中野区食品安全委員会 第3期報告 2001年(平成13年)8月

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更新日:2023年9月30日

― 消費者・事業者・行政の具体的役割の評価と対応について ―

中野区食品安全委員会 第3期報告 2001年(平成13年)8月

1 第1期答申までの経緯
2 第1期中野区食品安全委員会答申の概要
3 第2期中野区食品安全委員会の経緯
4 第2期中野区食品安全委員会答申の概要
 (1) 消費者の具体的役割
 (2) 事業者の具体的役割
 (3) 行政の具体的役割
5 第3期中野区食品安全委員会の課題

1 遺伝子組換え食品をめぐる動き
2 内分泌かく乱化学物質・ダイオキシンをめぐる動き
3 狂牛病(牛海綿状脳症) (注)
4 大規模食中毒
5 国の「食生活指針の推進」
6 中野区の取り組み
 (1) 食品取り扱い者講習会について
 (2) 保健衛生情報連絡会について
 (3) 区民による食品の持込み検査について
(注)注:本報告書が作成された平成13年時点では、一般に「狂牛病」と呼ばれていました。
 現在では牛海綿状脳症(BSE:Bovine Spongiform Encephalopathy)と呼ばれます

1 消費者
 (1) 消費者の具体的役割に関する現状分析と評価
 (2) 区内消費者・消費団体による活動(最近5年間)
 (3) ボランティアグループの高齢者給食サービス
 (4) 学校給食関連の動き
 (5) 消費者の取り組みの評価
2 事業者
 (1) 食品衛生協会の会員数の推移
 (2) 食品衛生自治指導員活動状況
 (3) 食品衛生実務講習会
 (4) 健康教室の開催
 (5) 衛生器材及び情報紙の配布
 (6) 苦情処理状況
 (7) 事業者の取り組みの評価
3 行政
 (1) 健康づくり協力店の取り組み
 (2) 食中毒防止への取り組み及び窓口相談・苦情の対応
 (3) 区民への情報提供の取り組み
 (4) 保健所と消費者、事業者との連携
 (5) 学校給食を通しての取り組み
 (6) 行政の取り組みの評価

1 消費者
 (1) 学習し、選択し、発言する消費者になる
 (2) 食品の購入と消費に関して責任ある行動をする
 (3) 消費者個人個人の要望を行政・事業者へ向けて発信する
2 事業者
 (1) 安全対策の強化
 (2) 情報公開
 (3) 新たな安全問題
 (4) 消費者懇談会
 (5) 会員増強
3 行政
 (1) 情報の共有と提供
 (2) 消費者・事業者・行政の連携の促進
 (3) 調査・研究・監視体制の整備と事業者への指導強化

おわりに

資料編

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安心できる食生活の実現にむけて

― 消費者・事業者・行政の具体的役割の評価と対応について ―

中野区食品安全委員会 第3期報告 2001年(平成13年)8月

 平成5年4月、中野区は全国の自治体に先駆けて「中野区食品安全委員会条例」を制定した。そして、これまで2期にわたって委員会が組織され、区長からの諮問を受け活発な論議を重ねて答申を提出してきた。すなわち、第1期「中野区おける食品安全確保対策の基本的なあり方」(平成7年7月)と第2期「中野区における食品安全確保のための消費者・事業者・行政の具体的役割」(平成10年10月)と題する答申であった。
 これらの答申の中で一貫して述べられていることは、区民参加による食品安全確保のための施策の展開を求めていること、及び消費者・事業者・行政がそれぞれの役割を自覚し積極的に果たしていくとともに、三者の連携を図っていくことであった。たしかに、食品は中野区という一行政区域を越えて、広く流通しており、はたして一自治体としての中野区に何ができるかという厳しい限界があることを認める。しかし、「食」は毎日の生活に欠かせないものであり、人間としての生命の営みの基本である。そうであるなら、身近な生活の場である地域すなわち中野区という一自治体から安心できる食生活の確保に向けた取り組みを積み重ねていくことに重要な意義があるといえる。
 第3期の中野区食品安全委員会が発足するに当り、今期は区長からは諮問がなく、委員会の意見を述べることが求められることとなった。これは、条例の「委員会は、食品の安全確保を推進するために必要な事項について、区長に意見を述べることができる」旨の規定によるものである。この規定に基づき、委員同士で活発な討議を重ね、ここに報告書をまとめることができた。
 食品をめぐる状況はめまぐるしく、新たな課題が登場し、ますます多様化している。そのような状況の中で、中野区の消費者・事業者・行政がそれぞれの役割に取り組み、互いに連携していくことの意義を改めて確認した。これまでの三者の取り組みを具体的に示すと共に、その成果を評価する方法を提示して、今後の対策樹立のための改善を具体的に言及するような方法を提起している。区民の食品安全を求める草の根運動としての取り組みに期待するとともに、その育成に中野区としての適切な対応を期待する。

1 第1期答申までの経緯

 中野区では、平成5年4月、区民の請願をきっかけに、区議会での審議を経て、「中野区食品安全委員会条例」が制定され、同年4月、区民(消費者)、事業者、学識経験者の15人で構成する「第1期中野区食品安全委員会」が発足した。
 この委員会は、発足にあたり、区長から「中野区における食品安全確保対策の基本的あり方」について諮問を受け、11回にわたる会議を開催し、その結果を平成7年7月に「安心できる食生活の実現に向けて-中野区における食品安全確保対策の基本的なあり方-」としてまとめ、区長に答申した。

2 第1期中野区食品安全委員会答申の概要

 「食品安全確保のために消費者・事業者・行政が連携してそれぞれが役割を果たすべきである」との提言をまとめた。
 答申の内容は4部から構成されている。以下にその要点を述べる。
 第1は、「中野区食品安全委員会条例のこころみ」の中で、条例制定の経過と意義、食品安全委員会の役割を記述した。食品安全行政は、ほとんどが国の通達等にもとづく機関委任事務として執行されており、区固有の権限で実施することは少ないが、区民の健康づくりに大きな役割をもつことを指摘したうえで、中野区食品安全委員会が、消費者・事業者・行政の三者の相互理解と連携を深める場として期待されているとした。
 第2は、「区民の食生活をめぐる状況と不安の要因」の中で、区民の食生活をとりまく状況や食生活における不安の要因、食品安全確保への取組みの現状を記述した。区民の食生活が、生活様式の多様化や食品加工技術の進歩、食品流通の国際化などに伴って急速に変化していること、その中で食生活への関心が高まり、食中毒や食品添加物の使用、農薬など食品中に残留する化学物質の急性毒性や発がん性の問題、輸入食品の安全性などに不安や疑問が高まっていること、「安全」と「安心」の両面からの対策が必要であることを指摘した。また、食品安全確保への取り組みとして、消費者・事業者・行政それぞれの現状を簡潔に述べた。
 第3は、「中野区における食品安全確保の考え方」の中で、消費者・事業者・行政の役割の明確化と相互の連携や食を通じた地域健康づくりの推進について取りまとめ、三者の各々が確実にその役割を果たしていくことが重要であること、食を通じて、健康との関わり、環境問題にも視野を広げていくこと、地域社会の日常的な活動やふれ合いの中で、健康づくりという共通の目標に向かって協働していくことが必要であることを強調した。
 第4は、「当面の取り組みと課題」の中で、消費者・事業者・行政の各々に「期待すること」として具体的な課題を列挙した。

3 第2期中野区食品安全委員会の経緯

 第1期答申の後も、中野区では平成8年10月、区民(消費者)、事業者及び学識経験者14人で構成する「第2期中野区食品安全委員会」を発足させた。第1期答申後、腸管出血性大腸菌O157による食中毒の発生、遺伝子組換え食品の出現、内分泌かく乱化学物質(環境ホルモン)など区民の食生活をとりまく新たな問題が生じていた。第2期答申作成中の平成10年7月には食品中に毒物等が混入する事件が連続して発生するなど、食品の安全性に関する新しい課題が次々と出現したという特別な社会情勢があった。
 また、情報が氾濫しているにもかかわらず、消費者が本当に知りたい情報がない、行政や事業者の情報開示が不十分ではないか、という消費者の食品に対する不安も増大した。
 このような状況の中で、第1期答申を基盤として、健康づくりという共通の目標に向かって、消費者・事業者・行政の三者の連携により、第2期食品安全委員会が運営された。この委員会は、発足にあたり、区長から「中野区における食品安全確保のための消費者・事業者・行政の具体的役割」について諮問を受けた。
 第2期委員会は、第1期答申の内容を確認しつつ、その後に生じた新たな課題も意識して、消費者・事業者・行政の具体的役割を検討し、「安心できる食生活の実現に向けて-中野区における食品安全確保のための消費者・事業者・行政の具体的役割―」として、区長に答申した。

4 第2期中野区食品安全委員会答申の概要

 中野区の食品安全確保のための消費者・事業者・行政の役割を以下のようにまとめた。

(1)消費者の具体的役割

 毎日の食事は私達の健康を維持し心地よく生きるために必須のものであり、食品は安全・安心なものでなければならない。消費者には安全な食べ物を供給される権利があり、それを家庭で段取り良く合理的に調理し食べることで食文化が継承されていく。しかし、日本の食料自給率は下がり、多様化し複雑化した食品の安全性は新たな視点で、世界的規模で考えなければならなくなってきている。このような状況の中で消費者自身がまず実行できることは「自分の健康は自分で守る」という意識を持って食品に接することである。
 消費者は商品選択を通じて供給者に影響を及ぼし、安全性を欠く食品を市場から淘汰する力を本来持っている。消費者は、食品の安全性に関する知識や情報を収集し、基準や規制、表示などへの理解を深め、さらに消費者が互いに協力し合って、区や事業者に働きかけることが望まれる。

(2)事業者の具体的役割

 食品の安全確保の責任の多くは、食品を生産・製造し、販売し、供給する事業者側にある。したがって、事業者はその社会的役割を踏まえて、消費者の信頼を得るよう努力し、責任を果たす必要がある。
 事業者は行政の指導の下に基準を守るとともに、食品の安全性に対する自主管理体制を推進してきたが、消費者の食品に対する安心感は必ずしも満たされていない。事業者は安全性や品質のみならず環境問題にも配慮した自主管理を進めるとともに、消費者との間で適切な情報交換が必要である。
 また、消費者は、事業者側の苦情処理体制の整備を望んでいる。事業者が食品の供給者として責任を果たすためには、消費者対応窓口の設置と適切な対応が必要であり、さらに消費者からの要望を商品の改善や商店の経営に生かすことが望まれている。こうした対応は、消費者との相互理解を深めるため、区内事業者団体などにおいても取り組まれることが望ましい。

(3)行政の具体的役割

 区の食品安全確保対策は、食品の安全に対する消費者の疑問や不安を払拭するため、事業者の監視・指導を行うことを基本とし、より区民の立場に立って、その要望に積極的に応える努力をしていく使命がある。
 そのためには、監視・指導の充実に努めるとともに、消費者に食品の安全性に関する情報を十分かつ利用しやすい形で提供していくことが何よりも重要である。専門的な内容であってもわかりやすく伝える工夫を行って、適切なタイミングで情報が提供できる体制を整備していく必要がある。特に、O157、遺伝子組換え食品、内分泌かく乱化学物質などに見られるように、食生活の安全に影響を及ぼす新たな課題が次々生じており、これらにも適切な対応が必要である。
 また、事業者に対しても、専門知識を生かした相談や情報提供の機会をつくるほか、法に定められていない表示を求める消費者の要望を事業者に伝えることなどにも積極的に取組んでいく必要がある。
 消費者や事業者の自主的な取組みを促し、その意見を参考に活動を支援していくことも区の重要な役割である。区はこうした自主的活動に対する情報や資料、場の提供、指導者の養成などの援助を、これまでにも増して行い、消費者と事業者とが相互交流を通じて連携を深められるよう、積極的に両者の意見を取り入れ支援していくことが期待される。

5 第3期中野区食品安全委員会の課題

 全国に先駆けて設置した中野区の「食品安全委員会」条例では、区長の諮問に応じて調査審議するほか、区長に対して必要な事項について意見を述べることができると規定されている。第3期では区長からの諮問の形はとらず、委員会から区長へ意見を述べる形をとることにして審議を開始した。
 これを受け、委員会では安心できる食生活の実現にむけて「これまでの取り組みの成果の評価手法を提起する」、「中野区の消費者・事業者・行政は何をどのようにすべきか」及び「中野区のみならず、東京都や国レベルへの問題提起」という3つの課題を掲げて審議することとした。

1 遺伝子組換え食品をめぐる動き

 第2期答申以前では、平成9年12月までに、国の「安全評価指針」に適合した6作物20品目の遺伝子組換え食品が認可されていた。その後平成12年5月までの合計で、食品29品種、食品添加物6品目が認可されている。国際的な遺伝子組換え食品の表示を求める運動の影響もあって、この29食品に対して、平成13年4月からJAS法で表示義務が課されるとともに、新たな遺伝子組換え食品の輸入・製造も食品衛生法による安全性審査を義務付けられた。しかし、行政(国、都)はその説明責任(Accountability)を十分に行っていないので、情報公開を含めて十分な説明が望まれる。(資料1

2 内分泌かく乱化学物質・ダイオキシンをめぐる動き

 第2期答申で危惧された内分泌かく乱化学物質の健康影響およびダイオキシン類の母乳への混入や食品汚染による健康影響は、現在までに明らかな形では出現していないが、慢性の影響が危惧される状況は変わっていない。平成12年度環境白書によると、平成10年度に実施された環境ホルモン緊急全国一斉調査は、内分泌かく乱作用が疑われている67物質を中心に、大気、水等の環境媒体の濃度状況を全国2,430地点(検体)(延べ)で調査したもので、おそらく世界で類を見ない大規模調査であったと考えられる。この調査結果によると、ノニルフェノールなどが広い範囲で検出されたほか、野生生物のうち、食物連鎖で上位に位置するクジラ類や猛禽類において、PCBなどの蓄積が見られた。大気、水質、底質、土壌、水生生物、野生生物それぞれの調査結果は、表1のとおりである。工業用の洗剤の原料などに広く使われているノニルフェノールが魚類のメス化に強い影響を与えていることを環境省が確認した(平成13年8月)。

表1 環境ホルモンと疑われる物質の環境実態結果の概況(環境白書)

 測定検出物質数本調査の最大値が環境庁の過去調査最高値を超えていた物質数
 ()内の分母は過去の調査データのある物質数
 地点物質
大気198(地点)10(物質)9(物質)なし (0/4)
水質1,177(地点)61(物質)27(物質)7(物質)(7/45)
底質266(地点)61(物質)24(物質)8(物質)(8/44)
土壌101(地点)61(物質)26(物質)
水生生物189(地点)61(物質)22(物質)3(物質)(3/12)
野生生物
12種類
499(検体)25(物質)19(物質)1(物質)(1/12)

 一方、ダイオキシンについては、平成12年1月に施行された「ダイオキシン類特別措置法」により、環境基準、排出基準が定められ、総量規制が進められている。食品中から摂取されるダイオキシンについては、東京都の資料を添付する。(資料2
 日本の母乳中のダイオキシンの量は経時的に減少しており、対策の効果は徐々に認められているが、引き続き調査研究は必要であろう。

3 狂牛病(牛海綿状脳症)

