情報公開・個人情報保護審査会答申(第78号)
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更新日:2025年2月6日
答申第78号
令和7年1月27日
中 野 区 長 様
中野区情報公開・個人情報保護審査会
会長 佐藤 信行
中野区区政情報の公開に関する条例第13条第3項の規定に基づく諮問について(答申)
下記に掲げる中野区区政情報の公開に関する条例に係る審査請求について(諮問)について、別紙のとおり答申します。
記
令和4年7月5日付け4中総総第1163号
第1 審査会の結論
実施機関が行った令和4年3月7日付け3中ま中第624号による一部公開決定について、同処分を取り消し、第4を踏まえ、改めて公開決定等を行うべきである。
第2 審査請求及び審査の経緯
1 区政情報の公開請求
審査請求人((○○さん、以下「審査請求人」という。)は、中野区区政情報の公開に関する条例(以下「条例」という。)第7条の規定に基づき、実施機関である中野区長(以下適宜、「実施機関」又は「区長」という。)に対して、令和4年3月1日、区政情報公開請求を行った。
請求情報の内容は、「中野駅新北口駅前エリア再整備事業計画に係る民間事業者募集において応募者より提出された提案書一式」とした。
2 実施機関の決定
実施機関(中野駅周辺まちづくり課)は、区政情報の公開請求について、対象文書を「中野駅新北口駅前エリア拠点施設整備民間事業者募集に、施行予定者候補及び次点候補が提出した提案書一式」と特定し、同月7日、一部について公開しない理由を次のとおり付して本件処分を行い、その旨を通知した。
記
「(ア)請求情報には、応募者の関係先・取引先に係る情報が含まれており、当該情報を公開することは、事業活動に不利益を与えるため。(同第8条第1項2号)
(イ)請求情報には、応募者の企業ノウハウに係る情報が含まれており、当該情報を公開することは、事業活動の正当な競争が損なわれるため。(同第8条第1項2号)」
3 審査請求
審査請求人は、同月14日付けで、区長に対し、非公開決定とした部分(以下「本件請求情報」という。)の公開を求める審査請求を行った(以下「本件審査請求」という。)。
審査請求の趣旨は、本件処分を取り消すとの裁決を求めるものである。
審査請求の理由は、次のとおりである。
「施行予定者候補及び次点候補が提出した提案書は事業者募集時に提出されたものである。現在は状況も大幅に変わり、具体的に開発が進む前段階に入っているので、黒塗りの部分を取り消していただきたい。(補助金や従前資産額など資金計画表や施設内容は特に公にして区民に認知されるべきと考えます。)」
4 弁明書の提出
実施機関は、令和4年4月20日付けで、本件審査請求の棄却を求める弁明書を提出した。
5 反論書の提出
審査請求人は、令和4年5月30日付けで、プロポーザルの内容全てを公開することが適当であるとの反論書を提出した。
6 当審査会への諮問
区長は、令和4年7月5日付けで条例第13条第3項に基づき、当審査会に対し、本件審査請求に係る審査を諮問した。
7 意見の陳述及び資料の提出
当審査会は、区長からの諮問に際して、実施機関から提出された弁明書及び審査請求人から提出された反論書の提出を受けた。
当審査会は、中野区情報公開・個人情報保護審査会条例第9条第1項に基づき、実施機関から令和4年9月20日に意見聴取を行った。
当審査会は、情報公開条例第8条第1項に基づき、実施機関に対し、非公開部分の具体的理由が分かる資料の提出を求め、令和4年10月21日付けで受領した。
第3 実施機関及び審査請求人の主張の整理
1 実施機関の主張の要旨
(1) 実施機関が当審査会へ提出した弁明書において主張する内容は、次のとおりである。
ア 請求情報には応募者らの関係先・取引先や企業ノウハウに係る情報が含まれている可能性がある。
イ 実施機関は当該請求情報と同一の請求情報を対象とする公開請求を過去に受けたことがある。その際、条例第12条第1項に基づき、公開決定に関する反対意見の有無を応募者らへ照会し、応募者らから提出された反対意見を踏まえ、一部公開決定をした。
ウ 本件も同様の判断をした。
(2) 実施機関は、当審査会での意見聴取に際し、「施行予定者はあくまで施行予定者であり、施行認可を受けていないので、施行認可後の施行者とは異なった判断が必要になる。」との趣旨の主張をした。
(3) 実施機関は、当審査会に令和4年10月21日付けの提出資料において、本件請求情報と同一の請求情報を対象とする公開請求を過去に受けた際に第三者に意見照会をしたときの情報は、本件請求情報ではなく、審査委員会に提出した情報であったと回答した。
そのため、当審査会は、実施機関に対し、請求情報について意見照会するよう求めたところ、実施機関は、令和5年1月12日付けで、公開する部分を一部追加する旨回答をした。
(4) 当審査会が実施機関に対し、非公開とした各部分につき、実施機関が非公開とした理由を詳しく説明するよう求めたところ、実施機関は、条例第8条第1項第2号に該当する理由として、令和5年1月31日付けで、次のとおり回答した。
ア 応募者の関係先・取引先に係る情報
(ア) 本事業への参画予定者等に関する情報で、その事実や取組内容等を第三者へ公開する許諾を得ていないもの
【理由】
事業者と当該情報の当事者との間の信頼関係が損なわれるおそれや、そのことにより事業者の社会的信頼が損なわれるおそれがある。さらに、本事業の参画予定事業者等との正式な契約は今後取り交わされる予定であることから、信頼関係が損なわれることにより今後の契約締結が困難になるなど、今後の営業活動に支障を与えるおそれがある。
(イ) 事業者グループ構成員、参画予定事業者、協力事業者・団体等の個人名、役職、顔写真等
【理由】
第三者へ公開する許諾を得ていないことから、肖像権を害するおそれがある。一部については、条例第8条第1項第1号に該当する可能性がある。
