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最終更新日 2019年8月23日
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子ども(10歳・男)が、病院で胸部CT検査を受けました。この子は将来高い確率で肺がんになるのでしょうか?

質問

子ども(10歳・男)が、病院で胸部CT検査を受けました。この子は将来高い確率で肺がんになるのでしょうか?

回答

 現在の科学では低線量の放射線による人への影響がわからないために様々な情報が飛び交っており、不安・心配はつきないとお察します。低線量放射線の影響は「確実な」科学的根拠はありませんが、それでも現在ある知識を最大限活用して、放射線診療のリスクが推定されています。

 胸部に放射線を浴びたあと肺がんになる確率は、次の1~3のように推定します。

1.肺の被ばく線量(組織吸収線量)を推定する

 肺がんは肺にできるがん(8月23日更新)であり、肺がどれだけ被ばくしたかが問題です(胸部CT検査では、皮膚、乳房、骨髄なども被ばくするが、皮膚の被ばくは皮膚がん、乳房の被ばくは乳がん、骨髄の被ばくは白血病のリスクであり、肺がんのリスクには無関係)。
 放射線診療で被ばくする線量の表より、胸部CT検査による肺の被ばく線量(組織吸収線量)は、およそ25ミリグレイと推定されます。
 なお、被ばく線量は、対象となる人の体格や使用する機器などで異なります。したがって、上記表にない検査・部位組織も含めて、検査を受けた医療機関の医師・歯科医師・診療放射線技師に直接お聞きになった方が、より正確な線量が推定できます(最適化)。

2.年齢・性別の肺がん罹患率を推定する

 確率論的環境影響評価のための生涯がんリスク解析に関する報告書(PDF形式:5,249KB)の69ページ図2.9被ばく時年齢による生涯がん罹患リスク係数の左中肺がんのグラフより、被ばく時年齢10歳の生涯がん罹患リスク係数は、被ばく線量1グレイ(1,000ミリグレイ)あたりおよそ2パーセントと推定されます。

報告書の見方

  • 確率論的環境影響評価のための生涯がんリスク解析に関する報告書(PDF形式:5,249KB)の左の「しおり」欄の「2.生涯がんリスク係数の整備」の左の+をクリック
    →開いたしおりの下の方にある「図2.9被ばく時年齢による生涯がん罹患リスク係数」をクリック
    →開いた右側本文2-57頁の左の上から3つ目が「肺がん」のグラフ
  • グラフの縦軸の単位「1/Gy」は「1グレイあたりの確率」
  • グラフの縦軸の目盛の「2.0E-02」は、2×(10のマイナス2乗=0.01)で「0.02」
  • 確率1が100パーセントなので、0.02は2パーセント
  • 青のグラフは日本の推定値で、水色のグラフ(BEIR VII)はアメリカの推定値
  • なお、がんになる確率でなく、がんで死亡する確率を推定したい場合は、この図2.9ではなく、65~66頁の図2.7被ばく時年齢による生涯がん死亡リスク係数(本文2-53~54頁)を使用

3.被ばく線量あたりの肺がん罹患率を推定する

 上記2より、1000ミリグレイ肺に被ばくしたとき一生涯で肺ががん化する確率はおよそ2パーセントなので、上記1の25ミリグレイ(1000ミリグレイの40分の1)被ばくしたこの子が将来肺がんになる確率はおよそ0.05(=2÷40)パーセントと推定できます。
 そして、複数の放射線診療を受けた場合のリスクは、上記の推定を検査、組織部位ごとに繰り返して、すべて足し算して推定します(国立保健医療科学院 検査を繰り返しても大丈夫?)。

4.確率を評価する

 上記1~3で推定した確率がどのくらい高いのかは、他の確率(リスク)と比較するとわかりやすいかもしれません。しかし、生命への影響研究は放射線から始まったので、最もデータが揃っているのが放射線です。喫煙をはじめがんの原因となるものは多くありますが、放射線のように詳細なリスクが推定されているものはほとんどありません(がん死亡リスクの比較)。
 放射線以外のすべての原因によるがん罹患率と比較してみます。「最新がん統計3.がん罹患 5)がんに罹患する確率~累積罹患リスク」の表より、男性が一生涯のうちに肺がんになる確率は10パーセントです。これを3の確率と比べると、1回の胸部CT検査以外の原因による肺がんは、胸部CT検査による肺がんのおよそ200(=10÷0.05)倍発生すると推定されます。
 しかし、がんは1人ひとりの日常生活の積み重ねが大きくかかわっており、確率として推定はできていませんが、予防できると考えられています(放射線被ばくとがん)。つまり、上記で推定した確率は、「一生変わらない、被害が出るかどうか運まかせ」の確率ではありません。上がってしまった確率は、これから日常生活を気を付ければ、下げられると考えられます(がん情報サービス 日本人のためのがん予防)。

 将来死ぬ確率は誰でも100パーセントですし、職業やスポーツによっては、他のものより死傷の確率が高いものもあります。しかし、「死にたくない」「長生きしたい」ことを「最も優先すべき価値あるもの」としている人ばかりでは、社会は成り立ちません。お子さんが将来肺がんになる確率ではなく、逆に肺がんにならない確率に着目すれば、それはおよそ90パーセント(=100-10-0.05)です。また、数字としての確率はわかりませんが、「そもそも胸部CT検査を受けなかったら」、また、「検査の結果が悪かったら」、もっと大変なことになっていたかもしれません(インフォームド・コンセント)。人生は決断の連続であり、その時あなたがお子さんに胸部CT検査を受けさせたのは、その時の最良の選択だったのではないでしょうか(国立保健医療科学院 危険なCTを受けさせた私は母親失格なの?)。

 社会全体でさまざまなリスクを減らしてきた(最適化)現代に生きる私たちは、過去のいつの時代よりも長生きです(厚生労働省 生命表)。お子さんにはこれから多くの楽しいことが待っていますし、あなたにもまだまだ挑戦したいことがあるのではないでしょうか。お子さんともども、個性を生かし、力を発揮して、これからの人生を歩んでいかれることを願っています(健康について)。

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