LGBTQinなかの座談会を行いました(令和2年3月)

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更新日:2023年8月3日

令和2年(2020年)3月、区内の性的マイノリティ当事者の皆さんと座談会を行いました。
座談会の記録を掲載します。
※座談会の様子(一部)は、なかの区報2020年4月20日号にも掲載されています。ぜひご覧ください。

概要

座談会の記録

山縣 山縣真矢(やまがたしんや)です。セクシュアリティはゲイで、仕事は編集者、ライターです。中野LGBTネットワークにじいろ(通称:中野にじねっと)の代表をしています。東京のプライドパレードを運営しているNPO法人東京レインボープライドの理事兼顧問もしています。

永野 永野靖(ながのやすし)です。ゲイです。弁護士として、性的マイノリティの方の相談に乗ったり、訴訟に関わったりしています。区のHIV検査を受託するNPO法人アカーの会員でもあります。

翁長 翁長祐太(おながゆうた)です。ゲイです。「カラフル@(あっと)はーと」という、精神疾患や発達障害を持つLGBTQのための団体があるのですが、そこに所属しています。障害のある方に関わる仕事をしています。

浅沼 浅沼智也(あさぬまともや)です。生まれたときに割り当てられた性別は女性ですが、性自認は男性で、今は性別適合手術を受けて戸籍を変更し、男性として生活しています。先ほど紹介のあったカラフル@はーとの代表を務めています。最近は「TRanS(トランス)」という団体を立ち上げ、トランスジェンダーに焦点を当てた啓発活動を行っています。仕事は看護師をしています。

大江 大江千束(おおえちづか)です。レズビアンで、LGBT当事者とアライのためのスペース「LOUD(ラウド)」(今回の座談会の会場)の代表として、1995年から活動しています。本業ではLGBT当事者のための支援事業に携わっています。同性婚を求める裁判(結婚の自由をすべての人に訴訟)の原告にもなっています。

小川 大江のパートナーでもあります小川葉子(おがわようこ)です。レズビアンで、「LOUD」副代表をしています。

 

小川 第1号になったことが大きく取り上げられて、地域の人や趣味での活動仲間に同性愛者であることが知られることになりました。不安もありましたが、地域の人に、「応援しています」と声を掛けてもらい、とても嬉しかったです。宣誓をしたことがカミングアウトにつながりましたが、私は特にそれで嫌な思いをしたことはありませんでした。

大江 私は宣誓をした年に病気をし、手術を受けました。手術には万一の場合の同意書が必要ですが、宣誓したことを病院の方に説明したら、同性のパートナーが同意書にサインすることをすんなり受け入れてくれたんです。宣誓して良かった、と強く感じた瞬間ですね。

小川 ただ、宣誓書等受領証が大きくて(笑)病院には折れないように持っていきましたが、カードのようなものがあるといいですね。

山縣 ぼくも、昨年10月に36組目となる宣誓をしました。仲間にはSNSで報告しました。パートナーとは20年来の付き合いですが、将来のことを話し合ったり、老後に備えたりするきっかけになり、絆が深まりました。宣誓書等受領証は、なにかあったときに使えるように、写真を撮って画像をスマートフォンに入れています。

翁長 自分は同性のパートナーが区外に住んでいるのですが、相手が区外で別居でも宣誓できるといいですね。

浅沼 自分は現在戸籍上は男性で、好きになるのも男性です。宣誓ができるようになり、選択肢が広がったと感じます。自治体で動いてもらったことは嬉しいですね。

永野 同性カップルには法律上の「結婚」という選択肢がなく、どんなに長年一緒に暮らしていても法律上は赤の他人ですが、パートナーシップ宣誓の制度ができたことによって、その法的効果は限定的であるとはいえ、同性カップルが確かに存在していて、保護に値するものであると自治体が公に認めたというのは、非常に意義深いことですね。渋谷区と世田谷区が2015年に制度を開始したのが最初で、その後パートナーシップ宣誓の制度は確実に全国の自治体に広がっています。

 