(ウ) 他のプロジェクト名・地区名等及びそれらの写真
【理由】
第三者へ公開する許諾を得ていないことから、著作権等の権利を害するおそれがある。著作権法第18条第3項に基づく調整措置を行っていない。
(エ) 未確定・未公表の土地取引等に関する情報
【理由】
当該土地所有者とテナントとの現在の契約や今後の立ち退き交渉に支障を及ぼすおそれや、周辺の土地建物の取引価格が不当につり上がる等の影響を与えてしまうおそれがある。
イ 応募者の企業ノウハウに係る情報
(ア) 未確定・未公表の施設計画の詳細図面及び施設計画に係る具体的数値、設計与(ママ)条件、算定根拠等
【理由】
今後の施設計画に係る検討・調整や、建物の売買・リーシング等の営業活動に支障を与えるおそれがある。
(イ) 建物完成後の施設運営の経営戦略や営業戦略における重要な情報で、未確定・未公表の情報
【理由】
戦略上公表すべきタイミングではない時期に情報が公開されることにより、情報の先進性や機密性が失われ、今後の宣伝活動やその他の営業活動に支障を及ぼすおそれがある。また、未確定・未公表の情報であり、関係事業者の株主等に未報告の内容であることから、当該企業の経営活動に混乱を招くおそれがある。
(ウ) 新規事業・コンテンツ等に関するアイディア、取組み内容、具体的数値、イメージ図等で、事業者のこれまでの実績や専門的な知見などに基づき設定されたもの
【理由】
新規事業のアイディアや先進的な取組み内容が、競合他社や他のプロジェクトに盗用され、事業者活動の正当な競争が損なわれるおそれや、そのことにより、本事業において予定されていた取組の実現が困難になるなど、今後の事業組成に支障を与えるおそれがある。
(エ) 施設の賃料、管理費用、利益、利回り等、用途ごとの長期の施設運営に関する具体的数値であり、他地区の事例や事業者のこれまでの実績に基づく知見に基づき設定されたもの
【理由】
賃料設定や利回り等、テナント契約上の機密情報であることから、今後のテナント契約やそれに伴う交渉、さらに事業者が他地区で契約済又は契約予定のテナント契約やそれに伴う交渉に支障を及ぼすおそれがある。
(オ) 市街地再開発事業の資金計画の具体的数値
【理由】
今後必要となる関係権利者との事業計画及び権利変換計画の同意やそれに伴う交渉に支障を与えるおそれがある。また、各数値は、事業者のこれまでの実績や専門的な知見などに基づき設定された数値であることから、本事業や、事業者の実施または実施予定の他のプロジェクトに影響を与えるおそれがある。
2 審査請求人の主張の要旨
審査請求人が当審査会へ提出した反論書において主張する内容の要旨は、次のとおりである。
(1) プロポーザル方式の事業者選定・契約の透明性の確保の観点から、提案書の全てを公開することが適当である。提案書の全てを公開している他自治体の例もある。競合した次点候補の企画提案書には「従前資産額」や「補助金」「建設予定の施設の中身」などが公開されているため、施行予定者候補が同様の情報を公開することで明らかな不利益が生じるとは考えられない。さらなる情報公開により、競争上の優位性が著しく損なわれ、事業上明らかに不利益が生じる蓋然性についての具体的説明がない。
(2) 過年度の中野区審査会の判断(答申56号、59号)を根拠に情報を公開することが適当である。審査会は、情報は「原則全部公開することが公益上必要である」としている。今回公開した情報は、過去の審査請求の事例と比較して公開した情報量は明らかに少ない。
(3) 選定されなかった事業者でさえ公開している情報は、選定されて事業者の法的に保護されるべき蓋然性がある情報であるとは認められない。提案書の内容の知的財産性は非公開の根拠とならない。著作権法18条3項3号でも、「条例の手続きにより、事業者に公開する意思がなくとも法人情報を公開できる」とあるので、条例上の手続きで公開相当とすることができるものである。
第4 審査会の判断
1 中野駅新北口駅前エリア再整備事業について
(1) 中野駅新北口駅前エリア再整備事業計画
中野区は、令和2年1月、中野駅新北口駅前エリア再整備事業計画を公表した。計画では、拠点施設整備のコンセプトに基づき、拠点施設整備・誘導の基本方針を定め、この方針に基づき、民間活力を活用した整備を誘導していくものとしている。
拠点施設整備のコンセプトとして、(1)中野サンプラザのDNAを継承した、新たなシンボル拠点をつくる、(2)中野駅周辺の回遊性を高め、にぎわいと交流に満ちたまちをつくる、(3)未来に続く中野の活力・文化・暮らしをつくる、の3点を掲げた。
これらのコンセプトに対応する拠点施設整備・誘導の基本方針として、(1)中野のシンボルとなる新たな文化・芸術等発信拠点の形成、(2)公共公益性の向上につながる空間構成、(3)持続可能性を高める用途構成や機能、の3テーマが定められた。
その上で、拠点施設整備の事業化を進めるため、事業の主体となる民間事業者を募集・選定するとしている。
(2) 中野駅新北口駅前エリア拠点施設整備に関する民間事業者募集について
中野区は、同年2月、上記記載の拠点施設整備を行うにあたり、民間事業者を公募型プロポーザル方式により選定を行うことを公表した。
「中野駅新北口駅前エリア拠点施設整備民間事業者募集要項」には、次の記載がある。
ア 本募集から本事業までの大まかな流れ
市街地再開発事業施行予定者募集開始→審査委員会による審査→中野区による施行予定者候補選定→中野区と施行予定者候補との基本協定締結→施行予定者として事業化推進→施行認可公告以降、施行者として事業実施
イ 施行予定者としての役割を担う期間
基本協定締結日から、都市再開発法第7条の15第1項の規定に基づく施行の認可の公告がされた日までとします。ただし、やむを得ない事情により施行予定者としての役割を停止する場合があります。
(やむを得ない事情の例)
(1) 本事業に必要な都市計画等の見込みが立たないとき。