 平成8年に英国で10人の新変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(variant Creutz-feldt-Jakob disease、以下「vCJD」という。)の調査の結果、狂牛病(Bovine Spongiform Encephalopathies、以下「BSE」という。)にかかった牛の肉を食べたことと関連がありそうだという報告があり、その後この二つの病気の病原体としてプリオンという特殊なたんぱく質が疑われている。
 日本でも、牛肉等から人への病原体の感染については未確認であるが、人への感染の可能性が指摘されているため、念のため、平成8年3月以降BSE発生防止対策が十分に実施されていないと考えられる英国産の牛肉及び加工品の輸入自粛を指導してきた。さらに、平成12年12月には、農林水産省が、BSEの我が国への侵入防止に万全を期すため、EU諸国等からの牛肉等の輸入の停止措置 (平成13年1月1日実施)を決定した。このことを受け、厚生労働省としても、この措置の周知を図るとともに、この措置に含まれない骨を原材料とする食品についても、緊急措置としてEU諸国等からの輸入自粛を指導した。このように、これまでは緊急的に行政指導による措置を行ってきたが、欧州におけるBSE急増が継続して問題が長期化しており、国民の食生活への不安が高まる中で、BSEの我が国への侵入防止策をより確実なものとすることが必要と判断し、農林水産省の家畜等に係る法的措置と並んで食品衛生法に基づく法的措置を行い、平成13年2月15日、牛肉、牛臓器及びこれらを原材料とする食肉製品について、EU諸国等からの輸入禁止措置をとった。日本でのvCJDの発生はまだ確認されていないが続けて監視する必要がある。(資料3

4 大規模食中毒

 平成8年のO157大腸菌による全国におよぶ大規模な食中毒発生に続いて、平成11年には、「いかの燻製」によるサルモネラ食中毒事件、平成12年には「雪印加工乳」によるブドウ球菌食中毒事件など、全国規模の事件が発生している。対策としてHACCPを普及させて予防活動を徹底させようという試みが行われているが、現在のところまだ明らかな効果は証明されていないようである。
 HACCP(Hazard Analysis and Critical Contorol Points)とは危害分析(HA)・重要管理点(CCP)と呼ばれる衛生管理の手法のことで、最終製品の検査によって安全性を保証しようとするのではなく、製造における重要な工程を連続的に管理することによって、ひとつひとつの製品の安全性を保証しようとする衛生管理の手法である。

5 国の「食生活指針の推進」

 平成22年を目指した国民健康づくり運動として「健康日本21」が平成12年度から開始された。これに対応して、これまで作成されてきた食生活指針を一歩進めて、当時の文部省、厚生省および農林水産省合同の提案による「食生活指針の推進について」が、
平成12年3月に閣議決定された。詳細の内容は次のホームページを参照のこと。
新規ウインドウで開きます。http://www.maff.go.jp/j/syokuiku/shishinn.html(外部サイト) )
 その内容は以下のとおりである。

 食生活指針
  • 食事を楽しみましょう。
  • 1日の食事のリズムから、健やかな生活リズムを。
  • 主食、主菜、副菜を基本に、食事のバランスを。
  • ごはんなどの穀類をしっかりと。 ☆野菜・果物、牛乳・乳製品、豆類、魚なども組み合わせて。
  • 食塩や脂肪は控えめに。 ☆適正体重を知り、日々の活動に見合った食事量を。
  • 食文化や地域の産物を活かし、ときには新しい料理も。
  • 調理や保存を上手にして無駄や廃棄を少なく。
  • 自分の食生活を見直してみましょう。

 食事内容のみでなく、食文化や環境への配慮を加えたすぐれた指針であり、今後の普及・活用が期待される。

6 中野区の取り組み

(1)食品取り扱い者講習会について

 食品取り扱い者講習会は、事業者を対象とした事業として昭和54年に始まり、「最近の食品衛生」をテーマとした専門家による講演を通して、年ごとに最新の情報を提供してきている。また、第2期答申後の平成11年からは消費者も受講対象に加え、新たな情報提供の場として活用している。

表2 食品取り扱い者講習会テ-マ及び参加人数

年度講演テ-マ参加人数
9食品衛生をめぐる最近の話題
 東京都食品衛生協会 佐瀬 文秀
1,753名
10最近の食品衛生
 東京都食品衛生協会 吉田 義夫
1,577名
11今、なぜHACCPか
日米HACCPフォーラム日本代表 徳山 文武
1,606名
12最近の食品衛生の話題から学ぶこと
東京都食品環境指導センター所長 大屋 喜重
1,555名

(2)保健衛生情報連絡会について

 腸管出血性大腸菌O157による食中毒事件が全国で発生してから、中野区では食中毒、感染症等の保健衛生について行政内部の連携、総合調整を図ることを目的として平成10年6月に腸管出血性大腸菌O157等対策情報連絡会(平成11年2月に開催した第2回の連絡会から保健衛生情報連絡会と名称を変更した)を発足させた。同連絡会は保健福祉部長を座長として保健福祉部、地域センター部、建設部、環境建築部及び教育委員会事務局の関係課長で構成し、年2回(夏、冬)開催している。平成10年6月から平成13年5月までの間に7回開催し、(ア) 健康危機管理体制、(イ) O157、サルモネラ等の食中毒対策、(ウ) インフルエンザ対策等についての情報を交換している。

(3)区民による食品の持込み検査について

 区民が食品について疑問や不安を感じて、それを調べてほしいとの要望に応えるために、平成12年4月から細菌(サルモネラ、大腸菌O157等)と添加物(合成保存料、合成着色料等)の検査を始めた。
 平成12年度の区民からの相談総件数は13件であったが、その中で検査を実施したのは、3件6検体だった。6検体の内訳は、食品の細菌検査2件、揚げた食品の化学(酸化)検査3件、水の化学(重金属)検査1件である。

 食品の安全確保は消費者にとって最も基本的な要求であり、消費者自ら、安全な食品を選択する力を身につけ食品への安心感を高めるために、その声を行政や事業者に反映させることが必要である。この目的に向かって消費者団体を中心に、消費者自身による取り組みが様々な形で行なわれている。一方、行政も、保健所、保健福祉センター・相談所、消費者センター、地域センターを中心に、食生活への啓発や、健康な生活を送るための指針となるような様々な講座や事業を実施している。安全な食品を提供する責任を有する事業者側の取り組みとしては、個々の事業者における様々な自発的、日常的取り組みに加え、食品衛生協会を中心に安全な食品を提供するための会員に対する啓発活動が様々な形で実施されている。これらの取り組みと共に、数値的評価は実施しづらい事項もあるが、現時点で可能な範囲でそれらの取り組みを評価することを試みた。なお、平成2年及び11年に実施された、一般区民および区政協力員を対象とした食品衛生に関する現状分析および意識の変化等の評価から、より複雑化、多様化してきている現在の食生活とその問題点を明らかにすることができた。

1 消費者

(1)消費者の具体的役割に関する現状分析と評価

 -消費者の食品衛生に関する意識の変化と現状分析-
 食品衛生に関する調査(平成2年2回分、平成11年)結果より、第1期・第2期食品安全委員会前後での、中野区民(区政協力員)の食品の安全に関する意識の変化と現状分析を行う。
 平成2年の調査は区政協力員と同時に一般区民に対しても実施したところ、両者には意識や意見・要望などに関して差がある項目があった。

(ア) 回答者の属性

 平成2年の一般区民は男女比、年齢構成とも均衡がとれていたが、区政協力員の属性は女性の比率が高く、年齢も高かった。
 平成11年は一般区民の調査はないが、区政協力員については平成11年は同2年に比較して男性の比率が上がった。また、平成2年では少なかった20歳代、30歳代の区民が増えたことにより、性別・年齢ともに若干ではあるがバランスあるものとなった。(図1、2)

(イ) 調査項目

 2回の調査に共通した項目は、ア 1週間のうちの外食回数、イ 食品を購入する場合の配慮、ウ 食品衛生について得たい情報、エ 食品衛生に関する情報の入手方法の4項目である。

図1 性別

図2 年齢

 平成11年の調査で新たに登場した項目は、ア 食品関係の事業者に望むこと、イ 食品関係事業者から情報提供して欲しいこと、ウ 食品安全確保について行政に望むこと、エ 食品衛生の普及啓発・学習事業について参加しやすい形態の4項目であった。調査項目には、第1回・第2回の食品安全委員会の提言で繰り返された「食品安全確保のために消費者・事業者・行政の相互理解と連携」の視点が生かされている。

(ウ) 1週間の外食回数

 朝食と夕食に関しては、平成2年、同11年とも外食しない人が多く、家庭での食生活の比重は依然として大きい。しかし、昼食の外食化の傾向が以前の調査と比べ高くなっている。このような状況は、おそらく回答者に男性の増加があっただけでなく、女性も外食が増えたことによって外食する割合が増えていると推測される。家庭での食生活と併せ、消費者個々人が「自分の健康は自分で守る」という自立した意識をもって食品に接することの重要度が増加している。(図3、4、5)

図3 朝食の外食回数(1週間)

図4 昼食の外食回数(1週間)

図5 夕食の外食回数(1週間)

(エ) 食品を購入する場合の配慮

 「新鮮さ」、「賞味期間・保持期間」の1位、2位は同じだが、平成11年の調査では3位が「購入する店」67%であり「食品添加物」を抜いている。食品事業者への注目度が上昇したと考えられる。
 消費者の具体的役割として、「自ら情報収集を行う、食品選択を通して事業者へ影響を与える」があるが、該当する回答の「賞味期間・保持期間」、「購入する店」、「産地・原産地」、「包装の状況や容器」の割合が上がってきて、望ましい成果が挙がっている。(図6)

図6 食品を購入する場合の配慮

(オ) 食品衛生について得たい情報(3つ以内で選択)

ア.平成2年の調査では「食品に使われている添加物」が最も多かったが、平成11年の調査では「食品に使われている添加物」とほぼ同率で「輸入食品の安全性」、「食品の保存方法や期限」があり、新たに「遺伝子組換え食品」がほぼ同率で登場している。なお、平成2年では選択項目に挙がってなく、平成11年調査で初めて加えられた項目(「遺伝子組換え食品」、「環境ホルモン」、「ダイオキシン」、「食品とアレルギー」、「抗菌加工製品」など)があるので、単純に比較できないが、これは重複選択が可であったので、なんとか比較して差し支えないと考える。(図7)

図7 食品衛生について得たい知識

イ.順位が繰り上がったのは「輸入食品の安全性」で、昨今の輸入食品の増加に伴い関心が高まり、平成2年よりも1位の差が少なくなっている。

ウ.新たな選択肢の「環境ホルモン」、「ダイオキシン」の回答率が20%を超え、食品の安全に関する新しい課題が次々登場する状況下で、消費者にとって知りたい情報の種類が増加し、多様化、分散化した。そのためか、3つ以内の選択回答の方法は同じだが、平成11年の調査は平成2年の調査に比べて「食品添加物」への集中傾向が低下した。

エ.「家庭内での食中毒の予防」17%、「食品と生活習慣病がん予防」15%、「食品とアレルギー」12%であり、消費者の自己判断と自己責任のための知識も得たいと回答していた。

(カ) 食品衛生に関する情報の入手方法

 入手方法の上位は「テレビ・ラジオ」「新聞」「雑誌」で、調査年による順位に変化はなく、マスコミ情報に依存している傾向がある。ついで、「友人・知人」の口コミ情報があり、「区の刊行物・パンフレット」29%の5位であった。また「お店(食品関係事業者)」20%、「地域の勉強会」15%が新たな選択肢として登場し、一定の広がりをもった情報の入手方法があったと評価される。
 回答者に若い層があるためか「学校」4%が登場し、新しい情報の入手方法として「インターネット」4%が登場し、「区や都の講習会」7%であった。情報の入手先としてマスコミ情報が多く、マスコミ情報の広範囲におよぶ伝達力の強さが確認できるが、情報提供側のより一層の正確で分かり易い情報提供が望まれる。(図8)

(キ) 平成11年度調査での新たな設問項目

ア.「食品関係の事業者に望むこと」について
 「鮮度の良い食品の提供」75%、「清潔で汚染の無い食品の提供」71%、「自然食・無農薬食品等、健康により配慮した食品の提供」57%であった。

イ.「食品関係事業者から情報提供して欲しいこと」について
 「安全確保の取り組みの情報」75%、「自然食・無農薬食品等の情報」62%、「原産地での生産の方法」54%、「調理方法」41%で、食品関係事業者が安全確保の情報の提供先として期待されていた。

ウ.「食品安全確保について行政に望むこと」について
 「添加物・農薬などに対するより厳しい基準の設定」75%、「輸入食品のチェック体制の強化」59%、「環境ホルモンなどの化学物質の早急な調査研究の推進」56%、「遺伝子組換えなどの表示義務づけの強化」54%であり、国や都のレベルでの検討が必要な事項が上位であった。

図8 情報の入手方法

 区に対しては「食品依頼検査受付の窓口」19%、「食品安全に関する情報の提供」10%、「普及啓発・学習事業の実施」5%であった。

エ.「食品衛生の普及啓発・学習事業について参加しやすい形態」について
 「施設見学」74%、「講演会・シンポジウム」63%、「製造・調理の体験」50%、「祭りなどにおける展示会」45%であった。 調査での消費者の現状認識に、食料の海外への依存度の上昇や多様化・複雑化に対応し、食品の安全性は区レベルから都や国そして世界的レベルへの視点の拡大が見られた。また、消費者は身近な区や事業者から食品の安全性に関する知識や情報を収集し、基準や規制、表示などへの理解を深め、さらに区内で消費者が互いに協力し合っている実態が見出される。

(2)区内消費者・消費者団体による活動(最近5年間)

(ア) 活動の内容

 区民・一般消費者に向けた啓発事業や活動としては、以下のものがある。

ア.「いのちとくらしをまもる中野区消費生活展」は、昭和57年にスタートし、毎年開催されている。区民と行政が共同して啓発活動を行う最も重要な事業で、すでに平成12年度までに19回開催された。

イ.「中野まつり」は毎年10月に行われ、消費者団体も多数出展している。「安全食品展」のコーナーも設けられて、広く区民に対して安全な食品や食生活を呼びかけている。

ウ.「中野区消費者団体連絡会」には現在12団体が加盟し、継続的な学習・啓発活動に取り組むとともに、個々の問題意識をネットワークのまとまりで全体に広げながら、行政(区、都、国)への働きかけもしている。

エ.「よりよい学校給食にする会」は、平成9年に起った学校給食民間委託検討の動きをきっかけに、地域の父母、消費者団体、教職員、栄養士、調理員、区職員などの有志があつまって、発足した。子どもたちにとって、どのような給食が望ましいかを考え合いながら、広い視点で「食と教育」「食文化」の問題に取り組み、区との情報交換や意見交換をしている。

オ.「保健所との協力」については、消費者団体連絡会が主体となって行っているが、ともに区民への啓発活動や情報交換をしている。

カ.「区内各消費者団体」が、それぞれ会員および区民を対象に様々な活動を展開している。生活協同組合に加入している区民は平成12年に約26,000世帯で、区内全世帯の15%にあたる(但し、二つ以上の生協への重複加入もある)。自立した消費者として食品の問題に高い関心をもち、また積極的に活動している区民も多い。(イ) 最近5ヵ年の実績と評価

ア. いのちとくらしをまもる中野区消費生活展

 (サブタイトル)(参加団体)(来場者)
平成8年11月8・9日 「自然をうばう妖怪退治」16団体534人
9年11月8・9日 「わたしたちの子どもや孫は
 元気に育っていますか!」
18団体400人
10年4月3~5日 「夢ある未来のためにめざせ!
 中野発みどりの地球行」
19団体550人
11年5月15・16日 「身近にあふれる
 環境ホルモン」
19団体475人
12年11月11・12日 「広がれ!エコライフ」18団体212人

 毎年16~19団体が参加して実行委員会(平成10年までは運営委員会)をつくり、行っている。参加団体の数にはあまり変化がなく、もっと参加数が増えることが、望まれる。全体としては、1~2団体の入れ替わりは見られるものの、ほぼ定着している。消費者を取り巻く問題はますます多様化し、深刻になっているにもかかわらず、来場者は年々減少している。その原因としては、(ア) 展示を中心とした「生活展」の形態が区民を惹きつけなくなっている。(イ) 平成10年以降、消費者センターが移転し、区民に周知されていない。(ウ) 日常生活が忙しく、又は目先の事柄にのみ目が向き、消費者問題を考える余裕がなくなっている、などが考えられる。
 新たな参加者をふやすために、平成13年度からは、子どもたちも参加しやすい
 ような、「まつり」要素を取り入れた形で企画が進められている。

