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最終更新日 2020年9月28日
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放射線を浴びるとどうなるのですか

放射線影響の分類

 放射線は人の細胞を傷つけるので、傷ついた細胞の種類や、どの部位(組織・臓器)の細胞かによってさまざまな影響が現れます。しかし、放射線に特有の影響はないので、「この影響(=結果)が出たから、原因は放射線」と、「科学的にわかる(=因果関係が推定できる)」わけではありません。
 生きるのに必要な酸素呼吸も人の細胞を傷つけるように、細胞を傷つける原因は多種多様なので、人には細胞の傷を修復する様々な能力があります。また、人には修復に失敗した細胞を取り除く能力もあり1日に全身のおよそ0.7パーセント(3,000から4,000個)の細胞が死ぬ(=新陳代謝する)といわれています。結果として、もし細胞に傷が蓄積されても、その細胞がなくなってしまえば、傷は残りません。人は日々傷ついた細胞を修復しながら生きています。

 放射線の人への影響は、被ばく線量による発症の違いから、有害な組織反応(確定的影響)確率的影響の2種類に分類されます。

有害な組織反応(確定的影響)

 大量の放射線に被ばくすると、白血球の減少や不妊・脱毛・白内障などの有害な組織反応(確定的影響)が出ます。有害な組織反応は、組織としての機能がなくなることが原因です。したがって、細胞の消滅が再生を上回るある一定の線量(しきい値)を超えて放射線に被ばくしない限り、有害な組織反応は現れません。

有害な組織反応
おもな影響 対象組織

全身に1回被ばくしたとき、 1パーセントの成人に影響が現れる推定しきい値(吸収線量

被ばく後、影響が出るまでの期間(潜伏期間
胚の致死(流産)、胎児の奇形・成長不全・精神遅滞 胚・胎児 100 ミリ グレイ -
認知障害

1グレイ
(乳児(18か月未満)は100ミリグレイ)

数年~
一時的(最長1年間)不妊(男) 精巣 100ミリグレイ
(長期被ばくの場合は1年あたり400ミリグレイ)
3~9週間
一時的造血機能の低下 骨髄 500ミリグレイ
(長期被ばくの場合は1年あたり400ミリグレイ)
リンパ球減少(感染傾向)は数日、血小板減少(出血傾向)数週間(どちらも線量が多いと慢性化)
白内障、視力障害 500ミリグレイ
(長期被ばくの場合は通算500ミリグレイ)
数年~
心血管障害 心臓 500ミリグレイ
(長期被ばくの場合は通算500ミリグレイ)
10年~
脳血管障害 頸動脈 500ミリグレイ
(長期被ばくの場合は通算500ミリグレイ)
10年~
吐き気、嘔吐、脱力感・倦怠感(二日酔いのような状態) - 1グレイ(1,000ミリグレイ)
1.5グレイで50パーセントに現れる
1時間~数日
下痢、脱水、下血、感染 1グレイ(1,000ミリグレイ) 数日~数週間
一時的紅斑、脱毛 皮膚 1グレイ(1,000ミリグレイ) 数日~数週間(線量が多いと慢性化)
死亡 骨髄

1グレイ(1,000ミリグレイ)

2グレイで5パーセント、
4グレイで50パーセント、
7グレイで100パーセントに現れる

1~2か月
一時的不妊(女) 卵巣 1.5グレイ(1,500ミリグレイ) 1週間
甲状腺機能の低下 甲状腺

外部被ばく2グレイ(2,000ミリグレイ)

内部被ばく10グレイ(1万ミリグレイ)

1年以内
永久不妊(男) 精巣 6グレイ
(長期被ばくの場合は1年あたり2グレイ)
3週間
永久不妊(女) 卵巣 3グレイ
(長期被ばくの場合は1年あたり200ミリグレイ)
1週間