翁長 性的マイノリティと一括りにいっても、いろいろな方がいますね。メジャーな悩みというのは難しいですね。

山縣 例えば、レズビアンとゲイはどちらも同性愛者ですが、現状、男性、女性という性別の違いで平均収入の違いなどがありますよね。

小川 たしかに、それぞれの問題が複合的に絡み合っていますね。ただ、その中でも特有な悩みはあると思います。例えばセクシュアリティの問題は絶対に周りには言えないといって、一人で苦しんでいる方もまだたくさんいます。

大江 悩みはさまざまですが、差別や偏見を受け生きづらさを抱えている、適切な援助を受けにくいなど共通の問題があるように感じます。

翁長 当事者には若い方もいれば、高齢者もいます。自分の世代では結婚していない人が多いですが、自分より上の世代の人は、性的マイノリティの人であっても結婚して、妻や夫の知らないところで同性と交際している人もいると聞きます。世代によって事情や悩みは違います。若い方だと、学校などで問題が生じることも多いですよね。

永野 恋人や結婚について周りから聞かれて職場にいづらくなり、仕事を辞めてしまって貧困の状態になるケースもよく聞きます。他には、パートナーが外国人の同性愛者で、在留資格が得られないケースなど。日本人の異性パートナーを有する外国人であれば、結婚して「日本人の配偶者」という在留資格を得ることができますが、日本人の同性パートナーを有する外国人は、同性間の結婚が認められていないので、「日本人の配偶者」という在留資格を得ることができません。

浅沼 自分はトランスジェンダーです。性自認と体の性別が違うことで、就職に苦労したり、公共施設や職場のトイレなどが使えず、困っている人が多いんです。実際に区内でもそうした問題が起きているとも聞きます。もっと理解されてほしいですね。

山縣 今「LGBTQ」という言葉は広く取り上げられていますが、生きづらさを感じている人はまだまだ多いと思います。その生きづらさを解消していくためにはまず、LGBTQ(性的マイノリティ)の可視化を進め、その上でLGBTQのための制度ができることが大事です。ブームが過ぎてしまって忘れ去られることが怖いなと感じています。「存在の可視化から、課題の可視化へ」と言っているのですが、具体的に今、制度の改変が必要だと考えているものが大きく三つあります。一つ目は同性婚の法制化(婚姻の平等)です。二つ目は性別移行の特例法の要件の緩和。現行法では戸籍の性別変更のために性別適合手術が必要で、体への負担・リスクが非常に大きいです。三つ目はLGBTQに対する差別の禁止が法律に明記されること。その三つが性的マイノリティの生きづらさを解消していくために、今、必要な制度だと考えています。

小川 結婚するかどうかは自由ですが、同性愛者は、その土俵にも上がることができないというのは大きな問題です。

浅沼 世界保健機関(WHO)による「国際疾病分類(ICD)」の最新版(IDC-11)が作成されるにあたって、性同一性障害が「精神障害」の分類から除外されます(効力を持つのは2022年から)。今までは、性同一性障害という「病気」の診断がないと、性別の変更はできませんでした。今後はトランスジェンダーが脱精神病理化されて、生きたいように生きられるようになる。そのときに日本の性同一性障害特例法をどうするのかという課題が可視化されていくと思います。精神疾患を持っている人たちのソフト面での安心安全な居場所づくりも、同時に必要だと思い、団体の活動も続けています。

永野 EU諸国などでは、性別適合手術をしなくても、自分の性自認にしたがって性別を変更できるようになっています。今の日本の制度は、性別適合手術を間接的に強制しているのと同じで、著しい人権侵害だと思います。また、性自認に基づく社会生活を送る利益は、その人の人格にかかわるとても重要な人権の問題だというのは、裁判所も言っています。それを踏まえて、個々の困りごとのケースについて考えていかなくてはいけないですね。

