中野区立学校の適正規模適正配置の基本的な考え方および具体的方策について(答申)

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更新日:2023年8月3日

区教育委員会は、児童・生徒数の減少に伴う教育環境の充実を目的として、平成9年10月27日に、中野区立学校適正規模適正配置審議会に対して、「中野区立学校の適正規模適正配置の基本的な考え方について」及び「中野区立学校の適正規模適正配置の具体的方策について」の諮問を行いました。 
 この諮問に対して、同審議会から、平成12年1月28日に、「中野区立学校の適正規模適正配置の基本的な考え方および具体的方策について」が答申されましたので、その全文を紹介します。

1.はじめに
2.中野区立学校の現状
3.学校規模と学級規模
4.区立学校の適正規模の基本的な考え方及び具体的方策
5.区立学校の適正配置の基本的な考え方及び具体的方策
6.おわりに
○【提言】
○答申付属資料(資料目次へリンク)

 本審議会は、平成9(1997)年10月27日に中野区教育委員会から次の事項について諮問を受けた。
(1)中野区立学校の適正規模適正配置の基本的な考え方について
(2)中野区立学校の適正規模適正配置の具体的方策について
 諮問にあたって、教育委員会からは近年の少子化傾向の影響などから区立学校の児童・生徒数の減少が進み、小・中学校ともピーク時の約3分の1にまで至り、児童・生徒数の減少に伴い学級数も減少するという「学校の小規模化」が進展していること、さらに、区立学校の適正規模や適正配置などの問題が学校運営や教育指導に大きな影響を与える課題であり、地域社会のあり方にも深く係わる問題でもあることから、多角的な検討が必要であるとの認識が示された。 
 本審議会は、上記の諮問事項が重要な問題であることを認識し、区立学校の現状、児童・生徒数の推移と将来推計、学級編制基準の国際比較、総務庁行政監察局の「小・中学校を巡る教育行政の現状と課題」と題するレポート、学校施設の状況、学校配置のシミュレーションや他区の審議会の検討内容なども参考にしながらこれまで調査検討を進めてきた。 
 審議の進め方としては、諮問事項のうちの区立学校の適正規模に関する議論を先行させて、次に適正配置の問題へ議論の重点を移すことにし、途中、平成11(1999)年4月に「中野区立学校の適正規模の基本的な考え方及び具体的方策について」として中間答申を行った。 
 審議の過程では、区の財政状況や経済的視点からの議論も行われたが、本審議会としては教育的な視点を基本にして心身ともに健やかな児童・生徒の成長を願う観点から学校教育の充実を目指した審議を心掛けた。 
 本答申は、先の中間答申を踏まえ、これまで審議した結果を取りまとめたものである。広く中野区民の理解を得て、教育環境の整備及び学校教育の充実に生かされることを期待する。 

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(1)児童・生徒数の推移

 区立小学校の児童数は戦後のベビーブームといわれた世代が小学生として在籍していた昭和33(1958)年度の33,024人を最高に、また、区立中学校の生徒数は昭和37 (1962)年度の16,039人をピークに以後急激な減少傾向に転じた。 
 この傾向が落ち着きを見せるのは、小学校で昭和40年代から昭和50年代前半まで、中学校では昭和43年から昭和60年ごろまでの時期で、その後、再び減少傾向が続いている。 
 平成11(1999)年5月1日時点の小学校児童数は10,182人、中学校生徒数は4,606人である。10年前の平成元(1989)年度と比較すると、児童数の実数で4,995人の減少、減少率にして32.9%になる。一方、生徒数も実数で3,039人の減少、減少率は39.7%になる。 
 中野区立学校に在籍する児童・生徒数はともに、戦後のピーク時と比較すると約3分の1まで減少してきている。

(2)学級数の減少

 区立学校の児童・生徒数の減少に伴って学級数の減少も進み、学校教育法施行規則で標準規模とされている12~18学級を下回る「小規模校」が増加しつつある。 
 こうした11学級以下の区立学校は昭和63(1988)年までは小・中学校ともに見られなかったものであるが、平成11(1999)年5月の時点で全小学校29校中7校、全中学校14校中11校を占め、1学年2学級の6学級規模の中学校も生じている。 
 区が行っている区立小・中学校人口推計によると、これらの11学級以下の区立学校は、平成17(2005)年度にはさらに増えて、小学校で11校、中学校で13校にのぼるものと予測されている。