 また、放射線治療では、正常組織の耐容線量を超えることのないように計算されて放射線が照射されますが、照射範囲に含まれる正常組織に上表の影響以外にもさまざまな有害な組織反応が起こる場合があります(がん情報サービス 放射線治療の実際)。
 なお、細胞の再生力には個人差があり、この個人差は血圧や試験の成績のように正規分布していると考えられています。上記表のしきい値も、被ばくした100人のうち1人に影響が現れる線量として推定されています(=しきい値線量を100人が被ばくしても99人には影響が現れない)。したがって、細胞の再生力の弱い(=放射線に感受性の高い)人では、上記表のしきい値より少ない線量でも有害な組織反応が現れると考えられます。
 しかし、個人の細胞の再生力はまだ研究途上で、上記表のしきい値はあくまで集団に対するものであり、個人1人ひとりのしきい値はまだ推定できません。

 有害な組織反応(組織の損傷)は、その組織への被ばく線量が増えるにしたがって重症になるため、主として組織の吸収線量(外部被ばくによる線量と内部被ばくによる線量をグレイ単位で合算)で評価します。

参考

確率的影響

 ICRP(国際放射線防護委員会)は、確率的影響のリスク評価に、がん遺伝性障害を考慮しています(正当化)。

 有害な組織反応(確定的影響)と異なり、被ばくした個人の子孫への遺伝性障害や、被ばくした個人のがんの発生は、少ない放射線被ばくでも、発生すると考えられています。なぜなら、試験管内や動物での実験で、増殖が可能なたった1つのがん細胞や損傷生殖細胞を、少ない放射線で発生させることができるからです。
 そして、マクロ疫学調査では、大量の放射線に被ばくした事実(=原因)とがん発生の事実(=結果)の間には、十分な知見があります
 しかし、1つのがん細胞から発がんまでの、生物学的システム(=生体内のミクロな段階的メカニズム)はよくわかっていません。また、マクロな疫学調査でも、被ばくした子孫への遺伝性障害と、自然放射線レベル(およそ10ミリシーベルト以下)の放射線を浴びたあとの発がんは、よくわかっていません。これは、潜伏期間が長い、疫学調査のバイアス(遺伝性障害と発がんに影響する放射線以外の因子が、放射線を受けた集団と受けなかった集団で違うかもしれない、など)や、遺伝性障害とがんの発生数が調査集団数にくらべて少なすぎる、ことなどによってマクロな疫学調査の科学的信頼度が低いからです。しかし、発生するとしても、

ことは、科学的にわかっているといえます。

 このように、影響が発生しないある一定の線量(しきい値)があるかどうかわからない影響が、確率的影響です。ICRP(国際放射線防護委員会)は、放射線管理上の基準を勧告するために、確率的影響にはしきい値がないという考え方(仮説)採用しており、日本の行政も採用しています。

 また、放射線被ばくによって、がん以外の疾患による死亡や、免疫系の老化の促進が発生することも、科学的にわかってきました。しかし、なぜ放射線によってこれらの影響が増えるのか生物学的システムはまだ不明で、線量と影響との関係もまだ推定できていません(有害な組織反応か確率的影響かどうかも不明)。さらに、放射線がストレス・恐怖・不安の要因であることはわかっていても、線量と心理的・精神的な影響との関係はよくわかっていません。

 確率的影響は、重症度より発生率が問題になりますが、放射線の種類や被ばくした組織の放射性感受性によって、発生率は異なります。したがって、さまざまな放射線の複合影響は、これらの違いを考慮した組織(臓器)の等価線量や実効線量(ともに外部被ばくによる線量内部被ばくによる線量シーベルト単位で合算)で評価します。

 少ない放射線による人への確率的影響が「わからない」というのは、「どんなことが起こるか見当もつかない」というのではなく、「確率的影響が出ても、放射線の関与がどの程度かわからない」ということであり、「低線量の放射線で、高線量の放射線より大きな確率的影響は出るはずがない」ということは、現在の科学者の多数意見です(放射線に関する基礎知識)。そして、「低線量の放射線でなぜ大きな確率的影響が出ないと断言できるのか」という問いに反論することは、いわゆる悪魔の証明で、ほぼ不可能です。なぜなら、「ある」ことを証明するには一例あげればすみますが、「ない」ことを証明するためには、世の中のすべてを調べ尽くさなければならないからです。したがって、「ないと断言できないのだから、ある」という主張は、詭弁といえます。