イ.中野まつり・安全食品展
 1980年代に活発な活動を繰り広げてきた消費者団体は、1990年頃を頂点に次第に担い手の減少と高齢化がすすみ、活動を広げられない現状にある。安全食品展の参加団体も、毎年1団体づつ減ってきている。その様な中でも生活協同組合(生協)は、広域的な組織ではあるが、地域の活動の一環として年1回の中野まつりには各生協とも積極的に参加している。(表3)

表3 安全食品展出展数

年度安全食品展出展数(団体)消費生活共同組合出展数(団体)
8103
993
1083
1173
1263

ウ.中野区消費者団体連絡会

  (参加者)
平成8年6月 (講)「遺伝子組換え農産物」25人
7月 横浜港検疫所 見学25人
9月 (講)「アルツハイマー病の原因をさぐる!」50人
9年3月 (講)「暮らしの中の電磁波」50人
11月 (講)「遺伝子組換え食品」30人
11月 (講)「食と環境問題」30人
10年4月 (講)「ダイオキシンと環境ホルモン」40人
7月 国産大豆の豆ふ作り講習会(消費者センター主催)15人
9月 国産大豆の豆ふ作り講習会15人
11年7月 夏休み親子うどん作り教室(消費者センター主催)30人
12月 野菜料理講習会--冬野菜を食べよう--10人
12年5月 (講)「食品の安全はどう変わったのか
 -添加物から遺伝子組換えまで-」
30人
7月 夏休み親子豆ふ作り教室 2回 (消費者センタ-主催)30人

 毎年広く区民に呼びかけて、学習会や講習会を行っている。平成8~9年の約50名を頂点に参加者は減少しているが、食品の安全に関する区民の関心は常に高いことがうかがえる。月曜から金曜の昼間の開催では人が集まりにくいという現状もあるので、人の集まりやすい日時を考慮することも必要である。
 一方で、平成10年以降消費者センターの実習室が利用できるようになり、ここを活用しての講習会を回数多く行っている。特に、夏休みの親子教室は好評で、毎回募集人数を超える申し込みがあり、1階のホールも使ったり、2回企画にするなど工夫している。
 また、消費者センターに登録しているいくつかの消費者団体、グループも実習室を使った活動を行っている。(表4)

表4 3年間の実習室利用者数

年度午前(人)午後(人)夜間(人)合計(人)
101,0041,2073032,514
111,1491,4862682,903
121,1891,1031742,466

エ.よりよい学校給食にする会
 平成9年7月、学校給食民間委託検討の動きをきっかけに、地域の父母、消費者団体、教職員、栄養士、調理員、区職員などの有志が集まり、会を発足したのが始まりである。

  (参加者)
平成9年9月 よりよい学校給食にするシンポジウム200人
10~11月 区内14箇所で給食懇談会 
10年3月 区議会への陳情
 「学校給食のアレルギー対策について」
 「学校給食に安全な食材を取り入れることについて」
 
12月 給食をどうするの?民間委託を考えるシンポジウム250人
11年8月 よりよい学校給食をつくる2周年のつどい50人
12年8月 親子クッキング「親子で作ろう給食メニュー」第1回15人
13年1月 親子クッキング「親子で作ろう給食メニュー」第2回15人

 発足以来一貫して区民が、消費者、教職員、栄養士、調理員、区職員と一緒に広いネットワークで活動してきた。給食調理の民間委託についての検討と学習を重ねながら、現在の食問題に取り組み、中野区のこれまでの給食が、健康面でも食文化としてもいかに優れていたかを見直し、広める活動も行っている。給食調理員を講師にしての親子クッキングは毎回内容が充実して好評だが、開催時期や広報の仕方を工夫する必要がある。
 しかし、最も重大な問題は、現在育ち盛りの子供をもつ年代、学校給食を食べている年代の親たちに関心が薄く、催しへの参加も少ないことである。

オ.保健所との協力

平成8年3月 ポスター作成「家庭でできる残留農薬を減らす調理法」
9年3月 ポスター作成「見直そうおふくろの味-昔ながらの食習慣-」
9年2月 シンポジウム「地域で考える食の安全」
8月 くらしの安全展
10年3月 ポスター作成「旬の野菜をたべよう」
10年2月 シンポジウム「現代食糧事情」
8月 くらしの安全展
11月 シンポジウム「食品安全と健康づくり」
11年3月 ポスター作成「私たちの生活から環境ホルモンはさけられます」
8月 くらしの安全展
11月 シンポジウム「みんなで考えよう遺伝子組換え食品」
12年8月 くらしの安全展
10月 シンポジウム「食品の表示と安全性の判断」

 保健所の仕事が区民にとってなかなか見えにくい中で、消費者団体連絡会と保健所が、常に話し合いと情報交換の機会をもって来られたのは貴重なことである。また、保健所主催のくらしの安全展やシンポジウムでは、消費者・事業者・行政が一緒に顔をあわせ、話をする場として有意義である。この協力関係は今後もさらに良い形で発展・継続させて行きたい。

カ.区内各消費者団体
 区内消費者団体には、全都的あるいは全国的な組織をもつ大きな団体から、数人で構成する小グループまでいろいろあり、他団体とのネットワークや独自での活動をしている。
 例えば、生活協同組合では、日常活動の中で「食」に関する学習会、講演会、産地、メーカーの見学会、料理講習会など、様々な形で学び合い、行政への働きかけもしてきた。
 また、放射能測定室連絡会は、チェルノブイリ原発事故(昭和61年)直後、日本にも降り注いだ放射能の食べ物への影響を危惧する市民の運動によって、都内で唯一、区に放射能測定機が設置された時にできた団体である。放射能測定室は区民の要望に応えて食品の放射能測定を続けてきたが、機械の耐用年数をすぎたことと、すでに、一定の役割を終えたことで、平成13年3月をもって廃止となり、同連絡会も解散となった。
 その他、安全で良質な食材をグループで共同購入し、「食」問題に取り組んでいるところや、合成洗剤ではなく石けんの利用普及を中心に、「環境」問題と合わせて取り組んでいる団体など、それぞれ地道な活動を続けてきている。

(3)ボランティアグループによる高齢者給食サービス

 昭和56年度に、行政と区民との協働による具体的事業として発足し、地域センターや高齢者会館を拠点として、高齢者および障害者を対象に、20年間にわたり実施され続けてきた、ボランティアグループによる高齢者給食サービスについて紹介する。
 まず、「高齢者配食サービスの利用者数」と「高齢者配食サービスを行っているボランティアグループ」の内訳について、平成9~11年度の実績を表5および表6に示す。

表5 ボランティアグループによる高齢者配食サービス利用者数

年度 利用者数(名)指数 配食数(食)指数
9 415100 14,717100
10 471113.5 15,020102.1
11 580139.8 15,828107.5

表6 高齢者配食サービスを行っているボランティアグループ一覧

グループNo 活動日調理場所ボランティア会員数(名)
9年度10年度11年度
1水曜日野方地域センター252525
2水曜日大和地域センター151512
3土曜日大和地域センター111111
4水曜日鷺宮地域センター888
5火曜日個人宅66--
6水曜日昭和地域センター312323
7木曜日障害者福祉会館171717
8水曜日上高田地域センター1515--
9火曜日特別養護老人ホーム77--
10水曜日鍋横地域センター66--
11木曜日南中野地域センター353535
12木曜日東部地域センター414136
13水曜日東部地域センター111111
14火曜日鍋横地域センター101010
15木曜日上鷺宮地域センター888
16木曜日しんやまの家141415
17木曜日桃園地域センター383838
18火曜日白鷺高齢者会館1010--
19水曜日弥生地域センター404040
20水曜日個人宅77--
21第1、3金曜日江古田地域センター151512
ボランティア会員数合計370362301

注.サービス対象者は高齢者及び障害者

 9年度および10年度には各地域の21グループにより、延べ週20回及び月2回の配食サービスが提供され、11年度には15グループにより、延べ週14回及び月2回提供されている。
 ボランティア会員数は、9年度の370名を100とすると、10年度362名(97.8)、11年度301名(81.3)と減少傾向にあるが、サービスを受ける側の利用者数をみると、9年度415名を100として、10年度471名(113.5)、11年度580名(139.8)と増加傾向にある。このことから、配食サービスが次第に効率的に行われて来ている。
 なお、表6において高齢者会館や特別養護老人ホーム等でのボランティアによるサービスが行われなくなったのは、高齢者福祉施策の一環として、高齢者在宅サービスセンターによる高齢者等配食サービス事業が充実してきたことによるものである。参考までに、高齢者在宅サービスセンターによる高齢者等配食サービス事業の推移を示す。(表7)

表7 高齢者在宅サービスセンターによる高齢者等配食サービス状況

年度 利用者数(名)指数 配食数(食)指数
9 395100 24,809100
10 341 86.3 26,122105.3
11 375 94.9 27,758111.9

 一方、ボランティアグループによる会食サービス(食事会)の9~11年度実績を表8に示す。会食サービスについては、9年度10グループで実施され、会員数298名を100とすると、10年度は9グループで327名(109.3)、11年度は9グループで320名(107.3)とやや増加傾向にある。

 表8 ボランティアグループによる高齢者会食サービス一覧

No.活動日対象者調理場所ボランティア会員数(名)
9年度10年度11年度
1毎月第2月曜日80歳以上で一人暮らし東山高齢者会館10----
2毎月3回火曜日70歳以上で一人暮らし新井地域センター282829
3毎月第4月曜日65歳以上で一人暮らし江古田地域センタ6810
4毎月第4火曜日70歳以上上鷺宮地域センター141414
5毎月第1・3土曜日高齢者東山高齢者会館15----
6毎月第3金曜日70歳以上東中野いこいの家111717
7年6回高齢者しんやまの家808080
8毎月第4火曜日70歳以上の高齢者や障害者野方地域センター121212
9毎月8日高齢者・障害者上高田地域センター525252
10年4回(不定期)高齢者鍋横地域センター707060
11年4回地域の高齢者沼袋高齢者会館--4646
ボランティア会員数合計
(平成9年度を100とした指数)
298
(100)
327
(109.3)
320
(107.3)

 高齢になると、ともすれば食事の支度がおっくうになったり、障害のため、買い物や料理がしづらくなったりすることが多く、食事が偏りがちであるが、このような配食・会食サービスを受けることによって、食生活改善の一助とすることができるため、これらの活動の意義は大きい。
 また、ボランティア側にとっても、これらの活動から食の安全や、より良い食生活の有り方等について学び取ることも多く、さらには区民相互及び区民・行政・関係業者等による協働の取り組みを通して、地域コミュニティー連携強化にも寄与していると言えよう。

(4)学校給食関連の動き

 中野区では、学校教育活動の一環としての学校給食にも先駆的な施策を実施し、区立小中学校43校全校に栄養士を配置しているが、学校栄養士や養護教諭による、児童・生徒への適切な食事の摂取を通じた健康づくりのための指導に加えて、毎月発行される給食だより等は、児童・生徒への指導的情報提供に加え、子育て中の家庭への食生活改善への支援啓発的役割を果たしている。また、PTAによる給食試食会、養護教諭や栄養士を招いての健康と食事に関する学習会等も行われ、子育て中の保護者は学校給食を介して、食品安全やより良い食生活について学習する機会が多いと言える。
 一方、中野区立小学校PTA連合会、中野区立中学校PTA連合会は、それぞれ、中野区学校給食運営委員会へ委員を派遣し、学校給食のより良き運営のため、意見を具申している。中野区立小学校PTA連合会代表者会、中野区立中学校PTA連合会会長会においても学校給食に関する問題について学習し議論を重ね、教育委員会部課長との懇談会等を通して、行政側へ教育環境改善の一環としての要望を提出し、話し合いを重ねてきた。その結果、より良い施策へと発展をもたらしたり、施策の転換を示唆する等の実績が挙っている。しかし、一部の保護者の関心が低いことが問題である。

(5)消費者の取り組みの評価

 消費者はこの食品安全委員会の構成員として、また中野区の食品安全活動の担い手として最も重要な存在である。それゆえに消費者活動が質量共に向上することが望まれる。他自治体に比肩して中野区民は勝るとも劣らない活動をしていると評価できるが、中野区民の経年変化を見る限りでは満足できる状況ではない。第1期・第2期・第3期食品安全委員会を通して、その活動の経過と盛り上がりを検討すると「区内消費者・消費者団体による活動(最近5年間)」の経過を見る限りでは人数、及び集会・展示の回数と展示数の増加傾向が見られない。また、「ボランティアグループの高齢者給食サービス」と「学校給食関連の動き」については活動の向上が見られるが、大幅な増加とは認められない。消費者団体の活動状況は堅実な歩みが見られるもののメンバーの高齢化が指摘されるようになっている。このように消費者の取り組みについて楽観できない状況である。後述するが、行政は消費者及び消費者団体の活動に対して支援と情報提供を有効適切に行わなければならない。

2 事業者

(1)食品衛生協会の会員数の推移

 食品業界をめぐる環境が大きく変化している中、食中毒事故は依然として発生しており、平成12年雪印乳業による黄色ブドウ球菌の大規模食中毒事故以来、食品の異物混入等の苦情も急激に増加し、大きな社会問題にもなっている。
 食品衛生協会では、食品による事故を未然に防ぐため、食品関係事業者の会員に対し、食品衛生の自主管理を推進するための各種の活動を展開しているが、この普及啓発のためには会員の組織率の向上が最も重要な課題となっており、東京都全般でも、東京都食品衛生協会には、平成12年度末で63,121名の会員が登録されているが、組織率も2~3割と予測され伸び悩んでおり、ここ数年の間減少を続けている。
 一方、中野区内にて食品を取り扱う事業者により組織されている中野および中野北食品衛生協会でも、平成12年度末で1,073名の事業者が会員として登録されているが組織率としては、2割程度と伸び悩んでおり、東京都全般と同様に減少を続けている。(表9)

表9 食品衛生協会の会員数の推移

年度中野中野北中野区合計東京都
9686名605名1,291名70,418名
10595名527名1,122名68,540名
11593名510名1,103名65,756名
12566名507名1,073名63,121名

 会員には、東京都全般と同様に中野区の両食品衛生協会においても、小規模の事業者が大部分を占めており、大規模店舗の進出さらに長引く不況の影響により、廃業もしくは食品以外の事業に転業するなど退会者数が入会者数を上回る現状である。中野区内には現在会員として登録されている数の5倍程度の事業者が営業の許可を受けていると考えられるため、今後、中野区の協力を得ながら会員の組織率の向上に努め食品衛生の普及向上を図って行かなければならない。

(2)食品衛生自治指導員活動状況

 中野及び中野北食品衛生協会には、東京都食品衛生協会の「食品衛生自治指導員設置要綱」に基づき、食品衛生に関する教育を終了した135名が食品衛生自治指導員として委嘱を受け食品による事故発生防止を図ることを目的に、(ア) 食品衛生の自主管理の推進のための会員施設への巡回衛生指導、(イ) 一般消費者へ衛生知識の普及のための街頭相談、(ウ) 各種講習会の開催及び協力、(エ) 情報の伝達などの活動を実施している。
 活動の内容としては、自治指導員による会員施設への巡回衛生指導が中心的な活動となっており、現在、東京都内の各食品衛生協会において会員施設への巡回指導が実施されているが、中野及び中野北食品衛生協会でも、自主的に食品衛生自治指導員で巡回衛生指導を実施している。実施の際は、事前に巡回衛生指導の方法、要領等を保健所より講習を受け、食材・調理器具などスタンプスプレット使用による現場細菌検査をメインとして行っているが、数値により検査結果が明確に判定でき、施設の衛生状態が判明できるものとして成果を上げている。この検査成積の判定が「不良」であったものについては、中野区保健所より食品衛生自治指導員に検査結果を通知し、各指導員より実施した施設の事業者に検査の結果を伝え、十分な洗浄及び殺菌消毒をして、取り扱いに細心の注意をするよう指導している。(表10、11)
 また、食品衛生自主管理点検表については、各会員施設の自主的衛生管理の基本となるものとして配布されているが、従来の点検表から平成12年度よりHACCPに基づく点検表に変わり、毎日の点検及びその記録をすることになっており、この点検記録についても食品衛生自治指導員が確認及び指導に努めている。