(3)1校あたりの児童・生徒数の変化

 児童数が最も多かった昭和33(1958)年度の小学校1校あたりの児童数は、1,223人で、同じく生徒数は昭和37(1962)年度に中学校1校あたり1,145人であった。その後徐々に減少し、10年前の平成元(1989)年度の小学校1校あたり児童数は523人、中学校1校あたりの生徒数は546人であった。 
 平成11(1999)年5月の時点での1校あたりの児童数は351人、生徒数は329人になっている。 

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(1)学校の標準規模

 学校規模については先にもふれたように、法制面からは、学校教育法施行規則第17条に「小学校の学級数は12学級以上18学級以下を標準とする(同規則第55条により中学校についてもこの規定を準用)」との規定があり、義務教育諸学校施設費国庫負担法施行令第3条に適正な学校規模の条件として「学級数がおおむね12学級から18学級までであること」としている。 
 これはあくまで「標準」であり、この規定を各学年の学級数にあてはめてみると、小学校では各学年2学級から3学級で構成されており、中学校においては各学年4学級から6学級で構成されていることになる。また、この規定を児童・生徒数の面からみると、児童数は246人~720人、生徒数は363人~720人の範囲となる。

(2)学級編制と学級規模

 毎年度、新学期を迎えるにあたり、公立小・中学校の各学年の学級を、その児童・生徒数に応じて、いくつかの学級に編制するが、その際の基準になるのが学級編制の標準である。 
 この公立小・中学校の学級編制の標準については、「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律」(義務教育標準法)第3条で規定している1学級の児童・生徒数を基準として、都道府県教育委員会が定めることになっている。 
 具体的には、1学級の児童・生徒数の標準を40人として各学年の学級数を算出し、学級数に一定割合を掛けて教員数を決めている。各学校の児童・生徒数で学級数が決まり、それに応じてその学校の教職員の総数が決まる仕組みになっている。 
 これにより、公立小・中学校の1学級の児童・生徒数が最高40人とされている学級を「40人学級」と呼んでおり、児童・生徒数が40人を超えた場合には、学級が分割されることになる。 
 なお、参考までに平成11(1999)年5月現在の区立小・中学校の学級規模(1学級あたりの児童・生徒数)を見ると別表のとおりである。 
 審議会における区立学校の適正規模の議論に関連して、この「40人学級」をめぐって活発な議論がおこなわれた。それを敢えて要約すれば「40人学級の基準を引き下げることにより、より行き届いた教育指導が可能になる」との問題意識から、1学級の児童・生徒数を20人から35人程度までと基準については幅があるものの、引き下げを求める意見が多くあった。その他、義務教育標準法の仕組みの見直しや弾力的運用の必要性についても議論し、後述の「提言」にまとめることとした。 
 現在、文部省が「教職員配置の在り方などに関する調査研究協力者会議」を設け、40人学級や教職員配当基準などの法定事項を都道府県の裁量に委ねることを含めての検討が進められている。 
 本審議会としては、こうした最近の国の動向に注目をしているが、「40人学級」がごく近い将来に改善される状況になく、また、学級規模の基準を中野区独自で変更することも難しいと考えている。こうしたことから、学級規模の基準の引き下げ、教職員配当基準の改善、1学級の児童・生徒数の弾力的な運用など制度的改善は今後の課題とすることとして、区立学校の適正規模の検討にあたっては、現行の制度的枠組みを前提として考えていくこととした。

別表 区立小学校の学級規模
小学校1年生2年生3年生4年生5年生6年生合計
児童数1,5691,5841,5641,7201,8701,78010,087 (人) 
学級数565655595961 346(学級)
1学級あたり児童数28.028.328.429.231.729.229.2(人)

別表 区立中学校の学級規模
中学生1年生2年生3年生合計
生徒数1,4171,4981,6714,586 (人)
学級数434449136(学級)
1学級あたり生徒数33.034.034.133.7(人)

