子どもの権利の日フォーラムなかの2022「子どもの権利ってなに?」を開催しました(会場・オンライン開催)

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更新日:2023年10月18日

日時

令和4年11月20日(日曜日) 午後2時から午後4時30分

開催方法(ハイブリット開催)

会場聴講 みらいステップなかの10階教育センター研修室(中野区中央一丁目41番2号)
オンライン(ZOOM)配信                 

内容

 中野区子どもの権利に関する条例が施行されて初めて迎えた11月20日(中野区子どもの権利の日)、子どもの権利の日フォーラムなかの2022 が開催されました。
 当日は、会場となったみらいステップなかの10階教育センター研修室での24名の聴講と、約40名のZOOMでの視聴があり、子どもの権利について考える有意義なものとなりました。
 中でも、第2部でのハイティーン会議メンバーとのやりとりでは、メンバーからの率直な意見や質問に対して、酒井区長をはじめとしたパネリストが答える場面が見られるなど、初めての子どもの権利の日のイベントとして相応しい充実した内容となりました。
 当日の内容や流れの概要は以下のとおりです。

第1部 基調講演「子どもの権利ってなに?」

講師

野村 武司 氏
(中野区子どもの権利救済委員、東京経済大学現代法学部教授、弁護士)

 

 酒井区長からの開会の挨拶に続いて、 第1部の基調講演が始まりました。「子どもの権利ってなに?」と題して、子どもの権利条約が採択された背景や令和4年4月に施行された中野区子どもの権利に関する条例の内容、そして、子どもにやさしいまちづくりなどについてお話しいただきました。

「子どもって、何だろう?」

 ユダヤ系ポーランド人の医師で、孤児院の院長でもあったコルチャック氏は、「子どもはだんだん人間になるのではなく、(生まれながらに)すでに人間である。理性に向かって話しかければ、それにこたえることもできるし、心に向かって話しかければ、感じることもできる。」という言葉を残しました。

 親のためや家を存続させるためではなく、子どもは、ひとりの人間として存在し、意思をもっています。誰でも皆赤ちゃんであったし、子ども時代を過ごしてきましたが、子どもに戻ることはできませんし、知らないこともたくさんあります。大人は、子どもに対して真摯に向き合うことが大切ではないでしょうか。

中野区子どもの権利に関する条例の制定

 子どもの権利擁護推進審議会での審議の過程では、委員がたくさんの子どもの意見を聴きました。その結晶としてこの条例が完成していきました。

 子どもの権利条約の精神にのっとり、子どもの今と未来のために、子どもの権利を保障し、子どもにやさしいまちづくりを推進することを宣言し、この条例を制定します。(条例の前文から)

 さらに、条例の前文には、「大人の決意」と「子どもへのメッセージ」が込められています。

大人の決意

 私たちは、子どもをパートナーとして、まち全体で子どもの成長を支え、子どもの権利を保障する、子どもにやさしいまち中野をつくっていきます。子どもにやさしいまちは、全ての人にやさしいまちです。

子どもへのメッセージ

 子どものみなさん、迷うことや困ったことがあったら、周りの大人に相談してみてください。相談をすることは、悪いことではありません。あなたは、一人ではありません。私たち大人は、あなたの意見、考え、思いを受け止め、あなたの立場に寄りそい、あなたにとって最も善いことを一緒に考えます。あなたのことを応援している人がいることを忘れないでください。

子どもの権利条約

 子どもの権利条約は、ポーランドの提案により、1989年11月20日に国連総会(第44会期)において全会一致で採択されました。この条約は、現在196の国と地域が締結しており、人権に関する条約の中でも最も規模が大きいものとなっています。

子どもの権利条約と一般原則

 子どもの権利を保障し、促進するために大切なものとして、一般原則があります。

 この一般原則は、国連の子どもの権利委員会が各国の審査を始めるに当たって、各国が従うべき内容として示したもので、「差別の禁止」、「子どもの最善の利益」、「生命、生存、発達に対する権利」、「子どもの意見の尊重」の4つです。

 これらの一般原則は、子どもの権利条約の中に一般原則として定められているわけではありませんが、差別の禁止(第2条)、子どもの最善の利益(第3条)、生命、生存、発達に対する権利(第6条)、子どもの意見の尊重(第12条)という形で定められています。その中でも「子どもの意見の尊重」(第12条)は、子どもの権利の中で最も中核的で重要な権利であるとされています。

 そして、中野区子どもの権利に関する条例においても、これらの一般原則を踏まえる形で前文が定められているほか、第3条に子どもの権利保障に係る基本理念として定められています。

 また、子ども・若者育成支援推進法(2009年)や改正児童福祉法(2016年)、こども基本法(2022年)の条文に「児童の権利に関する条約の精神にのっとり」という文言が取り入れられるなど、子どもの権利条約を意識した規定がなされています。このことは、国連の子どもの人権委員会における審査の中でも評価を受けています。