表10 自治指導員数の推移

年度中野中野北中野区合計東京都
1068名65名133名8,200名
1167名65名132名8,200名
1269名66名135名7,200名

(ア) 活動内容

 食品衛生自治指導員による会員(事業者)の施設および食品、器具等の取り扱いに対する巡回衛生指導
ア.各業種組合毎に会員店舗のまな板等調理器具などの細菌検査の実施
イ.各店舗毎に設置が義務づけられている食品衛生責任者氏名の掲示確認及び営業許可期限の確認
ウ.身の回りの衛生として、健康診断・検便等の状況を確認、指導
エ.調理場の安全及び環境の確認として、清掃状況、手洗い設備、害虫駆除などの状況を点検
オ.各会員が自主的に点検し、記録をしている食品衛生自主管理点検表の確認及び指導

表11 調理器具等の細菌検査実施状況

年度実施件数不良件数
1041510
114316
1236323

(イ) 食品衛生街頭相談の開催

 食品の安全確保に向けて消費者に対する食品衛生の普及啓発のため「くらしの安全展」にてコーナーを設け、食品衛生街頭相談所として開催している。
 この相談所では、腸炎ビブリオ菌やサルモネラ菌など各種の食中毒に関する内容のパネルや菌の模型を展示し、消費者に食中毒の発生原因や予防などを呼びかけるとともにその相談にも応じているが、消費者がテレビ、新聞等により情報として得ている中でどの程度理解しているか、また、知識として取り入れているかを見るため、最近食中毒の発生件数の多い菌についての設問を中心に、食中毒予防の三原則や食品衛生協会という組織についての設問をおりまぜ、食品衛生クイズを実施した。
 回答状況としては、全回答者297名の内正解ナシ1名(0.3%)、1問正解5名(1.7%)、2問正解38名(12.8%)、3問正解61名(20.6%)、4問正解96名(32.3%)、全問正解96名(32.3%)という状況であったが、クイズ用紙を回収するだけでなく、回答者一人づつに正解・不正解をチェックし不正解の設問には正解と同時に指導するという形をとった。(表12)
表12 食品衛生クイズ及び回答状況

質問内容正解不正解
問1 「食品衛生協会」はどういう団体かご存知ですか。正しいのは?
 1. 食品の安全を自主的に守る活動をしている食品営業者の団体
 2. 食品を取扱う店舗・工場などに営業許可を出している団体
249
(83.8%)
48
問2 「食中毒予防の三原則」で、殺す(加熱・殺菌)・つけない(衛生的な処理) もうひとつは?
 1.ふやさない
 2.手洗い
 3.うがい
170
(57.2%)
127
問3 卵のサルモネラ菌による食中毒を防ぐにはどちらが効果的?
 1.かたくなるまで充分に加熱する
 2.買ってきたら卵を洗う
215
(72.7%)
82
問4 魚介類の腸炎ビブリオ菌による食中毒を防ぐにはどちらが効果的?
 1.塩水でよく洗う
 2.真水でよく洗う
206
(69.3%)
91
問5 病原性大腸菌を死滅させるために正しいのは?
 1.-18℃で1日以上冷凍する
 2.食品の中心が75℃以上で加熱する
271
(91.2%)
26

正解 : 問1-1、問2-1、問3-1、問4-2、問5-2

(3)食品衛生実務講習会

 食品衛生責任者は、各営業施設ごとに1名を定めて設置することが義務づけられている。この食品衛生責任者を対象に毎年中野ゼロホールにて開催されている講習会には、食品衛生自治指導員が中心となって各会員に対し受講を呼びかけ、講習会開催時も協力しているが、東京都内の他の地域ではみられない多数の受講者を得ている。
 このほか、食品衛生自治指導員講習会を定期的に開催し、指導員の資質の向上に努めている。

(4)健康教室の開催

 食品関係従事者が、日常の食品の取扱業務を行う上で、本人の健康保持及び増進は重要なことであるため、会員に対し健康管理の必要性から毎年健康教室を開催し、食品衛生自治指導員が受講の呼びかけを行っている。巡回指導活動の項目には、身の回りの衛生として健康診断の受診についての指導項目があるため、未受診の場合は、中野区が行っている区民健診等を受診するよう強く呼びかけていかなければならない。

(5)衛生器材及び情報紙の配布

 会員である事業者に対し、毎年衛生器材の配布をすると共に、食品衛生に関する情報の伝達として「食品衛生責任者お知らせ版」を配布しているが、衛生器材については、各種の器材も多数あるため、今後最も有効な器材を種々検討して行く必要もあると考えられる。

(6)苦情処理状況

 大阪堺のO157食中毒事故は、事故後、消費者の生食食品の買い控えが起き、売上げが激減した。事件の被害の大きさとしては雪印事件と比べて大きかったが、消費者が加熱して食べる防衛策に出たことと、まもなく沈静化したため、総苦情件数は微増であった。その後に発生した和歌山毒カレー事件では異味異臭、包装異常等の苦情が多発したが、不安から来る申し出が多く、実害のないケースがほとんどで、件数は微増であった。
 平成12年は雪印の食中毒事故発生後、雪印のトップ及び会社としての対応が消費者の非難を呼び、続いて他のメーカーでも異物混入を中心に苦情が多発し、その後年末まで長期に及んだ。買い控え等の食品全般の売上げに対する影響はなかったが、今まで苦情を言わなかった人も言うようになったこと、消費者が開封時によく注意するようになり、喫食前に発見するケースが多かったため総苦情件数は約2倍と激増したが、その割に有症苦情は少なく、平年並みであった。(表13)
 この資料は、一スーパーマーケットのものであり、全体を示すものではないが今後区レベルでこの種の資料を持つことが望まれる。

表13 一都三県にまたがる某スーパーマーケットにおける苦情状況

年度食中毒苦情・相談
(異物・異味異臭等)
有症苦情(再掲)
(嘔吐・下痢・ジンマシン等)
店舗数備考
80711559大阪堺O157食中毒
90932763 
1001012866和歌山毒カレー事件
1111103667 
1202002869雪印食中毒

注.平成12年を除くと食品苦情・相談は年間約100件前後であった

(7)事業者の取り組みの評価

 「食品衛生協会の会員数」の会員組織率は20%に留まり、この4年間では減少傾向にあり、食品衛生活動の実効を期待するには十分な会員組織率とはいえない。また、「自治指導員活動状況」は巡回指導、食品衛生街頭相談、食品衛生実務講習会、健康教室及び衛生器材・情報紙の配布などがその内容であるが、どれも無難に実施されているものであり評価はできるが、活動力を維持し、かつ高めるために、適宜、指導や監督がなされなければならない。しかし、特に個人経営の事業者には行政依存の体質があり、行政の方を向いて消費者を敬遠ないし軽視するおそれがあるので、行政の指導・監督のあり方には工夫と改善が必要である。

3 行政

(1)健康づくり協力店の取り組み

 区民の外食利用の増加に伴い、栄養成分への関心や情報提供へのニーズが高まってきている。その様な中で、区民一人ひとりが、健康で生き生きした生活を送れるよう、適正な食品選びや献立の選択ができる環境を作るために、(ア) メニューに栄養成分を表示する店舗、(イ) 食を通じた健康づくりに関連するポスター・栄養情報を掲示する店舗を増やすための普及啓発活動を、平成元年から保健所が行っている。
 当初は食品衛生講習会と地域センターでパンフレット等を配布し普及啓発を中心に実施したが、次第に個別飲食店にも広め、平成9年から区内各飲食業等の組合と連携を図りつつ展開している。なお、平成9年は豆腐商工組合(63店舗)、平成10年は麺類協同組合(118店舗)、平成11年は鮨商組合(95店舗)に協力をお願いしている。また、平成12年度から、川島通り商店街にある店舗の協力を得て商店街活動として栄養表示あるいは栄養・健康情報の提供等に努めてもらうよう取り組んでいる。健康づくり協力店の店舗数は、暫時増加してきており、消費者・事業者・行政の連携の場、情報提供の場として機能している。しかし、近年、健康づくり協力店の増加が頭打ちとなっている。(表14)

表14 健康づくり協力店の店舗数推移

年度新規店舗数累計各年度営業許可数協力店累計数/許可数(%)
8年度以前996,6130.14
969786,5391.2
101201986,5413.0
11952936,5674.5
12113046,7504.5

 これは既に健康づくり協力店に協力している店舗に対するフォロー活動を、同時に行っているため、新たな健康づくり協力店に対する普及啓発が若干減少していることが、健康づくり協力店が微増にとどまっている要因と考えられる。また、中野区内の営業許可数(食品衛生法関係と食品製造業等取締条例関係の合計6750件、平成13年3月31日現在)と比較すると、健康づくり協力店の店舗数は明らかに少ない。健康づくり協力店増加のために平成12年度から川島通り商店街への働きかけなど行っているが、さらに、健康づくり協力店増加のための工夫が必要と考える。
 また、区民の健康づくり協力店に対する関心は、飲食店や商店街を利用する区民の声から判断すると、それほど高まっている状況にあるとは言えない。そのため、区民の健康づくり協力店への関心を高めるための情報提供やPR活動も必要である。

(2)食中毒発生防止への取り組み及び窓口相談・苦情の対応

(ア) 食中毒発生傾向と防止ヘの取り組み

 中野区内における届出に基づく食中毒発生状況は、平成12年度の発生はなかったが、それ以前の4年間では年間1~2件の割合で発生している。過去5年間に区内で発生した6件の食中毒事件の内容を見ると、5件が7月と8月の2ヶ月間に集中しており、4件が腸炎ビブリオによる食中毒である。(表15)

表15 中野区における食中毒発生件数、窓口での相談及び苦情件数

年度食中毒発生件数苦情・相談件数有症苦情件数(再掲)
82346
91292
10111619
1127321
1209916

 区保健所では毎年、食中毒の多発時期である夏季に食品衛生夏季対策事業として、食品取扱事業者に対し、食中毒防止に向けた監視指導を実施するとともに、家庭での食中毒発生の届出は中野区内では今までに例がないとはいえ、今後は家庭内の食中毒発生状況の把握と防止の啓発にも努めなければならない。なお、生食用鮮魚類による食中毒など日本の食文化と密接な係りを持つ食中毒については、取扱業者や消費者に対して、4℃以下の温度管理の徹底や、冷蔵保存下から消費まで2時間以内にすることなど、より具体的な指導と啓発に努めていく必要がある。
 また、食中毒に対しては、「細菌を付けない、増やさない、やっつける(殺す)」という予防三原則を徹底する。そのため、行政としてのきめ細かな監視指導はもちろんだが、事業者・消費者個々の自主管理の徹底が基本といえる。事業者の自主管理の向上や自治指導員活動の活性化のため、さらに行政からのサポートと連携を図っていくことが重要である。
(イ) 窓口相談・苦情の対応

 腸管出血性大腸菌O157の集団発生や和歌山毒カレー事件の発生をきっかけに、消費者の食の安全性全般に対する不安が高まり、食品の異味・異臭をはじめ、食品の安全性に関するさまざまな相談が増加してきている。さらに、平成12年に発生した乳製品による食中毒事件とその後の異物混入事件の続発を契機に、より複雑で解決困難な相談も増えている。保健所では食品総合相談窓口を設け、区民からの食品の安全性に係る相談対応を行っているが、このように食の安全性を脅かす大規模な事件が連続的に発生し、マスコミ情報などから消費者の不安心理が増幅させられ、相談内容も複雑化したために、対応に追われたケースも目立った。このため、消費者の相談に真摯に対応することは当然だが、今後消費者の不安解消のためには、各種機関や団体との連携協力を図り、さまざまな事例に関する情報を収集し、区民への積極的な情報提供に努めるとともに、普及啓発にあたっていく必要がある。(3)区民への情報提供の取り組み (ア) 中野区報による情報提供

 年に2回、食中毒や食品の表示制度などをテーマにして情報提供を行っている。区報は、年間の掲載枠を定め、その中での情報提供となっているため、リアルタイムな情報発信がしにくい面がある。しかし、新聞折り込みにより区内のほぼ全世帯に直接行き渡っていること、また、区民の多くに区の情報源として認知されていることからも、区民への情報提供の手段としては最もポピュラーであり、依然として情報提供の柱であると考える。

(イ) シティテレビによる情報提供

 平成10年よりシティテレビで「中野区からのお知らせ」を、平成11年より「中野区インフォメーション」及び中野区の広報番組「わがまちなかの」を3分間番組として1日に3~5回放映しているが、それらの番組を通して「くらしの安全展」や食中毒、栄養成分表示等の情報提供を行っている。(表16、17、18)

表16 「中野区からのお知らせ」の放映状況

年度放映期間放映回数タイトル
107月27日~8月 3日1日5回くらしの安全展
8月 3日~8月10日1日5回食中毒に注意!
127月24日~7月31日1日3回くらしの安全展・食品衛生週間

注.「ゴーゴー!5チャンネル」の中のコーナーとして放映した

表17 「中野区インフォメーション」の放映状況

年度放映期間放映回数タイトル
11 7月29日~ 8月2日1日3回くらしの安全展
 7月29日~ 8月4日1日3回食品衛生週間
10月28日~11月3日1日3回食品シンポジウム
12 7月27日~ 8月2日1日4回くらしの安全展
 8月 3日~ 8月9日1日4回食品衛生週間

注.文字情報として放映した

表18 広報番組「わがまちなかの」の放映状況

年度放映期間タイトル
11 4月 5日~ 4月15日暮らしの豆知識「栄養成分表示を役立てよう」
12月16日~12月31日暮らしの豆知識「栄養成分表示を役立てよう」
12 5月 1日~ 5月31日暮らしの豆知識「家庭での食中毒にご注意!」

 シティテレビによる情報提供は、必ずしも多くの区民に視聴されているとは言い難いが、視覚・聴覚両面から情報を流すため受けるインパクトは強いものがあり、多様なメディアによる情報提供の一つとして、今後も有用なものと考える。

(ウ) 中野区ホームページによる情報提供

 ホームページによる情報提供は、平成12年度より始めたが、とりわけ平成13年度に入ってからは積極的に活用し、リアルタイムにほぼ随時掲載の状況である。掲載された情報へは何時でもアクセスできる特徴があるが、一方でパソコンを所有していない者には、アクセス不可能であるというデメリットがある。
 しかし、パソコンは加速度的に普及しており、リアルタイムによりきめ細かな情報を提供できるというメリットを生かしたメディアであるといえる。各メディアにはそれぞれ特徴があり、お互いに補完する状況にあると考える。そしてITの進歩により、また、情報は自ら収集するという機運が少しずつ高まってきていることから、これからはホームページなどのインターネットを利用した情報提供が主流となっていくと考えられ、区民への情報提供の主要な手段として活用していくことが重要である。

(4)保健所と消費者、事業者との連携

 平成11年の区政協力員モニターアンケートにも表れているように、消費者は輸入食品や農薬、食品添加物等食品の安全性に関して広く不安を抱いている。また、最近では大手食品メーカーによる食中毒事件を始め、環境ホルモンや遺伝子組換え食品、狂牛病等、食品を取り巻く新しい問題が続発している。
 保健所ではこのような消費者の多様化する食品の不安に応えるとともに、食品による事故防止や食品の安全性に対する理解を深めるために、消費者団体主催の事業に参加したり、また、保健所事業に消費者団体や事業者団体から参加してもらうなど、相互の交流と連携に努めてきた。