(2) 施行予定者を本事業の施行者とすることについて地権者の同意の見込みが立たないとき、又は、事業計画、権利変換計画に係る関係権利者の同意の見込みが立たないとき。
(3) 何らかの理由により、本事業に必要な事業計画及び権利変換計画の認可の見込みが立たないとき。
(4) やむを得ない事情により、スケジュールの大幅な遅延が見込まれるとき。
(5) やむを得ない事情により、施行予定者がその役割を継続することが困難となったとき。
ウ 施行予定者の役割
<施行予定者に求められる主な業務>
事業全体の企画・計画検討
施設建築物の企画・検討
環境アセスメント調査・手続等の各種調査業務
資金計画検討
資金調達
施設の管理運営体制検討
法的手続・関係機関協議
地権者等合意形成
補助金関係業務
他事業との各種調整
その他の施行予定者業務
エ 提出書類の取り扱い
「提出書類の著作権は、それぞれの応募者に帰属しますが、公表、展示、その他、中野区やその他関係者が必要と認めるときには、協議の上、これを無償で使用できるものとします。なお、提出書類については、中野区区政情報の公開に関する条例に基づく区政情報となります。」
「なお、応募図書に含まれる特許権、実用新案権、意匠権、商標権等、法令に基づいて保護される第三者の権利の対象となっている事項等を使用した結果生じた責任は、原則として応募者が負うものとします。」
オ 施行予定者業務について
基本協定締結までは、下記の協議等を行うことを想定しています。
・基本協定に関する協議
・施行予定者業務の進め方や今後のスケジュール調整
・地権者等への概要説明 等
基本協定締結以降は施行予定者として、「施行予定者に求められる主な業務」を中心に業務を行っていただきます。
(3) 施行予定者候補及び次点候補の選定について
中野区は、令和3年1月29日、施行予定者候補及び次点候補を選定したことを公表し、それぞれの代表事業者名及び構成事業者(施行予定者、協力事業者)名を公表した。
(4) 基本協定の締結について
中野区は、令和3年5月6日、施行予定者候補との間で、「中野駅新北口駅前エリア拠点施設整備の事業化推進に関する基本協定書」を締結し、同協定の締結をもって、施行予定者候補を施行予定者として正式に決定したことを公表するとともに、協定を締結した相手である代表事業者及び共同事業者名を公表した。
(5) 今後のスケジュール
中野区は、令和4年12月、都市計画の決定・変更手続きを行っており、令和6年度に施行認可予定、令和7年度に工事着工予定、令和11年度に工事完了予定としていた。
2 施行認可前であることについて
実施機関は、施行予定者はあくまでも施行予定者であり、正式に施行認可を受けていないので、施行予定者が公開を同意しない部分については非公開とすることが適当であると主張する。
本募集から本事業までの大まかな流れは、第4第1項(2)ア記載のとおり、市街地再開発事業施行予定者募集開始→審査委員会による審査→中野区による施行予定者候補選定→中野区と施行予定者候補との基本協定締結→施行予定者として事業化推進→施行認可公告以降、施行者として事業実施となっている。
そして、同項(3)記載のとおり、中野区は、令和3年1月29日、施行予定者候補及び次点候補を選定したこと及びそれぞれの代表事業者名及び構成事業者(施行予定者、協力事業者)名を公表した。
さらに、同項(4)記載のとおり、中野区は、令和3年5月6日、施行予定者候補との間で、「中野駅新北口駅前エリア拠点施設整備の事業化推進に関する基本協定書」を締結し、同協定の締結をもって、施行予定者候補を施行予定者として正式に決定したことを公表するとともに、協定を締結した相手である代表事業者及び共同事業者名を公表した。
その後、施行認可前であるが、施行予定者は、同項(2)イ記載のとおり、施行予定者としての役割を担って活動を開始し、同項(2)ウに記載された中野区が求める主な業務を行ってきた。その業務は、施行者として必要とされる業務である。
このようにして施行予定者は、実施機関との関係では、施行者同様の緊密な関係となっているし、対外的にもすでに施行予定者は施行者と同様の存在となっていたものということができる。実際に、令和4年12月17日及び同月20日に開催された中野四丁目新北口地区・囲町地区都市計画に係る説明会では、施行予定者が拠点施設整備案として計画概要を発表しており、社会通念上も施行予定者が施行者と同様の役割を担うものとして認識されていたと考えられる。
ところで、中野区が公表している資料(令和6年11月11日中野駅周辺整備・西武新宿線沿線まちづくり調査特別委員会資料「中野駅新北口駅前エリアにおける市街地再開発事業の検討状況について」)によれば、請求対象文書に係る中野四丁目新北口駅前地区第一種市街地再開発事業については、「令和6年10月11日付で施行予定者より区に施行認可申請の取り下げについて通知があり、区より東京都に対し同内容の通知を行った。」とされている。また同資料によれば、令和6年10月31日付で本事業に係る工事費について、施行予定者より以下のとおり報告があったとされている。
(施行予定者報告内容)
・令和6年8月末に算出した工事費は、特定業務代行者にて基本設計に基づき専門業者から見積りを徴取し積算したものである。
・専門業者(設備業者)の繁忙及び2024年問題等の実情を踏まえており、専門業者(設備業者)においては工事期間が繁忙期と重なっている中、施工可能な業者を確保することを前提に進めた結果、予想以上にコストがかかることとなった。
・特定業務代行者から示された工事費について、第三者への委託による精査を踏まえ、特定業務代行者と協議を行ったが、大幅な減額は難しいことが分かった。そのため、施設計画について、部分的な変更に留まらず、基本計画から見直しが必要であることから、令和7年度中の施行認可の申請は極めて困難である。