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 学校の適正規模は、どの程度の規模が適正であると言えるのか。残念ながらこれに答えられる決定的な理論は存在しない。しかし、適正規模が学校教育を良好な条件のもとに進めるための基本的な条件としての意味を持っていることも事実である。 
 そこで、本審議会は、法的基準や学習指導要領における教育活動などを手がかりに、適正規模を「望ましい学校規模」として考察することにした。その上で、学校規模がこの望ましい学校規模を下回ったとしても、関係者の努力や工夫によって規模のマイナス面を補いうる最小の学校規模についての検討を進めた。換言すれば、この規模を下回らない限り存置を容認していく学校規模として「中野区における最小学校規模」を設定することにした。

(1)望ましい学校規模の諸相

 a.教育指導の面から
 ○小学校 14学級以上
 児童数 330人程度以上(81人×2学年+41人×4学年)
 ○中学校 9学級以上 
 生徒数 250人程度以上(81人×3学年)
 学校の適正規模を日常の教育指導や学校経営の活動を円滑に実施するために、どの程度の教員数が確保されればよいかという配置教員数の観点から論じることが可能である。 本審議会では、小学校の専科教員3人、中学校では保健体育に2人の教員が確保できることが一つの目安となると考えた。(付属資料8:小・中学校教職員定数配当基準表及び配置例)
 b.教職員の研究・研修活動の面から
 ○小学校 12学級以上 
 児童数 250人程度以上(41人×6学年)
 ○中学校 12学級以上 
 生徒数 370人程度以上(121人×3学年)
 小学校の場合、各学年、複数の教員がいると、学年に関する日常的な研究活動が進めやすい。中学校の場合、同様に、各教科複数の教員がいると研究活動が進めやすい。 
 以上のことから、小学校12学級以上、中学校12学級以上(国語、社会、数学、理科、英語、以上の教科では各2人、保健体育3人、音楽、美術、技術、家庭の各教科は1人)が一つの目安となる。
 c.学校運営の面から
 ○小学校 12学級以上 
 児童数 250人程度以上(41人×6学年)
 ○中学校 6学級以上 
 生徒数 130人程度以上(41人×3学年)
 教職員が少ないと、1人の教員が異なった複数の校務を分掌しなければならず、多忙になることは間違いない。明確な論理は導き出せないが、学校運営の観点からは、各学年複数学級というのが、一つの目安となる。

(2)規模別学校数

 先に述べた望ましい学校規模の諸相について、その規模条件未満の学校数を平成11(1999)年5月現在の実数と平成14(2002)年度及び平成17(2005)年度の推計値で見ると以下のようになる。

a.小学校14学級未満、中学校9学級未満の区立学校数
 平成11年度平成14年度平成17年度
小学校25校28校26校
中学校4校7校9校

b.小学校12学級未満、中学校12学級未満の区立学校数
 平成11年度平成14年度平成17年度
小学校7校12校11校
中学校11校11校13校

 

c.小学校12学級未満、中学校6学級未満の区立学校数
 平成11年度平成14年度平成17年度
小学校7校12校11校
中学校0校0校0校

(3)中野区における最小学校規模

 これまで、区立学校の適正規模を望ましい学校規模の観点から考察してきたところからすると、1学年複数学級は是非とも維持したい目標であるが、中野区の児童・生徒数の推計から見る限り、中学校の6学級を除き現実的には実現の困難な数値となっている。また、仮に1学年単学級しか得られなくとも、一定程度の児童・生徒数(20名を割らない程度)を確保できれば、グループ編成のできる規模であり、各種の集団競技など教育活動の円滑な実施の最小規模であると考えられることなどから、単学級であることの不利な面をある程度克服できると考えられる。(※下記参考資料参照) そこで、本審議会は、中野区の現状と将来を見据え、子どもたちの教育のあり方を考え、当面存置される最小学校規模を次のように考えることにした。
 
 ○小学校 学級数 6学級(1学級×6学年)
 児童数 120人程度以上(20人×6学年) ただし、20人を下回る学年が複数存在しないこと
 ○中学校
 学級数 6学級(2学級×3学年)
 生徒数 130人程度以上(41人×3学年)