(ア) 中野区消費生活展

 消費者団体主催の消費生活展では、毎年環境や生活の問題が大きく取り上げられている。保健所では身近な衛生や健康にかかわる視点から、消費生活展を有効な情報提供の場と位置付け積極的に出展参加してきた。そこでは消費者の生活に直接役立つものとして、(ア) 食中毒予防 (イ) 健康食品 (ウ) 特定保健用食品 (エ) 家庭でできるHACCP (オ) ネズミや害虫対策等を取り上げ、パネルやサンプル、チラシ等を用いて情報提供し、同時にその時々の区民のニーズを把握することに努めてきた。(表19)
 このように区民が多く集まる場では、通常保健所に寄せられる苦情相談に答えるだけでなく、より多くの区民に問題を提起し正しい情報を伝えていくことが非常に重要である。
 保健所は今後も消費者団体と十分協議をしながら、このような場には積極的に参加し情報提供に努めていくことが大切である。

表19 中野区消費生活展の参加状況

年度タイトル参加者数
10「夢ある未来のためにめざせ!」550名
11「身近にあふれる環境ホルモン」475名
12「ひろがれ!エコライフ」212名

(イ) くらしの安全展

 毎年食中毒事故の多発する時期の8月上旬に、当初、保健所は区民に事故防止を呼びかける目的で、食品衛生協会の協力を得て区役所1階のロビーで食品衛生街頭相談として開催してきた。
 平成7年から消費者団体も加わり、区民参加の輪が広がった。保健所組織においても、「食べる」や「衛生」に関連して栄養士や保健婦、検査技師など様々な専門職種が加わり充実してきた。体脂肪測定、アルコール体質判定、食品添加物実験(消費者)、食品衛生についてのクイズ等を用いて、来場者の食品に対する関心を呼び起こしながらそれぞれの専門職員による相談を行っており、区民参加型の情報提供の場として好評を得ている。(表20)
 平成12年度からは実施期間を2日間に拡大した。しかし、アンケート結果から来場者は区役所に本来の用事で来た人が大部分であり、チラシやポスター、区報などを見てわざわざ来場したという人は少ないという点がある。このことから、今後は区民への周知をより効果的に行うためにはどうしたらよいか、会場はこのままでよいか、内容を充実させるためにはどうするかなどについて、行政は事業者(団体)、消費者(団体)とともに検討していく必要があると考える。

表20 くらしの安全展への参加状況

年度テーマ参加者数
10食中毒の予防と食品の安全について約120名
11家庭でできる食中毒予防と快適なくらし約150名
12食中毒の予防は家庭から約320名

(ウ) 食品シンポジウム

 平成5年から毎年、社会的に取り上げられた食品の話題や区民の関心の高い食品のテーマを取り上げ、消費者、事業者、学識経験者等の立場の違う人達をパネリストに迎え、公開討論という形で、シンポジウムを開催してきた。これは単に立場の違うパネリストたちの意見交換の場としてだけでなく、来場した区民との質疑応答、意見交換の場として区民が直接参加できる絶好の機会であり、食品に関して皆で問題意識を高め学ぶ、非常に有意義な学習の場になってきた。(表21)
 しかし、中野区の事務事業全体の見直しによって、経費や参加者数の観点から、消費者、事業者の意見交換の場は、年に1回のシンポジウムに限定せず随時開催されるべきものである、との判断から平成13年度より食品シンポジウムの開催を休止することとなった。
 今後はよりいっそう手軽な意見交換の場として、消費者や事業者との定期的な懇談会や意見交換会などの会議を適宜開催して、社会で話題を呼んでいる食品に関する問題や新しい技術や法律等について、ともに学習し情報交換を行っていくことが重要であると考える。

表21 食品シンポジウムへの参加状況

年度タイトル参加者数
10食品安全と健康づくりを考える集いシンポジウム約60名
11みんなで考えよう遺伝子組換え食品約60名
12食品の表示と安全性の判断75名

(エ) 放射能測定事業

 昭和61年4月に発生した旧ソ連のチェルノブイリ原発事故により、周辺地域に放射能汚染の被害をもたらした。その後日本に輸入された数種の食品からも放射能が検出された。こうした中で、区民からの請願を受け、中野区では平成元年より区民からの依頼検査として、食品中の放射能検査を行ってきた。このようにして保健所検査担当窓口では区民の食品に対する不安解消に一定の役割を果たしてきた。
 しかし、平成9年度以降は区民からの依頼件数が減少し、放射能測定事業は目的を達成したものと判断した。また、測定機器の老朽化もあり、平成13年3月で同事業を廃止した。(表22)

表22 放射能測定依頼件数

年度依頼件数 年度依頼件数
81 76
247 811
333 92
422 100
516 113
615 120

(オ) 食品添加物等検査

 一方で、新たに食品安全委員会第2期の答申を受け、保健所では平成12年4月から食品持込み検査として、細菌と食品添加物の検査を実施している。時代状況の変化に伴い区民の求める安全性の内容も変化してきている。食品検査についても技術的な問題はあるが、今後も保健所は常に区民の求める安全性の内容には敏感であることが重要である。
(カ) 食品衛生推進員

ア.食品衛生推進員制度について
 平成7年5月、食品衛生法が改正され、食品衛生推進員制度が設けられた。
 この改正により、中野区は、食品関係営業者等の自主的衛生管理を促進するため、食品衛生の向上に熱意と識見を有する者を「食品衛生推進員」として委嘱し、保健所事業への協力、営業者への相談・助言を行ってもらうことができることとなった。

イ.中野区の食品衛生推進制度の概要
 中野区は法改正に基づき、平成10年3月「中野区食品衛生推進員設置要綱」を制定し、同年4月、区長は任期2年の第1期食品衛生推進員を委嘱した。現在は、平成12年4月に第2期食品衛生推進員を委嘱し、活動中である。
 第1期・第2期とも委員は15名で内訳は次のとおりである。

 「飲食店営業者又はその業務に従事する立場」11名
 「区内集団給食施設で自主管理に実績のある立場」1名
 「消費者団体の構成又は区民で食品衛生に識見のある立場」2名
 「食品の衛生管理に学識を有する立場」1名

 この中で特筆すべきことは、「消費者団体の構成又は区民で食品衛生に識見のある立場」から委員を委嘱していることである。これは、他の自治体を見ても例が少なく、住民参加を基本とする区の方針を組み入れた食品衛生推進員制度である。活動内容としては、推進員活動に必要な知識習得のため講習を年に2回受講し、年2回以上の食品衛生推進員会議を中心に地域の食品衛生の向上に寄与している。また、第2期からは保健所で実施する実務講習会にも毎回、いずれかの推進員が交代で参加し、それぞれの立場から食品安全の話を呼びかけるなど、行政と食品関係営業者及び一般消費者との間に立ち、食品衛生向上に寄与しようとする体制が第1期に比べ強化されている。

(5)学校給食を通しての取り組み

 学校給食は、戦後の食糧難時代に児童・生徒の栄養補給を主目的に開始された。今日、食生活は豊かになったと言われているが、不規則な生活や偏った食事による栄養のアンバランス、肥満、貧血、集中力の欠如など、児童・生徒の健康問題も指摘されている。学校給食は、このような社会環境にある児童・生徒に対し、生涯を通じての健全な食生活に関する理解を深め、自らの健康管理能力を育成するためにも、学校教育活動の一環として重要な意義を有している。中野区ではこのような観点から、学校給食をより安全に、好ましい環境で摂取できるよう強化磁器製食器の導入等様々な施策を積極的に導入してきた。
 学校栄養士全校配置についていえば、低農薬野菜の購入等食材料の吟味、合成調味料等を使用せず全て天然だしを使用する味付けを含め、衛生的かつ栄養学的合理性を備えた調理、児童・生徒の発達段階に応じたきめ細かな配食、学校行事と組み合わせたランチボックス給食、セレクト給食、バイキング給食、異学年との交流給食、高齢者を招いてのふれあい給食(会食会)、生活科とタイアップした食材料用野菜類栽培の取り組み等、それぞれの学校においての学校教育活動との連携活動は、学校栄養士全校配置によって可能となったものが多いと言える。中野区では、区立小中学校43校において、各校それぞれに調理する自校方式を採用しているが、行政の効率化、財政の健全化を図るために、平成10年度より学校給食調理の民間委託方式を試行し始め、検証期間を経て、平成13年度現在14校において民間委託方式により調理されている。学校給食の安全性確保を第一条件に、教育的配慮を重視しつつ、行政の効率化、財政の健全化を図ることは今後も要求されるであろうが、安全性に問題がないか、常に検証しつつ、施策の推進を図るべきであろう。

(6)行政の取り組みの評価

 行政は消費者と事業者に対して支援と情報提供を行う責務があり、かつ同時に事業者に対して指導監督の権限も有するので、両面の立場を持ち、難しい存在である。そのため事業者は権限に服従し、消費者は責務履行の不十分を追及することがあるが、どちらも行政としては正しい関係を持っていないことになる。行政は公僕としての自覚を持ちながら、支援と情報提供に努めることによって、消費者・事業者・行政の間の信頼に充ちた協力関係を創り上げなければならない。そのための手段として本委員会が十分にその機能を発揮しなければならない。すなわち、行政担当者は区民参加による食品安全確保のための施策をどのように展開して行くかを、前例にとらわれずに真摯に模索しなければならない。

1 消費者

 昨今の異物混入事件以降、消費者が食品に対する監視の目を養い、疑問があれば関係諸機関へ申し出、意見を述べ、必要な情報を要望することで情報が双方向になる体験を獲得しつつある。消費者は自立を目指しつつ、事業者・行政と相互に交流し理解を深め、区内の食品安全の担い手として行動する。

(1)学習し、選択し、発言する消費者になる

 加工食品や農産物の原産地の表示など、表示範囲が拡大し複雑になり、食品の選択時や使用時において、自主的な表示の確認と適正な取扱いが消費者に求められている。
 表示に関して自ら情報収集を行うとともに、より積極的に自己判断するために必要な表示に関して、問題点を発見し、発言し変革していくことが必要になってきている。消費者からの問い合わせを契機に行政や事業者が情報提供へ動く例が多いため、疑問や要望は手間を惜しまず積極的に投げかけることが大切である。

(2)食品の購入と消費に関して責任ある行動をする

 消費者は一人ずつが食品を選ぶ権利を有している。その結果として消費者の購買行動は、事業者の活動に影響を与え、行政の仕組みをも変えうる可能性があるので、区民として食品の安全確保に貢献するとの意識と行動が必要である。
 情報化社会の中で、食事内容に関しても○○ダイエットの流行や○○食品の健康法などの流行があるが、宣伝だけの情報で食事を組み立てることのないよう注意が必要である。
 各種ボランティア活動や消費者団体の活動に参加し、マスコミ情報のみに頼らない情報源を求め積極的に行動する。

(3)消費者個人個人の要望を行政・事業者へ向けて発信する

 消費者の苦情・問い合わせは、直接個別の販売者へ向けられることが多かった。しかし、最近は区や製造者の消費者関連の窓口が整備され、消費者は二次的な相談手段を確保できるようになった。確かな情報が不足していたり、手に入らないからといって、消費者個人が具体的に行政・事業者に伝えないと、情報は自動的に流れてこない。様々な情報を入手するために、情報公開制度などを積極的に利用していくべきである。情報の流れを作るには、ある程度の消費者の要望数がまとまる必要がある。区内に住んでいて不安に思うことは共通している可能性が高いので、日頃から意見を発言することが大切であり、意見の申し出先を複数以上持つことも大切である。

2 事業者

(1)安全対策の強化

 今日まで、事業者は消費者が安心して利用できるよう、より清潔な店舗を目指して、食品の安全対策を講じてきた。小売店、飲食店などの事業者は保健所の指導のもと、区内の食品衛生協会傘下の各組合、業種毎に自治指導員を決め、定期的に店舗の作業場、作業者、商品の細菌検査を実施し、安全の確認を行ってきた。スーパーマーケットはそのような地域ごとの体制こそないが、各チェーン毎に自主管理体制を設け、同様に定期的に検査を実施してきた。その間、平成7年にPL法(製造物責任法)が、平成9年には食品衛生法の改正が行われ、期限表示が義務づけられるなど、事業者への責任や消費者保護の施策が強化されてきた。各種の表示を例に挙げると、対面販売を採用している小売店では、消費者の注文に応じて包装するため表示義務はないが、スーパーマーケットはセルフサービスのため、事前にパックして売場に並べる形態をとっている関係ですべての包装食品が表示の対象となるため、その都度メーカーの工場の点検、保険の加入の有無、注意表示の点検や商品の保存テスト等を行って、安全の確認、消費者への情報提供というハードルをクリアーしてきた。
 ところが、平成12年の6月に発生した雪印の食中毒事件や平成13年3月の滝沢ハムのローストビーフによるO157食中毒事件など、食品メーカーの衛生管理のずさんさに起因する事故が頻発し、さらにその対応・姿勢のまずさからせっかく築き上げた消費者との信頼関係を自ら損なう結果となってしまった。雪印の食中毒事件を発端に日本中がパニックに陥った。これらの食品メーカーの中にはHACCP導入の工場も含まれており、各社の基準に基づく検査を行っていたにも関わらず、毎日のように信じられないような異物混入が発生し、マスコミをにぎわせた。この時期から消費者の意識に大きな変化が生じた。「企業に対する不信感」と「消費者の権利意識」の増大である。「企業に対する不信感」については、苦情件数が増加しただけでなく、原因調査の依頼や書面での回答依頼が増加した。これを契機として、事業者に危機感が生まれ、システムの見直しが随所で行われている。具体的には原材料の製造から加工販売までの横断的な衛生管理がより一層求められている。小売店や飲食店においても漫然とメーカーの作った商品を並べるだけでなく、販売する商品について全責任を持つことが不可欠になり、最近は取引メーカーの工場立入検査などの再点検が頻繁に行われている。

(2)情報公開

 これらの事件が連日マスコミで報道されたために、消費者が言い易い環境が出来たことも事実で、また、消費者も納得できない対応については、今までのように泣き寝入りせず、ノーと言える状況が増えている。メーカーや販売店からの納得できない回答に対し、マスコミやインターネットに公表するという発言も見られた。
 このような変化に対して、事業者としては消費者に対する正確な情報の提供と説明責任、特に消費者に理解できるやさしい内容が求められている。第2期の答申において、消費者の役割として消費者の自立が望まれるとあったが、今回の一連の食中毒事件が「消費者の権利意識」の増大に一役買ったというのは何とも皮肉なことであった。
 ITの普及によって苦情の申し出も従来の電話や手紙から、簡単にアクセスできるインターネットを利用した各企業のホームページへの申し出が増えていることから、これを機会に今後はインターネットを利用した情報提供や情報公開を行うなどの機運が一層高まることを期待したい。