また同資料には、次のように「区としては、全地権者と施行予定者で締結している基本協定に基づき今後の事業の推進に向けて協議しており、年内に施設計画変更の方向性を示し、年度内には区や各地権者等と協議のうえ事業計画の見直し方針及び今後のスケジュールを取りまとめるよう求めている。併せて、施行予定者に対し、施行認可申請時の事業計画に示されていたスケジュールからの遅延に伴い新たに生じる地権者への負担については、施行予定者側で負担するよう求めている。」との記載がある。こうした状況を踏まえ、当審査会は令和6年11月25日付けで施行予定者に対して「今般、請求対象文書に係る「中野四丁目新北口駅前地区第一種市街地再開発事業」について、東京都に対する施行認可申請の取り下げがなされたことから、この取り下げを前提として先に提出された意見書を修正する意見又は追加の意見があれば、当審査会の審査資料として取り扱いますので、意見がある場合にはその意見を、無い場合にはその旨、下記の期限までに、文書にて提出されるように求めます。」との依頼(6中総総第2442号)を行ったところ、施行予定者からは同年12月13日付けで「修正に関する意見はございません。」との回答を得た。
以上を総合すると、実施機関が主張するように、施行予定者はあくまでも施行予定者であり、正式に施行認可を受けていないので、施行予定者が公開を同意しない部分については非公開とすることが適当であるとの考え方にも一定の合理性は認められるとしても、少なくとも一時期においては、社会通念上本件施行予定者が施行者と同視しうる程度の関わりを有していたこと、また、むしろ現状のように、中野区等との間で基本協定が締結されて施行予定者として3年以上の期間に渡って各種活動を行ったものから施行認可申請の取り下げの通知がなされるような場合に、施行予定者が未だ施行者ではないことを理由として、その同意しない部分を非公開とするならば、条例第1条が定める「区民の知る権利を保障し、区民と区との情報の共有を図ることにより住民自治と開かれた区政運営を推進すること」という条例上の目的を大きく阻害することになることに鑑み、実施機関の主張は認めることができない。
3 条例第8条第1項第2号該当性について
実施機関は、非公開とした部分は、その理由をすべて条例第8条第1項第2号に該当する旨主張している。
条例第8条第1項第2号の「事業上明らかに不利益を与えると認められるもの」とは、法的保護に値する程度の蓋然性をもって公開による事業上の利益侵害が生じ得る場合を指すと解される。
上記を前提に、以下、実施機関の主張を検討するが、実施機関が追加で公開をするとした部分については、公開することが適当であるため、ここでは検討しない。
4 施行予定者及び次点候補が提出した提案書について
(1) 施行予定者が提出した提案書一式
実施機関は、非公開とした部分を、応募者の関係先・取引先に係る情報と応募者の企業ノウハウに係る情報とに区分し、さらに前者については4項目、後者については5項目に分類して理由を述べている。以下、その理由について検討する。
ア 応募者の関係先・取引先に係る情報
(ア) 本事業への参画予定事業者等に関する情報で、その事実や取組内容等を第三者へ公開する許諾を得ていないもの
実施機関は上記の項目について、非公開とした理由を、事業者と当該情報の当事者との間の信頼関係が損なわれるおそれがあり、そのことにより事業者の社会的信頼が損なわれるおそれがある、本事業の参画予定事業者等との正式な契約は今後取り交わされる予定であることから、信頼関係が損なわれることにより今後の契約締結が困難になるなど、今後の営業活動に支障を与えるおそれがある、としている。
当審査会が見分したところ、当該情報は、
1 本事業への参画予定の個人名
2 本事業への参画予定の団体名
3 本事業への参画予定の団体名(公表済)
4 本事業の地権者(公表済)
5 説明及び説明の一部
6 施行予定者(アルファベット表記)
7 説明の図
に分類される。
1は、個人に関する情報となるため、条例第8条第1項第1号の個人情報に該当し、非公開とすることが適当である。
2は、施行予定者が開拓し関係を構築した団体であるが、本事業の性質上地元の団体が主となっており、公開することで施行予定者の事業活動が損なわれる可能性があるとは考えにくい。したがって、条例第8条第1項第2号の法人情報には該当せず、公開とすることが適当である。
3は、本件において公開している個所があるため、非公開とする理由がない。したがって公開とすることが適当である。
4は、地権者として公表されているため、非公開の理由がない。したがって公開とすることが適当である。
5は、本事業への参画予定者等を説明する言葉等であるが、公開することで施行予定者の事業活動が損なわれる可能性があるとは考えにくい。また、写真は客観的な事実を忠実に写したものであり、著作性が低く、著作権を侵害しない。したがって、条例第8条第1項第2号の法人情報には該当せず、公開とすることが適当である。
6は、施行予定者はすべて公表されているため、非公開とする理由がない。したがって公開とすることが適当である。
7は、説明を図にしたものであるが、公開されることで他社に模倣されるようなものではなく、法的保護に値する程度の蓋然性をもって利益侵害が発生するとは考えられないため、条例第8条第1項第2号の法人情報に該当しない。したがって、公開とすることが適当である。
(イ) 事業者グループ構成員、予定事業者、協力事業者・団体等の個人名、役職、顔写真等
実施機関は、上記の項目について、非公開とした理由を、第三者へ公開する許諾を得ていないことから、肖像権を害するおそれがある。一部については、条例第8条第1項第1号に該当する可能性がある、としている。
当審査会が見分したところ、当該情報は、
1 個人名
2 個人の顔写真
3 個人が担当した他のプロジェクト名
4 写真の説明
5 本事業への参画予定の団体名
に分類される。
1、2は個人に関する情報であるため、条例第8条第1項第1号の個人情報に該当し、非公開とすることが適当である。