参考資料
「学習指導要領」に取り上げられている教育活動の面から見た学級の適正規模
 学習指導要領に取り上げられている教育活動のうち、一定の学習集団を想定していると考えられる活動には、次のものがある。
1.国語、社会、算数・数学、理科、英語、<生活>の教科群
 学習集団を想定した内容が多くは含まれない。若干含まれている活動を見ると、以下の3つのタイプに分類される。
a.他の児童・生徒との話し合いや協同して行う活動の中から、自分の「個性」に気づかせるための内容
b.個人的活動として行われても不可能ではないが、学習集団の協力の下で行った方がより良い成果を上げることが期待される内容。
 たとえば、調査や実験、観察、飼育等の活動。他の児童・生徒との協力を学ばせる意義を持つ。
c.集団の中での人間関係や自分の生き方を学ぶ内容。
2.その他の教科群、領域
 上記、1の教科群に比較すると音楽、図工、保健・体育、道徳、特別活動には、学習集団を想定する内容がやや多く含まれる。
 特に、音楽、体育には、上記a~cのタイプの他にもう一つ別のタイプの内容が含まれている。
d.学習集団を前提としない限り実行できない内容
 結論として、一定の学習集団を前提としない限り実施することの難しい教育活動には、音楽(斉唱、輪唱、合唱、合奏等)、体育(ゲーム、ボール競技、リレー、ダンス等)に多い。しかし、想定される学習集団の規模は必ずしも明確ではない。 つまり、学習指導要領に取り上げられている教育活動から考える限り、どれほどの学習集団が必要かは明確にはならない。あえて言えば、音楽、体育の教育活動においては、最低20人程度の学習集団が確保されると良いと言える。