(3)新たな安全問題

 最近では遺伝子組換え食品、輸入食品、環境ホルモン、ダイオキシン等、食品に関わる安全性が問われているが、従来は食中毒など個々の事業者が努力することで防げたことが、これらの食品の安全性については一事業者ではどうにもならない事態を迎えている。例えば、遺伝子組換え食品に関しては、消費者の不安に対し、メーカーの取った手段は、とりあえず遺伝子組換え食品を取り扱わない方向で対処している。今のところ店頭での商品の表示は、「遺伝子組換えでない」又は「表示無し」のみで「使用している」「不分別」は皆無である。有機栽培については、従来の農水省基準が曖昧であったため、各社が独自の基準を設け、産地と直結し、生産者の顔が見える形で展開し、それなりの評価を得てきたが、JAS法の改正で有機農産物の認証制度が平成13年4月より導入され、有機農産物の表示を行うためには、農水省に登録された機関の認定を受け、合格しなければ「有機JASマーク」を表示できなくなった。どれが有機食品かひと目でわかりやすくなった反面、それにかかる費用の増加によって、二の足を踏む生産者が多く、その結果店頭でのマーク付き商品を見かけることが減ってきていて表示の後退という現象になっている。
 食品の安全に関する情報をオープンにすることは、大事なことだが、消費者・事業者・行政それぞれの立場の違いでかみ合わないことが多い。事業者は行政に頼りがちで、行政は商品の多様化、流通のスピードの変化に追いつかない。一方、消費者は情報不足で自ら判断することが難しい。そのような局面で、事業者に対する食品の安全性確保の責任は、ますます重大になっているが、輸入食品、環境ホルモン、ダイオキシン等については、事業者だけでは判断やコスト負担が出来ないことが多い。過剰な心配は混乱とコストアップを招き、消費者の不利益になりかねないという言い訳も用意されている。しかし、21世紀に入った今、食品の安全性問題は、行政が輸入食品や環境汚染などの検査体制を充実し、リード役として一歩先を行く的確な判断を行い、事業者は消費者の意見に耳を傾け、消費者の視点を持ち、消費者への正確な情報提供を行うことで、消費者の不安を取り除き、信頼関係を回復させることが急務である。昨年来の食品事故の反省を、山積みする各種の安全問題の対応に生かしていかなければ、この先、事業者として責任のある対応をしたことにはならない。

(4)消費者懇談会

 営業者は、食品衛生の普及向上のため食品衛生協会の組織を通して、食品の自主衛生管理を基本に、食品衛生自主管理点検表の活用による自主点検・自主管理、また衛生講習会の受講による最新知識・情報の習得など、保健所の指導を得ながら日常の努力を重ねているが、消費者にもこの事業者の活動について理解を得ていくことも必要であり、また、消費者自身も食品の衛生管理には常に関心をもつ必要があることから、食品の安全確保に向けて消費者と事業者とが相互理解して行くための意見と情報の交換の場として消費者懇談会を開催して行きたい。

(5)会員増強

 食品衛生の普及向上のためには、会員組織の拡充強化が不可欠であり、中野及び中野北の両食品衛生協会として食品衛生協会本部並びに業種団体と緊密な連携のもとに、趣旨の普及に努めていかなければならないが、平成8年の東京都食品衛生調査会の答申において提言された「東京都における食品関係営業者の行う自主衛生管理のあり方について」における行政による支援の中で、組織率を一層向上させるためには、未加入者に対する営業者団体の活動内容等の周知等について、行政の支援拡充が必要であるとしているように、今後もより一層の行政の協力を得ながら、未加入事業者の加入強化に努めて行きたい。

3 行政

(1)情報の共有と提供

 複雑化、多様化してきている現在の食生活において、消費者はマスコミ、口コミ等による様々な情報に惑わされたり、また、適切な情報が与えられないことにより、不安を抱いたり、間違った選択をしてしまう場合もおこりがちである。食品の安全性に関しては、国および都からの情報に加えて食品提供事業者からの情報提供が不可欠であるが、中野区としても、関係機関と連携しつつ、消費者に対する適切かつ分かりやすい情報提供を今後も心掛けるべきである。また、様々な区民ニーズに答えられるよう、区民からの情報収集や意向の把握に努めると共に、相談体制を充実させていく必要もある。従来からの担当窓口での対応、区報その他情報紙による情報提供に加え、シティテレビ(CTN)を利用してのお知らせや、中野区ホームページもすでに開設されてはいるが、IT社会到来に備えインターネット利用者からのアクセスに対してもきめこまかく対応できるよう体制を整えていく必要がある。平成2年及び11年に実施された食品衛生に関するアンケート調査を、今後も定期的に実施していけば、区民動向の経時的把握が可能になると共に、行政評価の一手段として活用できるであろう。

(2)消費者・事業者・行政の連携の促進

 中野区は、「ともにつくるまち中野」の理念のもと、様々な施策を実施してきた。特に、食品安全に関する行政は、区民の命と健康に関わるものだけに今後もこの理念のもと、消費者・事業者・行政の連携を促進し、より良い施策を選択していくべきである。行政の効率化を急ぐあまり、安全面の配慮が欠けることのないよう、充分検証していく必要があろう。食品安全対策行政はそのほとんどを国や都に依存しているなか、条例で定める食品安全委員会をもつのは中野区のみであり、一地方自治体の意欲的取り組みとしてその動きや方向および行政評価にたいする姿勢等に関心が持たれてきた。中野区食品安全委員会は消費者・事業者・行政の相互理解の場となると共に食品安全に関する情報の共有と一般区民をふくむ関係機関への情報提供や問題提起の機能も果たしているが、科学技術の飛躍的進歩のなか、審議のありかたや評価方法も更に検討する必要があろう。

(3)調査・研究・監視体制の整備と事業者への指導強化

 多くの食品において、原材料の由来・製造(栽培・飼育)方法、添加物の選択、製造過程、容器包装、流通過程、販売方法等、どの段階をとっても、事業者側の『安全な食品を提供しよう』とする『良心と責任感』無くしては、消費者が安全な食品を入手できない状況にある。近年、HACCPの導入により、各事業者の生産段階における衛生管理手法は強化されつつあるが、HACCP導入工場においてさえも基礎的な衛生管理に手抜きが行われ、業者側の危機管理体制に重大な欠陥が判明したり、未認可の遺伝子組換え原料の混入も多発するなど、食品を取り巻く環境はさらに複雑化する傾向にあり、生産段階、輸入段階、製造段階、流通段階、販売段階における、調査・研究・監視体制の整備と事業者への指導強化は不可欠である。
 しかし、これらをすべて、一基礎的自治体で実施することはもとより不可能であり、国や、都および関係機関との連携によって初めて可能になることではあるが、中野区としてできうる限りの施策を実施していくべきであろう。

 「安心できる食生活」を実現するためには、これまで述べてきた中野区内の取り組みは十分評価できるが、現在のような輸入食品の増加、食品流通の広域化の中では、限界がある。現在輸入農産物の厚生労働省検査は91.6%が書類審査のみなので、安全性をチェックする機関を充実させるよう働きかけてほしい。都道府県の連携や国際的に標準化された安全確保対策は、なくてはならないものであろう。継続的にきめ細かい対策を促進していただきたい。また、マスコミを通してその一部は報道されるが、全体像を十分把握しないと不安だけが増幅される結果ともなりかねない。さいわい、インターネットの普及発達とともに、大量の情報が容易に入手可能となってきている。今回の報告書にも一部資料として使用したが、国や東京都の施策、方針がより身近に理解可能となるように、さらにわかりやすい情報の開示を要請したい。国と東京都の現在の体制を資料として巻末に添付する。( 資料4 、 資料5 )
 マスコミに対しても、食品に関する正確な情報の発信をぜひお願いしたい。その際に、興味本位に不安をあおるような記事を掲載しないよう、特に見出しには気をつけていただくようご配慮いただきたい。

 平成11年9月に第3期中野区食品安全委員会が発足してから、2年が経過した。ここに報告書をまとめることができたことに一息つく思いでいる。正直、多岐にわたった議論を、しかも多種多様な委員間の意見を集約し、報告書としてとりまとめていくことの困難は、予想以上に手間のかかる作業であったが、各委員の協力によってようやくまとまった。これまでの2期にわたった委員会では、いずれも区長からの諮問を受けて、それに応える形で委員会の審議が続けられ、答申の形となってきたところである。だが今回は、「報告」の形式をとっている。すなわち本委員会は委員会の意見を独自にまとめて区長に報告するものである。そのため、「安心できる食生活の実現に向けて」という共通の了解はあるものの、関心の方向や状況をめぐる認識が錯綜することもたびたびであった。しかし、関心、認識等があるからこそ活発な意見の交換があって、消費者、事業者、行政が個別には発想も提案もできないであろう報告書が成立し得たと確信するものである。逆に、この報告書がどれだけ体系的に整理されているのかは不安は残るものの、他に例を見ない本中野区食品安全委員会の報告書として精一杯の仕事をしたという自負を持つものである。
 さて、報告書の中でも繰り返し述べてきたところではあるが、生活の場である地域の消費者・事業者と行政(中野区)がそれぞれの食生活の安全に向けた役割と取り組み及び連携が、自治体レベルでの基礎的活動と施策の中心に据えられなければならない。たしかに食品の安全性については、広域な、あるいはナショナルなレベルの課題が多いが、中野区食品安全委員会である以上は、国や都に対する要望や陳情もことと次第によっては必要であるが、中野区で完結する食品安全性対策を建議することこそ中心的課題にしなければならない。たとえば遺伝子組換え食品をめぐる国レベルの動きなど、報告書で紹介した状況については、ただ手を拱いて見ているだけでは問題の解決につながらない。また、陳情や意見書の提出だけでも解決につながらない。このように実効ある解決策はないことが多いが、根気よく継続的に取り上げて行かなければならない。しかし、本食品安全委員会は、これらマクロな対応とともに、私たちの身近な生活の場である地域内の問題を等身大(life-size)の視点から対応し、かつ消費者・事業者・行政の三者の一体となった協力態勢で、地道に積み重ねて行くべきだという立場をとっている。そのために、消費者・消費者団体、事業者・事業者団体及び行政の活動や施策についての的確な評価を実施できるようにならなければならないと考えている。それによって、中野の街々から、さまざまな活動と連携の取り組みの輪が広がってほしいと願っている。そのように願うのは消費者と事業者の草の根運動こそが食品の安全性を高め、消費者が食品に対する安心感を抱くようになる最も確かな筋道と考えるからである。

  1. 遺伝子組換え食品の表示の制度化について
  2. ダイオキシンの摂取量について
  3. 狂牛病(牛海綿状脳症)について
  4. 厚生労働省組織図
  5. 東京都における食品の安全確保対策の体系
  6. 中野区食品安全委員会条例
  7. 中野区食品安全委員会委員名簿
  8. 中野区食品安全委員会審議経過
  9. 起草委員会名簿・起草委員会検討経過
  10. 中野区食品安全委員会幹事名簿

[概要] 食品衛生法施行規則の一部が改正され、遺伝子組換え食品である旨、遺伝子組換え食品を分別していない旨などの表示が制度化された。[趣旨] 遺伝子組換え食品の表示は、消費者の選択に資する観点から、農林水産省がJAS法の品質表示基準として、平成13年4月1日より表示を義務化することとされていた。今回の改正は、食品衛生法に基づく表示制度においても、安全性審査の法的義務化と一体のものとして、JAS法と同様の表示を義務づけるものである。[施行] 平成13年4月1日[制度の内容] 1.表示の方法

生産・流通段階を通じて分別された遺伝子組換え食品の場合(義務表示)
例 大豆(遺伝子組換え)
遺伝子組換え食品と非遺伝子組換え食品との分別生産流通管理が行われていない場合(義務表示)
例 大豆(遺伝子組換え不分別)
分別流通生産管理が行われている非遺伝子組換え食品の場合(任意表示)
例 大豆(遺伝子組換えでない)

2.表示の対象 作物 大豆(枝豆及び大豆もやしを含む)、とうもろこし、ばれいしょ、なたね、綿実

加工食品
1.豆腐・油揚げ類 2.凍豆腐、おから及びゆば 3.納豆 4.豆乳類 5.みそ 6.大豆煮豆7.大豆缶詰及び大豆瓶詰 8.きな粉 9.大豆炒り豆 10.1~9までに掲げるものを主な原材料とするもの 11.大豆(調理用)を主な原材料とするもの 12.大豆粉を主な原材料とするもの 13.大豆たん白を主な原材料とするもの 14.枝豆を主な原材料とするもの 15.大豆もやしを主な原材料とするもの 16.コーンスナック菓子 17.コーンスターチ 18.ポップコーン 19.冷凍とうもろこし 20.とうもろこし缶詰及びとうもろこし瓶詰 21.コーンフラワーを主な原材料とするもの 22.コーングリッツを主な原材料とするもの(コーンフレークを除く) 23.とうもろこし(調理用)を主な原材料とするもの 24.16~23までに掲げるものを主な原材料とするもの

 なお、表示の対象となる食品は、新たな遺伝子組換え作物の開発や流通及び原料としての使用実態、組換えられたDNA及びこれによって生じたタンパク質の除去、並びに分解の実態、検出方法などの新たな知見、消費者の関心をふまえ、定期的に見直しを行うこととなっている。

 以下の情報は、この報告書が作成された平成13年8月時点の情報です。最新の情報については、下記のアドレスにアクセスして確認してください。

東京都健康局食品医薬品安全部食品監視課インターネット情報サービス(新規ウインドウで開きます。食品衛生の窓(外部サイト))より抜粋

● ダイオキシンの摂取量
 ダイオキシンに関して、都民の皆さんが最も関心を持たれるのは、一体どれだけのダイオキシンを摂取しているのか、という点であろうと思います。
 また、廃棄物焼却炉等、発生源に対する規制等を行う上でも、摂取量を把握することを欠かすことはできません。
 ここでは、平成9年5月に出された「ダイオキシンリスク評価検討会報告書」(環境庁)と、「食品中のダイオキシン類等汚染実態調査報告」(平成8年度、平成9年度)(厚生省)をもとに、ダイオキシン摂取量について見てみたいと思います。

(1) 「ダイオキシンリスク評価検討会報告書」から
 本報告では、ダイオキシンがヒトに取り込まれる経路を、食事、大気、水、土壌とし、それぞれについて考察しています。

1 食事からの摂取
 食事からの取り込み量については、次のデータを基にして推定しています。

1 大阪府下における調査では、ダイオキシン摂取量は、
 163pg/人/1日である。(摂南大学:高山らの研究結果)
 人の体重を50kgとし、これを体重1kg当たりにすると、
 摂取量は 3.26pg/1kg 体重/1日 となります。
2 9都道府県における調査では、ダイオキシン摂取量は、平均1.25
 (最小値0.26~最大値2.60)pg/1kg体重/1日である。(環境庁調査)
 [数値は、2,3,7,8-TCDD(TEQ)]

 この結果から、一般的な食事をとっている日本人は、

食事とともに一日あたり、0.26~3.26pg/1kg体重

のダイオキシンを摂取していると推定しています。

● 魚介類を多く食べる人の摂取量

 我が国では、他の国々と比較して魚介類を多く食べる傾向があることから、この場合のダイオキシン摂取量について、次のように推定しています。

1 日本人の魚介類摂取量は、平均95.2g/1日
2 魚介類を多く食べる人の摂取量を、180g /1日( 平均の約2倍)と想定

 以上のような条件設定の下で計算した結果、魚介類を多く食べる人の場合は、

・ 魚介類からの摂取量は 1.28~4.2pg/kg体重/日
他の食品を含む食事全体から1.63~5.01(平均3.32)pg/kg体重/日

のダイオキシンを取り込んでいることになります。

● 諸外国における食事由来のダイオキシン摂取量

 アメリカなど数カ国のデータと比較すると、我が国における食事由来のダイオキシン摂取量は多いということができます。

単位: pg/kg体重/日
ドイツカナダオランダアメリカイギリス
2.22.32.00.3~3.22.1

2 その他の経路からの摂取量
 食事以外の経路として挙げられている大気、水、土壌については簡単に触れておきます。

● 大気からの摂取
 大気は、地域により汚染度に差があります。ここでは、地域を3つに分けるとともに、ゴミ焼却施設周辺における摂取量についても推定しています。

単位: pg/kg体重/日
一般的な生活環境ゴミ焼却施設周辺
バックグラウンド(山間部)中小都市大都市
0.020.150.180.9~1.2

● 水からの摂取
 水からの摂取量については、多めに見積もって

0.001pg/kg体重/日

と推定しています。

土壌からの摂取
 土壌からの摂取については、経口摂取と皮膚接触による摂取を考慮して、つぎのように推定しています。

単位: pg/kg体重/日
地域経口摂取皮膚接触による摂取土壌からの摂取量計
都市域0.0830.00130.084
ゴミ焼却施設周辺  0.63
バックグラウンド0.0080.00010.008