3は、当該個人が担当した他のプロジェクト名であるが、かかるプロジェクトを担当した者は複数おり、公開したとしても当該個人を想起させる情報であるとはいえないことから、特定の個人を識別できる情報とはいえず、条例第8条第1項第1号の個人情報に該当しないため、公開とすることが適当である。
4は、写真の説明であるが、公開されることで他社に模倣されるようなものではなく、法的保護に値する程度の蓋然性をもって利益侵害が発生するとは考えられないため、条例第8条第1項第2号の法人情報に該当しない。したがって、公開とすることが適当である。
5については、施行予定者が開拓し関係を構築した団体であるが、本事業の性質上地元の団体が主となっており、公開することで施行予定者の事業活動が損なわれる可能性があるとは考えにくい。したがって、条例第8条第1項第2号の法人情報には該当せず、公開とすることが適当である。
(ウ) 他のプロジェクト名・地区名等及びそれらの写真
実施機関は、上記の項目について、非公開とした理由を、第三者へ公開する許諾を得ていないことから、著作権等の権利を害するおそれがある、著作権法第18条第3項に基づく調整措置を行っていない、としている。
当審査会が見分したところ、当該情報は、
1 計画を説明するためのイメージ写真(施行予定者)
2 計画を説明するためのイメージ写真(参画予定者)
3 計画を説明するためのイメージ写真
4 施行予定者グループが参画した取り組み事例の名称
5 施行予定者が行う予定の取り組み名称
6 参画予定団体の名称
7 ホール運営において連携予定、誘致予定の事業者、イベントのロゴマーク
に分類される。
1は、施行予定者の計画を説明するイメージ写真であり、施行予定者は公表されているため、条例第8条第1項第2号の法人情報に該当しない。実施機関は、著作権を侵害する旨主張するが、当該写真は客観的な事実を忠実に写したものであり、著作性が低く、著作権を侵害しない。したがって、公開とすることが適当である。
2は、参画予定者の計画を説明するイメージ写真である。施行予定者が開拓し関係を構築した団体であるが、本事業の性質上地元の団体が主となっており、公開することで施行予定者の事業活動が損なわれる可能性があるとは考えにくい。また、当該写真は客観的な事実を忠実に写したものであり、著作性が低く、著作権を侵害しない。したがって、条例第8条第1項第2号の法人情報には該当せず、公開とすることが適当である。
3は、計画を説明するためのイメージ写真であり、1同様の理由により、条例第8条第1項第2号の法人情報に該当しない。また、当該写真は客観的な事実を忠実に写したものであり、著作性が低く、著作権を侵害しない。したがって、公開とすることが適当である。
4は、施行予定者グループが参画した取り組み事例の名称であり、施行予定者は公表されているため、条例第8条第1項第2号の法人情報に該当しない。したがって、公開とすることが適当である。
5は、施行予定者が行う予定の取り組み名称であるが、一般的抽象的な記載にとどまっており、公開されることで他社に模倣されるようなものではなく、法的保護に値する程度の蓋然性をもって利益侵害が発生するとは考えられないため、条例第8条第1項第2号の法人情報に該当しない。したがって、公開とすることが適当である。
6は、参画予定団体が手掛けた建物等の名称である。参画予定団体は施行予定者が開拓し関係を構築した団体であるが、本事業の性質上地元の団体が主となっており、公開することで施行予定者の事業活動が損なわれる可能性があるとは考えにくい。したがって、条例第8条第1項第2号の法人情報には該当せず、公開とすることが適当である。
7は、参画予定団体のロゴマークであり、参画予定団体は施行予定者が開拓し関係を構築した団体であるが、本事業の性質上地元の団体が主となっており、公開することで施行予定者の事業活動が損なわれる可能性があるとは考えにくい。したがって、条例第8条第1項第2号の法人情報には該当せず、公開とすることが適当である。
(エ) 未確定・未公表の土地取引等に関する情報
実施機関は、上記の項目について、非公開とした理由を、当該土地所有者とテナントとの現在の契約や今後の立ち退き交渉に支障を及ぼすおそれや、周辺の土地建物の取引価格が不当につり上がる等の影響を与えてしまうおそれがある、としている。
当審査会が見分したところ、当該情報は、未確定・未公表の土地取引等に関する情報である。これらは施行予定者固有の事業計画であり、公開されることで事業活動が損なわれる蓋然性が高い。
したがって、条例第8条第1項第2号の法人情報に該当し、非公開とすることが適当である。
イ 応募者の企業ノウハウに係る情報
(ア) 未確定・未公表の施設計画の詳細図面及び施設計画に係る具体的数値、設計与(ママ)条件、算定根拠等
実施機関は、上記の項目について、非公開とした理由を、今後の施設計画に係る検討・調整や、建物の売買・リーシング等の営業活動に支障を与えるおそれがある、としている。
当審査会が見分したところ、当該情報は、
1 多目的ホールに関する具体的数値等(公表済)
2 多目的ホールに関する具体的数値等(未公表)
3 多目的ホールに関する説明
4 施行予定者(アルファベット表記)
である。
1については、すでに公表されているため、非公開事由に該当しない。
2、3については、本事業固有の条件のもとで作成されたプロポーザル審査のための仮定の数値等である以上、法的保護に値する程度の蓋然性をもって利益侵害が発生するとは認められないため、条例第8条第1項第2号の法人情報に該当しない。
4については、施行予定者はすべて公表されているため、非公開事由に該当しない。
したがって、当該情報はすべて公開とすることが適当である。
(イ) 建物完成後の施設運営の経営戦略や営業戦略における重要な情報で、未確定・未公表の情報