子どもの権利条約と子どもの権利

 「子どもの権利条約」には、さまざまな権利が定められていますが、「生きる権利(Survival)」、「育つ権利(Development)」、「参加する権利(Participation)」、「守られる権利(Protection)」という4つに分類することができるとされ、この分類は学校教育などにおいても浸透しています。

 しかし、スコットランドにおいては、分類については同様なものの説明が異なっています。特に「参加する権利」について、日本では、「自由に意見を表したり、団体をつくったりする権利」と説明されますが、「You have a right to say how you feel,be listened to,and taken serlously(あなたには、どんなふうに感じているかを言う権利があります。そして、それが聞かれ、真剣に受け止められる権利があります。)」と説明されています。国連の子どもの権利委員会における説明も同様です。

 「参加する権利」は、子どもの権利の中で最も中核的で重要な権利と言われている「子どもの意見の尊重」(条約第12条)から導かれるということを踏まえ、このような内容として受け取める必要があります。

子どもの権利ってなんだろう?-具体的に考える-

 1つ目の事例は、いじめに悩んでいる一郎くんと友だちのけんたくん、そして、その周りの大人たちの話です。

 一郎くんは、けんたくんからのいじめに悩んでいました。ある朝、お母さんに「誰にも言わないでね。」と言って、涙を流しながら「いじめられているんだ」と打ち明けました。お母さんは、しばらく様子を見ていましたが、一郎くんはずっと元気がありません。心配したお母さんは、たまらずお父さんに相談します。お父さんは「強くならないとダメだ!」と一郎くんを叱ります。その後も変わらず元気がない一郎くんを心配したお母さんは、担任の先生に相談します。先生がけんたくんに事情を聴くと、けんたくんは「いじめていない。」と言います。先生は、二人に対して「仲良くするように。」と指導し、一郎くんの両親に対しては、「いじめはなかったのではないか。」と報告をします。しかし、一郎くんのお父さんは「そんなはずはない。けんたくんとけんたくんの両親と話したい」と言い、両家庭が話をする場が設けられることになりました。話し合いの場で、一郎くんは「りょうたくんも見ていた」と言います。そこで、りょうたくんも話の場に呼び出しますが、りょうたくんは「わかりません。」と言いました。

 お母さんは相談によって、お父さんは一郎くんを叱って、そして、先生は二人に「仲良くする」と約束させることで解決しようとしました。両親も先生も、皆「一郎くんのために」、「良かれ」と思って行動したように見えます。何が足りなかったのでしょうか。

 この事例では、それぞれが考える一郎くんの「最善の利益」にずれがありました。一郎くんの解決イメージが登場しません。一郎くんがどうしたいのか、きちんと聴いている大人は一人もいません。

 この事例で見られるように、大人は日々「子どものために」と思って様々なことをしますが、子ども自身の思いや考え、意見が置いてけぼりになっていることがあるのではないでしょうか。

 2つ目の事例は、焼き鳥屋さんのディスプレイに、ある時刻になると人形が踊る時計をいつも楽しみに眺めている幼稚園に通う女の子の話です。

 人形が踊っている途中でお母さんは、「最後ね」と言って帰ろうとします。女の子は「なんで?」と聞きますが、お母さんは「なんでも」と答えます。女の子は、お母さんに「なんで、なんでもって言うの。ばぁばみたいになんでもって言わないの。」と泣き出しますが、お母さんは行ってしまいます。女の子は、「なんでもって言わない!」と泣きながらお母さんを追いかけていきました。

 この子どもは、何を言いたかったのでしょうか。

 きっと、この時だけでなく他にも「なんで?」と聞いているのに「なんでも」と言って理由を答えてもらえないことがあったのでしょう。理由が知りたくて一生懸命に聞いている、そのことを大人が真剣に受け止めてあげることがとても大切なのではないでしょうか。

中野区子どもの権利に関する条例のかたち

 日常的に子どもの権利を保障するためには、「子どもにやさしいまちづくり」が必要です。

 中野区の条例では、区や育ち・学ぶ施設、地域、家庭が協力し合って子どもの権利を保障していくこととしています。
 そして区は、子どもに関する取組の推進体制を整え、子どもに関する取組を進めていくための基本となる計画を作り、子どもに関する取組を総合的に推進していくこととしています。施策を推進していく中では、子どもの参加を認めていきます。そして、PDCAサイクルにのっとった検証のほか、子どもの権利委員会において、子どもに関する施策がしっかり推進されているかの検証を行っていきます。さらに、子どもの権利救済委員(子どもオンブズマン)が子どもからの相談を受け、それを解決するとともに、区政全体に関わることについては、その改善を促していきます。