 科学的にわかっていない部分については、さまざまな主張を持った科学者などから、さまざまな仮説が提案されることになります。
 たとえば、現在の科学では、内部被ばくによる実効線量の推定には限界があります。ICRPとはチェルノブイリ原発事故後の疫学調査の評価が異なるECRR(欧州放射線リスク委員会)は、放射性ヨウ素と放射性セシウムについては数倍から10倍高い換算係数を勧告しています(ECRR2010年勧告付録A:線量係数)。また、放射線管理労働災害臨床医療のそれぞれの現場では、放射線によって利益を受ける人とリスクを負う人が異なるので、両者のバランスをどう調整するかによって、どの仮説を援用するか異なることになります(正当化最適化)。

参考

調査研究
チェルノブイリ原発事故調査研究
リスク
放射線量の評価
飲食物の評価

放射線量の基準

放射線管理上の基準

 放射線管理上の防護の目的は、

  1. 個人の有害な組織反応(確定的影響)の発生を防止すること
  2. 明らかに便益をもたらす放射線被ばくを伴う行為を不当に制限することなく、確率的影響の発生の減少させるためにあらゆる合理的な手段を確実にとること

の2つで、基本原則は、

  1. 正当化
  2. 最適化
  3. 個人の線量限度自然放射線医療から受ける被ばくを除く)

の3つです(首相官邸 ICRP放射線防護体系の進化-倫理規範の歴史的変遷)。

 しかし、いつでも3つの原則が適用されるわけではなく、ICRP(国際放射線防護委員会)は2007年に、被ばく状況を平常時、緊急時、復旧時の3つに分類し、「個人の線量限度は平常時にのみ適用される」と勧告しています。日本は、まだICRP2007年勧告を国内法令に取り入れていませんが、2007年勧告に準拠して放射線を防護する対策を順次に実施しており、中野区も対応しています(行政の対応)。

状況と防護
状況 状況の特徴 適用される防護の原則 職業被ばく実効線量の基準 公衆被ばく実効線量の基準
緊急時

放射線の発生源が制御できず、線量を低減する対策が必要である

  • 正当化(提案された救済が、総合的に見て有益か)
  • 最適化

なし(ただし、長期的な回復作業は平常時の線量限度)

参考レベル(年間20~100ミリシーベルト)
復旧時

管理上の対策を決める時点で、自然放射線以外の発生源(緊急事態後の長期被ばく)がすでにある

  • 正当化(提案された救済が、総合的に見て有益か)
  • 最適化

なし(ただし、長期被ばく場所での作業は平常時の線量限度)

参考レベル(年間1~20ミリシーベルト)

平常時 放射線の発生源が制御できている
  • 正当化(計画がされた活動が、総合的にみて有益か)
  • 最適化
  • 線量限度

線量限度(年間50ミリシーベルト。ただし5年間100ミリシーベルト)

線量限度(年間1ミリシーベルト)

 なお、ICRPは緊急時・復旧時の職業被ばく実効線量の基準を勧告していませんが、日本の法令は1回250ミリシーベルトと規定しています(電離放射線障害防止規則第7条の2)。
 そして、すべての実効線量は外部被ばくによる線量内部被ばくによる線量を合算して評価します。

参考

正当化

 正当化の意思決定には、放射線に関連しない他のリスクやその活動費用、利益も含まれます。しかし、低線量の放射線による人への影響が「わからない」では、放射線の管理も、放射線を利用した場合のリスクと利益の比較もできません。そこで、ICRPは、確率的影響の発生は実効線量に比例する仮定(ただし、白血病の発生は線量と曲線関係にある仮定)を採用して、放射線被ばくのリスクを算出しています。

実効線量1000ミリシーベルトあたりの名目リスク係数
被ばく集団 がん 遺伝性障害 合計
全年齢 5.5パーセント 0.2パーセント 5.7パーセント
成人 4.1パーセント 0.1パーセント 4.2パーセント

 がんの名目リスク係数は、性別、被ばく時の年齢、がん罹患にともなう損害を考慮し、がん発生率の異なる集団に転換するため、生涯がん過剰相対リスクと生涯がん過剰絶対リスクを、がん部位別に異なる割合で加重し、さらに生存率(寿命)の異なる集団で平均化されています。遺伝性障害の名目リスク係数については、人の自然発生率とマウスの放射線誘発発生率などが考慮されています。また、他のリスクと比較するために世界標準として推定されたこれらの名目リスク係数には、係数の信頼性(信頼区間)は計算されていません。