実施機関は、上記の項目について、非公開とした理由を、戦略上公表すべきタイミングではない時期に情報が公開されることにより、情報の先進性や機密性が失われ、今後の宣伝活動やその他の営業活動に支障を及ぼすおそれがある。また、未確定・未公表の情報であり、関係事業者の株主等に未報告の内容であることから、当該企業の経営活動に混乱を招くおそれがある、としている。
当審査会が見分したところ、当該情報は、
1 施行予定者・協力事業者(アルファベット表記)
2 施行予定者・協力事業者が運営する団体名
3 施行予定者・協力事業者が関与した固有名詞
4 説明
に分類される。
1は、施行予定者・協力事業者の企業名をアルファベット表記にしたものである。企業名は、令和3年1月に実施機関が公表しており、非公開事由に該当しない。
2は施行予定者・協力事業者が運営する団体名であり、施行予定者・協力事業者が公表されている以上、非公開事由に該当しない。
3は、すでに一般に公表されているものであるため、非公開事由に該当しない。
4は、一般的抽象的な記載にとどまっており、法的保護に値する程度の蓋然性をもって利益侵害が発生するとは考えられない。
したがって、当該情報はすべて公開とすることが適当である。
(ウ) 新規事業・コンテンツ等に関するアイディア、取組み内容、具体的数値、イメージ図等で、事業者のこれまでの実績や専門的な知見などに基づき設定されたもの
実施機関は、上記の項目について、非公開とした理由を、新規事業のアイディアや先進的な取組み内容が、競合他社や他のプロジェクトに盗用され、事業者活動の正当な競争が損なわれるおそれや、そのことにより、本事業において予定されていた取組の実現が困難になるなど、今後の事業組成に支障を与えるおそれがある、としている。
当審査会が見分したところ、当該情報は、新規事業・コンテンツ等に関する説明であるが、一般的抽象的な記載にとどまっており、公開されることで他社に模倣されるようなものではなく、法的保護に値する程度の蓋然性をもって利益侵害が発生するとは考えられない。
したがって、当該情報はすべて公開とすることが適当である。
(エ) 施設の賃料、管理費用、利益、利回り等、用途ごとの長期の施設運営に関する具体的数値であり、他地区の事例や事業者のこれまでの実績に基づく知見に基づき設定されたもの
実施機関は、上記の項目について、非公開とした理由を、賃料設定や利回り等、テナント契約上の機密情報であることから、今後のテナント契約やそれに伴う交渉、さらに事業者が他地区で契約済又は契約予定のテナント契約やそれに伴う交渉に支障を及ぼすおそれがある、としている。
当審査会が見分したところ、当該情報は、長期の施設運営に関する具体的数値及びその説明である。
当該情報は、施行予定者の固有の事業計画であり、公開されることで競争上の地位が損なわれる蓋然性が高く、条例第8条第1項第2号の法人情報に該当する。
したがって、当該情報はすべて非公開とすることが適当である。
(オ) 市街地再開発事業の資金計画の具体的数値
実施機関は、上記の項目について、非公開とした理由を、今後必要となる関係権利者との事業計画及び権利変換計画の同意やそれに伴う交渉に支障を与えるおそれがある。また、各数値は、事業者のこれまでの実績や専門的な知見などに基づき設定された数値であることから、本事業や、事業者の実施または事業予定の他のプロジェクトに影響を与えるおそれがある、としている。
当審査会が見分したところ、当該情報は、市街地再開発事業の資金計画表である。資金計画表は、
1 従前資産
2 施設建築物計画諸元
3 用途ごとの支出内訳
4 補助金収入
5 総床価額
6 権利変換計画
7 保留床処分見込み
8 年度別支出・収入
9 金利計算
10 資金計画まとめ
に分類される。そのうち一部はすでに公開されている。
1は、次点候補はすべてを公開済である。土地建物面積は、募集要項18頁で公開済であり、土地・建物評価額は、施行予定者の専門的な知識等に基づき算出されるものではなく、一般に公開されている方法により算出可能である。よって、「企業ノウハウ」には該当しない。権利変換計画の大枠はすでに事業計画で公表されており、土地・建物評価額及び権利変換金額、転出額を公にしても、法的保護に値する程度の蓋然性をもって、法人の競争上又は事業運営上の地位その他社会的な地位が損なわれるとは認められない。したがって、公開とすることが適当である。
2は、次点候補はすべてを公開済である。具体的数値を公にすることで資金計画に関する施行予定者のノウハウ等が明らかになり、法的保護に値する程度の蓋然性をもって、法人の競争上又は事業運営上の地域その他社会的地位が損なわれるとは認められない。また、公募型プロポーザル方式の性質に鑑みれば、透明性を担保する必要性から、施行予定者選定に係る根拠資料で評価対象となったすべての情報について、個人情報等を除き、原則、公開とすることが適当である。
3は、施行予定者の固有の資金計画及び事業計画であり、土地整備費や工事費の積算等、施行予定者のノウハウに基づく具体的数値は、企業秘密に該当する。当該情報を公開することにより、同業他社の事業戦略策定上の資料にされるなど、法的保護に値する程度の蓋然性をもって、事業上明らかに不利益を与えるおそれがある。したがって、用途ごとの支出内訳は、条例第8条第1項第2号の法人情報に該当し、非公開とすることが適当である。
4は、すでに公表された事業概要の「資金計画」の中で補助金の具体的金額が公表されている。「補助金収入」は、当該情報から推測可能な情報であるから、法的保護に値する「企業ノウハウ」には該当しない。また、次点候補は、補助金収入に係るすべての情報を公開済である。これを公開したとしても、法的保護に値する程度の蓋然性をもって、法人の競争上又は事業運営上の地位その他社会的な地位が損なわれるとは認められない。したがって、公開とすることが適当である。
