中野区立小中学校の適正規模・適正配置について(案) 平成15年6月23日決定

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更新日:2023年8月3日

 中野区立の小中学校では、近年の少子化の影響などから、小規模化を続けている。
 学校は、集団活動を通じて学習したり、友情を育んだりと、社会生活を身につける場である。しかし、規模が小さくなると集団教育のよさが生かされないことにもなりかねない。
 教育委員会では、こうした問題意識の下にこれまで区立学校の適正規模・適正配置等について様々な検討を重ね、平成9年10月には教育委員会の附属機関として「中野区立学校適正規模適正配置審議会」を設置し、平成12年1月に答申を得たところである。
 審議会の答申を受け、教育委員会では様々な角度から再度検討を進めたが、中野区立学校はほとんどすべてが小規模化しているため、個々の学校について個別に検討するのではなく、全体として白紙から考えるべきであるという認識を持ったところである。
 こうした小規模化の問題に加えて、今後到来する校舎の改築期を前に、改築経費をどのように確保するかは大きな課題である。改築には1校当たり30億円程度は必要と見込まれるため、教育環境を整備するにあたっては、適正な学校数の見通しをもって対応することが必要になる。
 教育委員会では、こうした視点から検討を進め、適正規模適正配置の基本的な考え方をまとめたところである。今後は、広く区民論議を行っていただきながらさらに検討を加え、基本構想改定の動きを視野に入れて、今年度末を目途に具体的な再編計画(案)を策定していきたいと考えている。

(1) 児童生徒数

 区立小学校の児童数は昭和33年度の33,024人を、中学校の生徒数は昭和37年度の16,039人をピークに急速な減少傾向に転じ、平成15年度は小学校児童数9,543人、中学校生徒数3,928人とピーク時と比較すると3分の1以下にまで減少してきている。一方、学校数は、小学校は昭和54年度に、中学校は昭和35年度に現在の数になってから、そのままの数を維持し続けている。
 教育委員会が平成15年度に推計したところによると、これから平成21年度までの児童生徒数は、概ね横ばいで推移すると思われる。
 また、国立社会保障・人口問題研究所が発表した平成14年3月に実施した推計によると、東京都における年少人口(0歳~14歳)は30年間に16%程度減少すると予測されている。

(2) 1校あたりの学級数

 学校教育法施行規則で標準規模とされている12~18学級を下回る「小規模校」が増加し、平成15年度で小学校29校中10校、中学校14校中13校を占めている。このうち、小学校では全校で6学級(各学年1学級)の学校が1校、7学級の学校が2校あり、中学校でも全校で6学級(各学年2学級)の学校が3校、7学級の学校が3校ある。
 また、その中で、わずか数人の変動で中野区立学校適正規模適正配置審議会答申にいう存置を容認していく最小学校規模を下回る学校が数校ある。

(3) 学級編制(用語解説が必要な語句には※印を付し、説明を後述)

 公立小中学校の1学級あたりの児童生徒数の基準は、「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律」において、40人を標準として都道府県教育委員会が定めることになっており、都道府県の判断で40人を下回る数を基準にすることができることになっている。
 東京都では40人学級の原則を維持しているが、一方で学級維持制度(※注1)を創設したほか、TT(※注2)や少人数学習集団による指導(※注3)等のための教員の加配を充実してきている。中野区においては、平成15年度、小学校1校が学級維持制度の適用を受け、本来の基準よりも学級数が1多くなっているほか、TTのための加配が小学校11校、中学校全校で、少人数学習集団による指導のための加配が小学校11校、中学校6校で行われている。また、非常勤講師の配置も含めて、すべての小中学校で、TTもしくは少人数学習集団による指導を行っている。これに加え、区では独自に学習指導補助員(※注4)を小学校10校、中学校4校に配置し、さらに教育活動の充実が図られている。

<用語解説>

(※注1 学級維持制度)
 学年が上がるときに児童生徒数が変動していることによって学級数が変わり、クラス替えをせざるを得なくなることを防止するため、小学校2年、6年、中学校3年に進級するときに、そのときの児童生徒数にかかわらず前年度の学級を維持する制度。平成15年度では、武蔵台小の第2学年が78名であるにもかかわらず、前年度どおりの3学級で編制した。
(※注2 TT)
 Team Teachingの略。1学級を複数の教員により指導すること。1人の教員が通常の一斉指導を行いながらもう1人の教員が個別指導を行ったり、グループ別指導を行ったりする。
(※注3 少人数学習集団による指導)
 学級数を超える学習集団を編成し、少人数の集団にして、それぞれに別の教員が指導を行うこと。例えば2学級の学年で、全体の児童を3つに分けて3か所で別々に指導を行うことをいう。集団を習熟度別に編成する場合もある。
(※注4 学習指導補助員)
 個に応じた学習指導を積極的に導入する学校などに配置している臨時職員。