 なお、最終的な正当化の意思決定(=どのような放射線防護対策を提案するか)は、放射線以外の要素を考慮する必要があるため、放射線管理を担う行政当局の責任の範囲を超えた政治課題です。

参考

最適化

 防護の最適化は、「合理的に可能な限り被ばくを低減する対策をとる(ALARAの原則=被ばくによる損害と防護に利用できる資源とでバランスをとる)」ことで、最善の選択肢が必ずしも最低の被ばく線量をもたらすとは限りません。
 最適化の意思決定(=どのような放射線防護対策を、実施するかしないか)も、個人や社会の価値観など放射線以外の要素に影響を受けます。ICRPは、復旧時の防護の最適化の際に考慮すべきこととして、

  1. 消費者対汚染地域生産者の利害
  2. 汚染地域住民と汚染地域外住民の連帯
  3. 汚染地域住民が自身で最適化を決定できるための情報伝達と防護方策

の3つをあげています(ICRP Pub.111原子力事故または放射線緊急事態後の長期汚染地域に居住する人々の防護に対する委員会勧告の適用(PDF形式:2,586KB))。

参考

線量限度

 「どんなに少ない線量の放射線でも危険(=基準値はない)」と仮定したのは科学ですが、「基準値が必要である」としたのは正当化(=政治)の結果で、基準値である個人の線量限度最適化(=政治)の結果です。
 「職業被ばく」の線量限度は、放射線作業者を想定した「成人」の名目リスクと他の職業の死亡率との比較から決められています。「公衆被ばく」の線量限度は、放射線に影響を受けやすい子どもを含んだ「全年齢」の名目リスクと交通事故などの死亡率との比較から決められています。つまり、「放射線作業者・公衆が受け入れられそうな死亡リスク」が、個人の線量限度です(国立保健医療科学院 リスク受忍モデル)。

 日本の法令は、「職業被ばく」については個人の被ばく線量を直接評価しますが、「公衆被ばく」については放射線を使用する施設の境界の放射線量を評価することで間接的に評価する方法を採用しています(放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律施行規則第20条)。
 線量限度や参考レベルは、あくまで放射線防護の最適化がうまくいっているかどうかを評価するための管理の目安です。確率的影響にしきい値はないと仮定している以上 、線量限度や参考レベルは、「安全」と「危険」の境界や、個人の健康リスクの段階的な変化や、現実にがんや遺伝性障害が発生する確率を表わしているものではありません。ただし、管理の目安である以上、それを超えるおそれのある場合には、合理的な措置をとっていくことになります。

参考

医学上の基準

 医学上の多数意見も、「確率的影響にしきい値はない」という仮定を採用しています。その上で、外部被ばくと内部被ばくを合算した実効線量100ミリシーベルトの放射線被ばくによる発がんのリスクは喫煙による発がんのリスクの4分の1程度と推定し、100ミリシーベルト以下では、たとえ放射線の影響(悪影響でも好影響でも)があったとしても、それは医学的な誤差範囲内で、臨床上は実質的に無視できるとしています(放射線被ばくとがん)。
 また、外部被ばく内部被ばくとで、予防・治療方法が異なるため、医学上の放射線のリスク判断の基準は、

とされています。

 なお、自然放射線も人の細胞を傷つけることに変わりはありません。日本で50年生活すると、1人の自然放射線の平均積算値は、実効線量で100ミリシーベルトくらいになり、上記の基準程度になります。なのになぜ自然放射線被ばくを基準から除くかというと、放射線の影響は「量(積算値)」だけでなく「強さ(線量率=どれくらいの時間にどれくらいの量を被ばくするか)」にもよるからです(ATOMICA 線量率と生物学的効果)。これは、一般に「ちょっとなら大丈夫」と理解されている「用量依存性(毒になるか薬になるかは量次第)」と似ています(厚生労働省 新医薬品の承認に必要な用量―反応関係の検討のための指針)。医学の多数意見は「自然放射線の数倍程度の強さ(線量率)なら、ほとんど人への影響は無視できる」としています。たとえば、食塩10グラムを摂取しても直ちには死亡しませんが、体重50キログラムの人が50~150グラムの食塩を1度に摂取すると死亡すると推定されています。しかし、長期間にわたって過剰に摂取することは、実効線量で200ミリシーベルトの被ばくと同じくらいのがんのリスクになると考えられています(がん死亡リスクの比較)。