5は、次点候補はすべてを公開済である。これらの具体的数値は、施行予定者の専門的な知識やノウハウに基づき算出されるものではなく、すでに公表済の情報と組み合わせることによっても算出でき、法的保護に値する「企業ノウハウ」には該当しない。公にしても、法的保護に値する程度の蓋然性をもって、法人の競争上又は事業運営上の地位その他社会的な地位が損なわれるとは認められない。公募型プロポーザル方式の性質に鑑みれば、当該情報は、一種の入札情報であり、透明性を担保する必要性からも評価対象となったすべての情報について、個人情報等を除き、原則、公開とすることが適当である。
6は、次の理由により、一部公開とすべきである。
施行予定者は、6についてすべての情報を非公開としている。地権者の権利床の面積と価額、従前資産額権利変換分については、施行予定者の専門的な知識やノウハウに基づき算出されるものではなく、すでに公表済の情報と組み合わせることによって算出することができ、「企業ノウハウ」には該当しない。当該情報を公開することにより、法的保護に値する程度の蓋然性をもって、事業上明らかに不利益を与えるおそれがあるとまではいえない。したがって、公開とすることが適当である。
他方で、6のうち、上記以外の権利変換計画における各数値((1)用途ごとの賃貸面積÷専床面積、床価額と土地・建物ごとの価額、(2)権利床の面積及び金額、(3)施行予定者の保留床の面積及び価額)は、公開請求時点で公になっていない事業計画や内部情報が含まれ、施行予定者の実績や専門的な知見、施行予定者・協力事業者の企業秘密に基づき算出された還元率などを含む、施行予定者固有の数値であり、企業ノウハウに該当する。当該情報が公開されることにより、関係権利者との権利変換契約の同意やそれに伴う交渉に支障を与える恐れがあり、事業上明らかに不利益を与えるおそれがある。また、都市再開発法第83条の規定により、権利変換計画は、2週間の公衆の縦覧に供することが義務付けられるが、縦覧方法や場所、限定された縦覧期間等を踏まえれば、広く一般に周知される情報とまではいえず、条例第8条第1項第1号ア「法令若しくは条例の規定により又は慣行として公開することとされている情報」には該当しない。したがって、6のうち、地権者の権利床の面積と価額、従前資産額権利変換分以外の権利変換計画における各数値(1)~(3)は、条例第8条第1項第2号の法人情報に該当し、非公開とすることが適当である。
7は、用途ごとの、(1)賃貸面積÷専床面積、(2)単価、(3)保留床譲渡見込額、(4)床原価、(5)床原価単価、(6)収支差すべてを黒塗りとし非公開としている。当該情報は、施行予定者の経験や蓄積した資金調達に関するノウハウや専門知識、保留床の販売力、協力事業者との契約等に基づき算出された用途ごとの具体的数値である。施行予定者固有の事業計画であり、当該ノウハウや知識は企業秘密である。当該情報が公開されることにより、法的保護に値する程度の蓋然性をもって、事業上明らかに不利益を与えるおそれがある。したがって、条例第8条第1項第2号の法人情報に該当し、非公開とすることが適当である。
8は、年度別の概算であり、次点候補も当該情報を公開していることから、当該情報を公開することにより、法的保護に値する程度の蓋然性をもって、事業上明らかに不利益を与えるおそれがあるとまではいえない。したがって、条例第8条第1項第2号の法人情報に該当せず、公開とすることが適当である。
9は、次点候補はすべての情報を公開している。公募型プロポーザル方式の性質に鑑みれば、透明性を担保する必要性からも評価対象となったすべての情報について、個人情報等を除き、原則、公開することが妥当である。
10は、(1)調査設計計画費、(2)土地整備費、(3)補償費、(4)工事費、(5)事務費、(6)予備費、(7)借入金利子、(8)補助金、(9)保留床処分金、(10)合計額のうち、(10)合計額を除く情報を黒塗りとし、非公開としている。都市再開発法第7条の11第1項により、資金計画を含む事業計画を定め、2週間の公衆の縦覧に供しなければならず(都市再開発法第53条第1項)、当該公募型プロポーザル方式の性質に鑑みれば、透明性を担保する必要性からも、提案書における評価対象となったすべての情報について、個人情報等を除き、原則、公開することが適当である。当該情報は概算であり、次点候補も当該情報を公開していることから、当該情報を公開することにより、法的保護に値する程度の蓋然性をもって、事業上明らかに不利益を与えるおそれがあるとまではいえない。したがって、条例第8条第1項第2号の法人情報に該当せず、公開とすることが適当である。
(2) 次点候補が提出した提案書一式
実施機関は、非公開とした部分を、応募者の関係先・取引先に係る情報と応募者の企業ノウハウに係る情報とに区分し、さらに前者については4項目、後者については2項目に分類して理由を述べている。以下、その理由について検討する。
ア 応募者の関係先・取引先に係る情報
(ア) 本事業への参画予定者等に関する情報で、その事実や取組内容等を第三者へ公開する許諾を得ていないもの
実施機関は上記の項目について、非公開とした理由を、事業者と当該情報の当事者との間の信頼関係が損なわれるおそれがあり、そのことにより事業者の社会的信頼が損なわれるおそれがある、本事業の参画予定事業者等との正式な契約は今後取り交わされる予定であることから、信頼関係が損なわれることにより今後の契約締結が困難になるなど今後の営業活動に支障を与えるおそれがある、としている。
当審査会が見分したところ、当該情報は、本事業への参画予定の団体名である。
施行予定者とは異なり、次点候補は本事業を担当しない可能性が高いため、次点候補が開拓し関係を構築した団体を他社に知られることで次点候補の事業活動が損なわれる可能性がある。したがって、条例第8条第1項第2号の法人情報に該当し、非公開とすることが適当である。
(イ) 事業者グループ構成員、予定事業者、協力事業者・団体等の個人名、役職、顔写真等