 このような仕組みの中で、子どもの権利を保障し、子どもに関する取組の推進を図っていこうとしています。

 そのほか、子どもへの虐待や10代の自殺率の増加している状況などに触れ、子どもの権利保障の現況がどのようになっているか、近江八幡市における公園づくりなどの例を挙げ、子どもにやさしいまちの実践についての紹介などがありました。

おわりに

 子ども権利を保障するとわがままになるかという話がありますが、子どもは、子どもの権利を学習することによって、相手の権利や、その他の権利について深く考えるようになります。

 子どもの権利擁護推進審議会での議論の中で、「子どもの意見の尊重は重要だが、子どもの意見がどのように尊重されたかを知ることができることの方がむしろ重要なのではないか」という意見がありました。このことは、中野区の子どもの権利に関する条例の中にもしっかり反映されておりますが、聴くだけではなく、大人が子どもに対してきちんとフィードバックすることが欠かせません。私たち大人がの誠実さが問われているように思います。

 そして、子どもが参加することによって、適切解を見つけ出してくれるはずです。子どもの権利は、私たちの社会を変える契機にもなるということをぜひ受けとめて欲しいと思います。

第2部 パネルディスカッション「中野区と子どもの権利」

 第2部のパネルディスカッションでは、はじめに酒井区長から、子ども施策と子どもの権利についての考えや、中野区で子どもの権利に関する条例を作るに至った経緯について話がありました。
 次に、ハイティーン会議のメンバーとオンラインで中継を結び、活動の内容や大人に言いたいことなどについてパネリストとのやりとりが行われました。
 そして、子どもの権利委員会の中間答申の内容報告と子どもの権利救済委員(子どもオンブズマン)の活動報告が行われました。

 ※ハイティーン会議の詳細はこちらです(新しいウィンドウで開きます。)

コーディネーター・パネリスト

<コーディネーター>

野村 武司氏 中野区子どもの権利救済委員 (子どもオンブズマン)

<パネリスト>

林 大介氏 第1期 中野区子どもの権利委員会委員

森本 周子氏 中野区子どもの権利救済委員 (子どもオンブズマン)

酒井 直人氏 中野区長

ハイティーン会議メンバーとのやりとり

 ハイティーン会議のメンバーから、各グループの企画や活動の内容を話していただきました。「都市計画に中野区の地域性などやわらかい中野を残して欲しい」と今の中野の良さを残していきたい気持ちを話してくれたメンバーや、不登校の経験から「その時学びを体験しふれあう機会があれば人生が変わっていたのでは」と思い、不登校の中学生を対象にした授業を企画し、今後もハイティーン会議の活動を続けたいと話してくれたメンバーがいました。また、ハイティーン会議のメンバーたちの発言から、中野区を様々な角度から見て、今できることややってみたいことをたくさん考えていることや、中野区のことを真剣に考え、情熱を持って活動していることが伝わってきました。

 さらに「大人に言いたいこと」として、中高生でも大人の話に興味があるのに、興味がないだろうと思われてしまうときがあるという意見や、大人になったら子どもと何が違うのか、大人も楽しいのかということを聞いてみたいという質問、大人には中高生がどのように映っているのかを知りたいという発言がありました。子どもと大人がお互いの気持ちや意見を話し、聴き、考える、大切な時間となりました。

 ハイティーン会議メンバーからの発言などを受け、各パネリストから感想が述べられました。中野区にはいろいろな居場所や個性を生かせる場所があり、周りには支えてくれる人たちがいるということを、子どもたちに伝えていけるような仕組みづくりを考えたいという感想や、ハイティーン会議が20年間も継続して行われていることに触れ、中野区民として大変誇れることであるという感想がありました。

子どもの権利委員会と子どもの権利救済委員(子どものオンブズマン) からの報告

 最初に、第1期中野区子どもの権利委員会委員のこれまでの活動や「子どもに関する取組を推進するための基本となる計画に盛り込むべき理念及び取組等に関することについて(中間答申)」の報告が、パネリストの林大介氏からありました。

 まず、子どもの権利委員会について、中野区子どもの権利に関する条例上の位置付けや役割の解説がありました。

 次に、令和4年6月に区長から子どもの権利委員会にあった諮問の内容、それを受けた子どもの権利委員会の活動内容の説明がありました。

 その中で、もともと子どもの権利に関する条例の制定過程において、子どもへのアンケート調査や出前授業ワークショップなども行ってはいるが、SDGsが目指す「誰一人取り残さない」という観点を踏まえて、それらの意見聴取の中では十分に聴くことが出来なかった子どもの声がないかを検証し、児童養護施設に入所している子どもや里親家庭で暮らす子ども、あるいは乳幼児、不登校の子ども、障害のある子ども、外国にルーツのある子どもなどの意見を聴くことを子どもの権利委員会で確認した上で、委員が出向いて可能な限り意見聴取を行い、中間答申の提出までに聴取できた意見を中間答申に反映させたとの報告がありました。