小川 このマンションの一室をLOUDとして借りる時、ご高齢の大家さんに「いろんな方がいて当然です。そういう方が困っているならぜひうちにどうぞ」と言ってもらえたんです。年齢にかかわらず、理解のある方がいることに助けられています。パートナーシップ宣誓をしたときは、バッシングを覚悟していましたが、すでに顔を見知っている地域の方の反応は前向きなものでした。「中野区にはいろんな人がいるんだ」ということが広まるよう、そのためにもパートナーシップ宣誓はよいきっかけになったのではないかと感じています。

浅沼 自分は本名がとても嫌で、区の国民健康保険の担当に相談したら、「今は表面に通称名を記載し、戸籍上の氏名は裏面に記載するという方法などもあるので、一度相談してみてください」と言われ、区の職員にそういう知識があることが、すごくうれしかったです。

大江 私は同性婚の裁判に当たって、区役所に婚姻届を出しました。その窓口の職員から「区として受理はできないけれど、応援しています」と言われたことが、印象に残っています。

山縣 ぼくはイベントの宣伝などでメディアに出る機会も多いのですが、うれしかったのは近所の理髪店の方から「見たよ」とフレンドリーに言われたことですね。最近は地域のLGBTQの仲間たちと盆踊りなどの地域の行事に参加もしています。

翁長 仲間に当事者がいることを知らず、同性愛に批判的なことを言っている方を見たことがあります。職場や活動の仲間など、すぐ近くに当事者はいるんです。今回自分が区報の紙面に出ることで「自分の周りにはいない」と思っている人たちに存在を気付いてもらい、考えるきっかけになったらいいなと思っています。

小川 性自認と性的指向は、その人の生き方の問題で、それは尊厳に関わることです。同性愛は趣味なんだろう、というような無理解はつらいですね。誰にとっても大切な、生き方の問題なんです。

浅沼 性的マイノリティの人が接する機会の多い医療従事者にももっと知ってもらいたいですね。

小川 家の問題もあります。自分たちが家を借りるときは、ルームシェアだと思われて不動産屋が住み分けが完全にできる間取りの部屋を探してくれました(笑)。パートナーシップ宣誓書等受領証を見せても、保証人を別々に立てなければいけなかったり。

浅沼 トランスジェンダーだと、戸籍上の性別と見た目の性別が違うことで、何回も説明しなければならなかったり、変な目で見られて断られたりすることがあります。

翁長 災害のときはどうでしょう。同性愛者やトランスジェンダーが変な目で見られるのではないか、着替えやトイレはどうするのか、不安です。

小川 災害のときは、地域の防災会などが活躍しますが、普段から交流しておくとスムーズなのではないかと思っています。何かのときに、町内会などの地域の人が分かってくださっていると、とても心強いですね。そう思って、私は町内会でも普段から活動しています。

浅沼 中野には性的マイノリティの活動をしている団体が多いので、なにかやろう、となったときに一緒に活動しやすいです。

翁長 当事者の方も多く、イベントを企画しても人が集まりやすいです。

山縣 駅やスーパーなどどこに行っても、区内には「そうかな」と感じる方がたくさんいますね。

翁長 これからは子どもを育てる同性愛カップルなどが増えて、もっと社会の中で目につく存在になっていくと思います。

小川 区に住んでいる当事者たちが集まりつつあるのが、中野区の特徴。それがセーフティーネットにもなりつつあります。

大江 区内には性的マイノリティの当事者がたくさんいて、集まる場所もあります。安心して、まずはインターネットなどで調べてみてください。一人で悩んでいる方がいたら、安心して声を掛けてほしいですね。

小川 LOUDでは、月1回日曜日にオープンデイを開催しています。当事者ではなくても、それらに批判的な方でなければ誰でも参加できます。対面に抵抗がある方は、電話やインターネットでの相談など、さまざまな方法があるから心配しないで、と伝えたいですね。

永野 区の性的マイノリティ対面相談を受託するNPO法人パープル・ハンズでも当事者が集うサロンや電話相談を行っていますよ。私も区の相談で、相談員の一員として相談をお受けします。

浅沼 カラフル@はーとでも、さまざまなイベントを行っています。当事者で、精神疾患や発達障害などがある方は、ぜひ問い合わせてほしいです。

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