実施機関は、上記の項目について、非公開とした理由を、第三者へ公開する許諾を得ていないことから、肖像権を害するおそれがある。一部については、条例第8条第1項第1号に該当する可能性がある、としている。
当審査会が見分したところ、当該情報は、個人の顔写真である。
したがって、条例第8条第1項第1号の個人情報に該当するものとして非公開とすることが適当である。
(ウ) 他のプロジェクト名・地区名等及びそれらの写真
実施機関は、上記の項目について、非公開とした理由を、第三者へ公開する許諾を得ていないことから、著作権等の権利を害するおそれがある、著作権法第18条第3項に基づく調整措置を行っていない、としている。
当審査会が見分したところ、当該情報は、本事業への参画予定者の事業の写真であった。
施行予定者とは異なり、次点候補は本事業を担当しない可能性が高いため、次点候補が開拓し関係を構築した団体を他社に知られることで次点候補の事業活動が損なわれる可能性がある。したがって、条例第8条第1項第2号の法人情報に該当し、非公開とすることが適当である。
(エ) 未確定・未公表の土地取引等に関する情報
実施機関は、上記の項目について、非公開とした理由を、当該土地所有者とテナントとの現在の契約は今後の立ち退き交渉に支障を及ぼすおそれや、周辺の土地建物の取引や取引価格が不当につり上がる当の影響をあたえてしまうおそれがある、としている。
当審査会が見分したところ、当該情報は、未確定・未公表の土地取引等に関する情報である。
当該情報は、次点候補固有の事業計画であり、公開されることで事業活動が損なわれる蓋然性が高い。
したがって、条例第8条第1項第2号の法人情報に該当し、非公開とすることが適当である。
イ 応募者の企業ノウハウに係る情報
(ア) 施設の賃料、管理費用、利益、利回り等、用途ごとの長期の施設運営に関する具体的数値であり、他地区の事例や事業者のこれまでの実績に基づく知見に基づき設定されたもの
実施機関は、上記の項目について、非公開とした理由を、賃料設定や利回り等、テナント契約上の機密情報であることから、今後のテナント契約やそれに伴う交渉、さらに事業者が他地区で契約済又は契約予定のテナント契約やそれに伴う綱領に支障を及ぼすおそれがある。
当該情報は、次点候補固有の事業計画であり、公開されることで競争上の地位が損なわれる蓋然性が高い。
したがって、条例第8法第1項第2号の法人情報に該当し、非公開とすることが適当である。
(イ) 市街地再開発事業の資金計画の具体的数値
実施機関は、上記の項目について、非公開とした理由を、今後必要となる関係権利者との事業計画及び権利変換計画の同意やそれに伴う交渉に支障を与えるおそれがある、各数値は、事業者のこれまでの実績や専門的な知見などに基づき設定された数値であることから、本事業や、事業者の実施または事業予定の他のプロジェクトに影響を与えるおそれがある、としている。
当審査会が見分したところ、当該情報は、市街地再開発事業の資金計画表のうち、
1 用途ごとの支出内訳
2 権利変換計画
3 保留床処分見込み
である。そのうち一部はすでに公開されている。
1は、次点候補固有の事業計画であり法的保護に値し、公開されることで競争上の地位が損なわれる蓋然性が高い。
したがって、条例第8法第1項第2号の法人情報に該当し、非公開とすることが適当である。
2は、次の理由により、一部公開とすべきである。
次点候補は、2について一部の情報を非公開としている。地権者の権利床の面積と価額については、次点候補の専門的な知識やノウハウに基づき算出されるものではなく、すでに公表済の情報と組み合わせることによって算出することができ、「企業ノウハウ」には該当しない。当該情報を公開することにより、法的保護に値する程度の蓋然性をもって、事業上明らかに不利益を与えるおそれがあるとまではいえない。したがって、公開とすることが適当である。
他方で、2のうち、上記以外の権利変換計画における各数値((1)用途ごとの床価額と土地・建物ごとの価額、(2)次点候補の保留床の面積及び価額)は、公開請求時点で公になっていない事業計画や内部情報が含まれ、次点候補の実績や専門的な知見、次点候補・協力事業者の企業秘密に基づき算出された還元率などを含む、次点候補固有の数値であり、企業ノウハウに該当する。当該情報が公開されることにより、関係権利者との権利変換契約の同意やそれに伴う交渉に支障を与える恐れがあり、事業上明らかに不利益を与えるおそれがある。また、都市再開発法第83条の規定により、権利変換計画は、2週間の公衆の縦覧に供することが義務付けられるが、縦覧方法や場所、限定された縦覧期間等を踏まえれば、広く一般に周知される情報とまではいえず、条例第8条第1項第1号ア「法令若しくは条例の規定により又は慣行として公開することとされている情報」には該当しない。したがって、2のうち、地権者の権利床の面積と価額以外の権利変換計画における各数値(1)及び(2)は、条例第8条第1項第2号の法人情報に該当し、非公開とすることが適当である。
3は、用途ごとの、(1)単価、(2)保留床譲渡見込額、(3)床原価、(4)床原価単価を黒塗りとし非公開としている。当該情報は、次点候補の経験や蓄積した資金調達に関するノウハウや専門知識、保留床の販売力、協力事業者との契約等に基づき算出された用途ごとの具体的数値である。次点候補固有の事業計画であり、当該ノウハウや知識は企業秘密である。当該情報が公開されることにより、法的保護に値する程度の蓋然性をもって、事業上明らかに不利益を与えるおそれがある。したがって、条例第8条第1項第2号の法人情報に該当し、非公開とすることが適当である。
第5 結論
以上により、上記第1記載のとおり、判断する。
中野区情報公開・個人情報保護審査会
委員 岩 隈 道 洋
委員 岸 本 有 巨
委員 小 池 知 子
委員 神 山 静 香
委員 佐 藤 信 行(会長)
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