(4) 校舎等施設の状況

 文部科学省が定める改築の基準では、建築後概ね50年を経過した鉄筋コンクリート造の校舎は、改築の対象となる。学校の校舎は複数年にわたって増築されているため、校舎の主要部分が建築後50年を経過したときをその学校の改築期とすると(実際の改築はそれ以降になる)、平成19年に小学校2校が改築期を迎えるのを始めにその後10年間で16校が改築期を迎える。
 校舎の改築を行うとすれば、その後最低でも50年間は利用することになるため、機能的にも、構造的にも、規模的にも望ましい水準で計画する必要がある。文部科学省が定める基準は数度の改定をされており、現在の校舎をつくった当時に比べると大規模で高機能の施設にならざるを得ない。
 ここで問題となるのが、敷地の規模と立地条件である。中野区の公立学校の敷地は一般的に小規模なものが多く、望ましい水準での改築が困難なものも少なくない。その上、住宅地が多く日影規制の影響も大きいことから、現在の敷地では改築自体が難しい学校も存在する。

 小規模な学校では、教員が児童生徒全員について細部にわたって把握することが可能となり、行き届いた指導を進めることができることや、児童生徒の学習発表の機会や活動の場面が増えるといったプラス面がある一方、現行制度のもとでは、教育指導や学校運営に次のようなマイナス面が生じる。

(1) 教育指導面

  • 相互に刺激し合うという集団生活の良さが生かされにくくなり、クラス全体や学年の活気が低下する。
  • 児童生徒の暗黙の序列が生じるとともに、児童生徒個人に対する評価が固定化する。
  • 一定数の集団を必要とする音楽の合唱・合奏、体育などの集団競技の教科の学習に支障が生じてくる。
  • 中学校において生徒の希望する部活動、選択教科の設置が、員数の不足から困難になってくる。
  • 特に単学級の場合、学級の編制替えができないため、人間関係が固定され、異なった集団の中で新たな自分を発見する機会が少なくなる。また、学級間の協力や良い意味での競争意識も育ちにくくなる。

(2) 教職員の研究・研修活動面

  • 中学校で授業時間数の多い国語、数学、理科、社会、外国語の各教科については、学年ごとに1人ずつの専任の教員を確保することが望ましいが、これが不可能になる。
  • 教員相互の融通がつけにくくなるため、外部研修が受けづらくなる。
  • 教員同士の啓発、切磋琢磨が困難になる。
  • 特に単学級の場合、相互に協力した学年運営ができなくなり、若手の教員が指導、助言を受ける機会が減少することにより人材の育成に影響がある。

(3) 学校運営面

  • 校務分掌は学校が小規模化しても変わらないため、少数の教員で必要な校務を分掌せざるを得なくなる。このため、1人の教員の分担する業務量が増え、負担が過大になることから、その分、個別指導や教育相談にかける時間が減少する。
  • 修学旅行、移動教室など宿泊を伴う行事の引率教員や連合行事等に対する教員の確保が困難になる。また、引率した教員が抜けることにより、学校に残る教員は極めて少ない人数で教育指導や安全確保にあたらなければならず、安全確保等に支障を来たす恐れがある。
  • 中学校の部活動の指導者や顧問の配置ができにくく、多様な部の設置が困難になる恐れがある。

 以上のことを総合的に勘案すると、学校の小規模化はマイナス面が大きいと判断せざるを得ない。小規模化のデメリットを解消し、集団教育を前提とした学校の活性化を図るためにも、学校の再編を進める必要がある。

(1) 区立小中学校の再編は、速やかに取り組むべき教育行政上の課題である。
(2) 1学級の規模については現行の40人学級を前提とするが、必要な教科にかかる少人数指導等を積極的に進める。
(3) 区立小中学校の望ましい規模は、集団活動に活力があふれ児童・生徒相互間、教師と児童・生徒間に様々な係わり合いができることなどを考え、さらに少子化傾向を踏まえ同じ地域での再編を繰り返さないため、次のとおりとする。

  • 小学校 18学級程度を維持できること
  • 中学校 15学級程度を維持できること

(4) 区立小中学校の最小学校規模は、クラス替えが可能なことと、子ども同士の相互評価や人間関係が固定されないことなどを考え、次のとおりとする。

  • 小学校 各学年2学級を下回らないこと
  • 中学校 各学年3学級を下回らないこと

(5) 最小学校規模に達しない学校は、再編、通学区域の見直しなどにより、改築期前であっても速やかにその状態を解消するよう努める。
(6) (5)による最小学校規模の解消ができない学校を含め、望ましい規模にならない学校については、校舎の改築期に合わせて望ましい規模を実現していく。その場合は、区民が誇れる校舎の建設を目指す。

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このページは教育委員会事務局 子ども・教育政策課(教)が担当しています。

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