中野区食品安全委員会 第3期報告 2001年(平成13年)8月 (概要版)

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更新日:2023年8月3日

安心できる食生活の実現にむけて

― 消費者・事業者・行政の具体的役割の評価と対応について ―

中野区食品安全委員会 第3期報告 2001年(平成13年)8月

(概要版)

第3期の報告にあたって

 今期の食品安全委員会では(平成11年9月~13年8月)、区長からの諮問はなく、委員会の意見を求められることとなった。
 第1期、第2期とこれまでに提出された答申の中で一貫して述べられてきたことは、区民参加による食品安全確保のための施策の展開と、消費者・事業者・行政が各々の役割を自覚し積極的に果たすとともに、三者の連携を図っていくことであった。このことから、今期の委員会では、これまでの三者の取り組みの成果について率直な評価を試みた。そして、それらを基に三者の今後の対応について提言するとともに、国・都・マスコミへの働きかけにも言及した。
 一方、遺伝子組換え食品、内分泌かく乱化学物質・ダイオキシン、狂牛病、大規模食中毒の発生さらに国による食生活指針の推進など、区民の食生活をとりまく状況はますます複雑・多様化し、広域化している。しかし、このような状況にあっても、身近な生活の場である地域から、消費者・事業者・行政が安心できる食生活の実現に向けた活動と連携の取り組みを重ねていくことが大切である。

消費者・事業者・行政の取り組みとその評価

 消費者・事業者・行政のそれぞれの取り組みと共に、数値的評価は実施しづらい事項もあるが、現時点で可能な範囲でそれらの取り組みを評価することを試みた。

1 消費者

(1) 消費者の具体的役割に関する現状分析と評価
 食品衛生に関する調査(平成2年、平成11年)を分析したところ、消費者の現状認識については、食料の海外への依存度の上昇や多様化・複雑化に対応し、食の安全性について、区レベルから都や国、世界レベルへと視点の拡大が見られた。また、消費者はマスコミ情報のほか、身近な区や事業者から食品の安全性に関する知識や情報を収集し、基準や規制、表示などへの理解を深め、さらに区内で消費者が互いに協力し合っている実態が見出された。

(2) 区内消費者・消費者団体による活動
 「中野区消費生活展」「中野まつり・安全食品展」「中野区消費者団体連絡会」「よりよい学校給食にする会」「保健所との協力」「区内各消費者団体」をとりあげ、その実績を紹介し評価した。多くの事業で参加団体や参加者の減少が見られるものの、工夫を重ね地道に活動を行っている。

(3) ボランティアグループによる高齢者給食サービス
 ボランティア会員数は減少傾向にあるが、サービスを受ける側の利用者数は増加傾向にある。配食・会食サービスは高齢者にとって食生活改善の一助ともなっている。

(4) 学校給食関連の動き
 PTAによる給食試食会や学習会等が行われ、また、学校給食運営委員会へ委員を派遣するなど行政側への意見具申もしている。

(5) 消費者の取り組みの評価
 消費者はこの食品安全委員会の構成員として、また中野区の食品安全活動の担い手として最も重要な存在である。他の自治体に比肩して中野区民は勝るとも劣らない活動をしていると評価できるが、中野区民の経年変化を見る限りでは満足できる状況ではない。第1期・第2期・第3期食品安全委員会を通して、その活動の経過と盛り上がりを検討すると、「区内消費者・消費者団体による活動」の経過を見る限りでは、人数、および集会・展示の回数と展示数の増加傾向が見られない。また、「ボランティアグループの高齢者給食サービス」と「学校給食関連の動き」については活動の向上が見られるが、大幅な増加とは認められない。消費者団体の活動状況は堅実な歩みが見られるもののメンバーの高齢化が指摘されるようになっている。このように消費者の取り組みについて楽観できない状況である。

2 事業者

(1) 食品衛生協会の会員数の推移
 食品衛生協会では、会員に対し食品衛生の自主管理を推進するための活動を展開しているが、このためには組織率の向上が最も重要な課題となっている。

(2) 食品衛生自治指導員活動状況
 135名の食品衛生自治指導員が、食品による事故発生防止を目的に主として「現場細菌検査を中心とした、会員の施設に対する巡回衛生指導」を行い成果を上げている。

(3) 食品衛生実務講習会
 毎年、中野ゼロホールで開催される実務講習会には、食品衛生自治指導員が中心となって協力し、多数の受講生を得ている。

(4) 健康教室の開催
 会員に対する健康管理の必要性から、毎年健康教室を開催し、健康診断の受診を呼びかけている。

(5) 衛生器材および情報紙の配布
会員に対し「食品衛生責任者お知らせ版」および衛生器材を配布している。

(6) 苦情処理状況
 スーパーマーケットのデータによると、大阪堺のO157食中毒事故では、消費者の生食食品の買い控えが起き、和歌山毒カレー事件では不安からくる申し出が多く、雪印食中毒では苦情件数が約2倍と急増した。