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(1)適正配置の基本的な考え方

 区立学校の良好な教育環境を維持していくためには、児童・生徒数の動向、都市化によるまちの変化など学校を取り巻く環境の変化に伴い、既存の学校配置を見直すことが必要である。その際、学校規模や学校配置の改善の方策としては、一般に通学区域の変更による方法と統廃合による方法が考えられる。
 これまで学校規模については、望ましい学校規模として教育指導面、教職員の研究・研修活動面、学校運営面という観点から分析的に検討を加えるとともに、中野区における最小学校規模として、小・中学校ともに6学級で児童数120人・生徒数130人程度以上の確保を設定し、これを中間答申でも提案した。区立学校の適正配置の検討にあたっては、中野区における最小学校規模を一つの基準とするとともに、望ましい学校規模の学級数についてはこれを総合的に考え、小学校については12学級以上・児童数250人程度以上、中学校は9学級以上・生徒数250人程度以上を一つの目安としながら、通学区域、通学距離、小・中学校の通学区域の整合性、学校選択制、学校と地域社会、学校配置のシミュレーション、学校の施設状況、校舎改築時期、適正配置の実施時期などについて検討を加え、適正配置の基本的な考え方を以下のようにまとめた。
 a.「望ましい学校規模」の確保
 区立学校の小規模化への対応、教育環境の改善、校舎の改築時期、地域住民の区立学校統合への要望などにより、学校配置の見直しを行う場合には、望ましい学校規模を確保することによって、当該学校の教育内容の一層の充実が図られるよう配慮されなくてはならない。
 b.通学区域
 現在、通学区域については法令上の定めはなく、道路や河川等の地理的状況、町会や自治会などの地域社会が形成されてきた長い歴史的な経緯を踏まえて、教育委員会規則で設定されている。 
 こうしたことから、現行の通学区域に対しては審議の過程で、不自然で不合理な通学区域の是正を求める意見や、幹線道路や鉄道で分断されている通学区域の存在などいくつかの問題が指摘された。これら現行の通学区域が抱える問題の解消について地域住民から是正の要望があった場合には、具体的に住民の声を聞いた上で、通学区域の変更を実施することが望ましい。
 通学区域に関連して、通学距離と通学時間、小・中学校の通学区域の整合性についても議論し以下のように取りまとめた。
ア 通学距離と通学時間
 現在の小・中学校の配置と通学区域の状況からみて、通学距離と通学時間についてはそれほどの支障や影響がでているとは考えられない。今後、通学区域の線引きを変更する際には、児童・生徒にとって過大な負担にならないことを基本とし、また、通学路の安全を確保するため、幹線道路や鉄道による通学区域の分断をなるべく避けるよう配慮することが望ましい。
イ 小・中学校の通学区域の整合性
 中学校の通学区域は、通常2~3校の小学校の通学区域から成り立っているが、一部にはごく少数の児童が他の児童と異なった中学校に進学せざるを得ない小学校が存在している。通学区域の線引きを検討する際には、こうした状況を解消し、小学校数校から1中学校に進学できる通学区域を設定することが望ましい。
 c.学校選択制
 区立学校の適正配置に関連して、また、特色ある学校づくりや学校選択の自由化といった視点などから、現行の通学区域制度や学校選択制について活発な議論があった。 
 現行の通学区域(学校指定)制度は、児童・生徒の就学する学校について、教育委員会が就学すべき小学校又は中学校を指定することになっている(学校教育法施行令第5条)。その際、学校指定が恣意的に行われたり、保護者に不公平感をあたえたりすることのないよう、あらかじめ「通学区域」を設定し、この通学区域に基づいて学校指定が行われている。 
 こうした通学区域制度に対して、保護者や児童・生徒の学校選択の自由度を高めていくことが、特色ある学校づくりや公立学校の活性化にとって必要であるとの議論があった。また、学校選択の方法についても、区内全域を一つの通学区域として自由に区立学校を選択するという考え方から、隣接学区やブロック内を自由選択にするという考え方や、中学校区内の小学校については自由選択にするといった意見もあった。 
 一方、こうした学校選択の自由化に対しては、特定の学校に児童・生徒が集中しがちであること。また、地域の中でいくつもの学校に通学している子どもたちがいると、地元の学校への協力をはじめ、子どもたちの地域行事への参加も難しくなるなど地域が希薄化するとの指摘や、子どもの獲得競争になり教員のエネルギーがさかれる恐れなどが指摘された。現行の通学区域制度においても、保護者の申立により教育委員会が相当と認めるときには、他の学校に変更できる指定校変更や、一定の手続きを経て他の区市町村の学校に就学することができる区域外就学制度もある。本審議会としては、従来より中野区においては指定校の変更が弾力的に行われていることを念頭に置き、学校選択制については、先行実施している他の区市町村の状況なども見ながら慎重に検討されることが望ましいと考える。
 d.教育環境
 区立学校の適正配置にあたっては、学校の建物面積、校地面積、運動場の広さなどの学校施設面や、学校の立地場所の騒音や振動といった周辺環境などへの配慮も重要である。 
 区立学校の施設状況や立地条件を見ると、校地、体育館、屋外運動場の広さなどにおいて恵まれた状況にない学校、また、幹線道路や鉄道施設に近接している学校も散見される。 
 今後、必要に応じての通学区域の見直しや区立学校を統廃合する場合には、学級数や児童・生徒数だけでなく、学校施設や周辺環境も十分考慮して推進する必要がある。
 e.学校と地域社会
 区立学校と地域社会の関係についても、審議の過程で様々な視点から論じられた。その一端を紹介すれば、区立学校は地域に根ざした学校であってほしいという主張をはじめ、通学区域と町会・自治会エリアの関係、学校と社会教育との関係、学校教育への地域の人材活用、地域防災拠点としての学校など議論のテーマは多岐にわたった。 
 こうしたテーマの多様性は、反面、区立学校がいかに地域社会と密接に結びついているかをあらわしており、児童・生徒の健やかな成長には、地域社会の教育力に負うところがいかに大きいかを示している。 
 今後、区立学校の再配置を行う際には、こうした区立学校と地域社会とのこれまでの多様な結びつきに十分配慮し、地域の教育活動の拠点化など区立学校を地域コミュニティの一つの核として見直していく必要がある。

