情報公開・個人情報保護審査会答申(第43号)

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更新日:2023年11月15日

答申第43号

令和4年2月10日

中野区教育委員会 殿

中野区情報公開・個人情報保護審査会 

会長 佐藤 信行 

 

中野区区政情報の公開に関する条例第13条第3項の規定に基づく諮問について(答申)


下記に掲げる中野区区政情報の公開に関する条例に係る審査請求について(諮問)について、別紙のとおり答申します。


・ 令和3年8月16日付け3中教教第681号

第1 審査会の結論

 本件審査請求は、棄却すべきである。

第2 審査請求及び審査の経緯

1 区政情報公開請求
 審査請求人は、令和2年12月26日付で、中野区区政情報の公開に関する条例(以下「情報公開条例」という。)第7条第1項の規定に基づき実施機関である中野区教育委員会(以下、「実施機関」という。)に対して、区政情報公開請求書(以下「本件情報公開請求」という。)を提出した。
 審査請求人が請求した区政情報(以下「請求情報」という。)の内容は、以下のとおりである。
 国交省住宅局建築指導課「歴史的建築物の活用に向けた条例整備ガイドライン」(以下「ガイドライン」という。)によれば、条例を定めることにより旧中野刑務所正門(以下「正門」という。)について建築基準法の適用除外を受け現地で保存することが可能であるとしている。中野区がガイドラインを無視して条例を定めないことを前提として区議会や区民に対して説明している理由がわかる文書(例えば、庁内でガイドラインを参照し議論した結果、そう説明せざるを得ないと決定した旨が記された文書)の公開を請求した。
 なお、請求した文書が不存在の場合には、情報公開条例第3条第2項に基づき「わざとガイドラインを無視して区民に説明している理由の説明」を求めた。

2 実施機関の決定
 実施機関は、上記1の公開請求に対して、請求情報に係る文書を作成していないとの理由による非公開決定をし、情報公開条例第10条第1項の規定により、令和3年1月12日付けで、請求人に対して区政情報の不存在を通知した。

3 審査請求
 審査請求人は、区政情報の不存在を理由とする非公開決定を不服として、情報公開条例第13条第1項に基づき、令和3年2月2日付けで、実施機関に対して審査請求を行った。
その主旨は、請求情報に係る文書は教育委員会が当然に作成していなければならないものであり、仮に正門につき建築基準法の適用除外を受けるために必要な条例の制定を「検討していないなら検討し、その文書を開示せよ」との裁決を求めるというものである。
 本件審査請求の理由は、次のとおりである。
(1)本件決定において不存在とされた文書は、中野区長(以下「区長」という。)が地方自治法第180条の7の定める補助執行をする教育委員会の通常の事務に係るものである。
また、中野区の理事者が接道条件をあたかも必須で既定のものとして区議会の委員会及び区民に対する説明会において正門の現地保存が不可能であることの強力な論拠として挙げていた。
以上のことから、教育委員会の権限で、当然に作成されていなければならないものである。
(2)本件決定通知書に記されている理由づけは、区長と教育委員会が別の執行機関であるから建築基準法の適用が除外される条例の制定を怠るに足ると主張しているにすぎない。
(3)文化財保護に係る事務を、地方教育行政の組織及び運営に関する法律第23条第1項が前提とする条例を定めることを怠り、首長部局が執行していることは、同法に違反しており、文化財保護法の理念に著しく違反し、不当である。
(4)情報公開条例第3条第2項の規定は、既存の文書が不存在の場合、実施機関があらたに文書を作成して区民のために情報公開する義務を定めたものである。
 なお、同日に審査請求人から、教育委員会に対して、審査請求書に記されていた審査請求に係る処分があったことを知った年月日を訂正する申立書が提出された。

4 弁明書の提出
 実施機関は、令和3年6月15日付けで本件審査請求の棄却を求める弁明書を提出した。

5 当審査会への諮問
 実施機関は、令和3年8月16日付けで情報公開条例第13条第3項の規定に基づき、本件審査請求に係る審査を諮問した。

6 意見聴取及び追加資料の提出
 当審査会は、中野区情報公開・個人情報保護審査会条例第9条第1項に基づき、実施機関から令和3年9月27日に意見聴取を行った。実施機関は、意見聴取に合わせて審査会に対して追加資料を提出した。
また、当審査会は、情報公開条例第8条第1項に基づき、実施機関に対し、審査請求人が申し立てた別件の情報公開請求に関する決定通知書及びその関連文書の提出を求め、同月30日付けでこれらを受領した。

第3 当事者の主張の整理

1 実施機関の主張の主旨
 実施機関が非公開とした理由は、次のとおりである。
(1)正門を現在の場所で保存及び公開することになると、新校舎を建設するための校地面積及び地形を確保することができず、当該校地内で適切な教育活動を遂行することが難しくなる。
(2)仮に正門について建築基準法の適用が除外された場合においても、現在の場所で保存することにより教育環境に対する影響は変わるものではなく、条例を制定する必要がないことから請求情報に係る文書を作成しておらず、公開する文書はないと主張している。

2 審査請求人の主張の主旨
 審査請求人の主張は、次のとおりである。
(1)請求情報に係る文書は実施機関の権限で当然に作成されていなければならない文書であるから、文書は存在するはずである。
(2)また、仮に存在していないのであれば、情報公開条例第3条第2項に基づき条例の制定を検討し、その文書を公開せよと主張している。
 なお、審査請求人は、弁明書に対する反論書を提出していない。