3 生活条件別の摂取量
 これまで、食事、大気、水、土壌とそれぞれの経路別にダイオキシン摂取量をみてきましたが、これらを組み合わせて、ヒトがトータルとしてどのくらい摂取しているのかまとめてみました。

単位: pg/kg体重/日
経路生活条件
一般的生活環境魚を多く食べるゴミ焼却施設周辺魚多食・焼却施設周辺
食物から
大気から
水から
土壌から
0.26~3.26
0.02~0.18
0.001
0.008~0.084
1.63~5.01


0.26~3.26
0.9~1.2

0.63
1.63~5.01
0.9~1.2

0.63
0.29~3.531.66~5.281.79~5.093.16~6.84

 この結果をみると、0.29~6.84pg/kg体重/日と、生活条件によってかなり幅があります。耐容一日摂取量=10pgと比較した場合、全ての条件下において下回っていますが、健康リスク評価指針=5pgと比較した場合、一般的生活条件を除いて、場合によってはこれを上回るという結果になります。

(2) 「食品中のダイオキシン類等汚染実態調査報告」から
 本研究は通常の食事から摂取されるダイオキシン類の量を把握するために行ったものです。ここでは、「トータルダイエットスタディ」により、ヒトのダイオキシン摂取量の推定をおこなっています。

(トータルダイエットスタディ)
 通常の食生活において、食事を介してどの程度のダイオキシンが実際に摂取されているかを調べる方法。
 国民栄養調査を基として、14の食品群に分け、それぞれの1人1日摂取量をもとに各地域毎の食品構成と数量を決める。次に、小売店等から購入した各食品を調理して、各食品群毎に分析してダイオキシンの1日摂取量を算出し、14食品群を合計して1人1日あたりのダイオキシン摂取量を求める。

(ア) 平成8年度
 平成8年度は、関東、関西、九州の3地区においてヒトのダイオキシン摂取量の推定をおこなっています。

その結果、ヒトのダイオキシン摂取量は、

0.44~0.75(平均0.63)pg/kg体重/日

と推定しています。
 また、総摂取量に対する食品群別摂取割合は、魚介類からが総摂取量の67.5%と大部分を占め、次いで有色野菜(5.7%)、乳・乳製品(5.2%)、肉・卵類(5.0%)となっています。

単位:pg 2,3,7,8-TCDD(TEQ)
食品群関東地区関西地区九州地区平均値標準偏差比率(%)
1群(米)
2群(穀類・芋)
3群(砂糖・菓子)
4群(油脂)
5群(豆・豆加工品)
6群(果実)
7群(有色野菜)
8群(野菜・海草)
9群(嗜好品)
10群(魚介)
11群(肉・卵)
12群(乳・乳製品)
13群(加工食品)
14群(飲料水)
0.309
0.146
1.410
1.193
0.201
0.028
0.189
0.580
0.121
28.944
1.456
1.904
0.873
0.000
0.263
1.201
1.229
1.172
0.036
0.026
2.591
0.045
0.162
23.460
2.068
1.948
0.651
0.001
0.303
2.810
0.054
0.711
0.075
1.138
2.555
0.108
0.073
11.227
1.228
1.038
0.738
0.004
0.292
1.386
0.898
1.025
0.104
0.397
1.778
0.244
0.119
21.210
1.584
1.630
0.754
0.002
0.025
1.342
0.736
0.272
0.086
0.641
1.377
0.292
0.045
9.070
0.434
0.513
0.112
0.002
0.9
4.4
2.9
3.3
0.3
1.3
5.7
0.8
0.4
67.5
5.0
5.2
2.4
0
総摂取量(1人/1日)37.434.922.131.48.2100
体重当たり摂取量
(kg体重/1日)
0.750.700.440.630.17 

 本調査研究班は、この結果について、耐容一日摂取量10pg/kg体重/日と比較して、相当低い数値であるとしながらも、我が国における食品からのダイオキシン摂取量を正確に把握するには、今回実施した関東、関西、九州の3地区から更に対象地区を拡大して調査すべきとしています。
 (平成9年度においては、全国を7地区に分けて調査を実施中)

食事からのダイオキシン摂取量(一般的食事条件)
0.26~3.26pg/kg体重/日
「ダイオキシンリスク評価検討会報告書」(平成9年5月)
0.44~0.75(平均0.63)pg/kg体重/日
「平成8年度食品中のダイオキシン類等汚染実態調査報告」(平成9年12月)

(イ) 平成9年度

 平成9年度は、北海道地区、東北地区、関東地区、中部地区、関西地区、中国四国地区、九州地区の7地区で集めたトータルダイエット試料(14食品群)について、ダイオキシン類等を分析して、通常の食事から摂取されるダイオキシン類等の量を推計しました。その結果、ヒトのダイオキシン摂取量は、

0.60~1.39(平均0.96)pg/kg体重/日

と推定しています。

 また、ダイオキシン類とコプラナーPCBを含めた一日総摂取量は、

1.37~3.18(平均2.41)pg/kg体重/日

と推定しています。これは、昨年度の平均値1.6pg/kg体重/日より増加しています。この原因として、主要な摂取群である第10群の魚介類、第11群の肉類及び第12群の乳・乳製品の分析における検出限界が昨年度よりもほぼ1桁下がり、検出化合物の数が増加したことが考えられ、摂取水準が昨年と比べ急激に増加したとは考えにくいとしています。ちなみに9年度の値を8年度の検出限界値を用いて整理し直した場合、平均摂取量は1.8pg/kg体重/日 となり、ほぼ8年度に近い値となります。
 なお、トータルダイエット調査は平成8年度から実施しているものであり、摂取量の傾向を評価するには更に調査が必要だとされています。

平成9年度トータルダイエットの1~14群からのダイオキシン類一日摂取量

食品群北海道地区東北地区関東地区関東地区関東地区中部地区中部地区関西地区中国四国地区九州地区平均摂取量標準偏差比率
ABCAB
1群(米)0.120.640.120.000.020.000.000.510.030.000.140.230.3
2群(穀類・芋)1.274.221.470.251.120.740.200.060.230.060.961.262.0
3群(砂糖・菓子)0.120.610.460.140.590.310.620.320.340.030.350.220.7
4群(油脂)0.070.100.120.180.150.060.170.240.070.200.140.060.3
5群(豆・豆加工品)0.040.040.060.110.020.020.090.160.030.050.060.050.1
6群(果実)0.000.010.000.000.010.000.130.010.030.000.020.040.0
7群(有色野菜)0.292.255.352.2722.540.065.552.000.210.074.066.818.5
8群(野菜・海草)0.391.860.160.270.320.050.470.040.250.260.410.530.8
9群(嗜好品)0.000.010.090.000.020.000.215.550.000.060.591.741.2
10群(魚介)14.938.9917.5138.6923.8225.5228.2336.7218.0623.4623.599.3249.1
11群(肉・卵)10.3420.179.129.9014.1513.9512.263.149.7910.0511.294.3823.5
12群(乳・乳製品)2.084.2913.714.626.225.912.255.561.9914.546.124.5112.7
13群(加工食品)0.260.070.230.440.490.440.630.410.030.010.30.210.8
14群(飲料水)0.000.000.000.000.000.000.000.000.000.000.000.000.0
総摂取量(1人/1日)29.943.348.456.969.547.150.854.731.148.848.811.7100
体重当たり摂取量0.600.870.971.141.390.941.021.090.620.980.960.23 

平成9年度トータルダイエットの1~14群からのダイオキシン類一日摂取量
平成9年度トータルダイエットの1~14群からのダイオキシン類一日摂取量の画像

 各群別のダイオキシン類の一日摂取量は、多い順に10群(魚介類)が49.1%と約5割を占め、次いで11群(肉・卵類)、さらに12群の乳・乳製品、7群の有色野菜となっています。従って、ダイオキシン類の一日摂取量は、魚介類及び肉・卵類で全体の72.6%を占め、さらに乳・乳製品を加えると総摂取量の85.3%とそのほとんどを占めることになります。

平成9年度トータルダイエットの1~14群からのコプラナーPCB一日摂取量

食品群北海道地区東北地区関東地区関東地区関東地区中部地区中部地区関西地区中国四国地区九州地区平均摂取量標準偏差比率
ABCAB
1群(米)0.474.720.510.430.010.731.371.530.520.011.031.391.4
2群(穀類・芋)1.8220.860.842.582.100.591.101.151.070.343.246.234.5
3群(砂糖・菓子)0.250.460.180.310.570.300.370.450.460.110.350.140.5
4群(油脂)0.400.410.460.390.510.360.380.420.180.400.390.090.5
5群(豆・豆加工品)0.130.170.140.140.13<>0.140.280.082.050.130.340.600.5
6群(果実)0.130.250.240.250.260.120.380.000.120.150.190.110.3
7群(有色野菜)0.160.411.181.881.850.222.000.530.210.350.880.771.2
8群(野菜・海草)0.382.080.193.350.520.370.450.160.770.010.831.061.1
9群(嗜好品)0.300.250.000.170.010.241.204.530.200.290.721.381.0
10群(魚介)29.8941.1640.8259.7169.7672.7444.9983.4523.5450.8051.6919.4071.1
11群(肉・卵)4.6212.937.735.2411.285.7428.656.516.396.779.587.2013.2
12群(乳・乳製品)2.313.365.362.682.283.233.323.262.065.193.301.144.5
13群(加工食品)0.120.040.070.090.100.120.120.110.090.090.090.030.1
14群(飲料水)0.020.020.010.020.010.030.040.020.040.020.020.010.0
総摂取量(1人/1日)41.087.157.777.289.484.984.6102.237.764.772.721.6100
体重当たり摂取量0.821.741.151.541.791.701.692.040.751.291.450.43 

平成9年度トータルダイエットの1~14群からのコプラナーPCB一日摂取量
平成9年度トータルダイエットの1~14群からのコプラナーPCB一日摂取量の画像

平成9年度トータルダイエットの1~14群からのダイオキシン類等一日摂取量

食品群北海道地区東北地区関東地区関東地区関東地区中部地区中部地区関西地区中国四国地区九州地区平均摂取量標準偏差比率
ABCAB
1群(米)0.595.360.640.430.030.731.372.050.540.011.181.591.0
2群(穀類・芋)3.0925.082.312.823.221.331.301.211.300.404.217.393.5
3群(砂糖・菓子)0.371.070.650.451.160.600.980.770.800.140.700.320.6
4群(油脂)0.470.520.580.570.660.420.550.660.250.590.530.120.4
5群(豆・豆加工品)0.160.210.200.260.150.170.370.242.080.180.400.590.3
6群(果実)0.130.270.240.250.270.120.510.010.150.150.210.130.2
7群(有色野菜)0.452.666.534.1424.390.297.562.520.420.434.947.324.1
8群(野菜・海草)0.773.930.353.620.830.420.920.201.020.351.313.111.1
9群(嗜好品)0.300.260.090.170.030.241.4010.080.200.351.313.111.1
10群(魚介)44.8150.1558.3498.4093.5898.2773.22120.1741.6074.2575.2826.6762.4
11群(肉・卵)14.9633.1016.8515.1425.4319.6940.919.6516.1816.8220.879.5517.3
12群(乳・乳製品)4.397.6519.067.308.509.145.578.814.0519.739.425.557.8
13群(加工食品)0.380.110.300.530.580.560.760.520.120.100.400.230.3
14群(飲料水)0.020.020.010.020.010.030.040.020.040.020.020.010.0
総摂取量(1人/1日)70.9130.4106.2134.1158.8132.0135.5156.968.7113.4120.731.3100
体重当たり摂取量1.422.612.122.683.182.642.713.141.372.272.410.63 

参考 平成8年度の一日摂取量(トータルダイエットスタディ)との比較

 調査地区平成8年度平成9年度
3地区7地区
一日摂取量 pgTEQ/kgbw/dayダイオキシン類 平均値0.63 標準偏差0.17(0.44~0.75)ダイオキシン類 平均値0.96 標準偏差0.23(0.60~1.39)
ダイオキシン類+コプラナーPCB 平均値1.60 標準偏差0.43(1.10~1.89)ダイオキシン類+コプラナーPCB 平均値2.41 標準偏差0.63(1.37~3.18)
検出限界(魚介類、肉・卵、乳・乳製品)

4~6塩素化物 0.1ppt
7~8塩素化物 0.3ppt

コプラナーPCB 1ppt

4~5塩素化物 0.01ppt
6~7塩素化物 0.02ppt
8塩素化物 0.05ppt

コプラナーPCB 0.01ppt

 以下の情報は、この報告書が作成された平成13年8月時点の情報です。最新の情報については、下記のアドレスにアクセスして確認してください。

厚生労働省ホームページ(新規ウインドウで開きます。http://www.mhlw.go.jp/topics/0103/tp0308-1.html(外部サイト))より抜粋

狂牛病等に関する厚生労働省の対応状況について
 今般、狂牛病等に対する正しい知識と現状の安全確保等について理解を深めていただきたく、厚生労働省において、次のとおり狂牛病等に関するQ&A(平成13年3月19日)を作成しました。
 今後、狂牛病等に関する知見の進展、規制の変更等に対応して、逐次、本Q&Aを更新していくこととしています。

1 どのような病気か
(1)狂牛病について

Q1:狂牛病(牛海綿状脳症:Bovine Spongiform Encephalopathies、以下「BSE」という。)とは、どのような病気ですか?

A1
 BSEは、TSE(伝達性海綿状脳症:Transmissible Spongiform Encephalopathies)という、未だ十分に解明されていない伝達因子(病気を伝えるもの)と関係する病気のひとつで、牛の脳の組織にスポンジ状の変化を起こし、起立不能等の症状を示す遅発性かつ悪性の中枢神経系の疾病です。
注1)TSEの特徴

(1) 潜伏期間は数ヶ月から数年の長期間
(2) 進行性、致死性の神経性疾患
(3) 罹患した動物やヒトの脳の薬剤処理抽出材料を電子顕微鏡下で観察するとプリオン(細胞タンパクの異常化したもの)の凝集体を確認
(4) 病理学的所見は中枢神経系の神経細胞及び神経突起の空胞変性、星状膠細胞 の増殖
(5) 伝達因子によるヒトや動物での特異的な免疫反応がない。

注2)BSEの臨床的特徴

(1) 潜伏期間は2~8年程度、発症すると消耗して死亡、その経過は2週間から 6ヶ月。
(2) 英国では3~6歳牛が主に発症。
(3) 臨床症状は、神経過敏、攻撃的あるいは沈鬱状態となり、泌乳量の減少、食欲減退による体重減少、異常姿勢、協調運動失調、麻痺、起立不能などであり、死の転帰をとる。

照会先:食品保健部監視安全課

Q2:BSEの原因は何ですか?

A2
 BSEの原因は、他のTSEと同様、十分に解明されていませんが、最近、最も受け入れられつつあるのは、プリオンという通常の細胞タンパクが異常化したものを原因とする考え方です。プリオンは、寄生虫、細菌、ウイルスとは異なり、細菌やウイルス感染に有効な薬剤であっても効果がないとされています。
照会先:食品保健部監視安全課

Q3:ヒトや他の動物に似た病気はありますか?

A3
 BSE同様の脳にスポンジ状の変化を起こす、十分に解明されていない伝達因子によるTSEとして、めん羊や山羊のスクレイピー、伝達性ミンク脳症、ネコ海綿状脳症、シカやエルク(ヘラジカ)の慢性消耗病(chronic wasting disease)があるほか、ヒトについてもクールー、CJD(クロイツフェルト・ヤコブ病:Creutzfeldt-Jakob disease)、致死性家族性不眠症、vCJD(新変異型クロイツフェルト・ヤコブ病:variant Creutzfeldt-Jakob disease)が報告されています。
照会先:食品保健部監視安全課

Q4:BSEの伝達因子は牛のどの部位に確認されますか?