(2)適正配置の具体的方策

 区立学校の適正配置の具体的方策を検討するにあたっては、教育制度全般にわたる見直しが求められている今日の状況や、区立学校の規模と配置の現状、校舎の改築時期、学校における教育活動などを踏まえて審議を行ってきた。本審議会としては、区立学校の適正配置の具体的方策について、当面の考え方と中長期的な対応の視点から以下のような提案をすることとした。
 a.当面の考え方
 本区の場合、小・中学校ともに学校規模において、学級数で6学級かつ児童数120人、生徒数で130人を下回る学校は現在存在しない。また、平成11年度推計による平成17年度の学級数と児童・生徒数の推計値を見ても、6学級の小学校が3校、中学校が7校と増加することが予想されるものの、児童・生徒数ではそれぞれ170人~200人が在籍するものと見込まれている。したがって、中野区における最小学校規模を基準とする限り、小規模校を統廃合し望ましい学校規模を確保しなければならない緊急性は見当たらないといえる。 
 また、時代の変化を背景として国の教育制度全体にわたる見直しが求められている。記憶に新しいところでは、国の中央教育審議会が平成8(1996)年7月に「21世紀を展望した我が国の教育の在り方について」(第一次答申)で子どもたち一人一人の個性を尊重し、「ゆとり」の中で自ら学び、考える力や豊かな人間性などの「生きる力」をはぐくむことが最も重要であるという考え方に基づいて、教育内容の厳選、完全学校週5日制、学校・家庭・地域社会の連携を進めること等について提言をおこなった。さらに、平成10(1998)年9月には「今後の地方教育行政の在り方について」を答申している。 
 一方、国の教育課程審議会では、平成10(1998)年7月に教育課程の基準の改善について答申をまとめ、各学校が創意工夫を生かし、特色ある教育、特色ある学校づくりを提言し、新しい教育課程が平成14(2002)年度から本格実施されることになっている。 
 以上のような区立学校に在籍する児童・生徒数やその推計値の動きや、新しい学校づくりに向けての具体的な改善・充実へ向けての動きなどを考えれば、当面は、こうした動きを注意深く見守っていく必要がある。 区立学校の適正配置の具体化は、在籍児童・生徒数、教育人口推計の動き、教育改革の実施及び定着状況、校舎の老朽化に伴う改築時期などを勘案しながら計画的に進める必要があり、望ましい学校規模の実現については中長期的に目指すこととする。
 b.中長期的な対応
 学校教育は今、大きな転機を迎えており、新しい学校づくりが求められている。こうした中にあって、中長期的な区立小・中学校の適正配置は、学校教育の中長期的なあり方を十分見通した上で、児童・生徒数の将来動向なども見極めながら、先に述べた適正配置の基本的な考え方に基づいて計画的に推進していくことが重要である。 
 その際、できる限り望ましい学校規模を実現し、維持しつつ、各学校間の教育条件、教育水準を良好に保ちすべての区立学校において充実した教育が受けられるよう、教育環境を整備する必要がある。そのためには、老朽校舎の改築計画と配置計画を連動させて検討することが重要である。
ア 望ましい学校規模を確保する方法
 望ましい学校規模を確保するためには様々な方法が考えられるが、本審議会では主として次の二通りの方法を議論した。これを踏まえ適切な方法について十分に検討を深める必要がある。
(ア) 隣接校の統廃合による望ましい学校規模の確保
 ○望ましい学校規模を下回る学校の周辺に同様な学校が存在しない場合には、その学校を複数の隣接校へ統合することを検討する。
 ○望ましい学校規模を下回る学校の隣接校も同様な規模である場合は、統合後の学校規模、その他の教育条件を検討して統合する。隣接する3校がいずれも望ましい学校規模を下回る場合には、その内の1校を他の2校へ統合することをまず検討する。
 ○望ましい学校規模の学校が、望ましい学校規模を下回る学校に挟まれた位置にある場合には、その望ましい学校規模の学校も統廃合の対象に考える。
(イ) 地域ブロックを単位にした望ましい学校規模の確保
 隣接校どうしの統廃合ではもはや望ましい学校規模を確保することが難しい場合には、区内をいくつかのブロックに分けて、ブロック内において望ましい規模の小・中学校を確保していく方法も検討されてよい。その場合の学校ブロックは、現在の4ブロックを基礎とする場合と区内を青梅街道、早稲田通り、環状7号線で分ける4ブロックが考えられる。
イ 校舎改築に伴う望ましい学校規模の確保
 将来、校舎の老朽化に伴い全面的な建替えを実施する際には、教育人口推計等を考慮に入れて、統廃合によって望ましい学校規模の確保を検討する必要がある。 
 区立学校の校舎は昭和30年代から40年代にかけて順次鉄筋化してきたが、すでに建築後40年余りを経過した学校もでてきている。文部省の「公立学校施設整備費国庫補助要項」によると、鉄筋コンクリート造りで50年を経過した校舎の改築は国庫補助の対象とされており、この年数を目安にすると、平成20年代頃から順次改築時期を迎えることになる。 
 校舎の改築を進めていくにあたっては、建替えに多額の費用を要すること、また建替えられた校舎は、50年間使用することを想定して建てる施設であることなどを考慮すると、望ましい学校規模が安定的に維持できるよう配慮すべきであろう。