(7) 事業者の取り組みの評価
 「食品衛生協会の会員数」の会員組織率は20%に留まり、この4年間では減少傾向にあり、食品衛生活動の実効を期待するには十分な会員組織率とはいえない。また、「自治指導員活動状況」は巡回指導、食品衛生街頭相談、食品衛生実務講習会、健康教室及び衛生器材・情報紙の配布などがその内容であるが、どれも無難に実施されているものであり評価はできるが、活動力を維持し、かつ高めるために、適宜、指導や監督がなされなければならない。しかし、特に個人経営の事業者には行政依存の体質があり、行政の方を向いて消費者を敬遠ないし軽視するおそれがあるので、行政の指導・監督のあり方には工夫と改善が必要である。

3 行政

(1) 健康づくり協力店の取り組み
 メニューに栄養成分を表示する店舗などの健康づくり協力店の取り組みを行っている。徐々に協力店も増加してきたが、まだ全店舗に占める割合は少ない。

(2) 食中毒発生防止への取り組み及び窓口相談・苦情の対応
 毎年、食品衛生夏期対策事業として食中毒防止に向けた監視指導を実施している。また、食の安全性を脅かす大規模事件の発生等により消費者の相談内容も複雑化した。

(3) 区民への情報提供のとりくみ
 区民への情報提供は、「区報」「シティテレビ」「ホームページ」の各メディアを通して行っている。区報は最もポピュラーな情報提供の柱であり、シティテレビは視覚・聴覚両面から情報を流せる。一方、ホームページはリアルタイムによりきめ細かな情報が提供できる。

(4) 保健所と消費者、事業者との連携
保健所では、消費生活展など消費者団体主催の事業に参加したり、また、くらしの安全展など保健所事業に消費者団体や事業者団体から参加してもらうなど、相互交流と連携に努めてきた。

(5) 学校給食を通しての取り組み
 学校給食をより安全に、好ましい環境で摂取できるよう強化磁器製食器の導入や栄養士全校配置などの施策を積極的に導入してきた。

(6) 行政の取り組みの評価
 行政は消費者と事業者に対して支援と情報提供を行う責務があり、かつ同時に事業者に対して指導監督の権限も有するので、両面の立場を持ち、難しい存在である。事業者は行政の権限に服従し、消費者は行政の責務履行の不十分を追及することがある。そのため行政は公僕としての自覚を持ちながら、支援と情報提供に努めることによって、消費者・事業者・行政の間の信頼に充ちた協力関係を創り上げなければならない。このことからも本委員会が十分にその機能を発輝することが求められている。そして、行政担当者も区民参加による食品安全確保のための施策をどのように展開していくか、前例にとらわれずに真摯に模索していく必要がある。

消費者・事業者・行政の今後の対応

 消費者・事業者・行政は、これまでの取り組みの評価や食品をめぐる新たな状況を踏まえ、それぞれ今後、次のように対応することが望まれる。

1 消費者

(1) 学習し、選択し、発言する消費者になる
(2) 食品の購入と消費に関して責任ある行動をする
(3) 消費者個人個人の要望を行政・事業者へ向けて発信する

2 事業者

(1) 安全対策の強化
 近年の大規模な食中毒事件等を契機に、消費者の企業に対する不信感と権利意識が増大した。事業者は製造・加工・販売まで、横断的な衛生管理が求められるとともに、小売店や飲食店においても販売する商品に責任を持つ必要がある。
(2) 情報公開
 消費者の権利意識の増大等に対応するため消費者に対する正確な情報提供と説明責任が求められており、今後はインターネットを利用した情報提供や情報公開なども広げていく。

(3)新たな安全問題
 遺伝子組換え表示や有機農産物の表示制度の導入など、食品の安全性に関する情報をオープンにする動きがある。コスト増大など事業者にとって困難な面も多いが、安全性確保の責任を持ち、正確な情報提供をし、消費者の信頼回復に努める。

(4) 消費者懇談会の開催

(5) 会員増強
 食品衛生の自主管理や普及啓発の効果を上げるためには、食品衛生協会の組織の拡充強化が不可欠であり、未加入事業者の加入強化に努める。

3 行政

(1) 情報の共有と提供
 消費者に対し、適切に分かりやすい情報提供をする。また、インターネットの活用や区民アンケートの定期的実施など区民の意向の把握に努める。

(2) 消費者・事業者・行政の連携の促進
 さらに、消費者・事業者・行政の連携を促進していく。また、食品安全委員会は、三者の相互理解の場となり、情報共有や区民などへの問題提起の機能を果たしているが、審議のあり方などについて検討する必要がある。

(3) 調査・研究・監視体制の整備と事業者への指導強化

東京都・国・マスコミへの働きかけ

 「安心できる食生活」を実現するための中野区内の取り組みは、十分評価できるが、自ずと限界がある。そこで、東京都・国への働きかけとして「安全性をチェックする機関の充実」、「都道府県の連携」、「国際的に標準化された安全確保対策」、「継続的にきめ細かい対策の促進」、「施策・方針のわかりやすい情報の開示」を、また、マスコミへの働きかけとして「食品に対する正確な情報の発信」を要望する。

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このページは健康福祉部 生活衛生課(中野区保健所)が担当しています。

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