A4
 BSEに自然感染した牛では、脳、脊髄、網膜で伝達因子が確認されています。また、実験感染牛では小腸(回腸遠位部)、骨髄、脊髄神経節でも確認されています。
照会先:食品保健部監視安全課

(2)狂牛病と新変異型クロイツフェルト・ヤコブ病との関係について

Q1:BSEと新変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(variant Creutz-feldt-Jakob disease、以下「vCJD」という。)は関連がありますか?

A1
 1996年3月20日、英国の海綿状脳症諮問委員会(Spongiform Encephalopathy Advisory Committee(SEAC))は、10名のvCJDを確認し、これらはすべて1994年又は1995年に発症したもので、従来のCJDと比較して、

(1) 若年層で発生すること、
(2) 発症して死亡するまでの平均期間が6ヶ月から13ヶ月に延長していること、
(3) 脳波が異なること、
(4) 脳の病変部に広範にプリオン・プラークが認められること

など従来のCJDとは異なる特徴を有するとしました。
 疫学的研究及び症例研究では、vCJDの症例間の共通な危険因子は確認されませんでしたが、SEACによると、9名は過去10年間に牛肉を食べており、1名は91年以降、菜食主義者でした。
 SEACは、BSEとvCJDの間に直接的な科学的証拠はないが、確度の高い選択肢もなく、最も適当な説明としては、患者の発生は1989年の特定の内臓(Specified Bovine Offal)の使用禁止前にこれらを食べたことに関連があるとしました。

照会先:健康局疾病対策課
食品保健部監視安全課
Q2:1996年3月以降、BSE及びvCJDの関連に関する研究は進んでいますか?

A2
 動物試験において、BSE及びvCJDの関連に関する研究が進められており、

(1) 近交系マウスの脳内接種による潜伏期及び脳病変の分布パターンを指標とした株 のタイピング、
(2) 異常プリオンタンパクのPrPSc(プロテアーゼ耐性タンパク)の糖鎖パターン、
(3) 牛のプリオン遺伝子を導入したマウスでの脳内病変

の3つの試験結果からは、BSEとvCJDは同一の病原体ではないかとされています。

参考)BSEとvCJDの因果関係を支持する証拠となる研究
〈ネイチャー(Nature)による報告〉
 1997年10月2日の科学雑誌「ネイチャー(Nature)」に報告された2つの重要な論文により、SEAC(海綿状脳症諮問委員会)はBSEの原因物質は、vCJDの原因である可能性が高いとしました。

(1) 英国の家畜衛生研究所のDr. Moira Bruceらは、3群の近交系マウス及び1群の交雑系マウスにBSE、vCJD、及びCJDの材料を接種したところ、BSE接種群はvCJD接種群と同様の潜伏期間、臨床症状、脳病変の分布を示したことから、BSEとvCJDは同じ特徴を持つ、又は同じものであるとし、CJD及びスクレイピーとは異なるものであるとしました。
(2) また、英国の王立医科大学のDr. John Collingeらは、ヒトのPrP遺伝子を組み込んだマウスへのBSEの伝達実験を報告しており、1996年の10月24日 にも「ネイチャー」にvCJDとBSEの関連を示す関連を示すデータを報告 しています。

〈最近の実験報告〉
 最近の牛のPrP遺伝子を組み込んだマウスを用いた実験結果も、BSE感染牛がvCJDの原因であるという見方を支持しています。これらのマウスではBSE伝達因子が種の壁を超えて増殖するだけでなく、vCJDかBSEのいずれかを接種したマウス間での、病気の特徴の識別ができませんでした。
 このようにBSEがvCJDの原因であるか否かについては、直接的な確認はされていないものの、動物試験では原因であることを示唆する結果が示されています。

照会先:健康局疾病対策課
食品保健部監視安全課

2 諸外国の状況
(1)狂牛病の発生について

Q1:英国など諸外国でのBSE発生状況はどのようになっていますか?

A1
 BSEは、 OIE(国際獣疫事務局)の統計によると、本疾病が1986年に英国で発見されて以来、英国のほか、ベルギー、デンマーク、フランス、ドイツ、アイルランド、イタリア、ルクセンブルク、リヒテンシュタイン、オランダ、北アイルランド、ポルトガル、スペイン及びスイスで国産牛の発生例が報告されています。
 なお、オマーン、フォークランド諸島、デンマーク、カナダ、イタリア、アゾレスでは英国から輸入された牛でのBSE発生が報告されています。
照会先:食品保健部監視安全課

Q2:英国など諸外国でのBSE発生の原因は何ですか?

A2
 BSEは、伝達因子に汚染された肉骨粉(食肉処理の過程で得られる肉、皮、骨等の残磋から製造される飼料原料)を含む飼料の流通を通じて広がったと考えられ、その汚染原因はスクレイピーに感染した羊又は何らかのTSEに感染した牛のいずれかと考えられています。これは、1980年代の前半に製造方法が変更され、原因物質が残存した肉骨粉が給与されるようになったことにあるのではないかと考えられています。
照会先:食品保健部監視安全課

(2)新変異型クロイツフェルト・ヤコブ病の発生状況について

Q:英国など諸外国でのvCJD発生状況はどのようになっていますか?

A
 vCJDと確定されたものは、2000年末までに、英国で88名が報告され、その他フランスで3名、アイルランドで1名が報告されました。
照会先:健康局疾病対策課

3 我が国の状況

Q:日本でもBSEやvCJDは発生しているのですか?

A
1.これまで、家畜伝染病予防法(農林水産省所管)に基づく報告やと畜場法による検査では、日本国内でBSEが発生したという報告はありません。
2.また、vCJDについても、平成11年4月に施行された感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律に基づく感染症発生動向調査事業による届出や「特定疾患治療研究事業」による臨床調査個人票を用いた解析では、日本国内においてvCJDは、1例も報告されていません。

照会先:健康局疾病対策課
食品保健部監視安全課

4 我が国の安全確保対策の現状
(1)食品に関する現行の規制等について

Q1:わが国におけるBSE対策はどのようなものですか?

A1
 前述のとおり、1996年以降、vCJDがBSE感染によることを示唆する実験結果が蓄積してきていますが、現在までBSEがヒトへ感染したという直接的な証明はなされていません。
 しかしながら、念のため、高発生国である英国については牛肉等(牛肉、牛内臓及びこれらの加工品)の輸入自粛を要請するとともに、低発生国についてもOIE勧告を踏まえ、健康牛であっても脳、脊髄等の危険性の高い部位が輸入されないことが重要との認識で対応してきました。
 具体的には、牛肉等から人への病原体の感染については未確認であるが、人への感染の可能性が指摘されているため、念のため、1996年3月以降BSE発生防止対策が十分に実施されていないと考えられる英国産の牛肉及び加工品の輸入自粛を指導してきました。
 さらに、2000年12月には、農林水産省が、BSEの我が国への侵入防止に万全を期すため、EU諸国等からの牛肉等の輸入の停止措置(2001年1月1日実施)を決定しました。このことを受け、厚生労働省としても、この措置の周知を図るとともに、この措置に含まれない骨を原材料とする食品について、緊急措置としてEU諸国等からの輸入自粛を指導してきました。
 このように、これまでは緊急的に行政指導による措置を行ってきましたが、欧州におけるBSE急増が継続して問題が長期化しており、国民の食生活への不安が高まっている中で、BSEの我が国への侵入防止策をより確実なものとすることが必要と判断し、農林水産省の家畜等に係る法的措置と並んで食品衛生法に基づく法的措置を行い、2001年2月15日、牛肉、牛臓器及びこれらを原材料とする食肉製品について、EU諸国等からの新規ウインドウで開きます。輸入禁止措置(外部サイト)をとりました。
注1)EU諸国とは、ベルギー、ドイツ、フランス、イタリア、ルクセンブルグ、オランダ、デンマーク、アイルランド、英国、ギリシャ、スペイン、ポルトガル、フィンランド、オーストリア、スウェーデンをいう。
注2)食品衛生法に基づく法的措置とは、法第5条で特定疾病にかかった獣畜の肉等の販売等を禁止していることから、厚生労働省令を改正し、特定疾病に「伝染性海綿状脳症」を追加。
照会先:食品保健部監視安全課

Q2:輸入禁止措置以前にEU等から輸入された牛肉は安全ですか?

A2
 BSEに自然に罹患した牛の脳、脊髄、網膜だけで伝達因子が確認されており、実験的に罹患させた牛では小腸、骨随、脊髄神経節でも確認されていますが、一般的には健康牛のこれらの部位が確実に除かれていれば、肉等の安全性に問題がないとされています。
 2000年12月以前においては、EUのBSE発生国では、健康牛の特定危険部位(specific risk material)を除いたもののみを日本向けに輸出しており、輸入禁止前の牛肉等については問題がないと考えられます。
 今回の輸入禁止措置を講じたのは、欧州におけるBSE急増が継続して問題が長期化しており、国民の食生活への不安が高まっている中で、BSEの我が国への侵入防止策をより確実なものとすることが必要と判断したためです。欧州各国における規制の内容、実施状況及び効果が確認されるまでの間、食品衛生法に基づく法的措置を行い、牛肉、牛臓器及びこれらの原材料とする食肉製品について輸入禁止措置をとったものです。
照会先:食品保健部監視安全課

Q3:乳製品は安全ですか?

A3
 TSEに関するWHO専門家会議報告によると、動物や人の海綿状脳症においても乳はこれらの病気を伝達しないこととされており、したがって、BSEの発生率が高い国であっても、乳及び乳製品は、安全と考えられるとされています。
照会先:食品保健部監視安全課

Q4:欧州に旅行した際に牛肉を食べても安全ですか?

A4
 BSEに自然に罹患した牛の脳、脊髄、網膜だけで伝達因子が確認されており、実験的に罹患させた牛では小腸、骨随、脊髄神経節でも確認されています。
 EUのBSE発生国では、健康牛の特定危険部位(specific risk material)を除いて処理しており、市場に流通している牛肉等については基本的には問題がないと考えられますが、旅行先の政府機関の情報にも十分に気を配ることをおすすめします。
照会先:食品保健部監視安全課

厚生労働省組織図

東京都における食品の安全確保対策の体系

(設置) 
第1条中野区における食品の安全にかかる施策の充実を図り、区民の健康を増進するため、区長の附属機関として中野区食品安全委員会(以下「委員会」という。)を設置する。
(所掌事項) 
第2条委員会は、区長の諮問に応じ、食品の安全確保に関する重要な事項について調査審議する。
2委員会は、食品の安全確保を推進するために必要な事項について、区長に意見を述べることができる。
(組織) 
第3条委員会は、次に揚げる者のうちから区長が委嘱する委員15人以内をもって組織する。
 (1)学識経験者
 (2)営業者団体が推薦する者
 (3)消費者団体が推薦する者
 (4)公募による区民
2特別の事項を調査審議するため必要があるときは、委員会に臨時委員を置くことができる。
(委員の任期) 
第4条委員の任期は、2年とする。ただし、再任を妨げない。
2委員が欠けたときは、補欠委員を置くことができる。補欠委員の任期は、前任者の残任期間とする。
(会長) 
第5条委員会に会長を置き、委員の互選によりこれを定める。
2会長は、会務を総理し、委員会を代表する。
3会長に事故あるときは、あらかじめ会長の指名する委員がその職務を代理する。
(会議) 
第6条委員会は、会長が招集する。
2委員の半数以上の出席がなければ、会議を開くことができない。
3委員会の議事は、出席委員の過半数で決し、可否同数のときは、会長の決するところによる。
4委員会の会議は、公開とする。ただし、個人情報の保護等の必要があると認めるときは、非公開とすることができる。
(委任) 
第7条この条例の施行について必要な事項は、区長が定める。
附則 
 この条例は、平成5年4月1日から施行する。
氏名推薦団体名 ・ 役職等




会長
会長職務代理
豊川 裕之
稲葉 裕
渡辺 多加子
東京栄養食糧専門学校・特別顧問
放送大学客員教授
順天堂大学医学部教授
国民生活センター消費者情報部





佐藤 謹吾
五味 利量
山口 弘幸

関口 延雄

高野 成行
土屋 登茂樹

佐藤 美輝

浅岡 健一
中野食品衛生協会 会長
中野北食品衛生協会 会長
中野区商店街連合会 副ブロック長
 (平成13年2月から)
中野区商店街連合会 理事
 (平成11年9月から平成13年1月まで)
中野区商店街連合会 理事
(社)東京都食品衛生協会 新宿総合事務所長
 (平成11年12月から)
(社)東京都食品衛生協会 新宿総合事務所長
 (平成11年9月から平成11年11月まで)
日本チェーンストア協会消費者委員会委員





海老沢 恵子
大橋 美紀
江上 和美

逆瀬川 美智

中野区消費者団体連絡会
中野区消費者団体連絡会
中野区消費者団体連絡会
 (平成12年8月から)
中野区消費者団体連絡会
 (平成11年9月から平成12年7月まで)




野田 宏子
堀川 貴久美
中村 怜子

回数開催年月日内容
1平成11年 9月10日・委員の委嘱 ・会長の互選
・報告内容について
・委員会の運営について
[提供資料]食品安全委員会第2期答申
2平成11年11月17日・報告内容の確認
・東京都や国に働きかけること
[提供資料]国の施策及び予算に関する要望書
3平成12年 1月20日・区民は食の安全に対して何をするべきか
4平成12年 3月28日・区民は食の安全に対して何をするべきか
・取り組み成果の評価について
[提供資料]食生活指針の推進について 評価について
5平成12年 5月18日・区民は食の安全に対して何をするべきか
・東京都や国に働きかけること
6平成12年 8月23日・取り組み成果の評価について
[提供資料]目標設定・評価について
7平成12年10月26日・取り組み成果の評価について
[提供資料]目標設定・評価について
8平成13年 2月14日・第3期報告書の骨子について検討
9平成13年 5月11日・第3期報告書(案)について検討
10平成13年 7月18日・第3期報告書(案)について検討
11平成13年 8月27日・報告書の提出

起草委員会名簿

氏名分野
座長 稲葉 裕
 渡辺 多加子
 佐藤 謹吾
 浅岡 健一
 海老沢 恵子
 野田 宏子
学識経験者
学識経験者
営業者代表
営業者代表
消費者団体代表
公募区民代表

起草委員会検討経過

回数開催年月日内容
1平成12年12月14日座長の選出
起草委員会の進め方について
第3期報告に盛り込む内容について
2平成13年 1月30日第3期報告骨子の検討
執筆担当者の決定について
3平成13年 4月19日第3期報告(素案)の検討
4平成13年 6月29日第3期報告(素案)の検討
所属氏名備考
保健福祉部長
(中野区保健所長)
浦野 純子平成11年9月から
(平成13年4月組織改正、
 同年3月まで保健衛生部長)
保健計画課長服部 敏信平成11年9月~平成13年3月
健康推進課長川崎 亨平成13年4月から
生活衛生課長小谷松 弘市
奥山 功
杉田 茂雄
平成13年4月から
平成12年4月~平成13年3月
平成11年9月~平成12年3月
南部保健福祉相談所長城所 敏英
川岸 眞知子
平成12年4月から
平成11年9月~平成12年3月
区民部経済勤労課長中野 敏郎
高橋 一広
平成13年4月から
平成11年9月~平成13年3月
教育委員会事務局学務課長尾崎 孝
寺部 守芳
平成12年4月から
平成11年9月~平成12年3月

 [第3期報告の目次へ] | [食品安全委員会資料ページへ]

関連情報

お問い合わせ

このページは健康福祉部 生活衛生課(中野区保健所)が担当しています。

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