 次に、令和4年8月に区長に提出した中間答申の内容の概略の説明がありました。

 その内容として、子どもを取り巻く現状や課題を踏まえ、子どもの権利保障の取組を進めていく上での課題として「子どもの権利に関する理解促進」、「子どもの意見表明・参加の促進」、「子どもの居場所づくり、学び・遊び・体験の充実」、「子どもの権利侵害の防止、相談・救済」の4つに整理しているとの説明がありました。その上で、それぞれの課題に対する取組の方向性に示したされ具体的な取組の例についての解説がありました。

 さらに、中間答申後の子どもの権利委員会の活動について、区で検討が進められている子ども総合計画に中間答申の内容が反映されているかどうかの検証にも触れ、大人だけが子どものことを考えて取り組むのではなく、実際に子どもの意見を聴きながら活動を進めているとの報告がありました。

 結びとして、コーディネーターの野村武司氏から、自治体が行っている子ども施策はたくさんあるが、一つの理念のもと、それを体系化していくという計画作りは、まだまだ試行錯誤のようなところがある。中野区には子どもの権利委員会という区長の附属機関ができたので、区民の皆様には、今後とも関心を持ってもらいたい旨の発言がありました。

 続いて、中野区子どもの権利救済委員(子どもオンブズマン)と子ども相談室における活動報告が、パネリストの森本周子氏からありました。

 はじめに、中野区における子どもの権利の救済に関する仕組みについて、中野区子どもの権利に関する条例に基づき、子どもの権利救済委員(子どもオンブズマン)が任命され、令和4年9月に子どもから相談を直接受ける窓口として、子ども相談室が開設されたとの話がありました。

 次に、子どもの権利救済委員(子どもオンブズマン)及び子ども相談室の活動内容や役割について、1つ目として、子どもや保護者その他関係者からの相談を受け、個別に子どもの権利が侵害されてるような事案がある場合には、何が問題で、何ができるかということを一緒に考え、助言や支援、関係者の話を聞くなどの調整活動を行う個別救済、2つ目として、個別の相談や子どもの権利救済委員の判断に基づいて、制度に問題があるのではないかという場合には、その制度上の問題点を指摘し、何らかの制度改善を促したり、提言をする制度改善、3つ目として、子どもの権利についての普及・啓発を図るという広報活動があるとの解説がありました。

 そのうえで、出向いて子どもの話を聞くことも重要であるが、どうしたら子どもが来所しやすいと思ってもらえるかということで、教育センター分室にある子ども相談室の飾り付けのほか、本や玩具を置いたり、区のイベント等を提携して立ち寄ってもらえるような工夫、子ども相談室を知ってもらえるような取組をしているとの報告がありました。

 次に、相談や救済の仕組みについての紹介がありました。子どもや保護者などからの話に傾聴することが基本となり、何がその子どもにとって求められていることなのか、望んでいることなのかを見極めることが重要である。その上で一緒に考えて、必要があれば調整活動を行うということになる。その中で一番大切ことは、勝手にやらないことと秘密を守ること。子どもの解決イメージに合う方法で解決を図っていくことであるとの説明がありました。

 そのほか、相談体制や相談方法などについての紹介がありました。

 さらに、子ども相談室開設からの相談件数は9件(令和4年11月20日現在)あり、内容は、いじめや不登校の学校に関するものが6件、子育てに関するものが1件、学外での活動に関するものが1件、区の制度の改善に関するものが1件との報告がありました。

 結びとして、子どもの権利救済委員(子どもオンブズマン) でもあるコーディネーターの野村武司氏から、令和4年9月に開設したとはいえ相談件数としてはまだまだ少ない。今後は広報啓発を重要な活動として位置付けていきたい。私たち子どもの権利救済委員(子どもオンブズマン)の職務は、行政や学校等と適切な距離感をもって、子どもたちの声を代弁していくことにある。そのためには、何よりも子どもたちによく知ってもらい、子どもたちと意見を交わしながら活動を進めていきたい旨の発言がありました。

(参考資料)
ダウンロードのリンク 新規ウインドウで開きます。中野区子どもの権利委員会中間答申報告(PDF形式:685KB)(PDF形式:3,737KB)
ダウンロードのリンク 新規ウインドウで開きます。子どもの権利救済委員子ども相談室活動報告(PDF形式:2,017KB)(PDF形式:12,306KB)

結び

 最後に、パネリストから本フォーラムを総括して、フォーラム中で印象に残った点や中野区における子どもの権利についての今後の展望などについて話しがあり、本フォーラムは締めくくられました。

お問い合わせ

このページは子ども教育部 子ども・教育政策課(子)が担当しています。

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