 上記の医学上の放射線リスクの基準値(外部被ばく100ミリシーベルト、内部被ばく20ミリシーベルト)は、医師が「塩分の取りすぎに気をつけてください」というレベルということです。また、低線量の放射線被ばくの医学的対応は、糖尿病の治療に似ているとも言われます(apital 内部被曝通信)。

 医学上の放射線防護の目的は、放射線管理上の防護の目的と、変わりありません。しかし、医学上は、有害な組織反応(確定的影響)が発生する線量でも「便益がある」と正当化される場合があります。したがって、上記の医学上の放射線のリスク判断の基準放射線管理上の基準とは異なり、あくまで参考です。医学上は、放射線の診断・治療効果を最大限に利用するため、防護の基本原則に個人の線量限度はありません(病気の診断・治療に放射線は有用です)。 医療被ばくの正当化・最適化の詳細は、インフォームド・コンセントにお進みください。
 医学的に「気にしなくていい」と言われても、「自分でもっと最適化したい」という場合は、放射線被ばくを減らすにはどうすればよいですかにお進みください。

労災補償上の基準

線量測定は適切な方法で実施してください線量測定以外の法定事項も守ってください

 放射線を浴びる仕事をして病気になったときは、労災補償の対象になります(厚生労働省放射線被ばくによる疾病についての労災保険制度のお知らせ)。

 日本の放射線作業従事者は、個人被ばく線量を実効線量(シーベルト単位)で管理しているので、放射線被ばくによる労災の認定基準は、有害な組織反応(確定的影響)確率的影響 もシーベルト単位です。
 ここで、注意しなければならないのは、労災制度は労働者保護が第1目的であって、認定基準の実効線量は原因(これだけ放射線被ばくしたら(=原因)この症状が必ず出る(=結果))ではなく条件(この症状が出たときに(=原因)もしこれだけ放射線被ばくしていたら(=条件)保険を適用する(=結果))だということです。 

労災認定基準
被ばく期間 全身に浴びた実効線量 被ばく後、影響が出るまでの期間 労災と認められる症状
1年以上 5ミリシーベルト毎年以上 1年以上 骨髄性白血病またはリンパ性白血病
慢性的(1年以上) 50ミリシーベルト毎年以上 数年以上 造血器障害
数日間 250ミリシーベルト以下 数週間以内 血液変化(白血球減少など)
数日間 500ミリシーベルト以上 数週間以内 吐き気、嘔吐、精神症状(不安感、無力感、易疲労感など)、血液変化、出血、発熱、下痢などの全身症状 
3か月以内 2シーベルト以上 1年以上 水晶体混濁による視力障害を伴う白内障
十数時間 5シーベルト以上 数時間以上 急性皮膚障害(脱毛を含む)
慢性的(3か月以上) 25シーベルト以上 数年以上 慢性皮膚障害

 現在、放射線被ばくによる労災の認定は、厚生労働省電離放射線障害の業務上外に関する検討会で行われています。行政の労災認定における「放射線起因性(=放射線が原因で病気が起きたこと)」の判断は、原爆症の認定などと同じ様に、「科学的合理性(=高度の蓋然性)」に基づいています。なお、近年、行政による「科学的合理性」に基づく判断と、個別事案(現実に症状が出ている方)の救済を第1目的とする司法(裁判所)による「因果関係がわからない場合は、あることにする」とする判断との間に、隔たりがあるとされています。
 また、働く場には、放射線以外にも発がん物質はあります(厚生労働省 職業病リスト)。がんで労災補償が認定された方のうち、放射線によるものはおよそ0.2パーセントです(厚生労働省 平成30年度業務上疾病の労災補償状況調査結果(全国計) 6 職業がんの労災補償状況)。-5月22日更新

参考

放射線被ばくとがん

 人の細胞は、複数の特定の遺伝子の突然変異が積み重なっていくとがんが発生するので、加齢(年をとること)はがんの最大のリスクです(がん情報サービス 細胞ががん化する仕組み)。なお、がんの中には、進行が遅かったり、消えてしまったり、生命にかかわらないがんもあります。しかし、現在の科学では、どのようながんが生命にかかわるか、ほとんどわかっていません(日本医師会 がん検診のメリットとデメリット)。

