りそれを行政に示す必要もないはずであって、記載されていてもその守秘利益を弁護士が放棄したとは認められない、と主張している(理由説明書)。
 なるほど「使用目的・提出先」の記載は、「職務上請求」にあっては法的要件でないとしても、弁護士の職務行為としての社会的責任にかかわるところであるから、その記載がなされている以上、それが本人に開示されることを請求弁護士として受忍すべきところと判断される。
 もっとも、本人開示がなされていくのに伴い、同欄の記載が大項目的、抽象的になる可能性はあるであろうが、行政窓口で特に疑義なしと認められる職務上請求書の記載であれば足り、それとして本人に開示されることが、上記の意味あいにおいて肝要なのである。

 以上により、当審査会は標記のとおり結論する。

4 本件不服審査の処理経過

(1) 2003(平成15)年11月13日、申立人は、同年10月23日付けの自己情報不開示等決定処分に不服があるとして、条例33条1項に則り区長に対して異議申立てを行った。
(2) 2003年12月11日、区長は本件異議申立てについて条例33条2項の規定に基づき、当審査会に諮問を行った。
(3) 2003年12月12日、審査会は、区長に対して不開示等理由説明書の提出を求めた。
(4) 2004年1月7日、区長から審査会に対して不開示等理由説明書が提出された。
(5) 2004年1月13日、審査会は、区長から提出された不開示等理由説明書の写しを申立人に送付し、意見書の提出を求めた。
(6) 2004年1月17日付け、審査会は、申立人から意見書を受理した。
(7) 2004年3月19日、審査会は、実施機関から意見聴取をした。
(8) 審査会は、本件異議申立てについて、2003年12月19日、2004年1月7日、2月27日、3月19日、4月16日、5月21日と審議を重ね、上記結論を得た。

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