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 以上、本審議会は、児童・生徒数が減少しつつある今日の中野区の状況及び将来展望を踏まえ、あくまでも教育上の視点を重視し、教育環境の改善を目指した区立学校の適正規模及び適正配置について審議を進めてきた。 
 審議の過程で、学校の規模に関しては小規模校における教育実践の紹介や小人数教育がよりきめ細やかな教育指導を可能にする点を評価する意見などや、反対に大規模校の楽しさや活力を評価する意見等、様々な意見がだされ、活発な議論が行われた。もとより、学校の適正規模については決定的な理論や学説が存在しないため、各自の教育経験に基づく多様な意見が存在し、また、容易に意見の一致を見出すのが難しいテーマでもあった。 
 本審議会では、法的基準や学習指導要領における教育活動などを手がかりにして、望ましい学校規模や最小学校規模などの検討を進め、それらを踏まえて、学校配置のシミュレーション、通学区域や学校施設の現状などの検討をとおして、ここに、「区立学校の適正規模適正配置の基本的な考え方及び具体的方策について」を答申としてとりまとめた。言うまでもなく、社会経済状況が激しく変化する中で、教育改革が推進され学校も大きく変わろうとしている現在の状況を考えれば、今後も時代に対応した区立学校の適正規模適正配置の議論が必要になるであろう。 
 この答申はこれまでの審議の過程でおおよその意見の一致がみられたものをとりまとめたものであるが、中野区において存置を認める最小学校規模に関しては、教科担任制をとる中学校では9学級以上の確保が必要であるとの意見や、小・中学校ともに12学級以上の確保を主張する意見があったことを付記しておきたい。 
 なお、本審議会では、「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律」(義務教育標準法)の弾力的運用の必要性について議論し、提言することとした。 
 最後に、この答申が児童・生徒の心身ともに健やかな成長に寄与し、中野区立学校の教育環境の整備及び学校教育の充実に役立つことを願ってやまない。

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 学校の適正規模については、様々な観点に立って論じられはするものの、どの程度の学校を適正というかについて客観的な理論は存在しない。 ただ、教師1人あたりの児童・生徒数の観点からは、経験的にではあるが、その数を20人程度にすることが望ましいと言われている。欧米では概ねこの程度の数値を目指して教員の確保が行われてきたと言って良い。最近、アメリカ合衆国では、教師1人あたりの児童・生徒数を18人にすることが目標値とされている。 
 我が国の教育行政には、明治以来、教員1人あたりの児童・生徒数をどの程度にするかという視点はなかったと言って良い。教員数の算定の基礎をなす現行の義務教育標準法もまた、我が国の伝統的な算定法の観点に立っている。すなわち、同学年の児童・生徒40人で1学級を編成し、教員数はその学級数を基礎として算定されることとなっているのである。 
 地方分権化の流れに沿って、この法規もまた、その弾力的運用が国によって検討されつつある。本審議会は、上述した弊害をなくす意味でも、一日も早い改善を求め、次の2点を国と東京都に要望したい。
 1.教員定数は、学級数ではなく、児童・生徒数を算定の基礎とすること。
 2.1学級の児童・生徒数について、より弾力的な運用を許容すること。

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