 放射線は、直接遺伝子を傷つけるだけでなく、細胞の80パーセントを占める水分子に当たってできた活性酸素を介して、間接的にも遺伝子を傷つけます(ATOMICA 放射線の直接作用と間接作用)。しかし、活性酸素は、私たちの通常の酸素呼吸でも発生します(e-ヘルスネット活性酸素と酸化ストレス)。
 現在の科学では、実際に突然変異している遺伝子から、放射線が原因か、それとも放射線以外が原因かを、区別することはできません。放射線は特別に危険な発がん物質ではなく、世の中に膨大にある発がん物質の1つにすぎません。現代の医学では、がん細胞が30回以上分裂しておよそ1億個(およそ直径1センチメートル)に増えないと、がんと診断できません。なお、毎日数千個(人の全体のおよそ100億分の1)のがん細胞が毎日発生していると考えられています。しかし、なかなか診断できるがんにならないのは、がん細胞自体が死滅したり、人の免疫機構ががんの細胞分裂を抑えたりしているからとされています。

 ところで、放射線被ばくによってがんで死亡する確率(可能性)とは、「誰に被害が出るかわからない」「被害が出るかどうかは、くじ引きと同様に運まかせ」ではありません。がんは、人体内の生物学的反応であり、がんと診断されるまでには、1人ひとりの日常生活の積み重ねが大きくかかわっています(がん情報サービス 人のがんにかかわる要因)。放射線によるがんも、放射線以外の原因によるがんも、遺伝子の突然変異というがん化のしくみは同じと考えられているので、放射線以外の原因によるがんの予防方法

  1. タバコは吸わない
  2. 節度のある飲酒をする(1日当たり日本酒なら1合、ビールなら大瓶1本、ワインならボトル3分の1)
    →ただし、最新の研究では「全く飲まないことが健康に最もよい」とされています(日経Gooday お酒は少量であっても健康に悪かった!?)。
  3. 食事は偏らずバランスよくとる(食塩は1日当たり男性9グラム、女性7.5グラム未満、野菜・果物は毎日)
  4. 日常生活を活動的にする(毎日合計60分程度の歩行+週に1回60分程度の早歩き)
  5. 適正な体型を保つ(中高年期のBMI(Body Mass Index 肥満度)で男性21~27、女性19~25)
  6. 肝炎ウイルスに感染している場合は専門医に相談する(肝炎ウイルス検査を受けましょう

は、放射線によるがんの予防にも有効といえます(日本人のためのがん予防法)。

がん死亡リスクに基づく死亡の推計

被ばく線量とがん死亡リスク

 ICRPは「名目リスクは放射線管理の観点に用いるべき考え方であり、少量の放射線に被ばくした集団で出るがんなどの症例数を計算するのに用いるのは適切でない」としています(旧原子力安全委員会 低線量被ばくのリスクからがん死の増加人数を計算することについて)。

 そこで、広島・長崎で原爆に被爆された方々の疫学調査で得られた報告を基にした、環境省 放射線による健康影響等に関する統一的な基礎資料(令和元年度版)第3章3.7がん・白血病の表から、ICRPに準拠して、白血病を除くがんの発生が被ばく線量に比例するモデルで計算してみたのが下表です。

がん死亡リスク(パーセント)(がん以外のすべての死亡リスクを合わせれば100パーセント)
被ばく時年齢性別

A:自然放射線(1年あたり2.1ミリシーベルト)以外に被ばくしなくても、がんで死亡する確率(注釈)

自然放射線以外に1000ミリシーベルト被ばくしたとき、A以外に余計にがんで死亡する確率

自然放射線以外に100ミリシーベルト被ばくしたとき、A以外に余計にがんで死亡する確率

自然放射線以外に10ミリシーベルト被ばくしたとき、A以外に余計にがんで死亡する確率

自然放射線以外に1ミリシーベルト被ばくしたとき、A以外に余計にがんで死亡する確率

10歳男

25パーセント

(1万人あたり2500人)