第4 審査会の判断

1 請求情報に係る文書の存否について
 本件決定のとおり実施機関が請求情報に係る文書について不存在決定を下した場合、文書の存否に関する決定が妥当かどうかについては、(1)理由が具体的か、(2)理由が合理的か、及び(3)請求情報に該当する文書が存在すると判断できる特段の事情があるかという三つの基準により判断する必要がある。
(1)理由の具体性
 理由の具体性については、次のとおり判断する。
 ア 実施機関が請求情報について非公開決定をする場合には(請求情報を保管していない場合を含む。)、情報公開条例第10条第1項により、その理由をできる限り具体的に明示して文書により通知しなければならない。
 イ この点、本件区政情報不存在通知書には非公開決定の具体的理由として、建築基準法の適用が除外される条例を制定したとしても、正門を現地で保存及び公開することにより新校舎を建設するための校地面積及び地形を確保することができない。
 ウ 当該用地内で適切な教育活動を遂行することが難しくなることに変わりはないので、条例制定の必要がなかったため、そのことを検討し、その内容を文書として作成しなかったものであるとの理由が示されており、具体性要件を充たしている。
(2)理由の合理性
 理由の合理性については、次のとおり判断する。
 ア 請求情報に係る不存在決定が正当化されるためには、その具体的理由が合理的なものでなければならない。
 イ この点、建築基準法の適用が除外される条例を制定したとしても、正門を現地で保存及び公開することにより新校舎建設に必要な校地面積と地形を確保することができず、当該用地内で適切な教育活動を遂行することが難しくなることに変わりはないとの理由から、条例制定の必要がなかったためそのことを検討していないとしている。
 ウ したがって、その内容を文書として作成しなかったものであるとの実施機関の理由付けは、請求情報に係る文書が不存在であるとの理由の説明として筋道の通った合理的なものである。
(3)文書が存在すると判断できる特段の事情の有無
 文書が存在すると判断できる特段の事情の有無については、次のとおり判断する。
 ア 請求情報に係る文書が存在するとの明確な証拠がない場合、当該文書が存在すると判断できる特段の事情がなければ、文書不存在を理由とする非公開決定は妥当であるといえる。
 イ この点、実施機関は、令和2年10月5日に区長に対し申し出た「旧中野刑務所正門の取扱いにかかる意見」において、中野区文化財保護審議会が令和2年7月に正門の保存・公開について実施機関に提出した答申で示した面積で現地保存すれば、実施機関がその答申に先立って既に平成31年1月に策定していた「平和の森小学校校舎等整備基本構想・基本計画(案)」において示していた校地面積及び地形が確保できず、当該用地内で適切な教育活動を遂行することが難しくなると主張している。
 ウ 実施機関は、正門は学校予定地以外で確保されたいとの意見を申し出ていたのであるから、その意見に反して、正門を現地で保存・公開するためにガイドラインを参照し、条例の制定を検討することは、実施機関に矛盾した作業を求めるに等しい。
 エ このことから、本件審査請求について条例の制定を検討した文書が存在すると判断できる特段の事情を見出すことはできない。
 オ 審査請求人が、令和3年2月9日付けで提出した情報公開請求に基づいて実施機関が同年2月24日に公開した「旧中野刑務所正門を現地保存した場合における平和の森小学校整備への影響(令和2年8月21日中野区教育委員会事務局内部資料)」中の「3.旧中野刑務所正門を現地で保存及び公開する場合(中野区文化財保護審議会答申で示された旧中野刑務所正門の保存・公開必要面積のみ)」において示されている図は、客観的にはガイドラインにより条例を定め建築基準法の適用を除外された場合と同一の条件下の図であるが、条例制定を検討したものではないので本件情報公開請求の対象ではない。
(4)請求情報に係る文書の存否に係る判断
 以上の理由により、請求情報に係る文書は存在しないとした本件決定は、妥当である。

2 情報公開条例第3条第2項の規定の解釈等について
 情報公開条例第3条第2項は、「実施機関は、区政に関する情報で文書等の記録媒体により保管していないものの公開を求められた場合は、説明等の方法により当該情報を提供するよう努めるものとする。」と定めている。
 審査請求人は、同項を「既存の文書が不存在の場合には文書を作成して区民のために情報公開するという義務を定めたものである」と解し、同項に基づき審査請求の趣旨として、条例の制定を「検討していないなら検討し、その文書を開示せよ」との採決を求めている。
 しかしながら、情報公開制度が、実施機関が現に保有している情報の公開を内容とするものである以上、前記条項は、過去において区政情報に該当する事実(例えば、ある問題に関する検討・審議)があったにもかかわらず、それについて文書等の記録媒体により保管していないものの公開を求められた場合に関する規定である。
 過去にそうした事実がない場合に、実施機関に対し、新たに問題を検討し、その内容を文書として作成する義務を実施機関に課したものと解することは、情報公開制度の枠を超えるものであるから、この点に関する審査請求人の主張を肯定することはできない。
 なお、審査請求人は、文化財保護に関する中野区の事務の所管分掌は法令に反するものであると主張しているが、その主張は情報公開制度と関連性がないので、その当否を判断することは、当審査会の所掌事項ではない。

第5 結論

 以上のことから、「第1 審査会の結論」のとおり判断する。

中野区情報公開・個人情報保護審査会

委員 岩 隈 道 洋

委員 岸 本 有 巨

委員 熊 田 裕 之

委員 小 池 知 子

委員 佐 藤 信 行(会長)


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