21パーセント

(1万人あたり2100人)

2.1パーセント

(1万人あたり210人)

0.21パーセント

(1万人あたり21人)

0.021パーセント

(1万人あたり2人)

10歳女

15パーセント

(1万人あたり1500人)

22パーセント

(1万人あたり2200人)

2.2パーセント

(1万人あたり220人)

0.22パーセント

(1万人あたり22人)

0.022パーセント

(1万人あたり2人)

30歳男

25パーセント

(1万人あたり2500人)

9パーセント

(1万人あたり900人)

0.9パーセント

(1万人あたり90人)

0.09パーセント

(1万人あたり9人)

0.009パーセント

(1万人あたり1人)

30歳女

15パーセント

(1万人あたり1500人)

11パーセント

(1万人あたり1100人)

1.1パーセント

(1万人あたり110人)

0.11パーセント

(1万人あたり11人)

0.011パーセント

(1万人あたり1人)

50歳男

25パーセント

(1万人あたり2500人)

3パーセント

(1万人あたり300人)

0.3パーセント

(1万人あたり30人)

0.03パーセント

(1万人あたり3人)

0.003パーセント

10万人あたり3人)

50歳女

15パーセント

(1万人あたり1500人)

4パーセント

(1万人あたり400人)

0.4パーセント

(1万人あたり40人)

0.04パーセント

(1万人あたり4人)

0.004パーセント

10万人あたり4人)

 ICRPの全年齢で平均した名目リスクより、30歳で被ばくした場合でおよそ2倍、10歳で被ばくした場合ならおよそ4倍のリスクとなります。
 なお、上記の疫学調査に対しては「内部被ばくを過小評価している」という意見がありますが、仮に原爆に被爆された方々の内部被ばく線量がもっとあったとしたら、上記の計算より大きな線量で死亡したことになるので、線量当たりのリスクは上記の計算より小さくなります。
 また、医療被ばくは、全身が被ばくする原発事故に伴う放射線や自然放射線による被ばくと違って、ほとんど特定の部位だけの被ばくなので、この方法では推定できません。例えば頭部CT検査では、頭部や甲状腺、皮膚は被ばくによる影響が考えられますが、内臓はほとんど被ばくしないので、内臓のがんはほとんど発生しないと考えられます(医療被ばく線量の推定)。医療被ばくによるリスクの推計方法については、胸部CT検査を受けましたが、肺がんが心配ですにお進みください。

(注釈)2020年7月6日現在のがん情報サービス 最新がん統計の現在年齢別がんで死亡リスクによると、日本人ががんで亡くなるリスクは、男性23.9パーセント(およそ4人に1人)、女性15.1パーセント(およそ7人に1人)と推計されています。-9月28日更新
 さらに、自然放射線も原爆の放射線も影響は同じという仮定に基づいて推計してみます。日本で50年生活すると、自然放射被ばく線量はおよそ100ミリシーベルトになります。上記表より、50歳男性が100ミリシーベルト追加したときの過剰リスクは0.3パーセントなので、この人の自然放射線50年分の被ばく100ミリシーベルトによる過剰リスクも0.3パーセントです。この自然放射線によるリスクは、自然放射線しか被ばくしていない50歳男性のがんで死亡する確率25パーセントに含まれています。つまり、50歳男性の放射線以外の要因(喫煙、感染症、飲酒など)によるがんで死亡する確率は24.7パーセントとなります。したがって、がん死亡のうち放射線の要因が1.2パーセントで、放射線以外の要因が98.8パーセントとなります。

参考

1万人のがん死亡の推計

 上記を基にすると、平成29年の日本の年齢構成と同じ1万人の人口集団が、それぞれの年齢で1000ミリシーベルト被ばくした場合、一生のうちに(何歳かはわかりませんが)、

と大まかに推計されます。そして、がんの発生は被ばく線量に比例すると仮定すれば、放射線被ばくが100ミリシーベルトなら過剰で亡くなる方は80人(0.8パーセント)、10ミリシーベルトなら8人(0.08パーセント)、1ミリシーベルトなら0.8人(0.008パーセント)、と大まかに推計されます。ただし、高齢化の影響を除いた現実のがん死亡は、男性では平成10年代から女性では昭和40年代から減っており、多くの仮定をおいて計算された計算上の100ミリシーベルト未満のがん死亡の増加は、現実の疫学調査では観察できません(がん情報サービス 年次推移)。

実際の1万人の死亡原因の内訳

 平成29年人口動態調査 下巻 死亡 第2表を、そのまま同じ年齢構成の死亡1万人の集団に換算してみると、1年間の死亡者1万人の内訳は、

  • がんで亡くなる方がおよそ2900人(29パーセント)
  • 心臓疾患で亡くなる方がおよそ1500人(15パーセント)
  • 呼吸器疾患で亡くなる方がおよそ1400人(14パーセント)
  • 脳血管疾患で亡くなる方がおよそ800人(8パーセント)
  • 老衰で亡くなる(いわゆる天寿をまっとうする)方がおよそ750人(7.5パーセント)
  • 事故で亡くなる方がおよそ300人(3パーセント)
  • 自殺で亡くなる方がおよそ150人(1.5パーセント)
  • 先天奇形で亡くなる方がおよそ20人(0.2パーセント)

となります(H29死亡統計(エクセル形式:99KB))。

がん死亡リスクの比較

 いろいろながん死亡リスクを放射線被ばくと比べた場合、

  • 喫煙や毎日3合以上の飲酒は2000ミリシーベルト(なお、アルコールを体内で分解する際に作られるアセトアルデヒドは発がん物質)
  • 肥満や塩分の取りすぎは200ミリシーベルト以上
  • 野菜嫌いは150ミリシーベルト

の被ばくに相当するとされています(日本リスク研究学会 健康リスク評価から見たものさし)。

 増殖が可能なたった1つのがん細胞があればがんは発生すると考えられているので、発がんリスクを減らしたいなら、喫煙や飲酒はしないに限ります(ただし、たばこ1本吸った場合や、ビール1本飲んだ場合のがん死亡リスクは推計されていない)。しかし、肥満や塩分は少ないほどよいというわけではありません。やせは感染症や脳出血のリスクが高くなり、塩分が少なすぎれば代謝障害を起こします。また、1ミリシーベルトの内部被ばくを恐れて野菜を食べないでいると、かえってがん死亡リスクを上げてしまうことになります。

 放射性物質と同じ遺伝毒性を持つ発がん物質を含む食品は多く、

  • 毎日1グラムのヒジキを食べる発がんリスクはおよそ27ミリシーベルト(ヒジキに含まれる無機ヒ素が発がん物質)
  • 毎日300グラムのコメを食べる発がんリスクはおよそ20ミリシーベルト(コメに含まれる無機ヒ素が発がん物質)
  • 毎日50グラムの炭火焼肉を食べる発がんリスクはおよそ7ミリシーベルト(食品を加熱するとできる多環芳香族炭化水素(PAHs)が発がん物質)

の被ばくに相当するとされています(食品保健科学情報交流協議会 遺伝毒性発がん物質のリスク評価について)。

 発がん物質のリスクを考えるときには、その物質を検出する測定方法があることが、大前提になります。たとえば、日本では食品中に「検出されてはならない」強い発がん物質であるアフラトキシンは、測定の検出限界がおよそ10ppb(食品1キログラム中に10マイクログラム)です。もし、体重4キログラムの乳児が毎日飲む1リットルのミネラルウォーターに5ppbのアフラトキシンが入っていたとしたら、発がんリスクは200ミリシーベルトの被ばくと同程度になりますが、このリスクは検出することができません。アフラトキシンに比べて放射性物質は、何桁も少ない量を検出することができますが、これは、放射性物質がアフラトキシンよりリスクが高いのではなく、単に放射性物質がアフラトキシンより少ない量で検出できることを意味するだけです。そして、食品中の毒物の中には、致死量でも検出できないものや、食品中には検出できないくらい微量でも、人体内で増殖して中毒症状を起こすものもあります。

 上記のリスクは、比較をするために、無理を承知で多くの仮定をおいて計算されたものに過ぎず、放射線被ばくと同様に、計算上のがん死亡は現実の疫学調査では観察できません。がんを予防するには、少量の放射線被ばくを怖がるよりも、生活習慣を管理して、がん検診を受診するほうが大切ということになります(健康を管理する)。

参考

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